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【-27- 消えた仲間】
暗い雰囲気にならざる得ない状況、研究所の雰囲気が一行の気分を更に暗くする…
真理「…ねぇ、瞳美 あなた上着がボロボロよ?」
真理は開発室に入ると、何かを持ってすぐに出てきた
真理「これ、イスに掛かってた白衣 これ着たら?」 有森「…ええ、ありがと」
ボロボロになった上着を脱ぎ捨てる瞳美、皆の前で一瞬上半身が下着姿になるが、
勇太も根州も特に反応を示さない、瞳美にも不思議と恥ずかしいという気持ちはなかった。
状況が状況だけに、そんなことはどうでもいいというのが、皆の気持ちだったろう…
森崎「あぁ…先輩… 白衣、似合ってますよ…」 有森「そう…」
勇太は力なく感想を言ってみたが、そんなことでは場の空気はなにも変わりはしなかった。
有森「ねぇ、そういえば… 南方君は?」
瞳美は南方がいないことに気が付く。
ショッキングな出来事の後だったので、南方がいないことを誰かが指摘するのに時間が掛かった。
根州「んーと、俺が資料室みたいなトコで資料を漁ってたら、いつの間にか消えてた」
真理「ねぇ、どこ行ったかわかんないの?」 根州「さぁなァ」 有森「なんか心配ね…無事だといいけど…」
根州「なんかアイツのカードケースみたいなのだけ落ちてたんだけど…」
真理「カードケースぅ?」 根州「あいつには悪いと思ったけど、気になったから中見ちゃった」
森崎「おまえなぁ…」 根州「なんかさ、らしくないというか…とても意外なんだが、可愛い女の子と写ってる写真なんだよ」
有森「女の子?彼女がいるとかいうのは聞いたことないわね…」
根州「これなんだよね、ほら」
カードケースには写真が入っていて、写真には南方と褐色の少女が写っていた。
森崎「ん?外国人?」 真理「芸能人とかと一緒に記念で撮ったやつじゃないの、それ」
根州「俺もよくわかんねぇよ…」 有森「何かの友達とかかもしれないわね」
根州「収穫といえば…これと… ん!そうだ!」 森崎「なんだ?」
根州「そうか…あれがあった… …有森さん!喜んでください!」 有森「??」
【-28- 目標】
根州「これです!この… この書類を見てください!」
瞳美と真理は根州から手渡された書類を受け取る
「駆虫薬 ‐Venus‐」
兵器は力だけではダメなのだ…しっかり制御出来てこそ価値が有るといえよう。
どんなに強力な生体兵器だとしても、それに安全装置がなければ商品価値は半減である。
駆虫薬Venusu(ウェヌス)を寄生生物に注射すると、生命活動を完全に止める事が出来る、
「兵器」に対する「安全装置」的な薬である。
これをB-1の生命工学実験室の冷蔵保管庫に保管する。
有森「これは…」 真理「(小声で)これがあれば…あなたのお腹にいる奴を倒せるかも…」
根州「(小声で)有森さん、これ取りに行きましょう…」
森崎「ん?コソコソとなんの話をしてるんだよ… さっきから怪しいな…」
有森「ん?なんでもないのよ」 真理「ここの出口に関する書類よ」
根州「そ、出方が分かったんだ」 森崎「そうなのか…ココから出られるんだ!」
森崎「でも、南方を探してからだな…」 有森「そうね…」
一行はやるべきことを決めた…仲間たちは次のような目標を心の中に決めた。
1・駆虫薬の確保 瞳美のお腹の中の「悪魔」はいつどうなるか予測もつかないので、これを最優先。
(これは勇太には内緒である…瞳美、真理、根州しか知らない目標だ)
2・南方の捜索 仲間を見捨てては行けない…
3・脱出 この狂気に満ちた空間からの生還
いずれのことをやるにせよ、上の階に行く必要がある…一行は上階へ行く階段を目指した。
【-29- ステップ】
―地下施設 B3 エレベーター
一行は大型のエレベーターに乗り込む。
エレベーターといっても、デパートや展望ビル、マンションにあるようなものではなく、
配送所や市場、集荷場にあるような、大型で無骨な作業用エレベーターだ。
森崎「このスイッチだな…」
勇太は「B-1」のスイッチを押してみるが、何の反応もない。
根州「壊れてるんじゃないか?」 森崎「どうだろう?」
全てのスイッチを押してみるがな何の反応もない……
真理「もう!こんな時に…」 根州「時間はかかるが、階段から行くしかないな…」
―地下施設 B3 階段
森崎「よく見るとココの扉は、内側からブチ破られたように壊れてるな…」
根州「桂さんを襲った怪物がやったんだろう… …クソ、忌々しい!」
親しい先輩を殺された根州は、平静を装っているが、実は相当に怒っている、勇太はそう感じた……。
灰色のコンクリの壁が四方を取り囲み、蛍光灯の青白く薄暗い光だけが辺りを照らす。
銀色の段も手すりも金属性の、無愛想な階段が上へ上へと続く…
……一番上は霞んでいる上に薄暗くてよく見えない。
【-30- 愛をください】
カン カン カン カン カン カン カン カン……
森崎「 有森「ハァハァ…」
真理「瞳美…顔色が悪いけど大丈夫なの?」 有森「大丈夫…ハァ…ハァ…」
森崎「先輩…どこか具合が悪いんですか?」 有森「ううん なんともないの…ただ疲れてるだけよ…」
根州「地下二階の扉が踊り場に…」
外側からブチ破られた扉が、外れて踊り場に横たわっていた…
森崎「すごい力だな…」
地下二階を覗くと…人影や死体、人の気配はないが、おびただしい血痕が壁や床に残っている…
真理「ウゲ…」 有森「……………」 B3の扉といいこの光景といい、怪物の恐ろしさを十分に物語っていた。
血痕を見た瞳美は、死んだ桂さんのこと、桂さんが死ぬ光景を思い出し…
ふと自分のお腹に手を当ててみた…… 「トクン トクン」 瞳美(動いてる…)
お腹の中の悪魔と脈動を感じ、桂さんの死を思い出し、瞳美は不安と恐怖を感じずにはいられなかった。
カン カン カン カン カン… …ギィィィ…バタン!
―地下施設 B1 廊下
森崎「長かった…」 根州「ココが地下1階か…」
真理「さ、生命工学実験室を探そ…」 森崎「南方を探すんじゃないんですか?」
有森「えーとね…」 根州「そ、その部屋に監視カメラの親機があるんだよ!」
真理「それ使えばすぐに見つけられるでしょ?ね?」 森崎「ふーん…」
【-31- 実験室】
―地下施設 B1 生命工学実験室
根州「ココがそうなのか…」 森崎「ふーん…結構広いな」
一行が入ってきた扉以外にも、何箇所かの扉も見受けられる…。
壁際にはPCが並び、何台かは電源も入っている、
部屋の中央には円筒形の水槽が並んでいるが、中には何も入っていない…
一辺10mくらいの正方形の部屋の隅に、大きな円筒形の水槽と起動中のPCが置かれている。
有森「これは何なのかしら?」 森崎「さぁ?魚を飼ってるとかじゃなさそうですね?」
根州「俺にもなんだかよく分からん…南方が動植物に詳しいが、こういう時に限っていないしな…」
人間大の軟体動物のような生物が、緑色の光に照らされ水槽内を漂う…。
真理「あったわ!冷蔵庫!」 森崎「冷蔵庫?防犯カメラの親機を探すんじゃないんですか?」
根州「まぁ、いいからいいから・・・」
真理は冷蔵庫の蓋を開け、「Venus」を探した…
真理「あった!これよ!」 根州「こっちには断熱ケースとアタッシュケースもあります!」
有森「ねぇ、この注射器と注射針も使えないかしら?」 真理「使うからそれも持ってきて!」
森崎「?? 一体何なんだ?」 真理「これもいるものなのよ」
真理は「Venus」の説明書を読んだ…
真理「25ccを静脈に注射…じゃあ、瞳美…?」 有森「ええ、お願い」
森崎「ちょっとちょっと!一体何なんださっきから!注射って、何を注射するんですか!?」
真理「もう誤魔化せないわね…」 有森「わかった、正直に話すわ…」
瞳美は勇太に事情を説明した、その上で、勇太が傷つかないようにフォローもした…
【-32- 勇気有る者の罪悪感】
森崎「そんな…そんな…先輩… ご、ごめんなさい、ごめんなさい…」
悲しそうで、申し訳なさそうな表情で瞳美を見つめる勇太
有森「あなたは悪くないわ、それに、もう過ぎたことだし…」
真理「今は解決法が手の中にあって、もう安心なんだから、そんなに悲しんでも瞳美の為にならないわよ?」
根州「有森さんを襲ったのはお前じゃない、お前は今まで彼女を必死に守ったろう」
有森「カエル男の時も、あなたの体から外れた怪物の時も、身を挺して私を守ってくれた…とても感謝してるのよ」
森崎「みんな……」 有森「わたしは大丈夫だから、そんなに落ち込まないで」
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
コンピューター「ミネルヴァが完成しました くりかえします ミネルヴァが完成しました」
真理「警報が!?」 有森「な、なんなの?」 根州「ミネルヴァ?」
カッ!カッ!カッ!カッ!カッ!カッ!カッ!
廊下の方から走る足音が聞こえる、その足音はだんだん大きくなる。
プシュー
ドアを開けて何者かが部屋に入ってきた
謎の男「やっと完成したか!!んん??」
【-33- 戦いと英知の女神】
謎の男「全員殺したはずなのに!なんなんだおまえたちは!?」
根州「まさか…おまえが… 小木戸博士!?」
小木戸「いかにも、私は小木戸だが?お前たちこそ何だ?どうやらココの者ではなさそうだが。
まぁ、なんでもいい、どうせ死ぬんだ…ククク」
根州「きっさまー!!よくも桂さんを!!」 根州は小木戸博士に殴りかかる
パァン!
小木戸「…近寄るな、撃つぞ」
博士は小型の自動拳銃を天井に向かって発砲した、警告の意味を込めて。
根州「クソ…」
小木戸「せっかくのお客さんだ、こんな玩具ではなく、私の最高傑作で葬ってやろう」
博士は銃口を一行に向けながら、大きな培養槽の隣に置かれたPCをいじる。
小木戸「わたしはこの力を早く試したくてウズウズしていたんだ……ちょうどいい所に来てくれたよ、君たち」
培養液が抜かれ、ガラスの壁が回転し、後ろに収納される………
中からは、艶かしい青白い皮膚をした、人型だが無数の触手と紫色の筋を持つグロテスクな生物が姿を現した。
小木戸「わたしの最高傑作!ミネルヴァだ!!美しいだろう!!」
真理「どこが!」 有森「そんなの…出来損ないの間違いだわ」
小木戸「ふん、なんとでも言え!こいつの素晴らしさ、身をもって知るんだな!」
小木戸博士はミネルヴァを背負った
小木戸「イッツ・ショータイム!!!!!!」
ミネルヴァは触手を這わせ、小木戸博士にまとわりつく。