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『大人の恋はほろ苦く』  
 
 
それが恋だなんて、冗談かとおもった。  
 
「なぁ……」  
 後ろから声をかけられ、ドキッとする。  
「なんだ、誠太郎か……」  
「誰だと思ったんだ?」  
 そう、このごろ僕は誰かに声をかけられるたびドキドキしている。  
 また、彼女が、突飛なことを言い出さないかと思って。  
 彼女は、なんていうか、ルリ姉に似ている。  
 押しが強く、自分に正直で、明るくて、かわいい。  
 とんでもないことを考えていて、周りの迷惑なんて考えなくて、  
だけど、僕のことを、たぶん、想ってくれている。  
「あのさ、最近、神谷さんが近づいてくるとドキドキソワソワするんだけど、これって、恋かな……」  
 くだらない話の合間に、誠太郎に聞いてみる。  
「…… まぁ、おまえがそう思いたいのなら、止めはしないが……  
 俺からみると、むしろ、ビクビクオドオドしているように見えるんだが……」  
 そう、僕もまだ、これが恋なのか、決めかねている。  
「男になんて同情するつもりは無いが、親友としての最低限の義務を果たすなら、  
『根性あるな、見直したよ』という言葉を送ろう。」  
 微妙で複雑な誠太郎の表情がすべてを物語っていた。  
 
「そうそう、明日の昼に、キミのウチに遊びに行くから。」  
 金曜日の放課後、平穏な帰宅風景をドキドキハラハラに変えてくれる彼女は、そう宣言した。  
 決して、明日の予定ってなんかある? とか、遊びに行っていい? とか、そんな台詞は出てこない。  
 すでに、それは決定事項なのだ。  
「ふふん、わたしの手料理を味あわせてあげるわ。」  
 妙に自信たっぷりな彼女の台詞に、奇妙なデジャビュと恐怖を感じる。  
 ルリ姉が同じ台詞を口にしたときには、胃に流し込むための大量の水と、胃薬が必要だ。  
「? どうしたの?」  
 口からこぼれそうになったため息をごまかして、ちょっと笑う。  
「楽しみにしてるよ」  
 そして心の中で想う。ルリ姉も道連れにしようと。  
「ルリさんは友達とプールいくって言ってたから、お昼食べ終わったら、私たちもいこっか?」  
 ものの3秒で希望は打ち砕かれる。つまり『処理班』は自分ひとりなのだ。  
 いやルリ姉がいたからとて、たしてかわる訳は無い。一口減るかどうかだ。  
 そう思えば、まだ、それほど絶望しなくてもいいかとおもった。  
 …… などと考えている自分が悲しくなった。  
「? さっきから、なんかへんだよ?」  
「いや、それよりさ、この間聞いたんだけど……」  
 ああ、神様。明日だけでいいんです。彼女に普通の、クラスメイトの…… えっとなんとかさん並みの舌と、料理の才能をお与えください。  
 
 
「おはよー、きたよー」  
 土曜日の11時ころ、僕は沈痛な面持ちでドアを開ける。  
 ルリ姉の靴が無いところを見ると、彼女はもう出かけたようだった。  
「ほらほら、休みの日だからって、だれてないで。こんなかわいい女の子が遊びにきたのよ? 神に感謝して小躍りしてもいいくらいだわ。」  
 彼女が振り上げたレジ袋と、何が入っているか、ちょっとおおきな彼女のバッグをかわしながら、あいまいな笑顔を浮かべて、キッチンへと案内する。  
「へー、きれいにしてるんだ。」  
 どこまで知ってか知らずか、彼女が感心する。  
「よしよし、じゃぁ、あっちでテレビでも見ていて。」  
「え”」  
 なんとかフォローを入れて、キケンを回避しようという企みは、開始3分で潰えた。  
「なによ?」  
 いや、なんにもとごまかしながら、リビングへ歩く。  
 たとえばそう、刑の執行を待つ受刑囚とも、今なら友達になれるかもしれない。  
「ふっふん♪ ふふふん♪ ふっふっふっふっ♪ ふふふふふん〜♪」  
 彼女の鼻歌だけ聞いていると3分間ですごい料理ができそうだったけど、出来上がったのは1時間後。  
 そしてその間、えい、とか、あっ、とか、まいっかとか、不穏な台詞に神経をすり減らしたのだった。  
 
「さぁ、召し上がれ。」  
 見た目、まともだった。だが、ここでだまされてはいけない。ルリ姉もここまでは完璧なのだ。  
 というか、カレーライスで見た目から失敗したやつなんて見たこと無い。  
 スプーンを手にとり、カレー皿に入れる。口元に運んで少しにおいを嗅ぐ。  
 口に入れる。噛む。そして、神に感謝した。  
「うん、おいしい。神谷さん料理うまいじゃん。」  
 そう、想像していたことと比べれば、ちょっと辛いなんて天国だ。  
 
「ふふん、練習したから。」  
 カレーに練習?ともおもったが、彼女の手のバンソウコウを見るに、ホントらしい。  
「あー、ほっとした。 そうだ、冷蔵庫のなかのコーヒー飲んでいい?」  
 僕がおいしそうに食べるのに安心したのか、彼女が満面の笑みを浮かべる。  
 いいよと、返事をして、コーヒーなんか作ったっけとおもう。  
 ルリ姉が作ったなんて思えないしとおもっていると、テーブルに暗褐色のビンがドスンと置かれた。  
 グラスに注いだその液体を彼女が一気に飲み干す。  
 ラベルには、確かにコーヒーの文字があった。  
 香りもコーヒーのものだった。  
 ラベルの端に書かれた、26%の文字が、はなはだ疑問だった。  
「うわなにこれ? うわー、なに? まわってるー?」  
 カルーアコーヒーと書かれたビンから、彼女がさらにもう一杯注ぐ。  
 くいっと、半分ほど飲む。こっちを見た。にやりと笑った。  
 とてもとてもいやな予感がした。カレーのせいではなく、背中から汗が噴出す。  
 グラスを持って彼女がこっちに近づく。  
 ふふふと、彼女が笑って、口にそれを含む。  
 
 僕の顔をがぁしっとつかむと、唇と唇がぶつかった。  
 彼女の舌が抵抗する僕の唇を割る。隙間からこぼれた液体がほほを熱くぬらす。  
 むりやり流し込まれた液体が食道、そして胃の粘膜を焼く。  
 這い上がった呼気は気管と鼻腔を焼き、染み込んだアルコールが全身の血液を急速に沸騰させる。  
 僕のファーストキスはコーヒーの苦い味。それも女の子から陵辱されるように奪われたキス。  
 その子は、今、床の上で大きく口を開け、寝てしまっている。  
 僕もまた、カレーに顔を突っ込まないことだけを気にしながらテーブルに突っ伏した。  
 ゴンと言う音が聞こえたが、眠りに落ちる僕には、どうでもいいことだった。  
 
 
 目がさめると、身動きが取れなかった。大の字に、手足が何かで縛られている。  
 じゅうたんが敷いてあるから、リビングだとおもう。服を着ていないようで、背中がちくちくする。  
 顔をめぐらすと、ソファの上に顔だけ横向きだがうつぶせの姿勢で誰かいる。  
 寝ぼけているか、服を着ていないように見える。  
 彼女の顔はエナメル革らしきアイマスクがかかっていてよくわからないが、髪形からして、神谷さんに間違いないだろう。  
 両手はやはり皮製のハンドカフで後ろ手に縛られている。  
 まだ寝ているのか、口を半開きで幸せそうな顔をしている。  
「ああ、起きたんだ。」  
 声のしたほうに顔を向けると、水着姿のルリ姉がいた。  
「ほら、帰ってきたら二人して寝てるんだもん。びっくりしちゃった。」  
 びっくりしたのはいいんだけど、この状況はいったい……  
「あの大きなバッグ、菜由ちゃんのかな? アノ中に入ってたんだよ。」  
 だから、なんで、こんな格好に?  
「いやぁ、なんとなく。二人で使うつもりだったんじゃないの?」  
 いや、僕は知らないぞ と答えようとしたとき、神谷さんが身動きした。  
「え?、なに? どしたの?」  
「あら、おはよう。菜由ちゃん。」  
「その声はルリさんですか? えっと、わたしはいったい……」  
「ああ、かばんの中、使ってみたよ」  
 ちっ たしかにそう聞こえた気がした。彼女がそれをどう使うつもりだったかは、想像したくないところだけど、今この状況は彼女の意にそったものじゃないらしい。  
「あ、今、なんか反抗的。」  
 ルリ姉が、目隠しされ、身動きの取れない神谷さんの元に行く。  
「ひゃぁ」  
 ルリ姉が神谷さんの背中にそっと触れる。抵抗できないことをいいことに、体のあちこちをまさぐる。  
「あっ はっ や、やめてください、ルリさん。」  
 最初はただの悲鳴だった彼女の声に、若干の嬌声が混じっているように感じる。  
 
「ひゃう」  
「あれ? まだ処女だったんだ。」  
 ルリ姉の体でさえぎられた、視界の外で何かが起きている。それを想像し、股間に血が集まり始める。  
「ねぇ、この処女膜、私がもらってもいい?」  
 くちゅくちゅと、ルリ姉が何かをかき回す音が聞こえる。  
「だ、だめ それは、その……」  
 神谷さんが口篭もる。  
「えー、いいじゃん。だれかにあげたいとか、無いんでしょ?」  
 ルリ姉が体を押し付けながら、彼女の耳元でささやく。  
「…… あの、……に」  
 いつもの神谷さんからは想像できない、とても、かわいい声だった。  
「だってさ?」  
 ニヤニヤしながらルリ姉が僕に言う。  
「ひょ、ひょっとして、カレ、近くにいるの?」  
 その台詞に神谷さんは慌てる。彼女の目からルリ姉がアイマスクを取った。  
 彼女の顔が真っ赤なのは、お酒のせいでもなく、マスクに圧迫されていたからでもないだろう。  
「そうだなぁ、私の手で膜を破られるのと、こいつのチンチンでオンナになるのとどっちがいい?」  
 神谷さんが赤い顔をさらに真っ赤にする。  
「お、おチンチン」  
 ルリ姉の愛撫に耐えながら、誘導されるように神谷さんはその言葉を口にする。  
「そっか、菜由ちゃんは、チンチンをマンコに入れたくて仕方が無い淫乱娘なんだ。」  
「そ、そんな……」  
 神谷さんが思わず絶句する。  
「あ、やっぱり、わたしの手がよかった?そうか、そうだよね。」  
「……の、おちんちん、わたしのマンコにいれたい! わたしは淫乱娘です!!」  
 
 ルリ姉の手のひらの上で、神谷さんが踊っている。全身を羞恥と快楽でピンクに染めながら、ハズカシイ台詞を次々と吐き出す。  
「そうです、毎日オナニーする淫乱娘です。」  
「今日の道具も、ローターも、アナルバイブもネット通販で買いました。」  
「ピルも個人輸入で買いました。な、生のチンチンがほしいです。」  
 衝撃的な台詞に僕の股間は痛いほどいきり立っている。  
「かわいい菜由ちゃんのためだ、とくべつよ?」  
 ルリ姉が、上気したほほではぁはぁと息をする彼女を立ち上がらせる。  
 股間からくるぶしまで、いやらしい液体が滴り落ちた。  
 つながれた僕の上にまたがるように彼女が立つ。  
「舐めてみる?」  
 ルリ姉の言葉にひとつうなずくと、僕の顔に股間を押し付けるように彼女がしゃがむ。  
 そして手を、僕のそれに伸ばすと、体重を預けるように僕に体を押し付ける。  
 ペニスを熱くぬれた何かがこする。それが神谷さんの舌であることは間違いがなさそうだ。  
 亀頭がやわらかいものに包まれる。ちゅばちゅばといういやらしい音から察するに、彼女がそれにしゃぶりついているのは確実に思えた。  
 目を開ければ、すぐ前に、彼女のいやらしい体があった。  
 ぴくぴくと震え、何かを待つようにパクパクと開いたり閉じたりしている。  
 そこに、舌を伸ばした。  
「んっ」  
 神谷さんが息を凝らし、彼女の口が、ペニスを強く締め付けた。  
 ドク  
 彼女の口の中でそれが爆発する。  
「んー んー んー」  
 彼女が身をよじるたびにペニスが脈動し、全部を彼女の口の中に吐き出す。  
 彼女がそれを飲み干し、顔を上げる。  
「るりさん、苦しいじゃないですか」  
 どうやら、彼女がのみ干すまで、ルリ姉が彼女の頭を、押さえつけてたらしい。  
「でも、おいしかったでしょ。」  
 彼女が赤くなったのが、股の下からでもわかった。  
 
「では、続いて、貫通式でーす」  
 神谷さんが体を僕のほうに向ける。体を浮かし、ペニスを自分の膣口にあてがう。  
「ホントに生でよかった?」  
「ええ。ぜひ生で。」  
 ルリ姉の確認に力強く彼女が答えた。  
 体重が、接合部にかかる。  
 ほぐされてはいても、そこはきつく、僕のペニスを締め付ける。肉を引き裂いて埋まっていくそこは、ミチミチと音がするような気がする。  
 神谷さんは顔をゆがめながら、腰を落としていく。彼女が、僕にもたれかかった。  
「これで、全部だとおもう。」  
 いつ彼女の処女膜を突き破ったのか、よくわからなかった。だけど、彼女のナカ  
に入ったオトコは、僕がはいじめてだとおもうとうれしかった。  
「すきだよ、神谷さん」  
 一瞬彼女がびっくりした表情をする。そして、笑った。  
「名前で呼んでよ……」  
 彼女のやさしい顔を見つめながらもう一度好きだという。  
「菜由は キミは僕のことどうおもってるの。」  
 彼女が、ちょっとあせる。そんなこといわなくてもわかってるくせにとすねる。  
でも、その台詞が聞きたかった。  
 彼女の目をじっと見詰める。彼女は少し照れ、ちょっと考える。  
「わたしも、……のこと、だいすきだよ。」  
 視線をあわせないように、僕の耳元で彼女が言った。  
 僕の中で、何かが生まれた。それは耐えがたい衝動となって、股間に押し寄せた。  
「はぁう」  
 彼女が声をあげる。彼女の中に注ぐ射精がこんなに気持ちいいなんて、想像したことも無かった。  
 射精後の充足感が僕を支配する。胸の上の彼女のぬくもりが心地よかった。  
 
 
「はいはーい、ラブラブなのはいいけど、私がいるのも忘れないでね?」  
 ルリ姉の台詞がムードをぶち壊した。  
「菜由ちゃん、今日はホントはどうゆう予定だったの?」  
「あ、えーっと、ご飯のあと、ゲームを装って緊縛して、フェラもためして、処女をあげて、そのあとアナルセックスと、抜かず中だし3連発。体力があれば2本ざしと、最後にカレのアナルをいただこうかなって」  
「じゃぁ、次はアナルね。そうそう、ちゃんとビデオまわしてあるから、あとで編集したの頂戴ね。」  
「はい、DVDに焼いてきます。」  
 二人の妙に明るい会話に違和感を感じる。ルリ姉が二人いるような、でも違うような。  
 しかも、なんか、最初から、仕組まれていたんじゃなかろうかともおもう。  
「ほら、ボーっとしてちゃだめじゃない。」  
 菜由の台詞にあいまいな返事をしながら、こんな生活もいいかなとおもった。  
 
-END-  

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