暖炉のとろ火が室内をぼんやり照らし、外を吹く風が窓を揺らす。  
しかし強い風は平和な室内では遠くに聞こえる唸り声のようだった。  
 
「寒かったでしょう?」  
 
パチン、と気持ちのいい薪の弾ける音がしてメアリーが振り返ると  
寒さでの頬の赤くなった丸顔が、一層丸みを帯びてにっと膨らんだ。  
先ほどの林檎の様な頬をメアリーはたまらなく好きだと思った。  
 
ランプの燈を大きくして部屋の真ん中に置くと、暖炉の前の床に座っているディコンに近付いた。  
清潔な白い寝間着、温かなガウン、素足にスリッパ、というメアリーの様子は  
もう就寝の仕度が整っているようで、まるきり友達に会う様子では無かった。  
受け取ったカップの温度がディコンの凍える指をじんわり温めた。  
カップから立ち上る湯気は甘い香りを立ち上らせた。  
鼻をヒクヒクさせて湯気を嗅ぐと嬉しそうに口をつけた。  
蜂蜜を入れたミルクは、冷えていたディコンの身体を腹から温めた。  
 
「おらの家じゃ滅多に蜂蜜なんて入れられねぇ、美味しいなあ。」  
「そりゃそうだ、おらがお前さまの為に温めただもんな」  
 
メアリーは肘掛け椅子に斜に腰掛け、美味しそうにミルクを飲み干す咽喉をじっと見ていた  
その言葉はディコンの心まで満たした。  
あっという間にカップを空けると、周りに白い輪を残しながら、  
ディコンは表情の豊かな口の端を上げた。  
メアリーは白い輪を拭うとぺろりと指先を舐めた。  
甘い。  
 
脚を伸ばし、頭を軽く凭れるようにして椅子に乗せると、  
くしゃくしゃの髪をメアリーの指が漉きはじめた。  
慣れない夜更かしに眠ってしまいそうになるのを堪え、  
ディコンはうっとり目を瞑ったまま言った。  
「なぁ、メアリーさん。なんで今日、夜になぞおらを呼んだんだ?」  
メアリーの指は相変わらずディコンの髪を、まるで草木を弄るときの様に丁寧に撫でていた。  
ディコンは返事を待ったが相手は一向に口を開く気配が無い。  
訝しく思い、うっすらと目を開くとメアリーの俯いた目と合った。  
その顔が慌てて微笑みを作ると、ディコンは身を起こしメアリーの両脇に手をついた。  
じいっと、心の向こう側まで見てしまうような蒼い目で見つめられるとメアリーはどぎまぎした。  
 
「……メアリーさん、さびしいのか?」  
 
限りない慈しみが篭ったような声にドキンと胸が鳴り、思わず目を逸らし部屋を見渡した。  
厳しい部屋は越してきた当初に比べ、幾分かは優しい表情を帯びていたが、  
がらんとしたその広さは、ランプの明かりさえ隅に届かないほどだった。  
目を戻すとディコンの眼は明るく澄んでいた。  
メアリーは軽く睫毛を伏せると頼もしい肩に顎を乗せた。  
 
「うん、きっと、わたしさびしい」  
さびしかったよ、と繰り返す声が少し震えているのに気が付かないふりをして、  
ディコンはメアリーの背中に手を回し、ゆったりと撫でた。  
大きく包まれるようにディコンに甘えるとメアリーは安心したように軽い溜息を一つついた。  
 
「うん、そうか」  
 
あやすように出す優しい声は小さな動物に対するのと同じ優しさだった。  
今だけ、この優しさに浸っていよう。朝がきたらまた元に戻れるから。  
メアリーは甘え慣れていない自分をもてあまし気味に頬を摺り寄せた。  
 
するっとディコンの手がメアリーの髪を撫でた。  
メアリーは慣れない甘えに戸惑いながら照れたように身を離すと、  
ディコンがはっと思う間も無く、するりと腕を逃れ、悪戯っぽく笑う。  
 
「動物遣いに馴らされた……わたしはニンゲンそれともケモノ?」  
 
笑いながら逃げるメアリーをわざと不器用に追い駆ける。  
ディコンは唸りながら迫り、追手から素早く身を翻し、敏捷な獣はギリギリで逃れる。  
手から漏れる白砂のようにひらひら舞うメアリーは捕らえ難い蝶のようだった。  
2人とも笑い疲れはじめる頃、やっと捕らえようとしていた捕手が徐々に追い詰めた。  
息の上がったメアリーは窓辺に追い詰められ、観念したようにカーテンに身を包みディコンを待った。  
獲物を隠すそのドレープが波打ち、スリッパも脱げた裸足に垂れかかる様はまるでインドの女神のよう。  
 
「さぁ、捕まえた。悪い小鳥め、どうしてくれようか?」  
「捕まったのあなたじゃない?  
 お悧巧なツグミは気持ちのいい巣を見つけました、てね?」  
フンと鼻を鳴らしてメアリーが強振ると、ディコンは彼女をカーテンごと抱きすくめた。  
「きゃっ」  
「そんなら……」  
 
目を細めた2人の顔が近付き、唇が軽く触れた。  
ほんのり甘い味はミルクに入れた蜂蜜の名残り。  
メアリーが顎を上向けて、再びディコンの顔が被さるのを待つと、突然、強い力で抱き上げられた。  
ふわりと抱き上げたメアリーは呆気ないくらいに軽かった。  
そのまま、ディコンの首に腕を回し、為すがままに身を任せるメアリーの耳元で低い声が囁いた。  
 
「そんなら、次はどうして欲しい?  
 お悧巧なメアリーさん、おらに何して欲しいだ?」  
「……わたしが呼んで、あんたは来たの。何故来たの?」  
 
メアリーが鼻をディコンの髪に押し付けると少年の体臭を強く感じた。  
ベッドのある隣の部屋にはランプの明かりは少ししか届かない。  
ほんの少し気温の下がる部屋はしかし2人の熱を冷ましはしなかった。  
ふんわりとメアリーの身体を毛布に降ろし、柔かく顔にかかった髪を指先で除いた。  
 
「えっと……」  
 
ディコンはメアリーが何か言いかけるのを聞きながら寝間着の中に手を滑り込ませた。  
さらさらとした素肌と、全然ふくらみの無い胸がメアリーの少女に満たない肉体の全てだった。  
曲線の硬いメアリーの身体は成長し始めたばかりで実際、年齢よりも幼くも感じた。  
ディコンが指の間で縮こまっていたメアリーの乳首に触れる。  
優しく摘むとそれはちんまりとした膨らみを帯びてきた。  
徐々に指先に突起を感じ始め、それを押し込むように突付くと  
幼いなりにメアリーは切なそうな表情になった。  
 
「えっと、ね、あの…」  
「ん?」  
「ぁん……何でもない」  
メアリーはそう答えると自分の乳首を触っているディコンの掌を握った。  
ディコンの掌、温かくて力強くて、どんな小動物でも安心できるくらい優しい。  
 
「やっぱり、やめようか?」  
 
仕方ない、2人ともまだ子どもなんだから、そう思いながら  
ディコンは精一杯の思いやりで恐る恐る尋ねたが、  
首を横に振って否定するメアリーの顔が闇の中、はっきりと見えなかった。  
 
「ちがう、暗いのはイヤ。ディコンがちゃんと見えない」  
 
消え入りそうなメアリーの声で、ディコンの心はパッと明るくなって起き上がると  
ベッドサイドにある小さい常夜灯の覆いを取った。  
ほんわりとした明りが広がり温かそうに部屋を照らした。  
 
振り返り見ると、ぽっと闇に浮かんだように、不安そうなメアリーの顔が少し明るく照らされた。  
寝間着の前が開かれて隙間からちらとピンクの肌が見える。  
頬も薄っすらと紅潮していて寝間着とシーツの間に咲く花のようだった。  
そのまま眺めていたいという気持ちがディコンの胸に湧いてくると同時に、  
花を摘み自分のものにしてしまいたい欲望もふつふつと込み上げてきた。  
 
「ねぇ、来て」  
 
恥ずかしげに微笑みながら手を差し伸べるメアリーに、ディコンが近寄ると  
そのまま凭れかかるようにして身体を寄せてきた。  
風呂上りの清潔な匂いと甘酸っぱいような少女の匂いに噎せ返りそう。  
春の花の中、野原に寝そべって思い切り息を吸い込んだような気持ちになった。  
絡まるように身を寄せるメアリーを受け止めるように支え、そっと枕元に落ち着けた。  
ボタンを一つ一つ外すと、寝間着の襟元がはらりと落ち、薄い肩が剥き出しになった。  
下着は着けていなかった。  
良く見れば少女らしい丸みの帯び始めた身体つきだがメアリーには隠してしまいたいような肉体だった。  
ディコンから隠すように毛布を引っ張ると、顔だけ出して不満げに唇を尖らせた。  
 
「わたしだけ脱がされるの、ずるい」  
 
ディコンは軽く笑ってセーターを脱ぎ、シャツをベッドの下へ投げ捨てた。  
ズボンを脚から抜いた時メアリーが後ろから毛布ごと覆い被さってきた。  
 
「ねぇ、ディコン。気持ちよくして?」  
 
毛布の中、2人の皮膚が直に触れ合い互いの鼓動すらも感じる。  
背中にメアリーの皮膚がぴったり密着すると、そのまま張り付いてしまいそうだった。  
ディコンは、ずっとこのままで居たいと思わないでは無かったが、振り返り自分の裸の胸にメアリーを抱きしめた。  
すっぽり胸元に包まれたメアリーは、毛布より温かで兎のように柔らかだった。  
抱きかかえるような形で膝の上に乗っかったメアリーは、おとなしく為すがままにされていた。  
ディコンの掌がメアリーの背中を撫で下ろし、小さい尻をそのまま掌に包んだ。  
その2つの滑々とした丸い塊を開かれると、メアリーの脚も自然に開いた。  
ディコンを跨ぐような格好で抱きしめられて脚を開けば当然、股がディコンに押し付けられる。  
ぐっと力の篭ったディコンの腕はメアリーを押し付けているように思えた。  
抗うように動くとメアリーは自分の身体が熱くなるのを感じた。  
腕の力が緩み、自由を取り戻したメアリーが少し身体を離すと開いた脚の間が晒された。  
「やだぁ」  
じっと下を見るディコンに赤面して後ろに下がろうとした時、  
メアリーの未だ産毛すら見当たらない裂け目が今度は丁度立てた膝に当たった。  
ぴっとり張り付くそこに全神経が集中してしまいそうで、ディコンはメアリーを乗せたまま脚を揺さぶった。  
「ぁ……ん」  
ずるっと滑るとディコンの足にはぬめりが残った。  
脚から滑り落ちたメアリーはそのまま仰向けに組み敷かれた。  
ディコンが膝を持ち、メアリーの脚を開こうとすると細い腿が強張っているのに気が付いた。  
 
「メアリーさん、こわい?」  
「少しね、でも大丈夫。あんたを怖がる小さい生き物なんていないもの」  
 
メアリーは仰向けのまま膝を立てて脚の間から真ん丸い眼が笑うのを見た。  
その体勢のまま、ディコンは眼の前のふっくらとした股間に指を差し入れた。  
産毛もまだ生え揃わない無垢な様子で、しかし貪欲に指を咥え込んだ。  
肉を掻き分けるとじんわりと沁みる体液が指の滑りを良くした。  
細かく縦にこするように指を往復させるとメアリーの腿がわなわなと震え始めた。  
「メアリーさん、これ好きだか?」  
問いかけながらも、手を休めないディコンにメアリーは身体で応えた。  
 
次第に蜜が滴るように溢れ始めるとディコンは手にもった脚を大きく左右に広げた。  
掻き混ぜられ、蜜の泡立つ所を大気に晒され、じっくりと眺められる。  
「――そんな、あんまりじいっとは見ないでよ」  
メアリーはディコンの指だけでなく、視線にも愛撫されていた。  
肉の詰まった箇所は、まるで開花前の蕾のようにピンク色を帯びて、蜜に濡れていた。  
そっと花弁に触れるように摘んで、晒された裂け目に指を這わせてメアリーを責める。  
濡れた葉の上を這うなめくじの様にぬめりを帯び、艶やかにランプの焔に照らされるそこは  
牝の動物の本能のままに求め、刺激を受ければヒクヒクと蠢いた。  
 
周辺を弄るようなディコンの愛撫はメアリーの身体を溶かてしまいそうだった。  
「メアリーさん、可愛いな、いい子だ」  
時折、耳元で囁くと軽く耳朶を齧る、その息遣いがメアリーの心も蕩かしてしまいそうだった。  
片手でしっかり脚を開かせたままディコンは顔を近づけると、舌で裂け目に沿い零れた蜜を啜った。  
「だめ……ディコン、汚い」  
「何言うだ、汚いものか」  
そう言って抗うメアリーを、押さえつけ舌で丹念に舐め始めるが  
指先で摘んだ芽を動かすたびに、後から後から蜜は止めどなく溢れた。  
舌を使って襞を伸ばすようにしながら、指先に力を入れるたび、メアリーの腰は跳ね、又へなへなと力無く沈んだ。  
 
「きゃ……んんっ…あぁっ」  
 
ふるふると首を振って、素直に快楽に溺れて行くメアリーの様子を愛しく思った。  
中指を膣の入り口に挿し込むと、中は非常に熱く小波だって居るようだった。  
指の腹で擦る膣壁の感触と、親指の刺激と2つの性感にメアリーは打ちのめされそうだった。  
「ん…やあぁ、ぁん、あぁ」  
締められる様な感触を指先に感じると、ディコンはメアリーが自分で腰を動かしている事に気付いた。  
小さな手できつく握りしめたシーツの端が汗で湿っている。  
ぐりぐりと膣内を掻きまわし、強めに芽を摘むとメアリーの全身が硬直するのが判った。  
そのままメアリーの広げた脇に舌を這わせる。  
びくんと跳ねた身体を押さえつけるように圧し掛かりながらも、ディコンの片手はメアリーの中にあった。  
 
指を抜くと、はあはあと荒い息遣いでメアリーが涙目で訴えるようにじっと見た。  
ぐったりとしたメアリーの肉体は快楽の余韻にうつらうつらと漂っているよう。  
ディコンはメアリーの頬に手を添え、うっとり目蓋を下ろし半開きの唇に光る唾液を見た。  
それを掠めるように唇を滑らせるとメアリーの濡れた瞳とぶつかった。  
「これから本番いくだ」  
ディコンの言葉にメアリーは慄いたように頷いた。  
再び脚を持ち上げて、今度は都合の良いような姿に、胸に押し付けるようにして折り曲げた。  
剥き出しになったメアリーの性器は愛撫で充血して瑞々しく膨れている。  
愛液を湛えた割れ目を開くと赤い肉が覗いた。  
痛いほど張り切ったディコンの性器をそこに擦り合わせると、泡立つ肉に呑み込まれる様にして先端が埋もれた。  
 
「く…うぅ」  
「メアリーさん、大丈夫だか?」  
微かに苦しげな声を上げるメアリーを気遣う声をかけるとメアリーは弱々しげに言った。  
「うん、でも優しくして?」  
 
ゆっくり、メアリーの中に埋もれて行くディコンは、先ほど指で感じたものが、直に敏感な所に纏わり付いてくる快楽に  
ついつい激しく動きそうになるのを、これ以上ないほどの努力でメアリーの望みを叶えようとした。  
 
「んうっ…は、ぅ……」  
 
きついそこはそれでも丁寧にほぐされ、強い力でゆっくりと押されて徐々にディコンを受け入れていった。  
ベッドに押し付けていたメアリーの脚に頬を寄せるとしっとりとしたきめ細かい皮膚が吸い付くようだった。  
少しづつ進みながら、ディコンはメアリーの内腿を愛撫する。  
指の腹で波を描くように触るとメアリーは身をくねられた。  
 
「やぁん、くすぐったいよ」  
 
そう言うとディコンの腰に脚を回しぐっと締め付けた。  
その力で一番奥までディコンが入るとそのままメアリーがしがみ付いてきた。  
 
ふぅ、ふぅと荒いメアリーの息遣いを耳元で感じながら、どくどくと打つ互いの心臓の音を、重ねた素肌で感じとる。  
しがみ付くメアリーの爪が背中に刺さる、その痛みですら互いを結びつける心地良さが感じられた。  
汗ばんだ髪の毛からディコンの臭いは強くメアリーの鼻を刺した。  
おひさまの匂い、明るい、夏の、お庭……花園……。  
うっとり目を閉じると、メアリーの目蓋には輝いている日々が浮かんで見えた。  
ディコンはメアリーの瞑った目蓋の横に口づけをするとそのまま所構わず唇をつけた。  
 
「ああぁ…」  
 
首筋にディコンが吸い付いたとき仰け反った顎から漏れた声をディコンは一番好きだと思った。  
汗ばんだ咽喉は少し塩の味がした。  
 
「良いよ、動いても」  
とうとうメアリーが目を開き、ディコンは口を離した。  
唾液に濡れたディコンの唇は照り返しに紅く輝いた。  
厚みのあるその唇はとても色っぽいとメアリーは思った。  
ディコンは薄明かりの中、互いの身体が結びついているところを見た。  
メアリーの肉体は余りに幼く全て受け入れられた事が信じられなかった。  
捻じ込まれるように自らの中に男を受け入れる女性には、神聖が宿っていると言う事を信じそうになった。  
「あぁ、だがねメアリーさん、痛かったら直ぐ言うだよ?」  
しかし少し動いただけで走る快楽の刺激はディコンの理性の制御を取り払った。  
衝き動かされるようにして、こすれる壁と、粘膜のもたらす快楽を貪った。  
「ああぁっ、あ、んぅ…あぁっ」  
メアリーの苦痛の入り混じる甘い声と、粘ついた音が、部屋に湿り気を与えるようだった。  
奥に奥に、ディコンが突き刺さる度メアリーの身体はベッドの上にずれた。  
必死にディコンにつかまっても身体を流れる汗で手がどうしても滑ってしまう。  
ディコンはそれにも気付かないでメアリーの脚を肩に乗せ、腰を持ち上げて突き続けている。  
 
脚も腰も浮かせたまま、メアリーは中で動くディコンをじっと感じていた。  
細かく振動するように動くとメアリーにも震えるような快楽が訪れる。  
捏ねるように回すと心まで捏ね繰りまわされているよう。  
強い力で叩きつけられるとディコンの快楽は自分が与えている事が嬉しかった。  
「もっと、もっと……つよく…もっと……」  
ディコンは乞われるがままに強く抱きしめ、また彼自身が望むままにメアリーの肉体を貪った。  
「メアリーさん、痛くねぇかい?大丈夫?」  
打ちつけるような動きは強く、メアリーの身体を激しく揺さぶった。  
問われ、髪を振り乱しながら首を横に振る仕草は否定なのか肯定なのか。  
「もっとつよく……わたしを…求めて……もっと…あぁぁ」  
搾り出すような言葉は、今まで誰からも望まれない子どもの寂しい叫びだった。  
巣から落ちた雛の叫びはあまりに悲痛でディコンは必ずその手を差し伸べずにはいられなかった。  
気が狂ったように乱れるメアリーをきつく抱きしめると儚い体が火傷しそうなほど熱かった。  
火傷なぞ怖くは無い。  
熱く小さな身体がディコンの首筋に吸血するように噛み付いた。  
「んんんんん……」  
ディコンに喰らい付きながら小さな獣は細かい痙攣に震えていた。  
膣壁はディコンを押し潰すように収縮して小さな野性が、動物遣いに馴らされる最後の抵抗を見せるようだった。  
「大丈夫、メアリーさんは大丈夫、もうずっとおらが付いているから……」  
四肢を強張らせ、肩で息をするメアリーの薄い胸にディコンの声が沁み込んだ。  
求めているのは何時もの事、そして今までは与えられた事が無かった。  
飢え、餓えた年月を押し流すようにディコンはメアリーの中を満たした。  
温かさに包まれ、震えていた小さな身体は弛緩しはじめる。  
気が付くとディコンがまるで母が子をを撫でるときのようにメアリーの髪を撫で付けていた。  
ぐったり疲れた身体は、もう目を瞑れば深い眠りに落ちてしまいそうだった。  
「朝まで側にいて……それまででいい…どこへも行かないで、ねぇ、おねがい」  
まるで幼子のように自然に甘えた声でメアリーは言うとディコンの腕を抱えた。  
ディコンは頷き、メアリーに寄り添い自分も横たわると静かに目を閉じた。  
春近い風の音が窓を揺らすが、それすらも心地良い子守唄に聞こえた。  
 

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