激務を終えたエルザたちはつかの間の休息に、アリエルの酒場を訪れた。
酒場は酒気とともに、今日を生き延びた傭兵たちの歓喜にあふれた。だが―
「・・・ごちそうさまでしたわ。」
ため息のような声とともに、机におかれた、たった二枚の皿。
――それは確かに異常事態としかいいようがなかった――
「いつもの10分の1以下の食欲だなんて・・・」
「マナミア、どこかわるいんじゃないかな。」
「医者に診せることも考えるか?」
「店の料理が口に合わなかったのかしら・・・」
「もしや・・・これは、恋の病・・・」
それぞれの心配を背に、セイレンはマナミアをつれて部屋へと入った。
「ふはぁー、すずしー。」
セイレンが窓を開けて、体の火照りを冷ます。その傍らでマナミアはベッドに腰掛けている。
「実は・・・」
マナミアが口を開く。真剣な表情で。
「実は?」
「すっご〜〜く、食べたいものがあるんですの。」
セイレンはずっこけた。
だが、マナミアは熱に浮かされたように言葉を続ける。
「そう、今まで目の前にあるのに一度も口にしたことがないものですの。
触れたことはあるのですが、とても・・・とても柔らかくて・・・おいしそうで・・・
あぁ、あの口ざわりを、においを、その味を味わいたいっ!・・・そう思ったら・・・・」
「食事ものどを通らねぇ、ってこと?」
セイレンの言葉に深くうなずいた。
「ふぅーん」
マナミアに対面するようにベッドに腰掛け、セイレンは眉をよせた。
(“恋の病”ってのも、あながち間違いじゃねぇな)
ジャッカルの言葉を思い出しながら、窓の外を見た。新月の夜である。
「それで、その食いたいものってのは?手に入りにくいものなら今夜“調達”にでも・・・」
「いいえ、その必要はありませんの。」
「は?」
窓の外から目を離した瞬間。マナミアの顔が目の前にあった。
「食べたいのは、“女体”ですわ。」
次の瞬間、セイレンは強い力でベッドに押し倒されていた。
じょ、じょ、じょたいって・・・」
突然のことに酔いが完全に冷めて、声をあげる。が、人差し指で口を押さえられた。
「ダメ、ですか?・・・カニバリズムではないのですけれど・・・?」
「そっ、そういう問題じゃ・・・」
「だって、自分の体はたべられませんもの。」
ささやくような会話の中でも、セイレンの服がまさぐられていく。
部屋の明かりの下に、セイレンの健康的な肌が見え隠れする。
「ひゃっ・・・」
小さく甲高い声と共に、セイレンの乳房があらわになった。
酒気のせいか少し桃色がかかった丘陵。形のよい胸にアクセントのように乳首がついている。
「やわらかいですわ・・・とけてしまいそう」
うっとりした声で、乳房を触る。マナミアの手の中で、セイレンの胸は弾力を持ちながら変形した。
「い、や・・・触んなっ・・っ」
「味は、どんな感じなのでしょうか?」
舌先がおそるおそる胸の先端へと降りる。
「ひぁっ」
「・・・少ししょっぱいような?」
そのまま乳輪をなぞるようになめる。
「ん、ふぁぁっ、ああ!」
セイレンの体が、舌から逃れようとするかのように、のけぞる。
マナミアは、なにか納得できないのか、今度はしゃぶりついた。
ンチュチュチュ…レロッレロッ
「ひ、ぁ、ぁぁ! や、め、ぁぁ!」
顔を両腕で守るように隠しながら、声をあげる。体が桃色に上気し、胸が呼吸と共に上下に動く。
「・・・塩味が効いてますけど、ほんのちょっと甘いのですね。この舌触り、柔らかさ・・・絶品ですわ。」
「ひぁっ・・・」
マナミアのスベスベした手がセイレンの体の上を走る。途中、その体が小刻みに震えているのに気づいた。
「あら?セイレンさん?」
ふと、表情を隠している両腕をはずす。セイレンの抵抗むなしく、その表情が現れた。
「・・・泣いてますの?」
真っ赤になった目のふちに、かみ締められた唇。赤くなった頬。震える唇が小さな声を絞り出す。
「・・・ジャッカ」
「・・・よく見ると、唇もおいしそう」
「は、んっ!?」
チュッペロッレロッレロレロ ジュルッチュルッ
「ひぁ、っ・・・んんっ、あふっ、ぁんっ」
ほんの少しの唾液も惜しがるように、口内をなめまわし、吸い尽くす。舌と舌がふれあい、こすれ合い、交わる。
「~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
ジュルッレロ・・・チュププレロレロッ・・・プハァ
「ぁはっ・・・おいしかったぁっ・・・」
マナミアは、ゆっくりとため息をつき、恍惚の表情をみせる。口の端からたれるよだれももはや気にしていない。
「お酒のほろ酔いと、蛸と野菜のわさび和えの味がほんの〜〜りしますわ」