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ロミオ「こんなところまでハーブや木の実を採りに来なくてもいいじゃないか…」  
ルチア「今日はフェル叔父さんが来てるんだから!手抜きは出来ないわ!」  
ロミオ「…木の実やハーブなんか、家の庭にも生えてるよ?」  
ルチア「うちのじゃダメなのよー…、今日のは特別料理なんだから!」  
ロミオ「でも…どこまで採りに行くんだよぉ…もう暗くなるよ?」  
ルチア「川の近くに生えてるハーブが欲しいの…川まで行きたいんだけどね」  
ロミオ「もう暗いし帰りたいよ…ねぇ、帰ろうよぉー…」  
ルチア「もう少し!もう少しだから!図書館で借りた地図によると、  
    この辺が目当てのハーブの自生地らしいから…もう少しだけ我慢しなさい!」  
ロミオ「ちぇ…ねーちゃんはいつもこうだ」  
 
ロミオとルチア、この森の近所に住む子供である、  
フィレンツェ市街から少し離れた郊外の家に住む、ごく普通(?)の姉弟だ。  
この日は森まで、料理に使うための木の実やハーブの採集に来ていた……。  
 
ルチアという15歳の少女は、フィレンツェの図書館で働くフェル叔父さんを慕っていた、  
読書好きな彼女は、よく叔父の勤める図書館に本を読みに行っていた、  
今日作ろうとしている料理のレシピも、その材料の自生地も、ルチアが図書館で見た物だ  
 
フェル「いやァ…それ懐かしいね…私も昔、よく母さんに作ってもらったよ…  
    そういえばそれ、もう何年も食べていないな…いや、懐かしいねぇ」  
 
「料理好きのフェル叔父さんに、懐かしい料理、何年も食べていないオフクロの味を食べさせたい!」  
ルチアはそういう想いに駆られ、山道具をかき集め、弟のロミオを無理矢理連れ、  
準備万端のつもりで、今日、この森に来たのだったが…思うようにうまく行かないでいた…。  
 
ルチアと里未…「冒険が思ったよりうまく行ってない女」が、偶然にも同じ森に…  
今、いるのであった…。  
 
ルチア「ねぇ、あれ何かな?」  
ロミオ「え…?」  
ルチアが指差す方には、半壊したボロボロの小屋があった。  
 
ロミオ「たぶん廃墟だと思うよ、この森には昔の資材置き場とかが使われなくなった  
    ああいう建物があるんだって、先輩とか父ちゃんが言ってたよ。」  
ルチア「ふーん…    ねぇ、ちょっと行ってみない?」  
ロミオ「え…?危ないからやめたほうがいいよ…  
    最近はヘンな奴らがああいうところにいるらしいし…母ちゃんも行っちゃダメだって…」  
ルチア「気が小さいわね!ホント臆病なんだから!」  
ロミオ「ねーちゃん、止めといた方がいいって…」  
ルチア「決めた!行ってみる!なんかワクワクして来ちゃった!」  
ロミオ「もう…しょうがないなぁ…」  
 
ロミオは渋々、ルチアの決断に従うことにした。  
12歳の少年らしからぬ、しっかり者のロミオではあったが…  
やはりまだ「12歳の少年」だ、こんな森の中、一人にされるのはイヤだったし、  
なんだかんだで姉と一緒にいたかったのであった……  
 
ロミオ「そろそろ日が沈みそうだ…ねーちゃんと行くと、いつも寄り道で遅くなる…」  
父親に買って貰った、お気に入りのマグライトを鞄から取り出し、  
どんどん勝手に進んでいく姉を追いかけた……。  
 
二人が目指す半壊したボロ小屋…  
そこに里未が捕らわれの身になっているということを…  
凶悪な男たちが巣食っているということを…  
                         二人はまだ知らない―  
 
 
 
ロミオ(ねーちゃんはどこだろ…あ、いたいた)  
ルチアは小屋の手前にある茂みに、身を隠すようにかがんで丸くなっていた。  
ロミオ「ねーちゃ…」  
後ろからルチアに声を掛けようとしたロミオだったが、  
何故だか慌てているルチアにいきなり口を押さえられてしまう…  
ルチア「バカ!大きい声出しちゃダメ!」  
 
ロミオに注意すると、ルチアはざっと見渡した感じでの状況を説明した。  
ルチア「…入り口のところにいかにもガラの悪そうな男がいるのよ」  
ロミオ「ほら…だから行かない方がいいって言ったんだ…さ、なんかないうちに帰ろーよ、ね?」  
ルチア「ちょっと!最後まで話聞きなさい!」 
ロミオ「…なに?」  
ルチア「肝心なのは中なのよ…ほら…壁が崩れてるところから見えるでしょう?」  
 
ルチアが指差す方、壁が崩れて中の様子が少し見える…  
薄暗くてよく分からない…でも…なんだか倒れた人が見えるのは分かる。  
ルチア「ほら?中に人が倒れてるみたいなのよ…見えるでしょ?」  
ロミオ「うーん…見えるけど…マネキン人形とかなんじゃないの?」  
ルチア「バカね!なんでこんな所にそんなもんが有るのよ!」 
ロミオ「それもそうか…」  
ルチア「こんな所でなんかあって動けないとかだったら大変じゃない?  
    入り口のガラの悪そうな男に倒れた人…もしかしたら、何かあったのかもしれないじゃない?」  
ロミオ「うーん…」 
ルチア「あんたライト持ってるでしょ?ちょっとあそこ照らしてみなさい。」 
ロミオ「え!」  
ルチア「入り口の男は寝てるみたいだし、ココからなら入り口に光は届かないから平気よ」  
 
ライトで照らすのは少し怖かった、しかし、中でどうなっているのかのが気になった。  
ロミオはルチアの言う通り、ライトで小屋の中を照らしてみた…  
ロミオ「!!」 
ルチア「!!!!!」  
二人は驚きのあまり声なんて出なかった、  
傷ついた全裸の女性が、後ろ手を縛られ、力なく横たわっていたのだから…  
ロミオ「ななななな!何があったの?  ねぇ!ど!どうするの!?」  
ルチア「えー!え、え、えーと…えーと…」  
 
ルチア「えーと…そーだ!とりあえず叔父さんのところまで行かなきゃ!」  
ロミオ「山を下りて、森の外に出て、で、戻ってくるのに、歩きで1時間以上掛かるよ?」  
ルチア「んー…でも!とにかく行かなきゃヤバイでしょ!?」  
ロミオ「行ってる間にいなくなるかも…」  
ルチア「じゃ…あんた見張ってなさい!!」  
ロミオ「えー!!」  
ルチア「女の子に危険な仕事を押し付ける気?ン?」  
ロミオ「くそ…わかったよ…」  
 
ルチアはロミオに仕事を任せると、慎重かつ迅速に事件現場を離れた、  
一分もしないうちに、ロミオの視界からルチアは消えた…  
ロミオは薄暗い中一人になってしまった…  
ロミオ「何か…何かないかな…」  
非日常の切迫した時間の中、一人だけのロミオは自分のポケットと鞄から  
ライト以外に使えそうな道具がないかどうか探してみた…  
 
コンパクトカメラ スパイダルコのナイフ コンパス レインコート チョコレートバー  
 
ロミオ「たったこれだけか…でも…」  
 
ロミオは束縛されている女、つまり、里未を助けてやりたい  
早く助けないとまずいかも…という、衝動に駆られた。  
持っている道具を確認し終わると、半壊した小屋へと忍び寄った…  
ゆっくりゆっくり…入り口の男に気付かれないように…  
 
ロミオは小屋の壊れた箇所から中へと進入した、  
 
ロミオ「お姉ちゃん…今助けるから…」  
里未「え…?あ…あぅ…」  
突然の出来事、突然の来客に戸惑う里未  
助けなんて来ないと諦めていた時に、予想もしない来客…しかも子供だ…  
 
里未「あ…ありがと、ありがとう…」  
ロミオ「うん、どういたしまして…」  
ロミオは小声で会話をしながら、ポケットから折り畳みナイフを取り出し  
里未の拘束を解こうとした………………が  
ロミオ「針金…こんなの切れない…」  
 
ナイフで切れないなら手で解こうと思い、針金を外そうと指に針金を掛ける…が  
ロミオ「く…固い…外すのに時間が掛かりそうだよ…」  
 
 
―その頃……ルチアは  
 
薄暗い夕闇の森の中を一人…  
ルチア(フェル叔父さんに早く知らせなきゃ!)  
…と思いながら孤独に駆けていた  
 
 
―その頃…アルは…  
 
アル「あー!渋滞につかまっちまった!クソォー!」  
フィレンツェの市外で渋滞につかまっていた…  
 
 
―その頃…マルコは…  
 
マルコ「釣れないからそろそろ戻るか…」  
釣り道具の片付けをしていた…  
 
 
ロミオ「もう少しで取れそうだ…もう少し…」 
里未「ん…くぅ…」  
ロミオ「!! やった!取れた!」  
固く結ばれた針金が外れた里未の腕は  
針金の後が青痣になって血が滲んでいた、見るからに痛そうだ…  
 
ロミオ「外れた!これで逃げ…! …そうだ、でも、服がないんだ」  
針金での束縛を解いたものの、里未は全裸だ、山の中とはいえ…否  
低い山とはいえ、山の中だからこそ全裸では出歩けない。  
ロミオ「うーん…着る物はレインコートしかないや」 
里未「…それでもいい」  
 
里未はロミオに手渡されたレインコートを羽織った…  
子供用のサイズなので少しキツい上、太ももの辺りまでしか体を隠せない。  
…それでも全裸よりはだいぶマシだった。  
 
レインコートを羽織ると、次に小屋の中に無造作に放ってある  
履きなれた靴を履いた…  
里未「これで…外に出られる」 
ロミオ「お姉ちゃん、大丈夫なの?」  
里未「うん…平気、平気だから…」  
 
二人はボロ小屋を抜け出し、林道へ向かうために茂みに入った…  
…しばらく進むと小屋の方から恐ろしい叫び声が聞こえた。  
 
「チキショー!女がいねェー!どこ行きやがった!」「おい!ダリオ!てめー何やってた!」  
「寝てんじゃねーよー!逃げられたろーがバカァ!」「アマァ!どこ行きやがったァア!!」  
 
ロミオ「!!」 
里未「!!」  
里未「あいつらだ!あいつらが戻ってきた…!!」 
ロミオ「は、は、早く逃げなきゃ!」  
 
里未とロミオは駆け足で茂みの中を突き進んだ、  
林道へ出ても駆け足を止めず、下山ルートをひたすら走った…が  
 
パァーン!パァーン!  
 
突然の銃声が鳴り響き、あの三人が現れた……!  
ダリオ「やっぱりココにいたか!」  
アル「この山は下山ルートが一本しかねェからなァ…」  
マルコ「さァ、撃たれたくなきゃ二人ともこっち来るんだ!」  
 
ロミオ「あ、あ、あ…ど、ど、どうしよう?」  
里未「…くっ」  
 
二人の心は悔しい思いと怖さでいっぱいになりそうだった…  
里未(また捕まったら、今度は何をされるか分からない、命の危険だってある…でも)  
里未はロミオの方をジッと見た。  
 
里未(でも、この子を危険に晒すわけにはいかない…!この子だけでも…!)  
里未「私と反対の方向へ逃げて(ボソッ)」  
ロミオ「え!?」  
 
そう耳打ちすると、里未は突然林の中へと走り出した!  
 
ロミオ「ダメだよ!危ないよ!」  
ダリオ「あ!女が逃げる!」  
 
アル「クソ!俺は女を追う!おまえら二人はガキを捕まえろ!!」  
ロミオ「あ、あ… …!! …くッ!」  
 
里未「ハァ…ハァ…」 
林の中はもう暗い、足元がやっと見えるくらいだ、  
里未は転ばないよう慎重に、追いつかれないように迅速に、カモシカのように森を駆けた  
 
パァーン!パァン!パァーン!!  
 
頭に血が上ったアルが、里未の後方でベレッタを乱射しているが、  
里未には後ろを振り返っている余裕などなかった。  
最初は、ただの威嚇射撃なのか、里未を狙っての射撃かなのかは、よく分からなかったが…  
 
パァーン!  
 
里未「!!!!! あァァァアアァァーーーーー!!!」  
突然足が熱くなったかと思ったら、だんだん痛くなってきた…  
あまりの出来事に里未は、駆け足を止め、その場に倒れこんでしまった、  
足を見ると血が出ている、どうやら弾が当たったようだ……  
 
アル「このアマァ!やっと捕まえたぞ!」  
鬼の様な形相で里未を睨み付け、こう言い放った  
アル「テメェ…ふざけたマネをしやがって…  
痛めつけた後、臓器ルートかポルノルートに売り捌いてやるからなァ…」  
恐ろしげなことを里未に言ったアル、銃を向けながら里未の方へと静かに歩み寄る。  
 
ガサガサ  
 
アル「!! …ン!?」 
里未「…!?」  
音のする方を見ると、ダリオとマルコが茂みから出てきた  
アル「ああ、ちょうどいいトコ来た、今、女を捕まえたんだよ」  
里未はもうダメだと確信した、絶望のあまり言葉も涙も出ない…  
 
アル「おまえらもガキを捕まえたんだろ?まさか逃げられてないだろ?早くガキも出せって。」  
ダリオ「…それが」 
マルコ「すまねェ…」  
 
警察官A「よーーーーし!!おまえら!そこまでだ!」  
警察官B「大人しくしろ!!」  
 
アル「…な、なッ!!?? どういうことだァ!?」  
マルコ「それが…ガキをもう少しで捕まえられる、って時に、なぜか…」  
ダリオ「林道にポリ公どもがワンサカいて…」  
アル「おまえら捕まったのかァア!!?? …チィッ!クソがァ!なんでだァ!?」  
 
三人組も驚いたが、里未も驚いた、街のすぐ近くとはいえ、  
なぜこんな山に警察官が都合よく駆けつけたのだろう…  
 
ロミオ「おねーちゃん!」  
ルチア「よかったァ、間に合ったぁ!」  
里未「キミが…呼んだの…? でも…それにしても早すぎるんじゃ…」  
ルチア「んー、えーとね…」  
 
ルチアという少女が言うには、姉弟で里未を見つけた時に、  
二手に分かれて行動したらしい。  
で、ルチアの方がフィル叔父さんのところに行き、事情を説明し、すぐに警察を呼んでくれたそうだ…  
 
その後、ルチアたちは車で林道の奥へ奥へと進み、  
里未とロミオもボロ小屋から逃げて下山ルートへと進んだので  
それが幸いし、姉弟が思った以上に早く合流できたらしい……  
 
里未「なるほどね…なんか運がいいんだか悪いんだか…フフッ」  
ロミオ「おねーちゃん…無事でよかった…ホントによかった…」  
ルチア「まったく…あんたも無茶しちゃって…。 まぁ、そのおかげで早く済んだからいーけどね」  
ロミオ「心配だったんだよ、おねーちゃん独りで行くから……」  
里未「ごめんね…」  
ロミオ「あんな無茶で危ないことしちゃダメだよ…あの時、ホントに心配だったんだよ…」  
ルチア「なーにメソメソ泣いてるのよー!あんたってホント泣き虫ね。」  
 
ロミオ「だって…だって…」  
ルチア「もーう!一件落着したんだからいいの!ハイ!もう泣かない!」  
里未「フフ…」  
 
少し気弱で心配性で、だけど優しくてどこか温かくて、  
いざという時には勇気もある、そして姉の尻に敷かれている…  
里未(なんだか、だれかさんみたい…)  
姉弟を見た里未は、故郷の彼のことをふと思い出した…  
 
ロミオ「おねーちゃん…」 
里未「なに?」  
ロミオ「これ…チョコバーあげるよ」 
里未「ありがと…」  
 
 
―その後  
 
里未は病院へと運ばれ治療を受けた、治療を受けながら取り調べも受けた。  
医者が言うには、銃で撃たれたとはいえ幸いにもかすり傷で、後遺症などはないそうだ。  
 
 
帰国後…  
空港で両親は泣いていた、心配に思う気持ちで泣いていたのだろうか…  
無事を喜んで泣いていたのだろうか…たぶん両方だったろう。  
彼はというと…やっぱり泣いてた  
「どんなに心配したか」とか「無茶はしちゃダメだ」とかロミオみたいなこと言ってた。  
 
 
―エピローグ  
 
里未が日本へ帰って、15年経った…  
 
帰国後しばらくして彼と結婚し、子供は二人いる。  
…今は、彼と故郷の町で自転車の店をやっている。  
あの事件の後も、里未は自転車での旅を続け、日本全国……色々なところを見て回った。  
 
でも…あの事件以来、里未の旅は大きく変わった…  
「独りの旅」じゃない…彼や子供たち、友人たちとの「みんなの旅」に変わったのだった…。  
 
 
…正義感の強いロミオは、警察官になり。  
ルチアは亡き叔父に代わって、フィレンツェの図書館の司書になった(料理研究をしながら司書をしてるという)  
アルたち三人は、余罪も明らかになり重罪人となったので今でも刑務所にいる……  
 
…恩人であるフィレンツェの姉妹と里未は、今でも友人同士、手紙での交流もしているし。  
数年に一度は向こうから日本に来たり、こっちからイタリアに行ったりして会ったりもする。  
 
色々、大変なこともあったけど、里未は元気に暮らしていた…よい仲間に恵まれ、楽しく活き活きと…  
 
〜Fin〜  
 

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