―…カタン…背後にいつもの気配と微かに香る石鹸の匂いを感じる……心臓の鼓動は速さを増すのに、身体はどんどん冷たくなっていく……膝がカクカクと小刻みに震えだし、恐怖のあまり声も出ない……
いや…恐怖ではない……羞恥心とほんの僅かな興味…そして身体が覚え始めた甘酸っぱい快楽に………
「………お兄ちゃん…?」
わたしは目の前にそびえ立つ壁のような本棚を真っ直ぐに見つめたまま小さく声を絞り出す。
「………」
無言の返答が返ってきた。……間違いない。お兄ちゃんだ……。
わたしは動く事も振り返る事も出来ずただ目の前にある大量の本のタイトルを見つめている。
お兄ちゃんは最近このルリ城の警備を任せられた傭兵団の一員だ。
始めは、何やら調べ事があるからと日に一、二時間だけここルリ城図書室に来ていたのだが、そのうち一、二時間が数時間に変わり、数時間が半日に変わった…。
そして、その頃には何をする訳でも無くただ、わたし達に会いに来てくれ、時にはお菓子なども持って来てくれるようになった……
お兄ちゃんは本にはのってない色々な事を知っていた……遠く離れた帝国の事。この島を取り囲む荒々しい海の事。今では珍しい緑が生い茂った山の事。人々が行き交う街の事……
もの心ついた頃には既にこの城での生活と本の中の世界しか知らなかったわたしは、お兄ちゃんの話に夢中になった。
時にはお昼ご飯を食べる事も忘れてしまうほど話の続きをせびっては何時間でも妄想にふけっていられた……
それにお兄ちゃんはとても優しかった。
話をする時はしゃがんで目線を合わせてくれるし、わたし達子供の言う事を嫌がらず最後まで聞いてくれて、つまらない事でもたくさん誉めてくれる、優しく頭を撫でては力強く抱きしめてくれた……。
来ない日は寂しさを紛らわすように、片っ端から本を読みあさった…が、所詮は本…。お兄ちゃんが話してくれる近くて遠い外の話や世界中を旅した実体験の方がよっぽど面白かった。
……何時しかわたしはお兄ちゃんを待ち焦がれるようになった……
もし、わたしがもう少し年が上だったら、この気持ちが恋だと認識出来たのだろうけど、この頃はまだ『優しくて大好きな傭兵のお兄ちゃん』という存在でとどまっていた……
わたしが何の反応も示さない事を了承の合図ととったのか、お兄ちゃんは後ろからわたしをギュッと抱きしめると、そのまま本棚と本棚の間の陰に隠れるように身を潜めた。
普段でさえ薄暗い図書室……しかも二階の隅など誰の目にも留まらない格好の隠れ場所だ。いつもお兄ちゃんはここでわたしに悪戯をする……
「……いい?」
お兄ちゃんの熱い吐息が耳にかかる。わたしは黙ったままコクンと頷いた。……初めからそうだ…頷くしかわたしの中で選択肢は無い。もし断ったら…大声を出して助けを呼んだら………一体どうなるのだろう…………
お兄ちゃんは、わたしの姿が見えないように壁と通路、本棚との死角に腰をおろし胡座をかくと、「…おいで」と言ってわたしをそこに座らせた。
「……毎日、毎日…同じ事の繰り返しだ……城には騎士がいるのに…僕達を雇う意味ってあるのかな……」
お兄ちゃんは独り言のようにそう呟くと、わたしの首筋にそっと唇をあててきた。
「……っぁ……」
ピクッと肩が震え、わたしは唇をギュッと噛み締める。それと同時にお兄ちゃんの舌がまるで、蛇のようにわたしの首筋をなぞりはじめた。
「……っ…っぁ…ふ…っ…」
喉の奥から嫌でも声が漏れてしまう。助けを呼ぶ為の声は出ないのに、どうしてこういう時のこういう声は出るのだろう……
熱い舌が首筋からうなじ、耳の中までゆっくりと蛇行しながら、お兄ちゃんの手はいつの間にか、わたしのローブの中を弄りはじめていた。
「……ぁ…やっ……」
ローブという物は、良くも悪くも全てを包み隠してしまう。中でわたしがどんなにあわれもない姿を晒していようと外からは全く分からない。
それを知ってか、知らぬか…お兄ちゃんの手はどんどん大胆になっていく。ビスチェの紐をあっという間にほどくと、ワンピースごと一気に胸上までたくしあげた。
「…っやッ!……お、兄ぃ……ちゃ……」
わたしは、無意味と分かりながらも、股に力を入れ、両脚をもぞもぞと擦り合わせ、抵抗とも言えぬ抵抗を試みる。だが、案の定そんなものは何の気休めにもならない。膝で軽く押さえつけられ、次の瞬間にはタイツごと下着を剥ぎ取られていた。
「…っ…め……だよ……っぁ!…」
お兄ちゃんの手が、まだ平らなわたしの胸をまるで子猫でも撫でるように優しく愛撫しはじめた。
「……っ…はぁ……っぁ…ぁ……」
例え真っ平らな胸だとしても、何故かそのような手つきで愛撫されると、恥ずかしく…そして気持ち良くなっていくのは女としての本能なのだろうか?
それにお腹が空いてるわけじゃないのに、口寂しくなるのは何故?見上げたそこにはお兄ちゃんの顔があって、その唇がわたしの唇に重なる事が当たり前に思えるようになったのは何時からだろう……
「……ソリーナは随分とお姉さんになったね……」
そう言ってお兄ちゃんは片目しか無い眼でわたしを見つめキスをした。
「…っん………」
お兄ちゃんの唇は薄くて柔らかくて、わたしの記憶にある父さまのものとは大分違っていた。
「…ん…っむ……っ…」
チュパッと唾液同士が絡み合い、お兄ちゃんの舌がわたしの口の中を動きまわる。
薄目を開けると、お兄ちゃんの背後には大量の本……古い歴史書から最新の雑誌までとり揃えた、この図書室特有の新旧入り混じったインクと埃の匂い…古い木の匂い…そしてお兄ちゃんの匂いがわたしの脳内をまるでチョコレートのようにとろけさせてく……
お兄ちゃんの手は徐々に下へ下へとさがっていき、とうとう毛穴一つ無いまだ未成熟なわたしの股を弄りはじめた。
「…っや……ダメっ……お…兄ちゃ……っぁ…」
そうは言うものの、さっきから股の奥がジリジリと痺れるような熱を帯びてきていて、早く何とかして欲しいと思っていたのも少なからず事実だ。
いつの間にか温かくなったお兄ちゃんの指が、わたしの少し盛り上がった肉の割れ目をそっとひらく。お尻の方からツツーとその割れ目にそってお兄ちゃんの指が優しくなぞると、背筋に直接雷が当たったような刺激がわたしの全身を貫いた。
「…っあぁッッ!!…」
「…しっ!…そんなに大きなを声出したらみんなに聞こえちゃうよ?……いいの?」
お兄ちゃんは口元に指先をあてて静かにするようにとポーズをとった。わたしは何故か目頭に溜まった涙を我慢しながら、ぶんぶんと必死に首を振る。
「……そうだね……いい子だ……」
そう言ったお兄ちゃんは何故か口元にあてていた人差し指をわたしの口元へもってくると、そのままわたしの口の中に指先をねじ込ませてきた。
「…んっ!!?……っっ…」
わたしは突然の出来事に、どうしたらよいか分からず目をぱちくりさせていると、お兄ちゃんはふっ…と微笑んで
「……練習…」
とだけ言った。 わたしはやっぱり、何の事だか分からないまま、ただぼーっと指をくわえいると、お兄ちゃんの指のが、まるで手本でも示すかのように、ゆっくり前後に動きはじめた。
「…っん……んっ…チュパッ…っ……ジュッルッ……んんっ……」
「…ぁ、歯当てないように……そう…上手だよ……」
わたしの口は今くわえているものをソーセージか何かと勘違いをしているのか?どんどん唾液が溢れ出てきて止まらない。これじゃあまるで、お腹を空かせた犬と同じだ。
そう思うと何だか、急に恥ずかしくなり早く指を抜いて欲しいと、首を上げ目で合図を送ろうとした時だ。
そこで見たお兄ちゃんは今まで見たことがないくらい嬉しそうな表情を浮かべ、じっとわたしの口元に見入っていた。
「……凄い……ソリーナ……」
「……んんっ…!!…」
そう言うとお兄ちゃんは指を抜くどころか、益々激しく動かすと、あいているもう片方の手でわたしの股を弄りはじめた。
「……っひゃっ!!…うっ……っん!…ぁひ……」
まるでバネのようにビクンッと全身が跳ね上がる。お兄ちゃんはうっすら湿ったあそこの割れ目を開くと、その先端にある小さな蕾をピンポイントで刺激し始めた。
「…っはぅ!…っぁ…あ…ぁ……っぁあ……」
チリチリとした下半身の痺れがまるで、津波のように大きなうねりとなって襲ってくる。わたしはおしっこでは無い何かが垂れてくる感覚を我慢しながら、必死にお兄ちゃんの指にしゃぶりついた。
チュパチュパ…クチュクチュ…という耳慣れない音が静かな図書室に響き渡るようだ……
「……ソリーナ……可愛い……本当…可愛いよ……ずっと…このまま……子供のままだったらいいのに……」
「…!!?」
そう言うとお兄ちゃんは自分の腕の中でぴくぴくと身悶えするわたしの首筋に再び顔をうずめてきた。
身体が熱くぼーっとする。ふわふわとした高揚感に包まれているのに、何故か幸せとは感じられず、むしろ、とてつもないタブーを侵してしまったような暗く後ろめたい思いが胸中を支配していく。
そう言えば、以前にも似たような思いをした事があった……確かわたしが城に来てまだ間もない頃だった……