「おい…」  
 
悪魔も目にすれば、踵をかえして逃げ出すであろう。  
そんな殺気を放ちながら、ルークは目の前に繰り広げられている光景を睨み付けていた。  
 
「何だ?何か文句でもあるのか?」  
 
そんな殺意をモノともせず、セシリーは平然と返した。  
この度胸、騎士たる所以か、果たして…  
 
「朝早くからノックもせずに何をしに来た?」  
「騎士団から鍛練のし過ぎと怒られたからな。とりあえず、リサを可愛がりに来た。」  
 
そう、セシリーはリサを膝の上に座らせて、後ろから抱き付いたり、頭を撫で回したり、とにかく目障りな程戯れ付いてた。  
 
「あ、あの〜…セシリーさん…?」  
「ん〜?どうした、リサ?あんな人でなしを気にしなくても良いんだぞ?」  
 
流石に主が尋常ならざる殺意を放ってるのに、気まずくなったのだろう。リサがとりあえず開放を要求したが、セシリーはそれを気にもとめず、リサに更に戯れ付いた。  
ルークの殺意が益々酷くなる一方だと言うのに。  
「…」  
「……」  
 
どれだけちぐはぐな睨み合いが続いただろう。  
先に折れたのはルークだった。  
 
「…っ!…勝手にしろ!」  
 
ズカズカと荒々しく足音をたて、ルークはその場を立ち去った。  
 
 
 
その一部始終を見ていたアリアは、盛大に溜め息をついた。  
 
(ルークも素直になれば良いのに…自分がセシリーにそうしたいって…はぁ…)  
 
 
 
この男、何処までもヘタレであり、この女、何処までも鈍感であった。  
 
 

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