1
「ねえねえ、森崎先輩ってさあ」
相原早希がふと思い出したように言う。
一年B組の三人組、向井弥子、相原早希、水村洵が集まれば、このところいつも話題になるのは森崎勇太のことだ。
「勇太が、何」
その話題になるたびからかわれている弥子は、どうしても警戒してしまう。
そんな弥子の様子は全く気にせず、早希は頬を染めながら言った。
「カッコイイよね」
「そう?」
冷静な声を出してみても、弥子は胸がドキドキするのが止められない。
いつの間にか勇太のことを好きになって、小学校のとき転校して別れて、久夏高校でまた再開して……
今じゃ、名前を聞いただけで胸が高鳴る。
「――私ね」
弥子の目の前に座った早希は、机の上に肘をついて、その手の上にあごをちょこんと乗せている。
その姿勢で、弥子の顔をじっと覗き込んでいる。
「森崎先輩にさ」
「うん」
「……告白しちゃった」
「――――え?」
今、なんて、言ったの?
目をまん丸にしている弥子の目の前で、早希はちょっと照れたようにはにかんだ。
「森崎先輩に、告白しちゃったぁ……えへへへへ」
さすがに恥ずかしかったのか、早希は顔を真っ赤にしながらもじもじと両手をすり合わせる。
後の二人の反応は、全く正反対だった。
「うわーっ、相原ってば大胆。あ、でも、前から気になる気になるって言ってたもんねー」
水村洵はまるで自分の事みたいに喜んで、早希の肩を何度も叩いている。
一方の弥子は、かろうじて驚きを顔から隠す事が出来た。
でも、言葉が出ない。
「ふ、ふ、ふ、ふーん……ど、どこがいいのかしら、あんなの」
「えー、だってカッコイイしー」
「それに結構優しいよね。弥子にだってとっても親切だし」
「あ、アイツが、私に……?」
弥子は、そう言われて初めて、自分が特別扱いされていた事に気づいた。
そうだ、私がどんなに冷たくしたって、勇太は怒らない。
それどころか、より一層おせっかいを焼いてくる。自分は、それを喜んでたくせに――――。
「それでそれで? 返事は? 森崎先輩、なんて返事したの?」
洵は当然のように聞いた。もちろん、早希の様子から答えは大体察しがついている。
でも本人の口から聞きたいのだ。
弥子は、祈った。友達の失恋を祈るなんて、最低だけれど、そんな事気にしてられない。
お願い、神様――――。
「オッケーだって。付き合ってくれるって……!」
「やったじゃん! おめでと早希」
洵はもう飛び上がりそうな勢いで喜んでいる。
だが。
弥子はまるで砕けたガラスみたいに、全身から力が抜けていくのが自分でも分かった。
かろうじて、感情のこもらない言葉を吐き出す。
「お、おめでと……ま、ま、まあ、勇太も幸せよね、きっと」
「えへ。ありがと。森崎先輩ってば『君みたいなかわいい子じゃあ、断れって言われたって断れない』だってー」
「何よー、もう惚気? うらやましいぞ、このこの」
「でも、森崎先輩ったらカワイイの。真っ赤になっちゃって、私が手を握ったら、びくって震えてたもん」
「いやー、早希のえっちー。何よ、もうキスまですませちゃったんじゃないの?」
早希と洵は声をひそめている。でも、その言葉の一つ一つが弥子の心にナイフみたいに突き刺さった。
「まだだよー。だってやっぱ、初めてはいい雰囲気でしたいじゃない? それで……」
「……ごめん、私ちょっと、トイレ」
もう耐えられなかった。友人たちの返事を待たず、弥子は教室から駆け出す。
そして、一目散に普段人気のない校舎の裏に向かった。
「う……ぐすっ……」
人目がないと分かったとたん、弥子の目からとめどなく涙が流れ始めた。
両手で顔を押さえても、指の間からぽたぽたと涙がこぼれてくる。
「ふ、ふぇ…………ふぇぇぇぇぇぇん……」
弥子は、はばかることなく大声で泣き出していた。
誰も聞く事のない少女の嗚咽が校舎裏に響く。
馬鹿、自分の馬鹿。
ずっと勇太に一番近いところにいたのに。
本当は、好きでたまらなかったはずなのに。
恥ずかしくて、意地張って、それで――――。
取り返しのつかない事をしてしまった。
「勇太……ゆうたぁぁ…………」
何度名前を呼んでも、もう決して変わらない結末に、弥子はただ泣き続けた。
『今度の日曜日、初デートなんだ!』
教室に帰った弥子は、それでもまだ打ちのめされる心が自分に残っていた事に驚いた。
嬉しそうにそう言う早希に、嫉妬以上の黒い感情が生まれる。
でも、力が入らなかった。
よかったわね、無気力にそう呟き、弥子はぼんやりと自分の席に戻った。
「そのくせ、こんなことしてる。私って、最低……」
日曜日、弥子は勇太と早希を尾行していた。
気づかれぬよう、髪形まで変えて。
今はトレードマークのオデコをしっかり隠し、ボーイッシュなパンツルックに身を包んでいる。
前を行く早希は、ふわりと広がるフレアースカート姿がかわいい。
女の弥子でさえ、ちょっとどきりとするかわいさだった。
そして、弥子の心をそれ以上に揺さぶるものがあった。
勇太だ。
いつものTシャツにジーパンという、飾りっけのない格好じゃない。
ワイルドだけれど、弥子が見た事がないくらいおしゃれで、かっこよかった。
「るりちゃんね、きっと」
そんな分析をしてみても、勇太が早希とのデートに気合を入れているという事実は変わらない。
私の前じゃ、平気でグ○ゼの白シャツのくせに……。
尾行する一瞬一瞬が、弥子に敗北感を刻み付けた。
夕方、二人は町を見下ろす展望台にいた。もちろん弥子も。
だが、そこは有名なデートスポットだというのに、二人は結局キスしなかった。
それだけが弥子の救いだった。
そこは、弥子にとっても思い出の場所だった。
勇太と手を繋いで夕日を見た場所。
あの時の勇太の手は、思ったより華奢だったけど、温かくて、大きかった。
もし、あの時――。
でも振り返ってももう遅い。
弥子は、一瞬の勝利と引き換えに、全てを失ったのを悟った。
やがて二人は駅前の方に戻っていく。
しかし不思議な事に、その足は早希の家にも、勇太の家にも向かわなかった。
それどころか、普段弥子たち久夏の女子高生が決して寄り付こうとしない界隈へと向かっている。
(え、まさか、ここって――――)
弥子は尾行に夢中で、最初そこがどこか気づかなかった。
だが、ふと我に帰ったとき、自分たちがどこにいるのか知り、ものすごく動揺した。
おしゃれなシティーホテル風の建物。
しかし、ロマンチックなホテルの名前と、目隠しが下がった駐車場の入り口は、それが
ただのホテルじゃないことを示している。
(うそ、うそ、うそ――――)
弥子は、二人の行く先を見届ける勇気はなかった。
それなのに、足は勝手に動く。
どす黒い好奇心が、弥子の足を自然に前へと進める。
やがて早希と勇太は、一軒のホテルの前で立ち止まる。
声は聞こえないが、何事か話しているようだった。
勇太がしばらく一方的に話し、最後に早希がこくりとうなづく。
一瞬の静寂の後、二人は手をつなぎ、ホテルのエントランスへと消えていった。
弥子の全ての希望が裏切られた瞬間だった。
2
その部屋は、勇太や早希が思っていた以上にシンプルだった。
ブルーの壁紙に、観葉植物、大きなベッド。間接照明を主体にした部屋の灯り。
なにかリゾートホテルの一室のような雰囲気だった。
「へー、こんな風になってるんですねー」
早希が興味津々と言ったように、早希に部屋へと入っていく。
勇太は少し尻込みしたように、遅れてついていった。
「うわー。お風呂丸見え……ほんとにこんなんなんだぁ」
まるで恥ずかしさを感じさせない早希の様子に、勇太がおずおずと声をかける。
「あ、あの、相原さん?」
「なんですか、先輩?」
振り向く早希は、いつも通りの元気な笑顔を見せる。
「その……その、本当に良いの? その、初めてが、僕で……」
「だって、やっぱり大好きな人と結ばれたいじゃないですかぁ」
そう言ったとき、早希は初めて少し頬を赤らめた。
そう言われてしまうと勇太も口ごもる。でも、何か違うような気がする。
「で、で、でも、僕たちまだ付き合い始めたばかりだし、今日が初めてのデートだし……」
勇太の言葉に、いままでうきうきとした様子を見せていた早希が、初めて少し憂いを含んだ表情を見せた。
すこしうなだれたように、勇太の方に歩み寄る。
「……先輩は、私の事嫌いですか……?」
「そ、そんなことないよっ」
スケベ心満載の勇太にとって、弥子の友人たちも当然のように好奇心の対象だった。
むらっけがあって乱暴な弥子に比べて、ストレートに好意を寄せてくる後輩たちを好ましいと思った事もある。
だが、それとこれとは話が別だった。
「……先輩は、本当は向井のこと、好きなんじゃないですか?」
「な、な、な、なななななな……」
何を、と言おうとして、勇太は意味のない言葉の羅列を吐く。
それを見た早希の目が、眼鏡の奥で少し怒りを含んだように見えた。
「だって、いつも二人でいるし、先輩なんだかとっても楽しそうだし……」
「そんなはず……そんなはず、あるもんか」
勇太は必死でそれを否定した。
弥子は小さいときからずっと友達で、大事だ。大切にしたいと思う。
でも、それは一人の女の子としてではなく、もっと――――。
もっと、なんだろう? その後の言葉が出てこない。
不意に、泣き顔の弥子の姿が目に浮かんだ。
振り返りながら、大粒の涙をこぼして勇太を見ている。そんな弥子が。
(弥子、泣いてる……)
高校で再開してから、泣いている弥子なんてほとんど見たことないのに。
勇太の意識が飛んだのはほんの一瞬だったけれど、それが妙に気にかかった。
勇太は頭を振って、変な想像を追い払おうとする。
そこに早希の声がした。
「……いいんです。私には先輩しかいませんから」
早希はそう言うと、勇太の胸にすがりついた。こつん、と勇太の胸に頭が当たる。
頭一つ勇太より小さい早希は、濡れた瞳で勇太を見上げた。
「……私だけ、見てください…………」
静かに唇を差し出す早希に、勇太の目は釘付けになる。
薄桃色の、ぷにぷにとした柔らかそうな唇が、勇太を誘っている。
ほんの少しおしゃれをしたのか、淡い口紅とグロスが、宝石のようにその唇を輝かせている。
その奥にのぞく、乳白色の歯と、小さな唇。
吸ってみたい。その全てを味わってみたい、そう思わずにはいられない魅力があった。
勇太は魔法にかかったように早希の唇に自分のそれを近づけた。
荒々しく、奪うように吸い付く。
初めての女の子の味は、曰く言いがたいものだった。
かすかに開閉を繰り返す早希の唇を、夢中で吸う。その口紅を全て舐め取るかのように。
やがて、猛り狂った勇太の舌が、強引に早希の唇をこじ開けにかかった。
早希はわずかに抵抗したけれど、やがて諦めたようにおとなしく、勇太の舌を受け入れた。
悶えるようにして、早希の舌が勇太を誘う。
それに応えるように勇太は自分の舌を早希の口の中へとねじ込んでいく。
その温かく、ぬめぬめとした口の中で思う存分舌を暴れさせ、早希の唾液を飲みつくそうとする。
はあはあと荒い息が互いの口から漏れたが、それでも二人は止めようとしなかった。
早希の舌が勇太の口を襲い、上あごの内側を擦るようにして刺激する。
勇太はそれに自分の舌を絡め、二つの舌はダンスを続けた。
永遠とも思える接吻の果てに、ようやく二人の口は離れる。
しかし、互いの舌は名残惜しそうに伸び、その先端をつつきあっている。
差し出しあった舌と舌を絡ませ、存分に味わったあと、やっとそれは離れていった。
息を整え、見つめ合う。
初めての、それも荒々しい本能に任せたキスに、早希の目はじっとりと濡れている。
「私の初めて……全部もらってください」
早希がやっとの思いで言ったその言葉に、勇太の理性は弾けとんだ。
体を抱えるようにして、早希をベッドの方に連れて行くと、彼女の体をシーツの上に投げ出した。
覆いかぶさるように、早希の体にのしかかる。
勇太は無言で早希のブラウスのボタンを外し始める……が、やがてもどかしげに、引きちぎるようにその上着を剥ぎ取った。
「やっ……優しくしてください……」
早希の小さな懇願も、まるで勇太の耳には届かなかった。
むき出しになったブラジャーを強引にずり下ろし、露になった乳頭を無言で口に含む。
芯の残る乳房に、ちょこんと乗ったかわいいつぼみが、勇太の口で存分に犯されていく。
「はっ、あっ、くぅぅぅん……」
ざらざらとした舌の腹をこすり付けられ、思わず早希が歓喜の声を上げる。
それを見て勇太はにやりと笑う。
「相原さん、すごく感じやすいんだね。僕、嬉しいよ……」
「し、知りません……」
処女の早希に、自分が感じやすいかどうかなど、分かるはずがない。
しかし、勇太はさらに嬉しそうに笑うと、今度は早希の胸を両手で揉み絞るようにしながら、その先端を舌先でちろちろと舐め始めた。
「やぅ……は、あ、ぁぁん……い、イタい、です…………」
早希の涙交じりの声に、勇太はようやく少し手を休めた。
しかし、リズミカルに早希の胸を揉む事は止めない。
小ぶりな早希の胸は、まるでゴムのような弾力を持って勇太の手に吸い付いてくる。
それを確かめるようになんども揉みながら、勇太は桃色の小さな蕾を舌先で鞭打つように弾いた。
「きゃっ! きゃっ、きゃふぅぅ…………」
思いがけない刺激に、早希はさらに悲鳴をあげる。だが、今度は勇太は決してその勢いを緩める事はなかった。
「乳首の先、感じてるんだ、相原さん……」
「わ、分からないです……でも、でも……」
少女の体に異変が起こっている事は、その本人が一番分かっている。
体の奥がしびれるような、震えるような感覚。
しかしそれは決して不快ではなく、さらに強い刺激を求め、早希の体を変えていく。
「じゅ、じゅんっ……て、します……」
早希はたまらず、自分の体に起こった異変を勇太に告げる。
勇太は、最初その意味が分からなかったが、やがてそれを察して、そっと早希のスカートに手をかけた。
そっとめくる。奥にみえる小さな白い布が、うっすら変色している。
稚拙な自分の愛撫で、早希が濡れている。それは勇太に十分な自信と、満足を与えた。
さらによく見ようと、もぐりこむように早希のスカートの中に頭を埋める。
暗闇の奥に小さな白いショーツが隠れていた。
早希の潤いで変色し、わずかにその中の茂みが透けて見える。
その布切れはあまりに子供っぽく、それゆえあまりに淫靡だった。
クロッチの部分から肛門へ向かって、水が垂れたような、黄色がかった染みが出来ている。
勇太はそこに鼻を近づけ、わざと音を立てて匂いを嗅いでみせた。
「もしかして……相原さん、お漏らし……?」
「だ、だって……仕方ないじゃないですか……わたし、私いつも……」
感じると、思わず失禁してしまう事、汚れた下着はこっそり自分で洗っている事。
それは誰にも言わないと心に決めた秘密のはずだった。
だが、早希はそれを自然に口に出していた。
「わ、私、結構おなにぃとかするんですよ……」
照れたように、でも嬉しそうに早希が勇太の耳にささやく。
驚いた目で見返す勇太に、早希はちょっとはにかんだ。
「いっつも、せ、先輩の……」
「ぼ、ぼ、僕の、何?」
「せ、せ……ぱぃ……せんぱぃの……と……ながら…………て、ます……」
本当にかすれた早希の声。
勇太が静かに喉を鳴らす音が聞こえた。
早希の体を求めている、高ぶった男の証し。
肉欲に身を委ねた少女は次の瞬間、はっきりとした声で言った。
「せ、先輩のこと考えながら、オナニーしてます……毎日、毎日……
指を使ったり、サインペン入れたり、窓際に立って外からわざと見えるようにして……
お、おな、オナニーしてます……先輩に犯される事、ずっと考えて……オナニーしてますっっ」
「だから今日は、先輩がしてください……」
そう言いながら早希はスカートを自分でまくり上げ、端を口にくわえた。
もどかしくパンティを脱ぎ、投げ捨てる。
両脚を大胆にもMの字に開け、濡れそぼった自分の秘部を、指で開いてみせた。
初めて見るそれに、勇太は吸い込まれるように視線を向ける。
ためらいもなく顔をそこに近づけ、そっと自分の指で入り口の周囲をなぞる。
べとべととした愛液が、たっぷりと指に絡まってきた。
「……だから、こんなに濡れるんだ」
「は……はぃ……そうです……先輩が……触ってるから……」
勇太は何度もその事実を反芻するようにうなづいた。
思わず早希が真剣な瞳で見つめる。
「こんな……こんな私、嫌いですか?」
早希の不安げな視線に気づいた勇太は、もう一度にやりと笑う。
「ううん。僕、そういう女の子好き……大好きだ」
「……う、嬉しいですっ…………!」
早希は思わず随喜の涙をこぼしていた。
頬に流れる涙は、勇太が舌で綺麗に舐め取った。
勇太は無心に早希の性器を愛撫し始めた。
人差し指だけで陰唇を撫で回すと、早希の足がそれに反応してぴくぴくと震える。
面白くなってさらに擦りまわすと、早希は喉の奥から搾り出したようなため息をついた。
目の前のピンクの肉から湧き出す早希の雫。
勇太はそれを味わおうと、口を近づける。つん、とした刺激臭と、発情した雌の匂いに、勇太は胸が張り裂けそうだった。
そっと舌を伸ばし、滴る液を舐め取る。
「はぁっ……んぁっ……ぁあ……」
舌が敏感な部分に触れるたび、早希は身をよじって悲鳴をあげる。
顔にまとわりつく愛液の匂いが、さらに勇太を興奮させ、ざらざらとした舌を早希の中にねじ込む。
「んっっ……んはぁ…………あっ。あっ、ぁぁぁあっっ!!」
早希の絶叫。
彼女はついに噴水のような勢いで、その割れ目から愛液を迸らせた。
だが、一度目のオーガズムを迎えても、早希の熱は引く事を知らない。
下半身を無造作にさらしたまま、勇太をその目で誘う。
「お願いしますぅ…………先輩の、オチンチンで、私のは、初めて…………奪ってください……っ」
勇太は服を脱ぐ暇も惜しむようにして、早希に襲い掛かった。
体を横向けにしている早希の、すらりとした足の片方を肩に担ぎ、股を開かせる。
スカートの中で、ピンクの花びらがむき出しになった。
ふわふわと、しかし豊かに茂る叢の間に、大量の蜜を含んだ肉壷が、勇太を待ちわびている。
それは呼吸するように、ゆるやかに収縮と開放を繰り返しているようにも見えた。
「うはぁ……ぴくぴくしてる……相原さん、そんなに……」
「はい、私、先輩のがほしいんです…………だから、だからぁ……」
何度も想像の中で処女喪失を妄想してきた少女にとって、それは待ちすぎるほど待ちわびた瞬間だった。
そこには一片の恐怖もためらいもない。
勇太はズボンのチャックを開け、物だけを露出させた。
真っ赤に充血し、先走り汁で濡れて輝くペニスを、素早く早希の腰にあてがった。
「いくよっ」
「……はい……」
早希の答えを聞くや否や、勇太は早希の小部屋に自分自身を荒々しく突っ込んだ。
それは、ためらいも気づかいも何もない一撃だった。
「ぁぁあっ!! い、痛っ……いたぁぁぁああぁあああ!」
早希の絶叫が部屋いっぱいにこだました。
まさにそれは鋭い刃物で貫かれたかのような、早希がこれまで味わった事のない痛みだった。
甘美な処女喪失の幻想など、一瞬で吹き飛ぶような激痛に、早希は泣き叫ぶ。
だが、勇太は全てが入ったことを確かめると、そのまま激しく腰を動かし始めた。
「や、やぁっ、ま、待ってください、待って、センパイっ…………!」
だが、早希の懇願にもかかわらず、勇太はさらに激しく早希を突く。
それは、女性の体を知らない、童貞の無知ゆえに出来る動きだった。
激しく突かれまくる早希は、痙攣したように体を反り返らせ、腕を必死に振って逃れようとする。
しかし、勇太は早希の両脚をがっちりと掴み、さらに腰を密着させていった。
「あ、相原さん、最高っ。最高だ……」
初めて知った女体に、歓喜の声を上げながら、勇太はリズミカルに早希の体を突き上げる。
早希の体は、その痛みを出来るだけやわらげようと、大量の蜜を滴らせる。
それが勇太の快楽をさらに高め、勇太はますます激しく早希をかき混ぜていく。
「は、んゃぁ……あ、ぃ、ぃゃっ……あ、ふぁ……はぁぁっ」
「相原さん、最高だ、き、気持ちよすぎる……」
「ほ、ほ、ほんとぅ……で、ですかぁ……」
「好きだ、相原さん、好きだ……っ!」
無我夢中で叫ぶ勇太の愛の告白が、早希の胸を高鳴らせた。
このような状態で受けるのにふさわしい言葉か、などという判断は、既に早希には出来ない。
ただ、自分が心も体も愛されている。
そう信じることが、早希に許された全てだった。
「さ、最高だ……ぬるぬるで、べちょべちょで、温かくて……こ、こんな風だったんだぁ……」
勇太は早希の肉壷の感触に酔いしれ、感動していた。
早希の体は勇太の突き上げに応えるように、きゅぅきゅぅと締め付けてくる。
勇太はむさぼるように腰を振り続けた。
だが、体は早希を求め、口では愛を叫んでいるのに、勇太は違う少女の事を考えていた。
その少女の面影を、目の前で淫らにもだえる早希に重ねる。
髪の長さも、体つきも、声も全く違う二人の少女。
今、勇太が抱いているのは早希でありながら、早希ではなかった。
なのに、勇太はそれが早希への裏切りだということすら、思いもしなかった。
「……もう……もう、我慢できない……」
独り言のように、勇太が呟く。その時初めて、早希は自分たちが生で交わっていたことを思い出した。
「えっ? あ、ああっ、だ、駄目ですよぉ……な、中に出したら……」
「だ、出すよ、なか、相原さんの膣の中に、僕、出すよっ……」
早希の言葉など、勇太には聞こえていなかった。
なぜなら、勇太が抱いているのは早希ではなかったから。
あの、髪の短い、強気な瞳の少女の中に、思い切り精をぶちまけることを想像しながら、勇太は腰を振る。
「だ、駄目です! あ、だ、だめ……止めてぇぇっ……!」
思わず逃げようとする腰を、勇太はがっちりと捉えて離さない。
「出すよ……中に、中に出すから……全部……全部出すよぉっ!!」
あの少女に出したい。あの少女に全てを注ぎたい。あの少女を妊娠させたい!!
勇太は初めて心の奥に閉じ込めていた欲望を開放していた。
「い、い、いやあぁぁぁっっっ――!!!」
びゅくっ! びゅくっ! びゅっびゅっびゅっっっっ!!!!
中に突っ込んだままでも、音が聞こえるぐらい激しい射精だった。
自分の中に放たれた熱い精を感じながら、早希は何か言葉にならない声で叫んでいる。
だが、その声も勇太の動きを止める事は出来なかった。
とめどなく吐き出される精液を、最後の一滴まで早希の膣に送り込む。
精液と愛液が混じり、勇太の肉棒に絡みつく。それを早希の内側にこすり付けるように、さらに何度も勇太は腰を振った。
搾り出すようにして、最後の射精を終え、勇太はやっと息を一つ吐いた。
征服感が胸いっぱいに満ち溢れてくる。
初めての性交と、初めての膣出しのショックに、早希は呆然とベッドに倒れ臥している。
その姿を見て、勇太はやっと満足したように早希の体を離した。
勇太が力尽きた肉棒を引き抜くと、早希の花弁からどろりと濃厚な精液が滴り落ちた。
部屋いっぱいに淫猥な香りが広がる。
だが、次の瞬間。
勇太は自分が何を思って早希を抱いたのか、はっきりと思い出し、愕然とする。
「ゃ……や、こ……」
その呟きを、早希はぼんやりした表情で聞いていた。