「みんな、お夕飯の時間よ!早く集まりなさい!」  
お母さんの一声で、レザーは目を覚ましベッドから跳ね起きて階段を駆け降りた。  
白のフリルシャツ、真っ赤なスカートを揺らせて一直線に食卓へ向かう。濃厚な香りがだんだん強くなる。  
今日はお母さんの特製ビーフシチューだ。レザーはたまった唾をごくりと飲み込んで、ドアノブに手をかける。  
とろけるような柔らかいお肉――舌で崩れる甘いたまねぎ――思わず顔がにやけてしまう。  
「おかさん、来たよぉ!」  
しかし扉を開けた瞬間、レザーはあっと声を出して、立ち尽くすしかなかった。  
大きな食卓の向かい側、ボーイフレンドのロスが猿轡をされたまま、椅子にくくりつけられて、もがいていたからだ。  
招かれざる客。ここに連れて来られた者達の末路は、幼いレザーでも知っている。  
縄で縛られ、拷問され、レイプされ、散々嬲られたあげく、家畜のようにハンマーで殴り殺されたあと  
真っ赤なチェーンソーで細切れになるまで解体され――今まさに目の前の食卓に置かれてあるシチューになるのだ。  
ロスはやっと自分の知人が現れたことで安堵の表情を見せ、すぐに助けを求める目をレザーに向けた。  
いつも自信満々で、何処から見てもテキサス代表の優等生。いじめっこからレザーを助けてくれたロスの姿はそこにない。  
丁寧にカットされたブラウンの髪は汗と脂でべとべとになり、ジェルを手にして掻き毟ったようにねじけている。  
殴られたのか、右の頬は青く腫れあがり、にきび一つ見当たらない整った顔に、恐怖によって刻まれた皺の跡が見えた。  
「ろ、ろすぅ!」  
「へえ。知ってるの?その子」  
あたふたしながらロスに駆け寄るレザーの背後から、やけに高くて厭らしい声がした。  
レザーが顎を引いて恐る恐る振り返ると、赤いサンダルが目に入った。ところどころ破けたジーンズ、長い足。  
扉にもたれかかって長いストレートの黒髪を揺らせたお姉ちゃんが腕を組んでレザーをねめつけている。  
攻撃的な猫目、小さく尖ったキュートな鼻に、卑猥な厚ぼったい唇――お姉ちゃんはそれらを一気に崩して、はあ、と大きく欠伸した。  
だらんと伸びた無地のシャツから、ツンと上を向いた乳首が浮いている。  
シャツの首の部分が垂れ下がり、席へ歩みを進める度に、隙間から小ぶりな乳房が見え隠れした。  
 
「おねちゃん……」  
「私、言ったわよね。勝手に他所の男の子としちゃいけないって」  
お姉ちゃんは席について、なんでも知っているかのような口ぶりで続けた。  
「いつからお姉ちゃんにはむかうようになっちゃったのかしらね」  
鋭い視線がレザーの心臓を鷲づかみにした。  
レザーはこの場を取り繕ろうと必死だった。そうしなければ、ロスの命が危ない。  
「れっ、レザー、して、ないもん……」  
「ふうん」  
お姉ちゃんはにやにや笑っている。  
「ほ、ほんとだよ……」  
レザーの弁解は無視された。いつもクラスメイトにされているように。  
お姉ちゃんが頬杖をついて、指でスプーンをノックしていると、お母さんが台所からエプロン姿でやってきた。  
いつものように微笑んではいなかった。  
「お、おかさん……」  
「なんでこうなったか、分かってるの?レザー」  
レザーは何も答えられなかった。事態を飲み込むのにまだ時間がかかった。  
どうしてここにロスがいるんだろう?お母さんとお姉ちゃんは――どこまで知っているのだろう?  
「まだ私達なしで男の子に手を出すのは早いって言ったでしょう」  
お母さんがわざといつもより低い声を使った。レザーはうつむいて、両手をこすり合わせて、黙り込むしかなかった。  
「お姉ちゃんに聞いたら、あなた、この子のこと好きなんですって?」  
「…………」  
レザーがこくんとうなずく。ロスは黙って、祈るような気持ちでそれを見ていた。  
「そう……で、もうしちゃったのかしら?どうなの?」  
ふるふる、とレザーは首を横に振る。ロスがほっとして、猿轡越しに息を吐いて、目を閉じた。  
「ふう。安心した。勝手に他所の男の子と寝て、勢い余って下手を打ったらどうしようかと思ったわ」  
「ダイジョーブ。そこまでバカじゃないでしょ」  
意外にもお姉ちゃんがフォローしてくれた。レザーは胸を撫で下ろす。心の中でお姉ちゃんに感謝した。  
そんなレザーを、どういうわけか、お姉ちゃんは片目でちらと流し見て、唇の端を引きつらせるように持ち上げた。  
お姉ちゃんがよからぬことを企む時に見せる笑顔だった。ひょっとして――レザーはまた不安になった。それも、さっきよりもっと。  
 
「そう?私、この子のこと時々心配になっちゃうのよね」  
「安心しなよ。レザーはこう見えてもグランマにも負けない才能があるんだから。でもね……」  
でも?でも、って、なんだろう?もしかして……レザーはどぎまぎして、いても立ってもいられない。  
「私、見ちゃったんだよねー。レザーがその子とやってるとこ」  
レザーの目の前が真っ暗になった。お母さんの顔がみるみる歪んでいく。  
お姉ちゃんは口笛を吹きながらその様子を楽しそうに眺めている。  
バレちゃった……バレちゃった……レザーの頭の中をぐるぐる同じ言葉が巡る。  
「レザー!どういうこと!説明なさい!」  
「お、おかさん、ごめなさい!ごめなさい!ごめなさい!」  
レザーはおかさんに一部始終を説明した。丁寧に、包み隠さず、その時の気持ちをできるだけ詳しく伝えた。  
ロスと帰り道の納屋で初めてセックスしたこと。 とても気持ちよかったこと。  
いつも教えられていた風にすると、ロスはとても喜んでくれたこと……。  
お母さんは厳しい顔つきで話を聞いていたけれど、なんだか時々嬉しそうな笑みも見せるのだった。  
「分かりました。ばらしていないのなら、そのことはお咎めなし、よ」  
お母さんのお許しにレザーは目に涙をためて喜ぶ。感謝の中に、ロスを助けてくれるかもしれない、という希望も混じりだした。  
もう普通の生活はできない――もちろん。でも、お母さんに認められれば、ずっとここにいられるかもしれない。  
炊事、洗濯、庭の芝刈り、日曜大工、家畜の世話、小麦畑の手入れ、  
それから……でも――いや、できないことは何だってない。命がかかっていれば。  
レザーはロスのためなら何でもしようと思った。自分の分のごはんをいくらだってあげるから、ロスには生きていて欲しかった。  
だって、初めて好きになった男の子だから……。  
レザーは精一杯申し訳なさそうな顔を作って見せた。それが今しなければならない全てだった。  
お母さんはいつものように優しく微笑んでいる。この調子なら――レザーがお願いしようとして、お母さんが口を開いた。  
「秘密を守ってくれたのは、おかさん、嬉しいわよ。でも……」  
「?」  
「二人して私達に嘘をついた罰は受けなきゃならないわねえ」  
お姉ちゃんのかん高い笑い声が響き渡った。レザーの顔からすっと血の気が引いていった。  
 
 
汗や唾液が口を覆う布に染みを浮かび上がらせる。ロスは首を左右に振って快楽から逃れようと躍起になっている。  
しかし、怒張するペニスはロスの意志に逆らって、さらなる刺激を追い求める。  
お姉ちゃんはシチューをどかして、机の上に足を組んで座り、芋虫のように蠢くロスを見下ろしている。  
余分な肉が省かれた綺麗な長い右足が机の上から伸びて、真正面からぐっとペニスを押さえつけていた。  
「んんー。年の割にはなかなか立派なもの持ってんじゃん」  
さっきから、足の親指と中指でカリ首の下を挟んで、すり合わせるようにして責めている。  
まだ小手調べと言ったところ、足の指をほぐすためのウォーミングアップに過ぎない。  
「よっと」  
人差し指で裏筋をなぞると、野太いペニスは大きく脈打った。幹の部分に太い血管のすじが走っている。  
レザーはロスの方を向く形で、同じように椅子にくくりつけられていた。  
本当は見たくない。本当は。でもどうしても声が耳に入り、我慢できなくなって、見てしまう。  
お姉ちゃんの足でロスのペニスが歓喜の悲鳴を挙げているのが分かる。  
「どう?この子よりよっぽどいいでしょ?」  
ロスは何も言わない。答えられる余裕はもうなくなっていたのだ。  
 
責め苦は続く。お姉ちゃんの足は男を尋常でないほど虜にする。  
ロスがイキそうになるとやめ、ぺ二スがしなびてくると、また足でもてあそぶ。  
その繰り返しで、ロスは頭がおかしくなりそうだった。もう何を捨ててもいい気がした。  
いったい何度目か、ロスのペニスがまた射精間近になった時、お姉ちゃんは親指と人差し指でペニスの根元をギュッと掴んだ。  
そうすることで精液が登ってくるのを防いでいる――嬲れるだけ嬲る。いつものように。  
レザーはイケないロスのことを可哀想だと思った。できることなら私がイカせてあげたいと思ったが、  
邪魔をするとお姉ちゃんはひどく怒るし、ロスがもっとひどいめに合わされるのは目に見えている。  
「さて、ロスくん。これは何でしょう?」  
改まった声で、お姉ちゃんはジーンズのポケットから長い紐を取り出した。ロスは息も絶え絶えにお姉ちゃんの右手へ目をやる。  
赤い紐、両端がわっかになってねじれていて、手製のアクセサリーだろうか、  
中心に、何か――でこぼこした、四角い、白い物が連なって取りつけられている。  
繰り返される快感の波の満ち引きで視界が霞んでしまってよく分からない。じっと見つめる。  
理解した瞬間、ロスの顔が恐怖でいっぱいになった。  
狂っている。こいつは正真正銘のきちがいだ――ロスは身体の震えを抑えられない。  
ああ神様――だって、だって、あれはどう見ても……人間の――人間の……奥歯!  
 
「分かんない?これねえ、こうやって使うのよ」  
ペニスの根元を足で押さえたまま、お姉ちゃんは身を乗り出して、亀頭の割れ目に右手の人差し指と親指を添えた。  
そのまま下へぐっと力を加えると尿道口が押し開かれた。いったい全体、ぱっくり裂けてしまうのではないだろうか。  
使い込まれた女の膣口くらい開いている。ロスは猿轡ごしに低い呻き声を挙げた。それは屠殺される牛の鳴き声にも似ていた。  
お母さんはそれを聴いてとても嬉しそうに笑う。 お姉ちゃんはすばやく右手の紐を近づけ、白い塊を丁寧に尿道に埋めていく。  
あんなものが入ってしまうのか、レザーは男の子の身体の神秘に心を奪われたが、ペニスに激痛が走るロスはそれどころではない。  
椅子をガタガタ揺らして、歯を食いしばって、ついには、縛った紐が切れてしまうのではないかと思うほど暴れだした。  
「五月蝿い」  
お姉ちゃんは歯をまとめて一気に尿道に押し込んだ。ずぼっと嫌な音が響いた。  
「ペニスストッパー、ていうの。覚えときなさい。分かった?」  
全部入ってしまった時、ロスはペニスを勃起させたまま、首をだらんと下げていた。  
瞼や、縛られた手や、広い背中や――とにかく、色んな部位がそれぞれ痙攣している。  
「おーい、まだ早いぞー。これからがいいところ……」  
お姉ちゃんはペニスから足を離し、傍にあったスプーンでまだ湯気を立てているシチューをすくい  
「なっんっだっかっらっ」  
一語発するリズムに乗せて、ロスのペニスへ振りかけた。あつあつのシチューを亀頭にかけられたロスはびっくりして跳ね起きる。  
汗まみれの身体をぶるぶる震わせながら、言葉にならない声を猿轡越しに叫ぶ。  
熱のショックでペニスがしぼみ始める。 尿道に入った歯は収縮するペニスにまけまいと抵抗し、さらなる痛みがロスの身体を襲った。  
お母さんが合の手を入れる。「食べ物を粗末にしちゃいけないわねえ。せっかく作ったんだから」  
「分かってるわよ」  
お姉ちゃんの厚ぼったい唇が、ロスの亀頭に覆いかぶさった。ずずず、と音が出るくらい一気に吸うと、みるみるペニスが生き返った。  
根元まで垂れたシチューをすすろうと、一気に喉の奥までペニスを押し入れる。亀頭まで戻す。繰り返す。  
ロスの恍惚と苦痛の入り混じった顔を見て、レザーは自分のパンティがじわりと湿っているのに気がついた。  
お姉ちゃんは本当に美味しそうにペニスを頬張る。外から見れば美しいが、中では犬のように長い舌がカリの裏を嘗め回している。  
舌先は細くざらざらしていて、その感触はロスが今まで味わったことのないものだった。  
レザーには納屋でフェラをしてもらった。しかしレザーの拙い動きとは比べ物にならない。  
お姉ちゃんの舌はまるでうねうねと蠢く一匹の生き物だ。  
巻きついて、精液を搾り取ろうとする、快楽を与えるためだけに作られたような地獄の蛇だ。  
尿道に入った異物が下腹部まで刺すような痛みを伝える。精液が押し留められているのが分かる。  
出したい、今すぐ精子をぶちまけたい、もうそれしか考えられない。  
 
「そろそろ外してあげましょうか」  
お母さんが救いの言葉を差し伸べた。ああ、天使の囁き――!  
ロスの目に希望の光が宿ったが、それはすぐに失望の闇へと変化した。外されたのは猿轡だった。  
「外までは届かないから、叫んだって無駄よ。うるさいの嫌だからつけといたの」  
ロスは息を荒げて、ごくりと唾を飲み込む。相変わらずお姉ちゃんは美味しそうにペニスをなめ回している。  
「何か言いたいことある?ロスくん?」  
お母さんが耳に唇を近づけてキスするみたいにそっとつぶやく。言い終わらないうちに、ロスはもう叫んでいた。  
「出させてください!お願いします!出させて!何でもします!出させて!」  
お姉ちゃんの、上目遣いになった鋭い猫目が、三日月のように緩んだ。  
 
哀願により、ロスは誇りを失った。ガールフレンドの前で取り返しのつかない醜態をさらした。  
のみならず言ってしまった後で気づいて反省する余裕も既になかった。したがって、レザーのうつむいた顔すら目に入っていなかった。  
しかしお姉ちゃんはロスが叫んだ瞬間にレザーが哀しそうに目をそらしたのを見逃さなかった。  
ずっぽり音を立て口からペニスを吐き出して、指に髪をかけ、冷たい視線でロスとレザーを見下ろして、鼻をふんと鳴らした。  
「そんなに出させて欲しいんだったら、正直に言いなさいね」  
「い、言います!」  
「レザーのと、私のと、どっちがよかった?納屋でしてもらったあの子のフェラと、今の私のフェラ」  
その言葉でロスは見てしまった。レザーのつぶらな瞳から大粒の涙がぼろぼろこぼれているのを。  
可愛らしいベビーフェイスをくしゃくしゃにして、なんてことをしてしまったのだろう、  
虐められた時にも見せなかったような顔で、レザーが泣いている。 嗚咽に混じって、蚊の泣くような声で、何かつぶやいている。  
ロスは耳を澄ませた。途切れ途切れに、自分の名前が聴こえてきた。  
胸がしめつけられるように痛んだ。しかしもうどうしようもなかった。だってレザーとは比べ物にならない快楽を知ってしまったのだ。  
(かわいそうなレザー)、お母さんは屈辱に耐えるレザーに憐憫の情をもってつぶやいた。  
 
「あ、あの、レザあっ!!」  
レザーに声をかけようとしたロスが予期せぬ悲鳴を挙げる。  
お姉ちゃんは机の上で胡坐(あぐら)をかくような格好で、両の足をペニスに伸ばしていた。  
包み込むように両脇から挟んでゆっくり動かす。初めは、ゆっくり。繰り返されるグラインド。  
今までのものとは違う、単純動作と複雑な指の絡みが織り成す、得たいの知れない快楽。  
小指を除いた八本指がまるで獲物に襲い掛かる女郎蜘蛛のようにそれぞれ絡みついた。  
お姉ちゃんの必殺技だ。  
レザーは涙でぼやけた視界で、お姉ちゃんが幾人もの男の人をあれで文字通り狂わせて来たのを思い出した。  
あれを続けられると、いくらだって射精できるし、最後には発狂してしまうのだ。  
ロスにも、たちまち、射精感がこみ上げてきた。  
「どっち、って訊いてるんだけど?」  
「あ……あっ……うっ……うあッッ!」  
さらに小指が加わる。十本の指がいっしょくたになって高速で亀頭をしごきあげる。  
ロスが首を上下に激しく振り乱す。この指はペニスに触れると同時に、脳をまさぐっている。脳の皺を犯している。  
「あ、あなた、の」  
「聞こえない」  
まとわりつく指はさらに加速する。  
「あ、あ、お、お、お姉様のですっ!お姉さま!お姉さまの方が気持ちいいですっ!!」  
「聞こえない。もう一度」  
「お、お姉さま、お姉さまです!お姉さまに比べたらレザーのフェラなんて間抜けな牛!牛がなめてるみたいです!お姉さまァッッ!」  
レザーがわっと泣き出した。お母さんが駆け寄る。レザーの頭をそっと抱く。優しく撫でる。しかし、その眼は笑っている。  
「ふーん、ま、そこまで言え、とは言ってないんだけどねえ」  
他人(ひと)事みたいにおねえちゃんは言い放つ。  
「オーケー、イカせてあげる。……ただし、この子がね」  
そう言ってお姉ちゃんはレザーを縛りつけているロープを、ポケットにしまってあったナイフでぷっつりと切った。  
 
レザーは半ば放心状態で、切られたロープを手に取り、うなだれたロスを虚ろな目で眺めていた。  
初めて契りを交わしたのは――枯れ草が散らばった納屋。  
テキサスの熱気と家畜の糞尿がいっしょくたになって、むせ返るような匂いが立ち込めていた。  
レザーはそこで得たロスとの関係を信じていた。  
男の人が捕らえられると、ハンマーで殴られて殺される前に、お母さんとお姉ちゃんに、時にはお婆ちゃんに必ず扱い方を教えられた。  
お婆ちゃんは昔一時間で百人の男を相手にしたんだって、聞かされた。  
そんなすごいお婆ちゃんに教わっているのだから、自分も男の人を悦ばせることができるのだ、レザーはそう思っていた。  
でもそれはひどい自惚れだったのだ。  
レザーは初めて虐められた惨めさでもなく、怒られた恐怖や反省でもなく、自分への失望で涙を流した。  
お姉ちゃんの性戯に比べれば、自分がロスに口でしてあげたことなんて、お話にならない、ただの子供だましだった。  
確かにロスは感謝した。いいよ、と言ってくれた。けれど、あんなにうめかなかった。  
レザーは思い出す。変な声で鳴いたりしなかった。  
「ほら、やってみなさいな」  
お母さんが催促する。レザーは気が進まない。自分にできることなんて何があるだろうか?  
お姉ちゃんの絶技が披露されてしまった今となっては――  
しかし、同時に可愛らしい絹のパンティはもうじっとり湿って、べたべたになっている。  
お姉ちゃんがロスを虐めているときからそうだったのだ。  
おもちゃにされた大きなペニス、跳ね回り、自分の中に入ったら、いったい、どんなに気持ちいいだろうか。  
きっとあの時よりも凄い快感が味わえるに違いない。目の前であんなものを見せつけられると、淫らな想像は止まらなかった。  
レザーの肩が震える。揺れがどんどん大きくなっていく。  
ロスをめちゃくちゃにしてやりたい――レザーの中で恐ろしい何かが目覚めつつあった。  
自分を馬鹿にして、牛みたいだと罵ったロスを、おもいっきりイカせてやりたい。  
実際、レザーはその歳にしては大柄で牛とは言わずとも豊満な身体を有していた。  
胸は家族の中で一番大きかった。もちろん同い年の女の子ではレザーの発達した胸にかなう子なんていなかった。  
殴りつけるふりをしてレザーの胸を触ってくる男の子もいたくらいだ。  
どうして、男の子達は胸を触ったのだろう、とレザーはゆっくり考え出した。しばらくして答えは見つかった。  
では、その逆もできないことは――レザーのベイビー・フェイスが艶っぽく輝きだした。  
お母さんとお姉ちゃんはにこにこ笑っている。まるでそれを待っていたかのように。  
 
「ろすぅ……みて……」  
まだ涙が残る小さな声で、レザーはスカートをまくりあげ背伸びして湿ったパンティをロスの顔に近づけた。  
ロスのペニスは多少の休息があったにも関わらず、まだギンギンに勃起している。  
「ごめん……本当に、悪かった、許してくれ、あんなこと言って……レザッ!?」  
レザーが無言で椅子の足をひっぱった。ロスは背もたれごしに頭を打ち、小さくうめいた。  
レザーは向き直り、頭側からロスを見下ろし、そのまま排泄するようなポーズをとって、股をロスの口に押し付けた。  
乱暴なペニスがちょうどレザーの胸の真ん中にあたり、シャツ越しに柔らかい感触が伝えられた。  
「ぬれてるよ……わたし」  
ロスは呼吸が苦しくなってレザーの愛液を匂いをもろに嗅いだ。  
脳裏に浮かんだのは学校の外れにひっそり建っているチーズ工場だった。  
くたびれ熟した牝の匂いが、納屋での行為を思い出させてペニスをさらに硬くさせた。  
お姉ちゃんが後ろから忍び寄ってきた。ナイフを右の腰の真ん中に滑り込ませて引っ張ると絹のパンティがさっくり切れた。  
左の腰の真ん中にもひっかけて同じように切断した。つまんで引き抜くとそれはするするお姉ちゃんの手に収まった。  
対称的に引き裂かれたパンティは、中心部にかけて真っ直ぐ染みを垂らして、まるで快感の長さを測った砂時計のように見えた。  
大きなお尻に隠されたレザーの性器があらわになった。まだ使い慣れていない。  
花びらは小さく、入り口は閉じられている。幼い割りに、こんもりと繁った陰毛、高い恥丘。  
「ナメな」  
お姉ちゃんはロスの額にナイフを押し当てた。ロスの目は一瞬恐怖で歪んだが、すぐに力強い光を宿した。  
狭いクレバスから、ねばっこい愛液が垂れている。ロスは生きるために、贖罪のために舌を這わせた。  
レザーの閉じた入り口をこじあけるように舌先をねじ込む。濃厚な味が広がる。  
「ふぅあぅ」  
言葉にならない声がレザーの口から自然に漏れた。クリトリスは皮をかぶって見えない。  
剥いてやりたいが――舌でつつくと、レザーの全身がびくっと震えた。  
レザーはシャツを脱いだ。ブラはしていない。ボタンを外すと大きな胸が勢いよく飛び出した。  
白乳(しらぢち)を両手で持ち上げてペニスに押しつけて挟んだ。上下させる。  
ロスの荒い息がレザーの秘肉にふきつけられた。  
ロスが気持ちよくなっている。愉しんでいる。その確信がレザーの乳首をさらに大きく固くする。  
負けられない。ロスは隠れたつぼみを強く吸う。  
首をいっぱいに伸ばして秘所にむさぼりつく様は、まるで餌に群がる豚だ。  
 
「やっ……ぅん……」  
レザーの目がとろんと垂れてきた。ロスは吸引を続ける。レザーの鼻息が荒くなる。  
口が半開きになって涎が垂れる。乳房を動かす手が止まりかけている。  
「あらあら、しっかりやらなきゃだめよ」  
お母さんの言葉に我に返り、レザーは肘をきゅっとしめて胸にペニスを挟んだまま、  
両指で自分の乳首をつまんで、深いカリに押し当てる。  
そのまま外からもみしだくと、カリの裏に沿ってルーレットのように両の乳首が転がった。  
「うあっ……レザー!」  
予想外の責めにロスは呻いた。まさか、いつもは大人しいレザーがこんなことをするなんて。  
「なかなかやるわねえ。おかさん、そんなやり方教えてなかったのに」  
「淫乱!」  
お母さんとお姉ちゃんの笑い声に混じってペニスを擦る音が響いた。  
ぐるぐる、ぐるぐる――止まらない乳首。  
行って戻ってまた行って。ロスはもう舌を動かせない。身体に力が入らない。  
頭に浮かぶのは納屋で吸ったレザーの乳首、乳首、乳首!完全に主導権を奪われた。  
ぼうっとしてくる。きつい愛液の香り――あの時、そう、とっても臭いと思ったけれど、今ではそれで興奮する。  
もっと嗅ぎたい、とロスは心から思った。ペニスが弾ける。爆発してしまう。もう――。  
「ダメだ、出る……お願い」  
「……ゆるさないから」  
レザーがいたずらっ子のような笑みを浮かべ、摩擦を続けながら、亀頭にそろり口を近づけた。  
紐を唇で挟んで僅かにひっぱった時、あっという叫びとともに、ロスのペニスがびくんと跳ねた。  
尿道から伸びた紐がわななく。透明な粘り気のある液体が亀頭の割れめから少し溢れた。  
「まぁだだよ」  
一瞬ロスのペニスは柔らかくなったが、レザーが胸でごしごし擦ると、すぐに固さを取り戻した。  
 
ロスは床に転がってペニスに栓をされたまま、立て続けに胸で四回、口で三回、指で三回、絶頂を強制された。  
途中何度も「もうやめてくれ、お願いだ」「愛してる、だから」とレザーに哀願したが、  
レザーは「わたしはうしだもん」「ろすは、わたしのおくちなんて、きもちよくないんでしょ」と一向に聞き入れない。  
ついに言葉を発する気力も失せて、虚ろな目で唇の端から舌をだらんと垂らしていた時には、  
既に衣服はお姉ちゃんのナイフで切り裂かれ、上半身まですっかり裸になっていた。 健康的な張りのある肌は傷だらけ、  
赤いボールペンでむちゃくちゃに落書きされたようになって、右の乳首の下からはまだ薄っすらと血が流れている。  
ペニスに埋め込まれた歯は、もはや痛みを伝える枷ではなかった。痛みはあったが、痛みそれ自体が快楽に変わっていた。  
 
レザーも、もう何もつけていない。レザーは癖っ毛でとても愛くるしい顔をしていたが、自分の顔にも裸にも自信がなかった。  
お母さんは歳をとった今でも若い頃の体型を維持して、近所のおばさん達には羨ましがられるくらいの美人だし  
(しかし、なかには、お母さんのことを売女、と呼ぶ人もいた。お母さんは昔、男の人と寝るのがおしごとだったらしい)  
お姉ちゃんはお姉ちゃんで、きりっとした猫目が印象的な、はっきりした顔立ちに、長身でスレンダーな体型、  
きりんのような長く綺麗な足で、すれ違う男の眼を釘付けにするプロモーションの持ち主だ。  
もっともお姉ちゃんは家ではとてもだらしない格好をしているのだけれど、それはさておき、  
レザーは同級生の女の子にのろまなデブと虐められていたので卑屈になるのも無理はなかった。  
しかしレザーは勘違いしている。  
虐められる本当の理由――、一つは、推測どおり、レザーの頭が周りの子より少しばかり鈍いこと、  
もう一つは発達途上の年齢にも関わらず素晴らしいオンナの身体を持ってしまったレザーへの嫉妬心。  
それに気づいていたのは家族以外ではロスだけだった。レザーは不当な扱いを受けている。レザーは美しい。  
 
しかし、自分の魅力に気づきもしないレザーは、お家に連れられて殺された女で特に綺麗な人がいると、  
いつからか、顔と頭の皮をはぐようになった。ニスを塗って日干しにして乾かした皮を保管して、眺めるのが楽しかった。  
だんだん眺めるだけでは飽き足らず、この人達のようになれたらいいな、と思うようになった。  
ちゃんとしたかつらの作り方はお母さんに教えてもらった。初めはなかなか上手く行かず、  
切り取る途中で頭と顔をつなぐ部分がちぎれてしまうこともしょっちゅうだったが、慣れた今ではお母さんよりも上手く作れる。  
レザーの唯一の自慢だった。それをかぶると、自分が美しいオンナに生まれ変わった気がして、天にものぼる気持ちを味わえる。  
満月の夜は、真っ白なシャツと葬式用の黒のスーツで豊満な自分の身体を引き締め  
(綺麗な女の人は厳粛な男装も似合うのだ、とレザーは信じていた)  
お気に入りのかつらをかぶって、おなかの底から声を出して、月明かりを浴びて畑中をくるくると踊り狂うのだ。  
踊っている間、お母さんはとびっきりの優しい笑顔を見せてくれるし、  
お姉ちゃんも、やれ!やれ!と歓声を飛ばしながら、拳を振り上げ足を踏み鳴らして盛り上げてくれる。  
愛されている実感がレザーには何より嬉しかった。  
おどってやる――レザーは決めた。ロスの上で踊ってやる。自分が女になれるんだって、ロスに分からせてやる。  
 
レザーは大きく股を開いて、ロスの顔の上に立ちはだかった。水平に伸びたペニスを掴んで、クレバスにあてがう。  
ロスは自分のペニスとレザーのクレバスが重なり合おうとするのを、猿が初めて道具を手に取ったような顔で眺めていた。  
小さな入り口に先っぽを押し付けて、レザーが腰を勢いよくバックさせると、つるん、とペニスは飲み込まれた。  
「ふはあああぁぁぁ……」  
深いため息がもれる。たちまち腰がくだけそうになった。男の人のものを飲み込む瞬間がたまらなく好きなのだ。  
レザーの中は熱く、ぐじょぐじょに濡れそぼっている。細かく震える襞の一つ一つがペニスに絡みつく。  
そのまま後退する。太いペニスはずぶずぶ沈んでいく。ついに一番奥までたどりつく。  
前後にゆっくり腰を動かす。亀頭が膣奥をノックする。 電気が走ったような快感が身体の中心から脳に直接響いてくる。  
突き出た紐の感触が、とても気持ちいい。 あう、あ、あう、あ、とロスが小さな声を挙げる。  
ぎゅうぎゅうに、はちきれそうになったレザーの入り口が、腹をすかせた食虫植物のように伸縮を繰りかえしている。  
「うんっ!あっ!ひゃあっ!ふあぁ!」  
ダンスを踊るように、肘を締めて、豊かな胸をぶるんぶるんと震わせて、レザーは腰をシェイクさせる。  
リズムに乗ってQのスペルを書くような滑らかな動きを高速で繰り返す。詰まった水道管に汚水が通るような、卑猥な音が響き渡る。  
膣口から白く粘っこい液体が溢れ出す。ペニスが一度びくんと跳ねる。  
もう絶頂は休息を与えない。ペニスの強度を維持したままロスはイキ続ける。女のオルガスムスのようにたて続けにイク。  
レザーは時折膣を激しく締めつける。白いジュースと汗がいっしょくたになって床に飛び散る。  
乳臭い体臭とチーズのような愛液の臭いがそこら中にばらまかれる。  
「あはっ!ひぃ!あんっ!ひゃあっ!いいっ!」  
知ってか知らずか幸い今日は満月だった。外はもうすっかり暗くなっている。  
窓の外に広がる小麦の穂が、きっとレザーを祝福するように風にそよいでいる。  
お姉ちゃんが妹を慈しんで部屋の灯りを消した。お母さんが頷いて、嬉しそうにリズムを取って肩を揺らす。  
真っ暗な部屋に救いの手をさしのべるように、月光が窓から差し込んで、レザーの豊満な女体を蒼く彩る。  
美しかった。やはり、レザーは美しかった。気が触れたような眼、ひくひく動く小鼻、飛び散る涎、全身を覆う汗、メスの臭い!  
「いいよぉ!きもちいい!おねちゃん!きもちいいよぉ!」  
お姉ちゃんも興奮している。あの時のように拳をぐっと握り締め、振り回しながらはやし立てる。  
「ヤア牝犬!ビッチ!綺麗だよ!レザー・ビッチ!」  
「びっち!びっち!れざぁーは、びっちだよおぉ!」  
お母さんは眼を閉じて昔の思い出に浸っている。そう――まだ彼女らを産む前、駆け出しの娼婦だった頃、  
お婆さんに未熟な性戯をなじられて、泣き出して家を飛びだし、月明かりの下、行きずりの男と内緒でまぐわったあの日のことを。  
記憶の中で自分は何度も果てている。今そのようにして、目の前で娘も果てようとしている。  
「イキそう……イキそうなのね!レザー!」  
「うん、いくよ!れざぁー、いく!いくぅ!」  
「ハイヨー・レザー!」  
お姉ちゃんが口笛のリズムに乗って足を踏み鳴らす。タップダンスは速度を上げる。  
レザーの腰もそれに合わせて速度を上げて、小刻みに回転を繰り返す。大きな尻がふりふり揺れる。  
「いくっ!いくっ!いぐぅぅぅうう!!」  
タップダンスが最高潮に達した時、レザーの背中が限界まで反り返り、ぶるぶる震えた。  
膣全体がぎゅうっと締まって、ロスのペニスは十九回目の絶頂を迎えた。レザーは舌を突き出し、肩から床に崩れ落ちた。  
尻から腰にかけては震えが収まらず、びくっ、びくっ、と痙攣を続けている。  
目を閉じたまま激しく肩で息をする。ロスはペニスをおったてたままへらへら笑っている。  
ひひ、ひひひ、うひひひ、と笑い声を挙げて、眼球をぎょろぎょろあてどなく動かしている。  
狂気のダンスが終わりを告げた。皆、一息、一休み。しばらく経って、灯りを点けたお母さんが口を開いた。  
 
「さて、そろそろ、いいかしらね」  
お姉ちゃんの手からナイフを奪って、ロスを縛りつけてある縄を切った。  
長時間椅子に座っていたので、筋肉がすっかり硬直してしまったのか、  
ロスは姿勢を崩さないまま、まるで胎内にいる赤ん坊のような格好で、床にごろんと転がった。  
自分が自由になったことに気づいていないようだった。  
お母さんは、ロスのペニスをぎゅっと握って、紐のわっかを人差し指にひっかけて、一気に引っ張り出した。  
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっ!?」  
ロスの悲鳴とともに、精液でべとべとになった奥歯が順に七つ飛びだしてきた。  
「あーあ、これ洗ってこなきゃ」  
お姉ちゃんが鼻をつまんで不気味な人体加工道具を受け取った。  
台所へ向かおうとして、何かを思い出して、振りかえる。  
「そうだ、あれ、いる?」  
「お願いするわ」  
お姉ちゃんが流し台まで走って行き、少し経って、水が勢いよく流れる音が聞こえてきた。  
その音が、かろうじて恍惚の世界に浸るレザーの意識をつなぎとめていた。  
「ロスくん。聞こえてるかしら?」  
ロスはきょとんとした眼で、しかし鼻から下は笑みを作ったままで、お母さんの顔を見つめていた。  
「そこにねっころがってるレザーを、あなたの好きにしていいのよ」  
お母さんの言葉は、水が流れる音に遮られ、レザーにはよく聞き取れなかった。レザーはまだ余韻に身をゆだねている。  
「あう、ううううう、ひぃぃ、ひぃぃぃ」  
「出していいって言ってんのよ。好きなだけ出しなさい」  
言語を認識する力がロスに残っていたかは定かではない。 ロスはいまや、一匹の獣であった。  
お母さんがロスの顎をつかんで、お尻を突き出してつっぷしているレザーへ向けると、ロスの目はらんらんと輝きを取り戻した。  
「があっ!」  
叫び声とともに、ロスはレザーの大きなお尻に爪を立て、かぶりついた。  
レザーは痛みではっと我に返った。後ろを向くと、ロスが悪鬼のような形相で自分に覆いかぶさろうとしている。  
「ろす!いやあ!ろすう!」  
「ひひひひ!ひゃああああ!ひぃぃぃぃ!」  
ロスはペニスをやたらめったらレザーの尻につきたてて、無謀な直進を繰り返す。  
レザーはいやいやして逃げようとしたが、ロスは加減をしらない力で、レザーを後ろから抱きかかえ、押さえつける。  
偶然、ロスの先端がレザーのひくひくと怯えるアナルに当たった。  
不幸なことに、さっきの行為の愛液が、まだ乾かずにアナルにまとわりついていた。  
行き場をなくした欲望を埋めてくれる場所を見つけたロスは、腰をぐっと突き出す。  
ぷっくりとふくらんだ、可愛らしいアナルが抵抗する。こじ開けようと、ロスは押し出す力を強める。  
 
ぷつり。  
 
「あがぁっ!」  
入れた瞬間、ロスは射精していた。レザーの悲鳴にふさわしいだけの大量の精液が腸内に注ぎ込まれた。  
「ひゃはあ!」  
一度の射精で満足せず、ロスは狂ったように――実際、狂いながら腰を動かし続ける。  
「やっ、いやあ!ろすぅ、ちがうよ、そこ、ちがうぅ!」  
レザーの言葉など意も介さずロスは突きまくる。獣の交尾を見せつける。  
「いい機会だわ。経験しておきなさい。ア、ナ、ル」  
レザーは初めておしりで受け入れた今までとは違う男の凶暴さに涙を浮かべていた。  
単純に恐ろしかった。それも、あの優しかったロスが、自分のアナルをめちゃくちゃに犯しているのだ。  
しかし、恐怖とは違った感覚もレザーの身体は受け入れ始めていた。  
また子宮の奥がじんとする。愛液がわいてくる。アナルはぎゅっとロスのペニスをしめつけ、奥へ奥へと導いている。  
「ちがうよぉ……ろすぅ……だめだよぉ……」  
言葉に反して、レザーのお尻がせりあがってくる。ペニスが腸内にとどめられている塊に触れた。  
「あっ……それ……いやぁ……」  
男の子に自分の排泄物を触られている恥ずかしさで、レザーのクレバスはひくひく痙攣した。  
ロスが二度目の射精を迎えた。まだ、欲望は消え去らない。さらに激しく腰をつきあげる。  
レザーの眼がとろんと降りてきた。たっぷりの潤滑油を得てスムーズに動くようになったペニスは、もう痛みを感じさせなかった。  
二人の荒い吐息が漏れる。レザーはお尻の悦びを知った。ペニスが自分のお腹をいっぱいにしている充実感。  
引き抜かれると排泄時のようなどろんと落ちる感覚が届き、一転突かれるならば身体を串刺しにされたような衝撃が走る。  
腸壁を擦られる刺激と、少しはなれた膣への振動が心地よかった。  
「よくなってきたみたいねえ」  
お母さんは、納得したような口ぶりで、絡み合う二人に忍び寄り、  
右手の人差し指をロスのアナルへ、左手をレザーの秘所へ伸ばす。そして、同時に進入させた。  
「ぐおおう!」  
「ひぃぁっっっ!」  
二人の悲鳴が同時に部屋に響き渡る。お母さんの右手の人差し指は、いち早くロスの前立腺を探り当てていた。  
左手は、親指の腹をレザーのクリトリスに添えて、中指はざらざらしたGスポットに触れている。  
おかさんの指は、お姉ちゃんも適わないほどのタイミングと、巧みさを併せ持っている。  
その器用な指先で、美味しいシチューや、様々な人体家具を作り出すのだ。レザーはそれを知っていた。  
タイミングなのよ、とお母さんはレザーに口すっぱくして教えている。  
いい、レザー、男の人がいちばん感じる時に、感じる強さで、指を使ってあげるの。  
そうすれば、レザーだって簡単に男の人を悦ばせることができるのよ。男の人だけじゃないわ。望むなら、女の子もね。  
今それが自分に向けられている。  
 
「イキなさいな」  
お母さんが両の指に力を込めた。信じられないほどの快楽が二人の身体を突き抜けた。  
「ぐおおおおおおおぉぉッッ!?」  
「やっ、やっ、いやあああああああぁぁッッ!!」  
ロスは三度目の射精を迎えた。いや、今度の射精は止まらなかった。  
水鉄砲を絶え間なく撃ち尽くすように精液が発射される。レザーの腸内はもう真っ白に染まっている。  
レザーは自分ですら知らなかった、最も気持ちいい部分を教えられた。  
隠れていたつぼみが自ら皮を脱いで顔を出した。親指の腹でひとこすりされるたびに、イッた。  
身体が痙攣を続ける。痙攣が止まらない。さらに中の刺激はたまらなかった。ざらざらした部分を最適の強さで擦られ続けて、  
レザーのクレバスはキャベツを齧るハムスターの口のように蠕動し、ついには透明な液体を勢いよく噴出した。  
もう二人とも息もできない。口をぱくぱく動かせるだけの人形だ。  
 
お母さんの指の動きが二十秒ほど続いた時、ロスが大きく身体をそらせた。条件反射か、どうしようもない動きだった。  
「が!」一声叫んでアナルから抜かれたペニスを震わせて、  
精液――血液が混ざってイチゴミルクのようになった訳の分からない体液――を壁や床や、挙句の果てには電球まで飛び散らせた。  
最後まで出し尽くすと、ばったり崩れ落ちてレザーに身体を預けた。  
レザーは既に白目をむいて失神していた。薄赤い光を浴びて、潰れた蛙のようなはしたない格好で床に愛液の湖を造っていた。  
さらに脱力したクレバスから尿が断続的に流れ出し、川となって湖を潤した。  
小さなインコが出入りできるくらい大きく開いたアナルからは、精液と腸液が一緒くたになって涎のように垂れている。  
クリトリスはレザーの可愛らしい小指ほどの大きさまで膨張している。  
「なーんだ、もう終わってるじゃん」  
洗浄を終えたお姉ちゃんが、台所からバケツを抱えて戻ってきた。  
「そうなのよ。まだまだねえ、レザーも。もっと鍛えないといけないわねえ」  
「だらしねえよなあ」  
言い終わると、お姉ちゃんはバケツの中からハンマーを取り出し、気絶しているロスの頭めがけて力いっぱい振り下ろした。  
 
レザーが部屋のベッドで目を覚まして、台所へ向かった時、お母さんは冷めたシチューを暖めていた。  
ロスの姿はどこにもなかった。何処に行ったのか、聞くのが恐ろしくなったので、レザーは黙っていた。  
シチューの他には、流し台に野菜が置かれていて、隣のコンロでは、鉄板の上で厚切りの肉がじゅうじゅう音を立てている。  
お母さんが鍋の中のシチューを味見をして、うなずいた。  
「おはようレザー。ごはんが遅くなっちゃったわね」  
レザーはどきどきしてお母さんの後姿を見つめることしかできない。  
「お……おかさん……」  
「やあね、元気のない声ださないの」  
「…………」  
「そうそう、おかずを一品増やしたから、許してくれる?もうすぐ焼けるから。美味しいわよ」  
お母さんが、向き直って天使のように微笑んだ。  
 
(おしまい)  
 

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