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 低く空を覆い隠す黒い雲は、今にも泣き出しそうだった。  
 時折あおるように吹く突風は冷たく、吹き飛ばされそうな自転車に必死でしがみついた。  
 図書室に長居するんじゃなかったと思いながら必死でペダルをこぐ。  
 はためくスカートのすそを抑えるのは、そろそろあきらめないと雨に降られるかもしれない。  
「きゃ」  
 不意に、ペダルから抗力が消える。行き場をなくした力に自転車のバランスはたやすく崩れ、脇の草むらに倒れこむ。  
 あわててスカートを押さえ、立ち上がる。人影が近くにないことにちょっとほっとする。  
「なにがおこったのかしら」  
 一人つぶやいて、倒れた自転車を起こす。スタンドを立て、ペダルを回す。  
カラカラと音をたててペダルは回るけれど、タイヤに力が伝わらない。  
 ここから歩いてかえろうと思うと、かなりの距離を歩かなくてはいけなかった。  
帰れないこともないけれど、いつ降り出すかわからない天気が不安だった。  
 幾人かの生徒がわたしの後ろを通り過ぎる。みんな空を見上げ、急ぎ足で通り過ぎていく。  
 わたしはまだ、考えあぐねていた。電話で家族に迎えに来てもらう。  
ううん、まだ、だれも帰ってきていない時間。  
 知っているサイクルショップは少し距離がある駅前だし、近くにほかのお店があるかどうかもわからない。  
「ねぇ、どうしたの?」  
 
 不意に後ろから声がかかる。振り返ると、同じ高校の男子生徒だった。襟の徽章が同学年だと告げていた。  
「あれ、チェーン外れてるよ、その自転車。」  
 男の子と話すのにあまりなれていないわたしは、ただ、あの、その、しか言えないでいるのに、その人は気にしないようすで、自転車の前に座り込む。  
「えっと、チェーンをギアに引っ掛けて、ゆっくりまわす。」  
 ガチャガチャ、カラララララ  
 ものの1分もたたずに、タイヤが元のように動き出す。  
「ほら直った。でも、チェーンがちょっとゆるいみたいだから、一回お店で見てもらったほうがいいかもね。」  
 声も出せないまま何度も頭を下げる。その人は、チェーンのオイルで真っ黒な手をひらひらと振って、帰っていった。  
まだ1年生のころのことだ。  
 次の日、お店でチェーンを張りなおしてもらうのが、なんかちょっと惜しい気がした。  
 
 あれから、もう、丸一年がたとうとしていた。  
 あの日から全部の教室を見て周り、彼の姿を探した。探すのに1週間もかかった。  
 けれど、なかなか言い出すきっかけがなかった。毎日、毎日彼のことばかり考えていた。  
 毎日毎日、目で追った。なぜか彼の幼馴染の広瀬さんたちと彼が話しているのを見るたび、胸が痛んだ。  
 図書室でタイミングを計って本を落として、偶然を装って声をかけたのが、まだほんの2週間前。  
 これが恋だと自覚したのは、まだ1週間ぐらい前だった。  
 図書室のカウンターにひじをついてぼんやりと目の前の活字を追う。文字の意味は頭に入ってこない。  
 
「本多さん? 先生ちょっと出かけなきゃいけないから、帰るときに、かぎ、お願いできる?」  
 司書の先生から、鍵を渡される。今年の春からやってきたその若い女の先生は、図書室に入りびたりのわたしを信頼してくれているみたいだ。  
 中間テストまでまだ間があるからか、人影はまばらだった。  
 5時を知らせるチャイムが鳴る。その閉室時間を知らせる鐘とともに、みんなが帰っていく。  
 すでに窓の外は真っ暗だ。机とイスを並べなおして、部屋の明かりを落としていく。  
 建物のすぐ外にある防犯灯の光が、葉の落ちたポプラの枝の影を書架に落とす。  
 ほのかに明るいその部屋は、知らない人だったら不気味に思うかもしれない。  
 わたしだって、これが理科室だったら、幽霊が出そうだと思う。  
 だけれど、本の背表紙が並んだその部屋は、わたしには温かみさえ感じられる。  
 バタン  
 勢いよく、扉が開けられる。ちいさくきゃっと悲鳴をあげてしまった。  
「…… くん ?」  
 そこには息をきらして彼が立っていた。  
「あれ? 本多さん? 今日当番だったの? というか、もうおわり?」  
 詳しく話を聞いてみると、数日後の授業の発表当番で、その資料を探しに来たということだった。  
 まだ、校門が閉まるまで時間はまだあった。もう一度電気をつける。  
「それで、どんな資料かしら。」  
 彼が言葉を失う。すこし考えて、また、ためらう。  
「その、保健体育の……」  
 彼が赤くなり、わたしも、真っ赤になった。  
 わたしたちのクラスも少し前にその授業をやった。  
 男女数人ずつにわかれて、性について発表しあうものだった。中には泣きそうな女の子もいた。  
 わたしたちのグループには、そういうのに無頓着な子がいたから助かった。  
 一般書架にはその類の本は少なかった。真っ赤になりながら、彼が本を斜め読みしている。  
そのとき、書庫にある本のことを思い出した。  
 
 すこし前に、司書の先生が女の子数人しかいないときに、書庫に入れてくれたことがある。  
 そこは外からの光をさえぎるように2重扉で区切られ、そして温度湿度を一定にするよう空調も入っていた。  
 中には少し大きめのテーブルと、イスが数脚、誰も入らないような部屋のわりに、頻繁に使われている形跡があった。  
「時々、不自然な呼び出しがあるの知ってる?   
 女の子と、男の子が2分くらいずらして別々に職員室に呼び出されるの。  
 別々に呼び出すんだけど、ここに連れてこられるの。」  
 そして、彼女が鍵付のロッカーから数冊の本を取り出した。  
 一番上の1冊は高校生のための性とか、そんな感じのタイトルだった。  
 その下にはティーン誌の特集冊子や、海外の手引書を翻訳したものだろうか、もう少し難しいタイトルの本もあった。  
「一応進学校でしょ?   
 付き合ってるっていう2人には、変に押さえつけるよりも、しっかり"教育"して、わかってもらおうってことらしいんだけど……  
 保健の授業より、"実践的な特別授業"しているの。ほら、"器具"もあるよ。まぁ、避妊具の装着練習用だけどね。」  
 そういってパッケージに入ったコンドームや"器具"を取り出して見せた先生の言葉に、みんな恥ずかしそうにちらちらと互いを見ていた。  
「"教科書"とかは持ち出さなければ、見に来てもいいよ。でも、こっそりね。」  
 なんどか、見てみようと思っていたけれど、タイミングがなかった。そして、今、彼以外、だれもいない。  
鍵は、わたしが持っている。わたしの心に、抗う余地はなかった。  
 ちょっと待っててと声をかけて、図書室の入り口の鍵を内側からかけ明かりを消す。書庫の扉を開け、彼を呼ぶ。  
「ないしょよ。」  
 そう彼に声をかけ、鍵付のロッカーから本を出す。  
図書室は明かりが落ち鍵が閉まっているから、見回りの先生に邪魔されることもないと思う  
 
 2重扉のなかは、暖房が消えた図書室から入ると、ほんのりと暖かかった。なにより、顔がほてって、熱いくらいだった。  
 真っ赤な顔で彼がノートにあれこれと書き写している。  
 わたしは少し離れた入り口脇のイスに座って、あれこれと彼に話しかける言葉をさがしたがまとまらなかった。  
 彼の手が止まった。ゆっくりと、深く、長く呼吸をしている。  
 空調の低い静かなうねりと、彼の呼吸の音、そしてわたしの心臓の早いリズムが、その部屋に充満していた。  
 彼がつばを飲み込む音がした。  
「わたしね、」  
 沈黙に耐えかね、声を出した。自分でも何を言おうとしているのか、よくわかっていない。  
「わたしね、あなたのことずっと見てたわ。  
 あなたは覚えていないかもしれないけど、一年位前、自転車を直してくれた日から。」  
 たぶん、今、わたしはつま先まで真っ赤だと思う。  
「だから、あなたが、広瀬さんや、桂木さんと仲がいいこと知ってる。みんな、やさしいあなたが好きなんだと思う。  
 でもね、わたし、嫉妬深いの。あなたがみんなと話しているだけで心が黒くなってて、だめなの。」  
 じぶんでも、取り留めのないことを言っているとわかる。なんか、すごく大胆なことを言ってるんじゃないかと思う。  
でも、もうとめられなかった。  
「あなたを、ひとりじめしたい。広瀬さんや、桂木さんからあなたを奪ってしまい。」  
 わたしの言葉は、彼を苦しめるだけだとわかっている。彼が彼女らのだれかと恋人になってるわけじゃないとおもう。  
 それを知った上で、全部捨ててわたしだけをみてほしいといってる自分が、とてもキタナイように思えた。  
 体の向きを変え、彼に背を向ける。  
「……ごめんなさい。でも、だめなの。わたし、嫉妬深いから……」  
 彼が帰ってくれるといいと思った。これ以上彼といたら、もっと彼を独り占めしたいと思うに違いなかった。  
 彼はじっと黙っていた。そして、何か言おうとして、また黙った。彼がそっとイスをたった。  
 少しほっとしている自分と、ひどく悲しんでいる自分がいた。  
 
 彼の足音が後ろわたしの後ろに差し掛かる。でも、ドアを開く音がしなかった。  
「本多さん。おれ、いいよ。」  
 彼の手がわたしの肩にかかった。  
「正直、きみの思いをぜんぶ受け取ることはできないと思うし、みんなともいっぱい話しちゃうと思う。けど、きみを切り捨てることもできない」  
 ゆっくりと振り向くと、彼の顔が間近にあった。優しい顔だった。わたしも手放したくなかった。  
「ごめんなさい。わたしがイケナイの。あなたが、いてくれるだけでいいの…… それ以上、望んだらだめよね……」  
 言葉を言い終える前に、彼の顔が近づいてくる。最後の言葉は彼の口の中に消えた。  
 
 くちゅ、くちゅ  
 彼の舌がわたしの口に入ってくると8の字を描くように口中を揺れ動く。  
 彼に促されるまま立ち上がってブレザーを脱ぐ。自分で白いブラウスが汗で湿っているのがわかる。  
「本多さん…… 赤…… なんだ」  
 自分で胸を見下ろすと、ブラの赤いレースが透けていた。うなづきながら、それに負けないくらい耳が赤くなってると思った。  
 彼がわたしのめがねをはずそうとしたのをあなたの顔もはっきり見えなくなっちゃうと押しとどめる。  
 スカートのホックをはずし、イスにかける。  
 ショーツの赤いレースが汗か何かでじっとり湿っているのが彼にばれなきゃ良いとおもった。  
 彼が、自分のブレザーをテーブルにしくと、わたしを抱き上げ、その上に座らせる。  
わたしも手を伸ばして彼のネクタイをはずす。お互いに、相手のシャツのボタンをはずす。  
 ふと、かたわらに、件の教科書が広げてあるのに気づいた。そのページはキスが図解で載っていた。  
 それが、先ほど彼としたキスとおんなじだと気づいてちょっと赤くなった。  
 同時に、彼がそれを思い出しながらキスをしたんだと思ったら、妙にかわいく思えた。  
 
 背中を浮かせて、彼がブラをはずしやすいようにする。  
 のしかかってくる体の脇を手で軽くなでると、くすぐったいかのようにぴくぴくと震えた。  
 教科書のページをめくってみる。ペッティング。男女共通として全身へのキス。  
 そして男性側としてクンニリングス、女性側としてフェラチオとして図解されていた。  
 彼の唇が、わたしの首筋に軽くキスしながら鎖骨に達する。  
 左手が、優しくわたしの体をなでる。太ももの内側を手の甲が走る。  
 びくびくと震えた足が、何かを求めるように開いてしまい、ちょっと恥ずかしかった。  
 彼の手がわたしのショーツに伸びる。腰を浮かせて、されるがままにする。股間の部分が湿っているのが、すぐにわかった。  
おもわず手で顔を覆う。指の隙間からのぞくと、ひざ立ちになった彼が自分の下着に手をかけているところだった。  
「あ、あの。わ、わたしが、脱がしてあげる。」  
 驚く彼の手を押しのけるように、それを引き下ろす。  
 勢いよく彼のペニスが顔の前に飛び出してきた。亀頭の先端が包皮から突き出しているが、雁首周りはまだ包まれている。  
 さっきのページの図とはちょっと違うなと思いながら、手を伸ばす。  
 手がそっと触れると、ぴくぴくと脈打ち、亀頭の露出が多くなってきた。  
 指で包皮をむいてみる。髪を掻き揚げ、さっきの図のように唇で亀頭を包んでみる。  
 そこから先、どうしたら良いのかわからず、口を離した。  
 棚から"教材"のコンドームを取り出し、二人で本と見比べながら、彼のペニスに装着する。  
   
 なにかが違う気がした。彼のペニスを握る。ゴムの感触がした。  
 わたしの処女を、こんなゴムが奪っていくのかと思った。  
 装着したコンドームを引っ張ってはずした。  
「ちがう。わたしは、あなたに、してほしい。こんな、ゴムじゃいや。」  
 
 本を床に投げ落とす。  
「これもちがう。本の通りに繰り返すだけなんて、"あなた"としてるんじゃなくて、本としてるだけ。  
 ううん、わたしもそう。本の通りしても、"わたし"がしてあげたんじゃない。」  
 彼の手をぐっと引っ張る。自分でも大胆なことを言ってると思う。  
「もういっかい、はじめから…… しましょ。あなたと、わたしの、せっくす」  
 彼がうなづくと、唇を寄せてきた。手を背中に回し、彼の肌を感じる。  
 彼の舌がわたしの口の中におずおずと入ってきた。彼の舌がわたしの舌を求めているように感じる。  
 彼の舌に自分の舌をそっと絡める。彼の背中越しに心臓の鼓動が早くなったのがわかった。  
 たぶん、ほかの誰かがみたら、ぎこちない二人だと思うだろう。  
 息ができなかった。背中の筋が痛くなってきた。でも、唇は離したくなかった。  
 彼の口が静かに離れた。それもわたしの舌は意志を持つように、物欲しげにゆれていた。  
 彼の顔が、首筋に移動する。肩ごしにテーブルについている彼の手にキスをしてみる。  
 その手がわたしの胸に移動しようとするのを両手で押さえ、指を、そして指の間をなめてみる。  
 いつも一人で慰めていたときに想像していた手よりもごつごつしていた。  
 彼の体がぴくぴくと震えた。彼の舌が、胸の谷間をくすぐる。  
 前髪がのどの辺りをくすぐるのが、妙に心地よくてくすくすとわらった。  
 彼の舌が、乳首を転がす。くすぐったさに上げた声が、自分でも妙に色っぽく感じてびっくりした。  
 彼の顔が下半身に到達する。彼の手が腿の下から腰を抱いたので、自然とあそこが彼に突き出される。  
 M字に突き出された足の内側を彼のほほがこする。  
 彼の舌が、割れ目を這い回る。  
 
 どんな声を出して良いのかわからないけれど、押し殺した息が唇を割るたびに、自分でもいやらしいと思う声が出ている。  
 割れ目の深いところに彼の舌が入り込む。処女膜を彼の舌が押し広げているような気がする。  
 そしてその舌が体の内側をなめあげる。  
 たぶん、わたしの体に絶頂が訪れたと思う。脳までしびれるような脈動が体を貫いた。  
「あ、あなたばかり、ずるいわ」  
 彼の髪をなでながら、思わず口をついた。彼がごめんと誤りながら、顔をあげる。  
 力が抜けかけている下半身を引き寄せ、代わりに彼の上にのしかかる。  
 彼がしたように唇を奪う。唇の粘膜と粘膜がこすれあう感触がたまらなかった。  
 同時に、自分の乳房が彼の胸板をちょんちょんとつついているのを感じた。  
 彼の手のひらや、舌とは違う感触がなんともいえなかった。  
 厚い胸板に舌を這わせる。時折息を詰める彼が、とてもいとしく思えた。  
 ペニスは、すでに最大限に膨らんでいるように思えたが、そっと手で包むと、それはさらに大きさを増してくる。  
 先ほど乳房が彼の体に触れたときの感触を思い出し、乳房でこすって見る。彼が息をつめ、小さな吐息をひとつこぼした。  
 それに顔を寄せる。間近に見たそれは、さらに大きくなっているように見えた。  
 彼が息を詰めるタイミングを見ながら、あちこちにちょんちょんと舌を這わせる。  
 思い切ってくわえてみる。そして舌で嘗め回してみる。不意に、それが脈打つ。  
 彼の手が、ペニスの根元に添えたわたしの右手を上から強く抑える。  
 わたしの手が痛いくらいに彼が根元を必死で押さえる。  
 でも、少しだけ、ほとばしりがわたしの口の中に放出された。なぜか、甘いと思った。  
 彼のペニスがすこしだけ柔らかくなる。それを口の中を転がす都度ぴくぴくと脈打った。  
「本多さん、もう、だめだよ。」  
 彼がそういったので唇を離して体にのしかかる。  
 
「ねぇ、ともこって呼んでほしい。」  
 まだ、彼のペニスからわたしの手は開放されない。彼の胸板に唇をよせ、ついばむようにキスをした。  
 やっと彼が、わたしの右手をペニスから胸元に引き寄せる。いっしょにわたしも彼の体に体を預ける。  
 股間を彼の腰骨あたりに擦り付ける。とてもとても興奮していた。  
 彼が、わたしの唇を求めた。わたしも彼の唇を求めた。  
 舌と舌が溶け合い、ひとつになったかのような長いキスをした。  
 彼が体を入れ替え、わたしを組み敷くようにした。彼のひざがわたしの太ももに割り入って、ひざ立ちになる。  
 わたしは足の裏で体を支え腰を浮かせるように持ち上げる。彼のペニスがわたしの割れ目にこすり付けられる。  
 わたしの愛液でペニスがてかてかと光っていた。  
 いくよと彼が声をかける。彼のペニスが股間に差し込まれた。  
 先ほどからだの内側に入った彼の舌よりも、太く、硬いものがぬるりと入っていく。  
 思いのほか大きく感じるそれが膣口を通る瞬間激しい痛みが股間を襲った。  
 思わずゆみぞりになる。そのまま一番奥まで突き進み、こつんという感触があったような気がした。  
 足で彼の体を締める。動かされたら、痛みで気絶しそうだった。必死で彼の体にしがみつく。涙が出ていた。  
 じんじんと、股間が痛い。そっと目を開けると彼が心配そうに見ている。苦し紛れに、にこっと笑ってみせる。  
「入ってるね。」  
 彼がうなづく。  
「あったかい。」  
 ともこも熱いくらいだよと彼が笑う。  
 おなかを手で触ると、彼のペニスの形がわかった。おなかの上から、それをこすって見る。  
 中でそれがぴくぴくと動いた。体の内側の粘膜を、彼の粘膜がこすっている。  
とてもとても幸せだと思った。  
 
 彼がペニスを抜こうとした。とたんに激痛が走る。彼の腰の動きを足と両腕で彼をしっかり抱きしめることで押しとどめる。  
「ねぇ、抜かないで、動かせないかしら。」  
 わたしのむちゃなお願いに彼が体をあれこれ動かしてみる。そのうちいくつかはとても痛かったけれど、気もちいい物もあった。  
 彼にそれをお願いしてみる。膣壁を彼のペニスがこする。おなかに当てた手で、腹壁ごしに彼のペニスを刺激する。  
 自分でクリトリスを触る。中と、外で生まれる感触に、頭の中が白くなりそうだった。  
彼の腰のうごきもだんだん激しくなる。快感と痛みが入り混じり、何がなんだかわからなくなる。  
先ほど彼の舌で与えられた絶頂とはまた違う快感だった。  
 不意に、もっと奥深くに何か熱いものが浴びせられた。おもわず大きな声を出す。  
そしてその刺激に引きずられるように、全身に電撃が走ったような感触があり、頭が真っ白になった。  
 彼がわたしに体をあずけ、力強く抱きしめる。どくどくと熱いものがわたしの中につぎつぎ吐き出される。  
 その都度、脳が焼ききれるような強い快感が体中に走る。  
 意識を手放しても良いと思った。  
 
 ともこと呼ぶ声に、意識が呼び戻される。違和感と軽い痛みがまだ股間にある。  
 心配そうな彼に、笑ってみせる。激しく動いたからか、彼のブレザーは床におちていた。  
 テーブルの上ではわたしの愛液と破瓜の血と彼の精液が混ざり合い、液溜りを作っている。  
 彼が自分の荷物からスポーツタオルを出して、汗といやらしい液体にまみれたわたしのカラダを拭いてくれる。  
 わたしも動こうとしたんだけれど、体が言うことを聞いてくれなかった。  
 不意に、恥ずかしさがわたしを襲った。体を引き寄せひざを抱いて顔を伏せる。  
「わ、わたし、なんて、こと……」  
 彼があわてて謝ろうとしている。  
「ち、ちがうの、あなたと、こうなったのは、とってもうれしいの。でも…… はずかしい。」  
 彼が肩を抱いた。唇を求めた。長く、あつい、キスをした。言葉なんていらなかった。  
 
 
 服を着たあと、ちらばった本を拾い集める。あとで雑巾を持ってきて掃除しないといけないと思った。  
「さ、さっきね、本が違うなんていったけど……  
 わたし、本を見なきゃ、その、おくちでするなんて、思いつかなかったと思う。  
 それに、よく読んでなかったから、そこからどうしていいのかも……  
 本で学んだことを、実際に肌で感じていくのが本当だと思うの。」  
 思い切って、彼に告げる。  
「もっと、その…… "勉強"をすれば、今日以上のことができると思うの……  
 もっともっと勉強すれば、それ以上も……」  
 先ほどにもまして、ほほが熱い。  
「明日からも、もっと、あなたと、勉強…… したい。」  
 ふたりの目があった。時間を惜しむかのようにまたキスを交わした。  
 
 部屋を完全に片付け、彼の手引きで鍵の壊れた窓から校舎の外に出る。  
 冬の冷たい空気がほてった体を冷やしてくれる。  
「ね、二人乗りしていきましょうか」  
 彼が、笑った。わたしも笑った。そらにはオリオンが光っていた。  
-END-  
 

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