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「そう言えば、君子ちゃんに聞いたんだけど」  
「何ですか?」  
「君子ちゃんのファースト・キスの相手って、貴方なんですって?」  
「!」  
 げげ、き、君子のヤツ何もそんなことまで先輩に言わなくたっていいじゃないか。  
 にこやかな表情だけど、多分先輩は俺のことを責めている。  
 妹の唇を奪った鬼畜な兄だとか思ってるに違いない。  
「え、ええ、そうです。  
 でも、子供の頃のことですよ。およめさんごっことか言って、結婚式の真似事してて」  
「君子ちゃんいいなぁ」  
「…え?」  
「だって、私より先にファースト・キスを経験しているんですもの」  
「えと、それは、誰でもいいってものじゃありませんし」  
「そうね…だからうらやましいの。君子ちゃんは、貴方のことが大好きだから」  
 おいおい、そりゃ俺達はよく仲がいい兄妹って言われるけど、そういうことは…  
「いいなぁ…」  
 そう言って先輩は目を閉じた。いや、いつもこんな表情という気もするけど、そんな先輩はあまりにも無防備だった。  
 俺はありったけの勇気を振り絞って右手を伸ばし、先輩の頬を撫でた。  
 一瞬、ピクッと反応する先輩。  
 だけど、拒絶しようとはしない。  
 いいのかな? い、いいのかな?  
 俺の視線は先輩の唇に吸い寄せられていた。桜色の柔らかそうな唇。  
「ん…」  
 先輩の唇が甘かったのは、さっきまで飲んでいたミルクティーのせいなんかじゃない筈だ。  
 舌を伸ばし、先輩の唇を割る。先輩の中に滑り込む。そこから先は夢中だった。  
 
 

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