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「あーーーっ! 人の荷物を勝手にっ!」  
振り返るとそこに安藤がいた。プール横の茂みに隠すように置かれていたバッグ。  
名前が確認できるものがないかと、中身を確かめたその時に、いきなり声を  
かけられた。  
「開けないでよ、もうっ!」  
「安藤…。それ、おまえのなのか?」  
「そうよ、勝手にいじらないでよね」  
「なんでこんなところに置いてあるんだよ?」  
「そんなの決まってるじゃない。教室に持ち込めないものを、ここに隠してあるのよ。  
いつ持ち物検査があってもいいようにね」  
当たり前のように言い放つ安藤。でも、それって校則違反だぜ。  
「なんで私服なんか持って来てるんだよ」  
「そんなのどうだっていいでしょ? それより、この事はないしょだからね。いいわね」  
一歩踏み出して挑むように俺を見上げる。まあ、安藤はいつでもこんな感じだけどね。  
別に告げ口するようなことでもないし黙っとくか。  
「あ、ああ…」  
我ながら情けない声だ。いつもの事だが、安藤に強気に出られると俺は腰が引けて  
しまう。そんな俺に安藤はいつもの挑発的で蠱惑的な微笑を向けた。ちくしょう、  
子供あつかいかよ。  
「じゃあね〜」  
クルリと向き直り校舎に向かう安藤。彼女の均整の取れた後姿に、俺は言葉に  
出来ないイラツキと焦燥を感じていた。  
 
何故、安藤が私服を隠していたのか。その日の放課後、俺は答えを見つけた。  
神社の脇を通る人通りの少ない市道、初夏の日差しに目を細める俺とすれ違った  
アウディ。その助手席に安藤が座っていた。  
あのバッグの服を着て、学校にいる時よりずっと気合の入ったメイクに変えて、  
俺が見たことのない笑顔で笑っていた。  
そして、俺とすれ違う一瞬、安藤は確かに俺に向けてあの蠱惑的な微笑を  
浮かべた。  
……悔しかった。別に安藤にホレてるわけじゃない。でも、自分と同い年のはずの  
アイツが、ずっとずっと遠い所にいるような気がして、ただ、それが悔しかった……。  
 
「小笠原、わたしバカじゃないの。自分のやってることくらいわかってるわ。自分で  
 責任の取れないことはやっていないわよ」  
安藤はそう言った、いつもの自信に満ちた表情で。  
「どういう意味だよ…」  
ふてくされているのが自分でもわかる。ちくしょう、俺はガキだ……。  
「べつにね、いつまでも愛して欲しいわけじゃないの。そんな聞き分けの悪いことは  
 言わないわ。奥さんも子供もいる人だもの」  
昼休み、誰もいない視聴覚室で、俺は昨日のことを安藤に問いただしていた。  
安藤は何の禁忌も存在しないかのように、その言葉を口にした。  
 
わたし、不倫してるの  
 
「騙されてんだよ! 妻も子供もいて愛してるだなんて、絶対騙してるんだ!」  
「何度も言わさないで! わたしバカじゃないのよ。彼が優しいのは今だけ、わたしに  
 飽きるまでだってわかってる。でもね、それはわたしも同じなの。いつまでも一人の  
 人を愛し続ける自信はないわ」  
安藤の顔が正面から見られない。安藤の瞳の方が俺よりずっと強い……。  
くそっ! 俺、間違ってるか? 俺のほうが間違ってるのか!?  
「あの優しさはわたしだけに向けられたものじゃないわ。ずっと昔には奥さんにも、  
 わたしに出会うまでは他の人にも向けられたもの……。そんなことくらい、あなたに  
 言われなくてもわかってる……」  
安藤の表情が曇る。当然だよな…、俺みたいな無責任な立場じゃない、安藤は当事者なんだ。俺が考えつくことくらい、安藤はずっと前に考えて、そして悩んで……。  
うな垂れる俺の唇に柔らかいものがそっと触れた。  
「……口止め料。感謝しなさいよ、あの人以外で、わたしの唇をしっているのは小笠原  
 だけなんだからね」  
そう言って笑う安藤の顔は、俺の知ってる安藤とは少し違っていた。助手席の安藤に、  
少しだけ…似ていた……。  
 
あれから学校の帰りには神社に寄るのが日課になっていた。他の連中にバレるのを  
恐れたのだろうか、あの日以来アウディを見かけることはなかった。それでも、俺は  
毎日人通りの少ないあの道を歩いていた。  
安藤……。負けず嫌いの安藤、何でも完全にこなす安藤、生意気で高飛車で倣岸な口調を使って命令形で話す女。それだけに敵も多い。ただ、誰も安藤を拒絶できない  
でいたのは、安藤がいつでも結果を出すからだ。誰も文句のつけられないレベルで  
安藤はいつでも結果を残していた。  
中学の頃からの友達だ。波多野との勝負もずっと見てきた。でも、俺は彼女の何を  
知っていたんだろう…、知ってるつもりでいたんだろう……。  
昼過ぎに一雨来たせいか、アスファルトから陽炎が立ち昇っている。体にまとわりつく  
蒸し暑い熱気、遠くから聞こえるニイニイゼミの声。もう梅雨も終わる。石段を上った  
神社の境内は雨上がりの匂いに包まれていた。  
 
 
なんだか全てがおっくうになっていた。  
そういえば、今日は木地元達と遊びに行くことになってたな……。  
東女子の子と合コン…か…、それも、もういいか……。  
木地元に断りのメールを入れ、奉納相撲用の土俵に腰を下ろす。屋根があるので  
ここは濡れてはいないが、いつもよりは少し湿気がある。  
少し迷ったが、直接土俵に寝転がってみた。冷たい土の感触が妙に心地よかった。  
ふぅ…、土まみれだ……。また君子にしかられるな。  
そう考えると何だか変におかしくて、俺は大声で笑っていた。  
 
気がつくと辺りはもう暗くなっていた。いかん、ちょっと寝てたな。  
ケータイを確かめるとメールが二件。木地元と君子か…。  
どうせ見なくても中身はわかっている。メールを打ち返すのも面倒だ。俺はぞんざい  
に土を払うとカバンを抱えて立ちあがった。  
 
うす暗い境内にポツリポツリと灯る蛍光灯。それに照らされるベンチに彼女は座って  
いた。  
こんな人気のない場所に若い女性が…。危ないな…、この頃は拉致だのレイプだの  
という悪い噂も聞く、この間も東女子の子がマワされたという無責任なメールが実名  
付きでまわってきた。話半分に聞いておくにしても、調子にのってるクズどもが多い  
のは事実だ。  
声をかけようか? しかし、この状態だと、俺が変な奴らと同じに見られかねない  
しな……。  
うつむいて膝を見つめる彼女は、まだ俺のことに気がついていないようだ。子供じゃ  
ないんだ、何があっても自己責任なんだし、このまま帰るか?  
自問してみる。まあ、考える前に答えは出てるんだけどね。そんな事が出来るはず  
がないんだ。いつものおせっかいの虫がうずきだした。何度も失敗してるのに俺って  
バカだよなぁ……。ま、いっか。見た感じ20くらいの人だ。どうせ同じ学校でもない  
んだし、最悪、俺が悪者になればあの人には被害がない。  
自嘲しながらベンチに近づいていく。俺の足音は聞こえているはずなのに、その人は  
顔を上げようとはしなかった。  
 
「あの、すみません。この頃は悪い噂もありますし、こんな人気の無いところにいると  
 危ないですよ」  
へっ、どうとでもなれ。この後、この人がいきなり逃げ出そうが、俺のことを変質者を  
見る目で見ようが、まったく気にならない…はずもないんだけどね……。まあ、その  
辺りは慣れてるから……。  
だが、その後の展開は俺がまったく予想しないものだった。  
「……小…笠原?」  
この声は、安藤…? いつもより少しかすれている、言葉に力がない。でも、それは  
間違い無く安藤の声だった。  
彼女がゆっくりと顔を上げる。蛍光灯の頼りない光に照らされていたのは俺の知って  
いる安藤ではなかった。  
俺がまだ見たことのない涼しげな夏物のワンピース。ブランド物らしい瀟洒な時計と  
ネックレス。高そうなバッグ。そこにいる安藤は学校にいる時なんかより、ずっと大人  
で女で……。  
違う! そんなところじゃないんだ!  
泣きはらした目、崩れたメイク、何よりも、迷子の子犬のような心細げな表情。本当に  
安藤なのか?  
そこにいたのはいつもの自信に溢れた彼女ではなく、ひどく小さくて儚げな女性  
だった。  
                                         
 
「もう! どうして、いつも見つけて欲しくない時に見つけるのよ! こんなとこ誰にも  
 見られたくないのに!」  
眉を寄せ唇を噛み、今にも泣き出しそうな顔で安藤が俺をなじる……。  
何も言えなかった…、何を言っていいのかわからなかった……。自分は無力だと、心の  
底から思った……。  
「……今日ね…、別れたの……」  
しばしの静寂の後、安藤がポツリと言葉を洩らした。直りきらない傷口を無理やり広げる  
ような安藤の言葉、見ている俺も辛い……。  
やめてくれ! こんなの安藤じゃないだろ!  
「…安藤、辛いようなら……」  
「ダメなの…、心に溜めておいた方が、もっと辛くなるの……」  
ほろり、と安藤の頬を涙の雫がつたう。張り詰めていたものが切れたのか、瞳に溜まった  
悲しみは大粒の涙になって止め処もなく流れ出した。  
「…ご…めんね。ごめんな…さいね……。でも、他…に言える…人…い…ない…の…」  
しゃくり上げながら、鮮血のしたたる様な言葉を一言一言搾り出す。俺は覆い被さるよう  
に安藤を抱きしめた。彼女を包んであげたかった。この世のどんなものからも彼女を  
守りたかった。  
 
「安藤、俺が受け止める! 全部、俺が受け止めてやる! だから、泣け!!」  
俺も安藤も自分の役割がわかっていた。だから、少しも躊躇わなかった。安藤は俺の  
胸に顔を押し付けて、ありったけの涙を流し出した。  
泣き声は聞こえない。唇をかみ締め体を震わせ、安藤は自分から溢れ出ようとする  
嗚咽を必死に噛み堪えていた。悲しみに屈服すること、感情の奔流に全てを委ねて  
しまうことは、彼女のプライドが許さなかった。必死になって全身でそれを拒絶して  
いた。背中に回された安藤の両腕が、まるでそれが最後の絆であるかのように、俺の  
体を強く強く抱きしめる。俺の腕の中で、安藤は静かに、しかし激しく泣いていた。  
 
どのくらい、そうしていただろう。安藤はふいに顔を上げ、泣きはらした赤い目で俺を  
見つめた。  
「ありがとう…、落ち着いた……」  
「そうか……」  
互いに腕を解いて、ベンチに腰掛ける。安藤は俺の顔を見ようとせず、ただ、胸の内  
にある何かを吐き出すために、ポツリポツリと小さな声で言葉を紡いでいった。  
不倫相手の奥さんに関係を知られたこと、今年中学に上がった娘さんにも知られて  
しまったこと……。  
「この間言ったことね…、あれが強がりだって、自分でもわかってた……。好きだった  
 もの…、本気で好きだった…。本当は終わりがあるなんて考えたくなかった……」  
全てを過去形で話す安藤。無理に終わらせようとしていることが、俺にもわかる。  
「自分で責任が取れるなんて嘘…。まだ小さな女の子の心…傷つけちゃった……」  
「でもな、それは……」  
「違うの…、あの人だけじゃないの……。二人なの…、わたしにも責任…あるの……」  
こんな時まで安藤は頭が回りすぎる。俺の言葉を先読みして自分で答えを出して…。  
そう、いつだって全部自分で…、自分だけで……。  
……それがむしょうに腹立たしかった。  
そうしてはならないのに、彼女を慰めなければならないのに、俺の語気はだんだんと  
荒いものになっていく。  
 
「安藤、そんな風に自分で結論出していったら、どこまでも落ち込んでいくぞ。相手は  
 いくつ年上なんだ? 俺達よりどれだけ余分に生きてる? 受け止めるものが大きく  
 て当然だろ!」  
「…………」  
なんだよ! 言い返せよ! いつもの安藤なら、こんなじゃないだろ! 自分が間違っ  
てたって、無理な理屈で相手を言い負かしてるだろ! いつもみたいに俺のこと言い  
負かしてみせろよ!  
「責任を考えなきゃいけないのは、向こうの方なんだよ! どんなことになるのかなんて  
 簡単に想像がつくし、家族があるのなら、それを大事にしなけりゃならなかったんだ!  
 安藤が傷つく必要なんて……」  
「やめて!!」  
「安藤……」  
「……好きだった人のこと…そんなふうに言われたくないの……。大好きだった人のこと、  
 そんなに簡単に嫌いになれる?  
 周りからはどう見えてたのかわからない…。彼にとっても遊びだったのかもしれない…。  
 でもね…、わたしには、初めての恋愛だったの……」  
あれだけ泣いたのに、どこに涙が残っていたのか。安藤の頬を悲しみ色の雫がつたう。  
俺は右手を伸ばし、それを拭って、  
「……小笠原…」  
何かを言いかけた彼女の唇を、そっとふさいだ。  
安藤は一瞬大きく目を開き、そして、ゆっくりと瞳を閉じた。  
 
最初は軽く、少しずつ強く唇を押し当てる。  
安藤の細い頤に手を当て主導権を握った俺は、少しだけ口を開いて、まだ堅く閉じて  
いる安藤の唇を軽くノックする。  
2度、3度、舌先で優しく触れると、彼女も俺の意図がわかったのだろう、唇を開いて  
俺を迎え入れてくれた。  
最初は軽く唇の周りを攻める。ゆっくりと円を描くように舐めあげる。グロスの甘いような  
少し苦いような味。安藤の味。  
十分に時間をかけて周りを攻め、今は俺自身となったような舌を、安藤に進入させる。  
まだ奥に縮こもっている安藤に、挨拶をするように優しく舌先を触れ合わせる。彼女の  
心を解きほぐすように軽く優しく舌先のマッサージを続ける。時折口蓋に舌が触れると、  
安藤は甘い吐息を洩らした。そうか、安藤もここが感じるんだ。  
数を数えるように舌先で歯列を一本一本舐めあげる。  
それ自体には神経は通っていないが、ここも大事な性感帯だということを、俺は知って  
いる。あえて、歯茎には触れない。軽く軽く、じらすように舐めあげる。それをもどかしく  
思ったのだろう、安藤は自分の舌を伸ばして俺を誘導してきた。  
誘われるままに上顎の部分を舐める。先程も感じたが、やはり安藤はここが好きらしい。  
歯の付け根あたりを重点的に攻める。前歯から奥歯まで円を描くように舐めとっていく。  
「そこじゃない!」とでも言うように、安藤は俺を強く押し上げた。なるほどね、ここが  
そんなに攻めて欲しいのか。  
 
お望み通りに口蓋を攻めてやる。舌全体を押し付けるようにして緩急をつけながら出し  
入れしてやると、安藤の呼吸は更にはげしくなった。彼女の呼気は荒く、更に荒れ、  
頬にかかる鼻息が少しくすぐったい。  
「……ん…あく…ん、んん……ん……」  
吐息が心地よい。ようやく心を開いてくれたのだろうか、安藤は今までに見たことのない  
柔らかな優しい表情をしている。  
こいつ、こんな顔を隠していたのか。それが何だか嬉しくて、俺は更に彼女を攻め立てた。  
安藤の隠している全ての顔が見たかった。  
何の前置きもなく、いきなり安藤の舌裏に俺の舌を潜りこませる。  
その瞬間、安藤の動きが止まった。体を硬直させ、抗議をするかのように瞳を開く。そこ  
に映る感情は困惑。  
そうか、ここか!  
今までと明らかに違う反応に俺は確信し、舌裏を攻め立てる。奥に逃げようとする安藤  
を強引に絡めとり、縦横に舐めつける。  
その間にも唇に対する愛撫は忘れない。優しく強く甘噛みをくりかえし、彼女の性感を  
高めていく。  
もうすぐだ! 何かが見えた気がした。だが、もう一つのものも見えた。  
そろそろ息が苦しいのだろう、安藤の表情は快楽よりも苦痛を訴えるものとなっている。  
心残りではあったが、最後に舌先を軽く触れ合わせ、俺は唇を離した。  
 
キスを終えた後も、安藤は焦点の合わない瞳で俺を見つめている。二人とも息が荒い。  
しばらくそうして、何も言わぬまま見詰め合っていた。  
「……ビックリした」  
呼吸が落ち着いたころ、安藤が口を開いた。  
「キス…うまいのね……」  
「まあな」  
誉められて悪い気はしない。  
「やっぱり七瀬さん?」  
安藤の瞳に、少しだが、いつものからかうような光がある。それが嬉しかった。  
「こーゆー時に、そーゆーこと聞くかなぁ?」  
わざと間延びした口調で言ってやる。安藤の口元がほころぶ。素直にそれを嬉しく  
思った。  
2人は見詰め合い、少し笑った。  
 
気持ちが高まる。安藤をいとおしく思う。俺はもう一度、右手を伸ばした。  
「待って」  
安藤が俺を軽く押しとどめる。拒絶されるとは思っていなかった。少し、辛そうな顔を  
していまったかもしれない。  
「ここじゃ…、ダメ・・…、誰か来るかもしれないから……」  
安堵、とたんに表情が優しくなる。我ながら現金なものだ。  
「…ごめんね…、わたし、小笠原のこと利用してる…。辛いのごまかそうとしてる……」  
俺の表情を誤解したのか、安藤の顔が再び曇る。  
「だーかーらー、安藤は考えすぎなんだよ。辛いんだろ? 苦しいんだろ? だったら、  
 吐き出せよ。俺が受け止めてやるから」  
「でも……」  
煮え切らない安藤に、俺はもう一度くちづける。今度は触れるだけの軽いキス。  
「小笠原……」  
叱られた子供のような心細げな顔で安藤が見上げてくる。  
「こういう時には友達に頼ってもいいだろ?」  
「……うん」  
安藤は、もう一度俺の胸に顔をうずめた。  
 
 
安藤と歩く。  
月明かりの下、言葉もなく、ただお互いを、それだけを絆のように感じて、人通りのない  
道を手を繋いで歩いた。  
小さな手、柔らかい手。あんなにテニスに打ち込んでいるのに、どうしてこんな綺麗な  
手でいられるのだろう?  
心細そうにギュッと握ってくる安藤の手を、そっと握り返す。  
いつしか俺達は立ち止まり、誰もいない道端で、もう一度唇を合わせた。  
月だけが二人をそっと見ていた。  
 
「遠慮しないで上がってね」  
「ああ……」  
「あ、大丈夫よ。今日も帰って来ないから」  
安藤はバッグから鍵を取り出し、玄関の鍵穴に差し込んだ。  
豪邸と言ってもいいような大きな家、手入れの行き届いた庭。俺の家の何倍くらいあるん  
だろう? ちょっとだけ考えてやめた。団地とじゃ比べ物にならないよな。  
ただ、その家には明かりが無かった。  
家に帰れば誰かがいる。親父やお袋がいなくったって、君子がいる。俺にとって、家族が  
そこに居るのは、当たり前の風景だった。  
でも、安藤には誰もいなかった……  
 
「さっきのシャツ出してもらえる?」  
「これか?」  
俺にはよくわからないが、有名なメーカーのものらしい上品にまとまった家具を、趣味良く  
配置した安藤の部屋。そこに通され、最初に安藤はそう言った。  
「ええ、だいぶ汚しちゃったから、お湯洗いしないと落ちないと思うし」  
俺が着ていた夏物の開襟シャツは、安藤のメイクがベットリついて、ちょっとお話になら  
ないありさまになっていた。手水場で安藤がメイクを直している間にカバンに突っ込んで  
いたのだが、どうやら、それを洗ってくれるようだ。  
「ん〜、悪いな」  
「わたしが汚したんだしね。お風呂の用意する間に洗うだけだから」  
俺の渡したシャツとにらめっこをしながら、安藤が答える。  
「う〜ん、白い服だし、これだけひどいとシミになっちゃうかも。ホントごめんね。  
 それより、お風呂は先に入る? それとも後から入る?」  
一度も俺の顔を見ないまま、はしゃいだ声で安藤が言葉を続ける。  
そんな居たたまれない光景に耐えきれず、俺は安藤の肩に手を伸ばした。指先が触れた  
瞬間、安藤の体が強ばる。  
「無理するなよ……」  
後ろからそっと抱きしめる。  
柔らかく、壊さないように。安藤の心と体。そのどちらも、そっと抱きしめる。  
「……無理じゃ…ないわよ」  
力を抜き、安藤が俺に体重をあずけてくる。  
「無理じゃない…、強がってもいないわ……。  
 小笠原に抱いて欲しい…それは、ホント……。  
 でもね…、この後、わたしがどうなるかわからなくて、それがちょっとだけ怖いの……」  
「……そうか」  
安藤を抱きしめる両手に、少しだけ力を込める。お互いの鼓動を強く感じた。  
 
「小笠原、もういいわよ」  
抱きしめる俺の両腕に、そっと手を押し当てて安藤が言う。  
「落ち着いた。お風呂の仕度してくるね」  
「ん、頼む」  
俺の顔を正面から見つめて、安藤は今度はちょっと笑った。  
「言っておきますけどね、わたしのいない間に変なことしないでよね」  
「変なことってなんだよ」  
「下着がなくなってたら、小笠原のせいだからね」  
「俺はパンツより、中身に興味があるんだよ」  
安藤の軽口に少し舌を出して答えてやる。  
「小笠原のえっち〜!」  
安藤は嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑って部屋の外に出ていった。  
 
その後姿を見届けて俺はベッドに腰を下ろす。  
ふぅ……、疲れた……  
こういうやり取りはなれてない。相手を気遣った癒しの会話か…、難しいな……。  
力を抜いてベッドに寝転ぶ。  
うわっ! や〜らけ〜! これがウォーターベッドってやつか? こんなの初めてだよ。  
あいつ、こんなとこでも贅沢してるんだな。  
なんだか嬉しくなって、子供のようにゴロゴロと転げまわってしまった。  
 
少しはしゃいで、その後、それを取り戻すように、今までよりずっと冷静になる。  
ここでこれから…安藤とするんだな……  
大丈夫だろうか…、心を癒すSEX…俺にできるだろうか……?  
不安な心とは裏腹に、愚息はMAXになっていた。  
 
 
ドアが開いて、廊下から光がさし込む。  
「電気消しててくれたのね」  
「やっぱり、恥ずかしいだろ?」  
逆光にシルエットだけ映る安藤が部屋の扉を閉じると、もう一度、俺達は深奥の闇に  
包まれた。  
 
「もうベッドにいるの?」  
「自分の部屋だし、明かり無くても来れるだろ?」  
「む〜、せっかち〜」  
どこか笑いを含んだ明るい声で、安藤が答える。風呂上りの甘い香りが近づいてきて、  
俺の差し出す手を受け取った安藤もベッドに上がった。  
「うりゃ!」  
そのまま手を引いて、安藤を抱きかかえる。うん、バスタオル巻いてるだけで、下着は…  
とりあえず、ブラは着けてないな。  
「あ、もう! ムードないわね〜」  
「今日は楽しいセックスするからな。そういうのは、また今度な」  
「へ〜、次がある気でいるんだ〜」  
「え? それじゃ、今日だけ? 今日だけ私を利用する気なの?」  
おどけてそう言う。闇の中でも安藤の顔が綻ぶのがわかる。  
「ん〜とね〜、これから先次第ね。うまく出来たら考えてあげてもいいわよ♪」  
「了解! んじゃ、気合入れてやりますか!」  
背中に回した腕に力をこめ、俺は安藤の唇を奪った。  
 
神社の時のような手順は踏まない。愛撫代わりに唇を強く押し付け、安藤の唇を揉み  
しだきながら、強引に舌を進入させる。  
さっきとは違う荒々しいキスに少し戸惑っていたようだが、今度は安藤も積極的に舌を  
からめてくる。互いに主導権を握ろうとしばらく攻防を続けたが、やがて根負けしたよう  
に、安藤は俺に全てをあずけてきた。  
神社でも感じたことだが、安藤はまだキスにも慣れていない。開発しきれずに別れた  
のは、さぞかし相手も無念だったろうなぁ、と何だか妙な気持ちになった。  
安藤も、神社の時よりよほど出来あがっている。今度はじらして盛り上げる必要も無い。  
さっきのキスで安藤の弱点はわかっている。俺は、口蓋に舌全体を押し当て、円を描く  
ように緩急をつけて動かした。俺に抱き着いている安藤の腕に、力が込められていくの  
がわかる。  
腕を遊ばしておくわけにはいかない。左手は、そのまま背中に当てて姿勢を固定し、  
残った右手をゆっくりと背骨のラインに乗せて降ろしていく。  
腰骨の辺りまで降ろした手で、ゆっくりと揉み解すように優しく愛撫する。安藤のまだ  
慣れていない体を、少しずつ開いていく。  
それほど慣れていない上に、俺の相手をするのは今日が初めてだ。まず安心させな  
ければならない。キスは求められるままに激しく、愛撫は細心の注意を払って優しく。  
微妙なバランスを考えながら、安藤の体を攻略していく。  
明かりがないのがつらい。相手の表情がわかれば、もう少し楽に進められるのだが、  
この暗闇の中では勘と経験に頼るしかない。こんなことなら、木地本に誘われた時、  
もっと遊んでおけばよかった。顔で相手選んでる場合じゃないよな……  
愚痴を言っても後悔しても始まらない。今までに蓄えた知識と経験で安藤を喜ばせなけ  
ればならないんだ。  
 
キスは次の段階に移っている。あの時見つけた安藤の弱点、舌裏を、また、執拗に  
攻めてやる。  
俺の舌で包み込むようにして、安藤の舌を指フェラの要領でしごきたてる。激しい動き  
は、あえて行わない。弄るようにゆっくりと抜き差しを繰り返し、立てた舌先で舌裏の  
溝をゆっくりと愛撫してやる。  
限界まで伸ばした舌で、安藤の舌の付け根をチロチロと攻めてやると、安藤は体を  
大きくくねらせて、それに答えてくれた。  
うん、どうやら、効いてるな。  
一旦、唇を離す。姿勢を変える時に相手の口の中に舌を入れたままでは、さすがに  
心配だ。  
安藤の吐息を感じながら左手に力を入れ、彼女の体を覆うバスタオルを引き抜くと同時  
に、俺が下になる形でベッドに倒れこむ。  
安藤の裸の胸が直に押し付けられる。胸に感じる重みが、何とも言えず心地よい。  
「…ビックリしたぁ、こういう時は先に言ってよね」  
安藤が鼻にかかった声でかわいく抗議してくる。  
「そんなかわいい声で言ったって、文句言ってんだか甘えてんだか分かんないぞ」  
もう一度何かを言おうとした唇を優しく奪うと、安藤も強い力で唇を押し付けてきた。  
今度は主導権を握るつもりなのだろう、安藤が積極的に俺の中に進入してくる。  
好きなように入ってこさせておいて、安藤の舌を甘噛みすることで固定する。  
ビックリして逃げようとするが、そうはさせない。唇を使って痛みを与えないように甘噛み  
しながら、逃げ場のなくなった安藤を俺の中で存分に弄ぶ。  
舌を伸ばしていない分、余裕を持った動きが出来る。俺の中に捕虜となった安藤を、  
細かく細かく攻め立てる。  
「……んー、く…んく……あ…く………」  
安藤が洩らす吐息。俺は征服感に酔いしれた。  
しばらく遊んだ後開放してやると、安藤は大急ぎで自分の中に逃げ込んでいく。それを  
追いかけて、もう一度安藤に入りこみ、今度は向こうでかわいがってやった。  
 
その間も、手は遊んでいたわけじゃない。  
左手は肩甲骨の辺りを優しく愛撫し、右手は安藤の形のよい尻を、さっき腰の辺りを愛撫  
した時よりは、よほど強い力で揉んでいた。  
厚い脂肪の上からも、安藤の体が熱くなっているのがわかる。手のひら全体を使って押し  
付けるように揉みしだくと、安藤は耐えかねたように体を揺らした。押し付けられた胸が、  
その度に形を変える。豊かな胸の感触を楽しみながら、俺は安藤を攻める手に更に力を  
加えた。  
 
俺のふとももに押し付けられた安藤の腰が、軽く前後に揺れている。  
熱くヌメッた感触。濡れている。安藤は確かに俺の愛撫で女を熱く燃やしている。  
俺の愛撫だけでは物足りなくなったのか、自分で押し付け体を揺することで、安藤は更な  
る快感を求めていた。  
まあ、俺も人のことは言えないわけで、密着した俺と安藤に挟まれた俺の分身は、限界  
まで膨れ上がり、安藤が俺の愛撫に合わせて上下する度に、まるで絹のような感触の  
彼女の肌にしごきたてられ、発射を押さえるために必死で尻に力を込めなければならな  
かった。  
俺の腿も安藤の腹も、お互いの流した体液でヌトヌトにヌメッている。  
そろそろいいだろう。  
俺は右手を伸ばし、両足の間から差し込む形で安藤の女に触れた。  
 
予想していた通り、そこは熱く濡れそぼっていた。  
まずは、手のひら全体を押し付ける形でやさしく揉んでやる。指は特に使わず、力の  
加減だけで感じを確かめるために、陰唇やクリトリスの周りを強く弱く押してみる。  
安藤のことは、まだよくわからない。オナニーがクリ派なのか中派なのかが分かれば、  
どう攻めていいのか目星がつく。それを確かめるための軽い愛撫だ。  
右手を動かしながらも全身の感覚を鋭敏にして、安藤の変化を感じ取る。さっきも感じた  
が、やはり表情が見られないのはつらい。少しの兆しも見逃さないために唇も離した。  
陰唇を強く押せば、体を堅くする感じで押し付けてくる。ここは使っているようだ。  
クリトリスの周りはやはり強く感じるようだ。さっきよりも良い反応がかえってくる。  
「……ん、んんー…、小…笠原ぁ…」  
「どした? やっぱりこの辺りがいいか?」  
親指を使って、今までよりずっと強い力で揉んでやる。  
「……言えない…よぉ…」  
「そこまで言ったら、全部言ってるようなもんだって」  
どうやら、安藤はクリ派のようだ。  
 
左手も持っていく。ふとももの内側を優しくさすってやる。右手の動きに合わせるように、  
時には少しずらすように動かしてやると、安藤はもどかしげに体を揺さぶる。  
右手の動きにも変化をつける。人差し指と中指を小陰唇をなでるように優しく前後に  
動かし、その間に親指を押し当ててクリトリスの周りを揉んでやる。  
オナニーはクリ派のようだが、安藤はまだ剥けていない。強い刺激を避けるため、愛液  
をすぐ下の蜜壷からすくって塗りたくる。それを潤滑液にしてさねの方からしごくように  
揉みたてると、安藤のせつなそうな声が一層大きくなった。  
「あ……、あ、ん、あ…くぅ……、そこ、ダメ……や、そこ……」  
かわいい声でそんなことを言われても説得力が無い。ここでやめるバカなんているものか。  
「ホントにやめていいのかな〜?」  
愛撫する指の力を少し弱めてやると、安藤の腰がそれを追いかけるように向こうから俺に  
押し付けてくる。  
「体は正直ですね〜。ホントにやめてもいいんですか〜?」  
「……ん〜〜〜〜」  
安藤は抗議するように鼻を鳴らし、背中に回した両腕で俺の体を力一杯抱きしめた。  
今、安藤はどんな顔をしているのだろう? どんなかわいい顔をしているのだろう?  
明かりを消しておいたことが残念でならなかった。  
 
 
安藤の頬に軽くキスして股間から手を抜き取る。  
「……え? どうしたの?」  
「心配しなくても、ちゃんと続きしてやるからさ。  
 ちょっとだけ腕の力抜いてくれるか?」  
「別に、そんなこと心配してるわけじゃ……」  
「ほらほら、早く早く」  
「む〜〜〜〜」  
安藤の背中に腕を回し、ゴロン! と、もう一度体勢を入れ替える。  
今度は俺が上になった。  
「こっちのほうがさ、いろいろしてやり易くなるだろ?」  
「……ばか」  
 
安藤の背中に回した左手で体重を支え、彼女の負担を減らす。その間に右手は安藤の  
豊満な乳房に伸び、唇は頬にもまぶたにもキスの嵐を加えていく。  
耳に舌を這わせながら、とろけるように柔らかい乳房を優しく、時に強引に揉みしだく。  
シャンプーの香りを楽しみながら味わう安藤の耳朶は甘く、そこから感じられる決して風呂  
上りのものではない熱さは、俺の興奮を嫌が上にも掻き立てる。  
乳房に伸ばした右手ですくうように揉みたてる。手の平に吸い付く肌の感触が心地よい。  
テニスで鍛えた安藤の体。仰向けになっても形のよい胸はその量感を失わず、俺の手に  
余るような魅力的なボリュームを保っている。手首のスナップ効かせるようにして、手の平  
全体を使って揉みたてる。強く握ると指と指の間からはみ出る柔肉。着やせするのだろう  
か、安藤の胸は服を着ている時よりも、ずっと大きく感じられる。  
「……ん、んーん、…あ、…小笠原ぁ……」  
甘噛みした犬歯を耳たぶに沿って軽く動かしてやると、安藤は甘い吐息共に唇を押し付け  
てきた。軽く唇を触れあわすだけの小鳥のキスを何度も繰り返す。  
「……小笠原ぁ…」  
「大丈夫、ここにいるから、な」  
「……うん」  
少しでも不安を取り除いてやりたい。彼女の負担を少しでも軽くしてやりたい。  
今までのどのセックスよりも、ずっと優しく丁寧に彼女の体を扱う。俺のできるのはこれ  
だけしかないから。今だけ忘れられるのでもいい、俺の出来ることはこれしかないから。  
 
右手にこめる力を少しだけ強くする。  
「……ん、ふ…」  
「痛い?」  
「…だいじょうぶ…、気持ちいいから……」  
「そっか」  
親指の腹を使って乳首を擦りたてるようにして揉む。強く力を込めた指が、乳首を擦る  
たびに、安藤が体を固くして耐えかねたような吐息を洩らす。  
もう少し強くしてもいいのか?  
親指を押し付けるようにして乳首をつぶしグリグリと揉みたてる。その間も他の4本の  
指と手の平を使って乳房の愛撫は続ける。  
「…ん〜、ん、ん、、はふ……あっ・……」  
安藤の呼吸は荒く、時折、堪えかねたようにかわいい声を洩らす。そんな安藤が愛お  
しい。錯覚だとはわかっていても、今だけはこの腕の中にいる無防備でかわいらしい  
安藤が俺のもののように思えた。  
 
キスの位置を段々と下に下ろしていく。頬から首筋に、そして鎖骨のくぼみを舐め、  
噛み、存分に味わって次に安藤の豊満な乳房に移る。  
右側は手で攻めている。口は左に持っていった。  
乳首の少し上の辺りをきつく吸ってやる。  
「…だ…め、痕ついちゃ…う……」  
ポン! と強い音をたてて口を離すと、そこは少し熱を帯びていた。安藤の白い肌に  
今日の印が残せたはずだ。  
「ごめんな、今日の記念が欲しかったんだ」  
右手で乳首を弄びながら、おどけた声で言ってみる。  
「おかえしっ!」  
安藤が俺の首筋を強く吸う。  
「おい! そんな目立つ所をか!?」  
夏服の季節だ。首筋のような目立つところにキスマークを残されてはたまらない。必死  
で振り払おうとするが、安藤は俺の首に両手を回して強引に唇を押し付けてくる。  
ポン! と、もう一度強い音がして、安藤が唇を離した。首筋に充血の感覚…、絶対に  
痕が残ってるな。君子やかすみに見られたら、どう言い訳するんだよ……。  
「これで、おあいこよね♪」  
そう言って、キスマークがついた所を安藤がゆっくりと舐めあげる。  
うわ、悔しいけど、これ気持ちいいよ。  
「おあいこじゃないよ……」  
ようやく抱擁から開放され、口をもう一度胸に運びながら俺は愚痴った。  
ちくしょう、お礼はたっぷりくれてやるからな  
 
「でも、キスの痕が残せる関係っていいわよね」  
思わず零れた言葉。ポツリとつぶやく。  
「え…?」  
「あ……」  
しまった! 聞き返していい言葉じゃない!  
「……小笠原」  
「何も聞こえてないよ!」  
安藤の豊かな双球。その1つを無理やりに攻め立てる。いきなり乳首を口に含み、乳暈  
ごと唇で挟みながら、舌で攻めてやる。  
「え? も…う……?」  
戸惑う安藤の声をまったく無視して、そのまま攻め続ける。さっきのお返しとばかりに  
強く吸い込み、頭ごと後ろに下げて安藤の乳房を引き伸ばす。  
「……や、…やぁ……」  
ちゅぽん! と、かわいらしい音をたて乳房を元の位置に返してやる。  
「さっきのお返し〜」  
「もう! もう一回、目立つとこにつけるわよ!」  
「それは困るな」  
安藤に反撃を許さず、俺はもう一度左の乳首に舌をはわせる。今度は右手で同時に右  
の乳首も攻めてやる。しばらく他を攻めるのはお休みだ。親指と人差し指を使って、しご  
きたてるように揉んでやる。左の方も舌で縦に小刻みに舐め上げ、早く強い刺激で安藤  
に快感を与えていく。  
「あ、あ、あ、あ、あ…、や…あ…。強すぎる…よぉ……」  
そんな泣き言は聞く耳を持たない。少しエスカレートして、今度は前歯と爪を使って今ま  
でより更に強い刺激を与えてやる。  
「や! だめ…ホント…だ…め……、ホント…変…なっちゃう……」  
変に? ふ〜ん、面白い。それじゃ、変にさせてやろうじゃないか。  
右手を乳房から離し、下に下ろす。  
 
そこは、さっきより凄いことになっていた。  
安藤が濡れやすいのは、さっき攻めた時にわかっていたが、こんなになっているとはさす  
がに思わなかった。一帯が熱くヌメり、太ももの辺りをなでるだけでぬちゃぬちゃといやら  
しい音がする。  
「安藤、凄いな」  
固くとがった乳首を開放し、少し言葉で攻めてやる。  
「…………」  
「濡れやすいんだな、こんなの初めてだ」  
「……言っちゃ、やぁ」  
子供に戻ったような安藤の言葉遣いがかわいらしい。安藤を愛おしく思う気持ちが、自分  
でも押さえられないくらいに高ぶっていく。  
「そういうとこも好きだよ」  
キスをした彼女の頬がやけに熱い。きっと真っ赤になっているのだろう。  
これだけ出来あがっていれば、もう大丈夫だろう。俺はいきなり中指を安藤の中に沈めた。  
「ん! ……ふぅ。…あ!」  
熱く溶けたぬかるみは、何の抵抗もなく俺の中指を飲み込んだ。  
思わず力が入ったのだろう、入り口の辺りが痛いくらいに締め付ける。しっかりとスポーツ  
に打ち込んでいるだけあって、安藤の下半身はよく鍛えられている。  
 
この中に…、これから……  
口にたまった生唾をゴクリと飲み込む。その音が聞こえたのではないかと不安になった  
が、安藤の方はそれどころではないようだ。  
「やぁ、だめ…今は…ホント、そこ…だ…め……」  
体を細かく震わせながら、切れ切れに声を絞り出す。  
「だめってことは、本当はして欲しいんだろ?」  
「や! ちょっと待って! 今はホントに……」  
腹側をなでるように指を半回転させてやる。  
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」  
声にならないように、安藤が鼻を鳴らす。少し緩んでいた入り口が、もう一度強く指を締め  
付ける。どうやら指がアレにかすったようだ。  
そうか、安藤のGスポットはこの辺りだな。  
それがわかれば話は早い。さっき擦った辺りを押すように揉みながら、指を出し入れして  
やる。強く締め付ける力に対抗して出し入れが強引になるが、安藤はそれに苦情を言え  
る状態ではない。  
「お…ねが…い、ホン…ト、つ…よす…ぎ……。やぁ! ホント…おね…がい……」  
「一回、いっちゃえよ」  
口をまた乳房に戻し、もう一度執拗に攻め立てる。コリコリに勃起した乳首を尖らせた舌先  
で細かに素早く攻めてやる。  
左手は腰に回し、あまりに強い刺激から逃げようとする安藤を強引に固定する。腰を押さ  
えられているぶん、上半身は大きく暴れる。縦横に揺れる乳房を逃さないために、口一杯  
にとろけそうな柔肉をくわえる。そうして固定した中で、安藤のかわいい乳首を今までより  
もずっと強く攻め立てる。  
 
「ん〜〜〜〜〜、…んぅ、ん、ん……」  
上半身と下半身を同時に襲う快感に、もはや言葉も出ないのだろう。安藤は鼻を鳴らし  
ながら、強い力で頭を俺に押し付けてくる。  
きつく締め付ける力に対抗し、無理やり中を攻める指をもう一本増やす。中指と人差し指  
でGスポットを中心に縦に横に中を蹂躙する。  
今まで遊ばせていた親指でクリトリスの辺りを押しつぶすように揉みだすと、安藤は呼吸  
も、ものならない様子で俺を強く抱きしめてきた。  
「ん〜〜〜〜〜〜〜! ん〜〜〜〜〜〜!!」  
そろそろ決めよう。  
外の親指と中の中指で挟むように、両方の弱点を攻めてやる。両方をシンクロさせて細か  
く震わせる動きに、安藤はもう逃げることすら出来ない様子で俺に体を強く押し付ける。  
口を胸から離して形のよい耳に移す。複雑な形の耳殻を舐めながら、俺は最後の呪文を  
口にした。  
「安藤、俺はここに居るから、ちゃんと側にいるから、安心していいよ」  
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」  
安藤は俺を強く抱きしめ、強く締め付け、その後、力尽きたように全身の力を抜いた。  
                                        <つづく>  
 

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