『熱は時を越えない』  
 
 
 
体が…熱い。目が冴えている。  
理由は分かっているけど今までずっと鑑太とか・・・査乃介がいてできなかった。  
 
鑑太も今ははとてもよく寝てる。  
あれだけお魚を食べてれば当然だけど。  
問題は…  
 
「…査乃介?」  
 
返事はない。幽霊って眠るのだろうか。  
もう一度呼ぶ。…やはり返事はない。  
体の火照りが意識せずとも感じられる。  
 
「んっ」  
そっと…パジャマの中に手を伸ばした。  
キャミソールをずらし手のひらほどの胸を包む。  
先端をつまむと甘い刺激が走る。  
 
「ふっ…ん……はぁ…っ」  
 
そのまま胸をいじりつつもう片方の手を自分の秘所に伸ばした。  
じっとりと湿ったそこは恥ずかしくなるくらい熱く、軽くさするだけで声が漏れてしまう。  
 
「んっ…くはぁ…あ…やっ…査乃介…」  
 
なんでだろう。査乃介のことが頭に浮かぶ。  
私は現代に生きてる人間で…彼は江戸時代に死んでしまった……幽霊なのに。  
ただ見守ってくれるご先祖様。それだけなのに。こんな事は不毛だと分かっているのに。  
 
「査乃介っ…」  
 
結ばれないと分かっているのに。心が熱くなっていく。  
秘部で動く指は蜜に汚れ、体の熱は行き場を探す。  
 
「ぁ…っ、あ、ひぁ…ん、…ぁ…ふぁ、ああああっ!!!」  
 
目の裏が真っ白に塗りつぶされて頭の中が弾けた。  
ぼんやりと、そしてゆっくりと私は意識を手放していった。  
 
 
 
「識子殿…」  
 
ドアから覗く、かなわぬ思いとやり切れなさに染まった赤い瞳に気づかぬまま。  
 
 
 
終。  
 

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