: 160%">  
【-1-  隠されし悪魔】  
 
― 一流国立大学 地下秘密研究所 生命工学実験室     
 
―深夜2時  
 
小木戸「兵器は力だけではダメだ…」  
カタカタ カタカタカタ カタカタカタカタ…  
小木戸「美しく、独創的で、神々しくなくてはいかん…」  
カタカタカタ カタカタ… …カチャ!  
 
草木も眠る丑三つ時…  
「地上」の大学構内には、守衛と研究者数名しか残っていない、  
「地下」の隠された研究施設にも、数名の研究者しか残っていない……  
 
人のいない夜の建造物……  
キーボードを叩く音とポンプの機械音、重苦しい空気が空間を支配する……  
 
小木戸「…美しい、わたしのものだ、これさえあれば ククク」  
 
小木戸博士がいる部屋は…  
電顕、試験管、試薬など…様々な実験機材と無数の培養槽が所狭しと並ぶ研究室、  
部屋の明かりは落ちていて、培養槽の照明、PCモニターのみが光を放つ。  
その光景は……よく言えば、水族館の室内展示のような雰囲気で、  
培養槽の中には、得体の知れない生物が漂っている…。  
 
小木戸「美しい…これは最高傑作だ…」  
一際大きな培養槽の前で、博士は不気味に微笑んだ………  
培養液の中に、軟体動物のような生物が漂っている……………  
 
【-2-  決意】  
 
有森(付き合ってから…この夏で3年目…  
そろそろ お父さんに彼を紹介しようかなー… でもー… う〜ん)  
有森瞳美(20歳 大学三年生)、通学途中の電車の中で何やら物思いに耽っている。  
 
「先輩!!」  
 
考え事をしていると、突然声を掛けられた。  
 
ハッとして、声のする方を見ると…  
悩みの種である「彼」  …森崎勇太(20歳 大学二年生)が立っていた。  
 
森崎「どうしたんですか先輩?なんだか元気なさそうですよ?」  
有森「フフ 心配しないで、わたしは元気よ」  
瞳美は「あなたのこと考えてる」「悩みの種はあなた」なんてとても言えなかった。  
 
有森(彼ったら、今でも先輩なんて呼ぶのよね、礼儀正しいのよね…  
その上、優しいし、真面目だし…う〜ん、お父さんに紹介しても大丈夫よね…)  
目の前にいる「彼」を見ながら、また物思いに耽った、  
目の前に「彼」本人がいるのといないのでは、頭の中の動きは大分違った。  
 
有森(決めた!今度故郷に帰る時、彼も連れて行こう! その時にお父さんに紹介しよう!  
……きっと大丈夫よ、大丈夫 …うんうん!!)  
 
目の前の彼を見て瞳美は決意した。  
 
悩みを吹っ切った瞳美と、悩みの種だった愛する彼を乗せ、  
電車は大学に最寄の駅へと進む…  
朝の空気は澄んでいて、空は青白く輝いている…  
 
瞳美の心も外に広がる美しい空のよう、晴れやかなものであった。  
 
【-3-  友】  
 
― 一流国立大学 学生食堂 窓際のテーブル     
 
―午後12時  
 
瞳美と勇太、瞳美の友達の3人は学食で食事をしながら、  
他愛もない雑談をしている。  
 
瞳美の友達…名を「真理(まり)」といい、医療系の学部に所属する女子大生、瞳美の同級生だ。  
 
ショートカットの活発な女性、気が強い性格だけど、思いやりもある…  
瞳美は彼女と旧友(勇太の姉)はなんとなく似ていると思っていた、  
…そういう性格の女友達とはウマが合うのか、彼女とは入学以来の付き合いだ。  
 
「おい森崎〜!女の子二人と楽しそうに、羨ましいなァ!おい!」  
 
勇太の後ろに突然誰かがやってきた……勇太の友人「根州(ねす)」だ。  
彼は勇太の同級生で動物などの生態調査が専門の学部に所属する、  
勇太の高校時代の友人に似ている男で「UMA(未確認生物)」のマニアである。  
 
「…よう」  
 
もう一人の勇太の友人「南方(みなみかた)」もやってきた、  
彼は今年の新入生だが、年は瞳美と同じくらい(詳細は不明)らしい、  
彼も根州のように生物系の学生で、勇太とはサークルの関係で知り合った。  
物静かでナゾの多い男(素性は不明)だが、気さくで物知りで面白い男だ。  
 
根州「今日はとっておきの話があるんだよ!聞いて驚くなよ!」  
いつもの調子で根州が何かを語ろうとしている…が  
この男はいつもこんなオーバーな調子なので、みんなは特に驚かなかった。  
 
【-4-  ウワサ】  
 
森崎「なんだよ根州、どうせUMAの話なんだろ?」  
真理「いっつももったいぶって胡散臭い話するんだから…」  
根州「たしかにUMAの話ではあるが…フフフ」  
根州は不気味に笑う  
 
根州「今日はいつものようなUMAと違うのだ!目撃地点を聞いて驚くな!」  
森崎「どこだよ、アフリカか?アマゾンか?」  
根州「日本だ、この学校の裏山」  
根州以外、全員大笑いした  
 
森崎「裏山!!」    有森「根州くん、いくらなんでも…」  
真理「ありえない!ありえなーい!」 南方「裏山で新種なんて…ちょっとな…」  
大笑いされて根州はムッとする、そしてこう言い返した  
 
根州「ここ数週間の間で目撃者は多数いるんだ!  
ネットのUMAサイトもこの話題で持ちきりなんだ!この学校にも目撃者はたくさんいるんだ!」  
 
真理「あー…もしかして、最近ウワサになってるカエル男って奴?」  
森崎「そういえば、そういうのありますね」  
 
「カエル男」最近、大学近辺の学生や若者たちの間でウワサになっている、  
いわゆる「都市伝説」の類で……  
「新種生物説」「米軍の生体兵器説」「宇宙人説」「妖怪説」「悪戯説」  
お決まりの説が語られている、お決まりの「都市伝説」だ……。  
 
根州「そう!それだよ!そのカエル男だ!!」  
 
【-5-  捜索隊結成?】  
 
根州「そのカエル男を探しに行こうかと思ってる!」  
森崎「いつ?」    根州「明日の夜」   森崎「急だな…」  
根州「準備はしてある、よければ皆の分の食料も用意するが、どうだ?」  
 
森崎「僕は暇だから別に構わないけど」  
真理「あ、食べ物が出るんなら、あたしも行く、どーせ暇だし」  
南方「裏山か…面白そうだ…   俺も行く」  
有森「わたしも暇だから行ってみようかな」  
 
根州「よし!じゃあ明日の夕方、駐車場の俺の車に集合だ!」  
 
こうして…一行(みな暇つぶしだが)は裏山に  
「カエル男」を探しに行くこととなった……そして  
 
―翌日   
 
― 一流国立大学 駐車場 根州の車の前  
 
森崎「よう」    南方「おまたせ…」  
真理「根州!ちゃんと美味しい物は用意してあるでしょうね?」  
根州「みんな!来てくれたか!美味しい物も探検道具もちゃんと用意してあるぞ!」  
有森「なんだかワクワクするわね」  
 
根州「さぁ!みんな、車に乗りたまえ!現地まで案内しよう!」  
 
一行は根州の車(根州の家の車、ボロのワゴン車だ)に乗り込んだ…  
根州はエンジンをかけ、急ぐ必要はないのに、少し飛ばし気味に車を運転する  
森崎「おい、根州、あんまり飛ばすなよ…」  
 
【-6-  裏山】  
 
オンボロ車に揺られて6〜7分、学校のすぐ近くの「裏山」の入り口についた  
根州「さ、ついたぞ    ココからは歩きだ」  
 
裏「山」といっても、都市部に残してある小高い丘というか低山というか…  
公園とか緑地のような場所で、周りは静かな住宅街、すぐ近くに小さな川も流れているところだ。  
 
「秘境」「冒険」「ジャングル」というほどの雰囲気の場所ではないが…  
…普段は人のあまり入らない場所なので、  
木や草が生い茂り、都市部ながら「自然の山」「自然の林」になっている…。  
 
根州「懐中電灯は持ってきたろう? それを出したら早速出発だ!」  
真理「待って!!」    根州「なんだ?」  
真理「食べ物は?」    根州「それは休憩の時ね…」  
根州「ん?南方、おまえ随分といいモノを色々持ってるな?」  
南方「ああ…」   森崎「そっちのモノはなんなんだ?」  
南方「ナタ…    ココは木やツタが多いから持ってきた…」  
森崎「おまえって以外に用意がいいな、キャンプとか好きなのか?」  
南方「まぁね…」   根州「実に頼もしいな!」  
有森「ナタなんて初めて見た」  真理「手ェとか気をつけなさいよ」  
 
ピクニック気分で荷物を確認したり、装備品を確認したり…  
南方が「それらしい持ち物」を持ってきたので探検気分の方も高まり…  
 
根州「それじゃあ、みんな! そろそろ行こうか!」  
一行は裏山の中へと足を進めた。  
 
【-7-  奥へ】  
 
ガサ バサ ガササ  
 
絡まるツタ、行く手を阻む枝を払い落としながら  
裏山の奥へ奥へと進む一行。  
先頭はナタを持つ南方で、その後ろをライトを持った勇太と根州が、  
一番後ろを瞳美と真理がついていく。  
 
 
根州「ココは前より酷くなってるな… クソ…」  
森崎「なんだ?前にも来たのか?」  
根州「ああ、一年の時に実習で2〜3回来た」   森崎「実習?」    
根州「俺たちが1年の頃まで、ココはうちの大学や近隣の大学が実習に使っていたんだが…  
  俺たちが2年になる頃に急に使わなくなったんだ」  
森崎「なんで急に?」    根州「さァな…分からんね…」  
 
南方「…! おい!みんな!」  
先頭を行く南方が突然立ち止まり声を上げる  
森崎「どうした?」    根州「何かあるのか!」  
南方「…この先、広場みたいになってる」  
根州「ああ、もう山頂に近いんだよ  この山は山頂付近は開けた場所が多いんだ」  
有森「ねぇ、そろそろ一休みしましょうよ」  
根州「ん?ああ、いいですよ  …じゃあ、みなさん、そろそろ休みましょう」  
 
 
低くなだらかな山とはいえ……ツタ、枝、草が生い茂る山  
ほんの十数分進んだだけで、皆はヘトヘトに疲れてしまった(南方はまだ平気そうだが…)  
南方がランタンを、根州が敷物を出して、一行は広場の地面に腰を下ろす。  
 
【-8-  絶景】  
 
根州「あー、結構奥まで来てしまったな…」  
有森「ココまで来るといい雰囲気ね、  なんだかキャンプに来たみたい」  
根州「そーすね」   真理「さ、根州、食べ物!食べ物!!」  
根州「早速それか…」  南方「フフ…」  
 
根州「そうだ! 森崎、この広場の先なんだが…」   森崎「なんだ?」  
根州「結構見晴らしがいいんだ。 …折角来たんだし、有森さんを連れて観に行くといい」  
森崎「そうか、ありがと」   根州「俺らはココで雑談でもしてるから…」  
 
森崎「先輩!!」   有森「なに?」  
森崎「この広場の先、景色が綺麗らしいんですよ 一緒に行きませんか?」  
有森「いいわね 行きましょう」  
 
・  
・  
・  
 
有森「きれい…」  森崎「ええ…」  
 
空には星が瞬き、地上には住宅街の明かりがまばらに点っている。  
遥か彼方の地平には山が連なり、暗い夜でも黒い塊としてハッキリ見える…  
別の方角には…離れた場所の繁華街の、宝石のような輝きも見える。  
 
有森「きてよかった…」   森崎「僕もです…」  
 
夜景、夜の静寂……静かな時間と空間が二人を包む  
二人は黙ったまま肩を寄せ合った……  
 
【-9-  あの夏の日 この夏の日】  
 
有森「ねぇ、覚えてる?」  森崎「何をです?」  
有森「わたしたちが出会った夏のことよ」  森崎「もちろんですよ」  
有森「あの時ね… わたし… 引越しとか進学とか…色々不安で…  
あなたやるりちゃんに会えないかと思うと寂しくて…  
とにかくね、色々なことがあってつらかったの…。  
…そんな時に、あなたは支えになってくれた、 本当に感謝してるわ」  
森崎「そんな… ボクなんかは…」  
有森「フフ でも、今はこうして毎日会えるじゃない?それがとっても幸せなのよ…」  
森崎「先輩…」  有森「もう… 先輩じゃなくて名前でいいわよ、付き合い始めの頃みたいに」  
森崎「でも、やっぱり気が引けますよ…」  
 
瞳美は勇太に何らかの距離感を感じている…  
自分のことを愛してくれてるのは分かっているけど、  
何か…どこか… 距離を感じずにはいられなかった。  
「父に彼を紹介する」ということの決断を遅らせた原因の一つには、そのような事もあった…。  
 
 
根州「うわー!!いた!いたいたいた!いたぞォォオオーーーーー!!!!!」  
真理「キャー!なにあれェー!? ほ、ほんとにいるなんて…!!」  
突然の悲鳴が静寂を打ち破る  
 
森崎「なんだ!?」 有森「いってみましょう!」  
 
森崎「どうした!?」  根州「い、い、い!いたんだよ!!」  
真理「カ、カ!カエル男が!!」  南方「ああ… 俺も見た…!」  
この夏の日…   どうやら平穏には終わりそうにない…  
 
【-10-  追跡】  
 
森崎「え!そんな… ホントに…いるのか?」  
根州「いるいる!!し、茂みから一瞬出てきて、すぐにあっちの方へ逃げて行ったんだ!」  
真理「大きさは犬くらいだった!」   有森「な…なによそれ…」  
根州「と、とにかく!追おう! まだ間に合う!」  
一行は「カエル男」を追跡した、  
姿を見せはしないものの、静かな山の中なのでかすかに音は聞こえる…  
それを頼りに追跡した…  
 
根州「ハァハァ…」   有森「こ…ここは…?」  
森崎「…川?」  南方「…裏山の脇を流れる川のようだな」  
真理「いかにもカエルがいそうなところね……」  
 
ガササ!     「グェーーーー!」  
一行の後ろにカエル男が突然姿を現した!  
森崎「うわ!」  有森「きゃーー!!」   根州「いたいたいた!」  
湿った皮膚に大きな後ろ足、青とも緑ともいえるような体色、  
水かきのついた前足、小さな丸い目と丸い頭……そして大きさは中型犬くらいはある…!  
それは、ここにいる全員が今までに見たこともないような奇怪な生き物であった。  
 
根州「カメラカメラ!」  
根州がカメラを構えると……    …ガサ!ガサガサ!ドサ!  
なんとカエル男が茂みから何匹も出てきた!  
 
「グェー!」「キシャー!」「シュー!」「フシャァァァ!」「ギェェ…」  
カエル男の群れ…未知の生き物とはいえ……  
「敵意」を抱いていて「危険」な様子だというのが一行によくわかった。  
 
南方「くっ…! まずいぞ!川に沿っていったん逃げよう!」  
一行は川沿いを駆け足で駆けた…!  
 
【-11-  襲撃】  
 
真理「大急ぎで追いかけたと思ったら…次は大急ぎで逃げなきゃいけないなんて!」  
根州「で、でも、写真は何枚かバッチリ撮ってやったぜ!」  森崎「そんな心配してる場合か!」  
南方「…くッ! とにかく、このまま学校の方まで逃げよう!」  
 
ガサ!  「キシェー!」  
 
なんと一行の前方にもカエル男が現れた!  
根州「ふ!ふわ!ふわぁぁああぁあ!」   有森「きゃあああ!」  
 
「フキャア………フギャアァ!」  カエル男は唸り声を上げ、突然、瞳美に飛び掛った!  
有森「あああぁぁぁ!た、たすけて!」  
瞳美にのし掛かるカエル男、荒い息を上げながら大きな口を開け、瞳美の喉元に喰らい付こうとする。  
有森「あぁぁ…」   両腕でカエル男を抑えるが、今にも噛み付かれそうだ…  
 
森崎「先輩!!」  
勇太は飛び出してカエル男を瞳美から引き離そうとする!  
「ゲェ!ギシェ!」   森崎「うわァあああ!」  
後ろからカエル男を抱えた勇太、カエル男に腕を噛み付かれてしまう!  
森崎「く… こいつ!」  勇太は腕に喰らい付かれたまま、カエル男を地面に叩きつけた!  
「ギシャ!」     南方「森崎!!」   森崎「!!」  
ナタを持った南方が勇太の前に立つ    南方「くらえ!」      
 
             カッ!   
 
「ギャアアアアア」 鈍色の重く厚い刃がカエル男にめり込んだ  
森崎「うわ… ハァハァ… ありがと…」  南方「ああ… 森崎…怪我は…ないか?」  
森崎「腕が…腕が…痛い…」    真理「診せて!」  
真理はカエル男にやられた勇太の腕の具合を診る…  
真理「止血すればなんとか大丈夫… でも…骨をやられてるかも…」  
 
【-12-  逃走】  
 
真理は勇太の腕を縛り、止血した  
真理「これでなんとか大丈夫だと思うけど…あくまで応急処置にしかならないわ」  
森崎「…あ、ありがとうございます」  
真理「本当は、もっとちゃんと処置しないとダメなんだけど、今はそれで我慢して…  
   あんまり激しく動かしちゃダメだからね」  
有森「わたしのせいで…ごめんなさい…」   森崎「先輩のせいじゃないですよ」  
有森「森崎くん…」   森崎「なんです?」   有森「ありがとう…」  
 
「キシャー」「キシェー」  
カエル男たちの声がすぐ近くから聞こえる  
南方「前も後ろもダメそうだな…」  根州「川はどうだ!?」  
一行は川のほうを見るが…  
 
対岸までは結構距離がある…対岸に渡っても、住宅地までは距離がありそうだ…  
その上、対岸にはコンクリートの壁と土手が立ちはだかっている…    
真理「川なんか渡れないわよ!森崎くん怪我してるし。」  
南方「ココの川は深くて流れが強い、それに… 奴らから逃げるのに水場は危ないだろ?」  
根州「じゃあ… また山に入るか!?」    南方「ああ… それしかなさそうだ…」  
真理「それはそれで危なそうだけど…」  森崎「いくしかないか…」  
 
一行は再び山へと入った…  
 
南方「なんとか見つからなきゃいいが…」  森崎「く… なんだか周りから奴らの声が聞こえる」  
真理「まだ、そんなに近くないみたいだけど…」  有森「いつ来るか分からない…」  
根州「おい!あれ!あそこ!」    根州が何かを見つける…  
 
一行は根州がライトで照らした先を見る…  
森崎「なんか穴みたいのが開いてるな」  南方「…どうやら人口のモノのようだが」  
 
【-13-  希望の光】  
 
一行は根州が発見した穴に近付いた、入り口は縦横数メートルくらい、結構大きい…  
有森「見て 奥は頑丈そうな板で塞がれてる」  
南方「ふむ… 脇には扉みたいなものが付いているな」  
森崎「ここには逃げ込めそうにないか…?」  
 
「ギシャアアアア!!」  
そう遠くないところからカエル男たちの声が聞こえる、それも四方八方から!  
 
南方「…もう ここに逃げ込むしかなさそうだ」  
根州「くそ…ついに袋小路に追い詰められたか…」  有森「ここにいったん隠れましょうよ」   
真理「明るくなるまで隠れていれば、奴らはいなくなってるかもしれない!」  
根州「もうだめだ…」    森崎「根州、まだ諦めるのは早いって!」  
 
南方は扉を塞いでいる木の板をナタで壊し、扉を開け…  
一行は地下道の中へと足を進めた…  
 
南方「これで…よし…」  
全員が地下道に入ると、南方は持っていた細いロープで扉を再び固定した  
 
森崎「ここはなんなんだろうな?」    
南方「昔、何かに使っていた地下道だろう… 防空壕か、何かの通路か…」  
有森「奥はどうなってるのかしら?」     
 
南方はライトで奥の方を照らす…  
根州「ああ… ダメだァ  崩れてるよ やっぱり袋小路だよ…!」  
南方「…! いや そうでもないぞ みんなライトを消してみろ…」  
ライトを消すと、穴の横、崩れた壁から光が漏れているのが見えた…  
 
【-14-  潜入】  
 
根州「なんで地下から光が??」  南方「どこかに繋がっているんだろう」  
森崎「でも…ここは山の中だぞ? 地下にいったい何が…」  
有森「明かりが見えるっていうのも… ちょっとヘンよね」  
 
南方は光が漏れているところを覗き込んだ  
南方「中は…なんとか人が通れそうだ…   うん…?   空気の流れを感じる…!」  
真理「明かりがついてて、空気の流れもある…」 森崎「たぶん…どこか別の出入り口と繋がってる…」  
有森「ねぇ、そっちにいけないかしら?」   南方「壁を崩せば行けそうだ…」    
森崎「崩せるか?」    南方「この壁は脆い、叩けばどうにか崩せそうだ…」  
アルミ合金製の頑丈なライトで壁を叩く南方  
 
ガン!ガンッ!    ガッ! バラバラ…   
 
南方「さぁ… これで通れる」  
南方を先頭に一行は狭い通路の中へと入る…  
森崎「狭いな…」  有森「やだ… もう、髪がぐしゃぐしゃになっちゃう…」  
根州「一体これはなんの通路なんだろうか?まるでダクトか何かのようだが…」  
 
光のある方へと、しばらく進むと、先頭の南方が突然止まる…  
 
ガッ!ガシャ!ガシャーーーーン!     
 
前の方で何かを叩く音がする…  
森崎「おーい!どうしたんだ!?」   南方「出口だ…」  
南方は出口を塞ぐ金網を落としたようだ…一行は先頭の彼に続いて狭い通路を出る…  
 
森崎「なんだここは…」  
狭い通路を出た先、そこは地下のはずなのだが…  
一行は整備された綺麗な廊下へと出た。  
根州「本当にダクトだったようだ   しかし…ここはなんなんだ…?」  
 
【-15-  地下施設】  
 
一行は明かりが煌々と付いた廊下を、慎重に慎重に進んだ…  
 
廊下の壁には「B-3」「生物実験エリア」  
各部屋の入り口には………  
「薬品実験室」「細菌実験室」「実験動物管理室」「薬品保管庫」「動物実験室」  
そういった文字が書いてあった。  
ポンプかファンだろうか、ブーンという機械音も微かに聞こえる  
人の気配は全くないのに照明だけ煌々と点っていて、かえって気味が悪い…  
 
森崎「ここは…一体…」  有森「まるで何かの研究所みたい…」  
真理「こんな馬鹿な話ってある?なんで地下にこんなものが…  
   根州の好きな小説とか映画じゃあるまいし…」  
根州「俺も現実にこんなものがあることに驚いてるよ…」  
 
一行が廊下の突き当りまで進むと、そこは曲がり角になっていた…  
曲がった先を見ると………一番奥に階段が、右手には「医務室」が、  
左手には「生体兵器開発室」という部屋がある……  
 
有森「医務室…」  真理「森崎君に、もっとちゃんとした治療を施せそうね…」  
根州「せ、生体兵器…!?いったいなんなんだろうか…?」  
 
「生体兵器開発室」  一行はガラス張りのその部屋を覗く…  
無数の培養槽… 机… モニター… SF映画によくある光景だ  
 
森崎「なんだか荒らされたような感じだな…」    
根州「…!  おい!このガラス管の中身、あのカエル男じゃないか!!」  
有森「ねぇ!見て! あそこ…人が倒れてる!」  
 
【-16-  生存者】  
 
一行は培養槽の並ぶ開発室の中に入った。  
中にはファイルの束を抱えた女性が一人倒れていて、  
醜い肉塊とかした何かの動物(たぶん犬)の屍も転がっていた…。  
 
真理「この人…衰弱してるし、着衣が少し乱れてるけど外傷とかはないわね…」  
根州「あれ …この人は」   真理「あんたの知り合いなの?」  
根州「今年卒業した先輩だ、   桂さんっていう」  
 
桂「…う〜ん あ あなたたちは…?」  根州「覚えてますか?僕です!」  
桂「ああ、あのUMAマニアの… 勿論覚えてる …どうしてこんなところに?」  
有森「ねぇ、とりあえず、医務室まで連れて行ったほうがいいんじゃない?」  
真理「そうね、だいぶ体力が落ちてるみたいだし、森崎君の治療の方もあるしね…」  
 
―地下施設 B3 医務室  
 
医務室に入ると一行は、桂という白衣の女性をベッドに寝かせ、勇太に治療を施した。  
そして…事情を説明した。  
 
桂「ごめんなさい…わたし達のせいで…大変だったわね…あなたたち…  
  そう…もうそんなに繁殖してるんだ」  
 
桂という女性は一行にこの施設のこと、この施設で起こったことを説明した…  
…それは、驚かずにはいられない、信じられないような内容の話であった。  
 
【-17-  小木戸博士】  
 
この建造物自体は、戦前に大学の地下に設けられた、軍の地下施設を増改築したもので、  
国や米軍関係の機関やら、よく分からない組織が関わっているそうだ。(桂さんも詳しいことは知らないらしい)  
桂「増改築した後に分かったことなんだけど…元々が古い建物だったし  
  秘密裏の無理がある工事だったから…どうしても壁や天井に予想以上に脆い箇所があったの…」  
南方「俺たちはそういうところを壊して入ってきたわけか…」  
 
カエル男については…  
桂「あれは…わたし達のチームが開発した生体兵器の試作品…このファイルを見て」  
 
生体兵器 「アグア・カショロ(水の犬)」 開発計画  
 
・局地戦への投入を想定した量産兵器である  
主にCQB(近接戦闘)における格闘戦を想定してある  
・遺伝子操作による人工動物、両生類の受精卵をベースにすることにより、  
安価に大量生産出来る上、成長速度も早い(成体になるまで数週間ほど)という特色を持つ。  
受信機を埋め込み、電波による遠隔操作で、ある程度のコントロールを可能とする。  
・現在は試作段階、試作品はサイズがまだ小さい上に制御面で不安が残る。  
 
根州「こんなものを作っていたなんて…」  森崎「…信じられない」  
桂「たぶんアイツが逃がしたんだわ…」   南方「あいつ…?」  
桂「小木戸博士…恐ろしい男よ…」   南方「…!!」  
森崎「ん?どうした南方」     南方「いや…なんでもない…」  
桂「あの男の部屋を探り、研究内容と企みをわたし達が知った時は…もう遅かった」  
 
【-18-  マルス】  
 
小木戸博士の手記1  
 
わたしが南米で苦労して入手した新種の寄生生物、これを遺伝子操作により改良した物が  
戦闘補助用の寄生生物の試作「P-1型 マルス」である。  
…が、いかんせんまだ試作品だ、制御面と安定性に不安が残る上に、  
制御と戦闘力を両立させた寄生には外科的な移植手術も必要だ…  
その上、決まった時間に薬品の投与をしないと、宿主の拒絶反応が原因で体から剥がれてしまう。  
これでは「生きた鎧」としての生体兵器には、まだ程遠い。  
 
小木戸博士の手記2  
 
出来損ないのカエルばかり作っているチームに、あれだけの資金を出すくせに  
わたしのこの素晴らしい計画にはほとんど資金を出さない!!  
上の連中は何も分かっていない!!  
流出事故に見せかけカエルの試作を何匹か外に逃がしてやる…  
そうすれば向こうの予算を減らす分、こちらに予算をまわすだろう…  
 
小木戸博士の手記3  
 
外では「カエル男」がウワサになっているらしい。  
こちらでも…なぜ流出したかだの、  
住宅街や学校に近い土地で秘密裏の捕獲をどのように行うかだの…大騒ぎだ。  
わたしの研究の方も…「最高傑作」が完成目前…なにもかも思惑通り事が進んでいる、  
そろそろ最後の一押しをする時の様だ…。  
一押ししたらわたしは…頭の固いお上の管轄であるココの連中を始末した後  
最高傑作とカエルを持って、待遇のいい民間の地下団体に行くつもりだ。  
 
桂「この手記を見つけたときにはもう遅かった…」  
 
【-19-  行方知れずの闘神】  
 
桂「わたし達が小木戸博士への対応を皆で話し合っている時に、  
  博士の最後の一押しが始まった…」  
森崎「一体何なんですか?」     
桂「マルスを寄生させた大型犬を、わたし達がいた地下2階に放った…  
  放った後、あの男は地下1階のシャッターを閉じてわたし達を閉じ込めたわ…」  
有森「なんてひどいことを…」   南方「…クソ」  
桂「わたしが倒れていた部屋にあった死骸がそれなんだけど…」  
根州「なんで死んだんですか?誰かが殺したんですかね?」  森崎「他のみんなは…」  
桂「他のみんなは地下2階でそいつに殺された…  わたしだけ地下3階に逃げるように言われて…」  
根州「え?じゃあ…これ桂さんが倒したんですか?」  
桂「違うの…それが…よく分からないの…」  
南方「…?」  森崎「というと?」  
 
桂「わたしはココまでコイツに追い詰められた、コイツに首を絞められ体を絞められ…  
  もうダメだと思って…   いつのまにか気を失ってた…」  
根州「よく無事でしたね」     
桂「わたしも何がなんだかよく分からない…あなたたちがわたしを起こして…ゴホ  
  …気が付いた時には怪物は、 …コホ 弾け飛んだような死骸になってて…ゴホッ!ゴホッ!」  
有森「だいじょうぶですか?」   桂「う〜ん…すこしお腹が痛いだけ だいじょうぶよ…」  
 
【-20-  寄生】  
 
根州「怪物が死んでるってことは、この建物はもう安全ですかね?」  
桂「わからないわ、上の階の様子は分からないし… でも、この階はたぶん安全だと思う」  
森崎「ガラス管の中のカエル男は?」     
桂「あれは培養液を抜いてから薬を打たないと動かないの、今は仮死状態だから安全よ…ケホッ」  
真理「…ねぇ、わたしさ、ちょっと薬を補充してくる、ここの薬じゃちょっと足りないみたいだから」  
森崎「一人で大丈夫か?」   真理「近くの薬品庫に行くだけだから大丈夫よ」  
有森「真理…気をつけてね」  根州「無理はするなよ」  
真理「わかってる!  ん〜、向こうは荒らされてなきゃいいわねェ…」  
桂「ありがとうね…」   真理「桂さんには胃腸薬でも持ってきますよ」  
根州「じゃあ、俺と南方はこのフロアで資料探しでもすることにするよ」  
有森「それじゃ…森崎くんと桂さんの看病はわたしに任せて」  
 
真理は薬品庫へ薬を探しに、根州と南方は他の部屋へ資料探しに行った…。  
瞳美は医務室に残って勇太と桂の看病をした…。  
 
 
森崎「…桂さんは?」   有森「今は寝てる…」  
森崎「そうですか…」   有森「二人っきりね」 森崎「そうですね…」  
有森「とっても静かね…」 森崎「ええ…」  
有森「ねぇ…森崎くん」  森崎「なんです…?」  
有森「こんな…こんな大変なことになるなんて…  
   わたし…怖くて怖くてどうにかなっちゃいそう…」  
森崎「先輩…」       勇太は折れていない左腕で泣きじゃくる瞳美を抱きかかえた  
森崎「僕がついてます…どんなことがあっても僕が先輩を守ってみせます…」  
 
桂「…! ああ! アアアアアアアァァ!!!」  有森「!!  桂さん!?」  
森崎「どうしました!?」  桂「痛い!痛い!ギャアアアアアアアアア!」  
 
グジュグジュ……ブジャァア!  
 
【-21-  第三種接近遭遇】  
 
桂の腹部を食い破り、得体の知れない赤黒い「何か」が飛び出した!!  
森崎「うわぁあ!」  有森「きゃああああああああ!」  
臓物のような外見の「何か」は触手を広げると勇太に飛びついた  
森崎「わァ!」  有森「森崎くん!!」  
「何か」は触手を巻きつけ、勇太の右肩にまとわり付いた  
森崎「うわァァ!先輩!先輩!」  有森「あ…あああ…」  
森崎「先輩…せんぱ…    ウォォォォオオオオオ!」  
勇太は「何か」の影響か理性を失い、瞳美を押し倒した  
有森「森崎くん!やめて!やめてェェェー!」  
森崎「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」   有森「いやぁぁぁあああああぁぁ!」  
泣きわめく瞳美にも赤黒い触手が絡みつく  
 
森崎「グォォ…グォォ…センパイ…」  
勇太は瞳美の上着を乱暴に剥ぎ取ると鼻息を上げながら瞳美を舐めまわす、  
触手は瞳美の手足を締め付け自由を奪い、首にも巻きつく。  
瞳美「やめて!やめて!」    理性を失った勇太に瞳美の願いなど通じない  
「ジュルジュル…」 粘液をまとった赤黒い触手は瞳美の柔肌を撫で回す…  
 
森崎「グォォ…センパイ…」   瞳美の顔は涙でぐしゃぐしゃ、目の周りは真っ赤だ  
勇太は瞳美のブラを鷲掴みにして剥ぎ取り、放り投げた  
森崎「チュバ ヂュバ」  勇太は瞳美の右乳房にむしゃぶりつく  
「ジュジュ…グジュ…」  触手は瞳美の左乳房を撫で回す  
 
有森「いやぁ…ふぅん… あぁん…」  恐怖と性感が瞳美の頭を支配する  
「グジャア…」  触手の根元にあたる丸い部分から  
他の触手より太く短い(太さは缶コーヒーの缶くらい)触手が出てきた…  
 
【-22-  受胎】  
 
「ジュルジュル」    
粘液でぎらつくほど滑りのある触手が、瞳美の柔らかい腹部を撫で回した  
有森「な…なに…?」  
瞳美の下腹部を撫でるように下へ下へと触手が滑る…  
有森「な…なにをするつもり…」  
触手は瞳美の股ぐらに先端を潜り込ませた  
有森「いやぁ…やめて …やめて …やめて」  
上下に小刻みに動きながら割れ目を弄る触手  
有森「やめてェェェェェーーーーーーーーーーー!」  
 
赤黒い、滑りのある、軟体動物のような触手が瞳美の胎内に侵入した  
「グジュウゥ… メリメリメリメリ…」   瞳美「あぁぁぁぁ…」   
とめどなく涙を流す瞳美、あまりの出来事に言葉なんか出ない…  
触手は胎内でウネウネうごめいた、中で脈打っているのが瞳美にはよくわかった。  
 
瞳美は恐る恐る下半身を見てみる…  
赤黒い触手が平然と突き刺さっていた、自分の膣口は赤黒い触手を咥え込んでいた…  
 
「グジュグジュ…」 触手は瞳美の中を何回か往復した  
「ドクン!ドクン!」  触手が激しく脈っているのが瞳美に伝わる  
「ブチュウ!」    瞳美「いやぁ…」  
触手の先端から生暖かい「何か」が出てきて、瞳美の子宮に潜り込んだ。  
 
「ジュルジュル」     
 
「何か」を瞳美の子宮に植え付けると、触手は瞳美の胎内から出て行った…  
 
【-23-  シロツメクサ】  
 
瞳美は自分のお腹に手を当てた  
「トクン トクン」  「何か」が植えつけた「何か」の小さな脈動を感じた…  
 
森崎「グァァァ!」  
勇太は叫び声を上げると瞳美を鋭い視線で睨み付けた  
森崎「グォ…センパイ…」 瞳美を見下ろす勇太…  
 
森崎「グァァァァァ!こいつ!離れ…」   「ギシュウゥゥ!グジュウ!」  
森崎「グォォ!うわー!」  「ジュル!」   森崎「グォォォォォ!」  
苦しそうに叫ぶ勇太、理性を取り戻そうとすると触手が強く巻きついた。  
 
有森「あぁ…森崎くん…」  
苦しむ勇太を見ながらお腹に手を当てる瞳美  
 
有森「…あれは」  
ふと引き裂かれ散乱した上着のところを見ると、何か光るものがあった。  
有森「あれ…昔、森崎くんと見つけたクローバーだ」  
光るもの、それはクローバーを樹脂で固めて作った、思い出のお守りだった。  
 
瞳美はそれを手に取り眺める。  
有森「今の彼はこれのことも覚えてないのかな…」  
勇太は膝をついて苦しそうに荒い息を上げていた、  
触手は今にも倒れそうな勇太を今にも飲み込みそうだ…  
 
有森「森崎くん…これ…覚えてる?」  
何気なくクローバーを見せる瞳美  
森崎「グォォ…」    有森「やっぱり…もう…」  
森崎「センパ…クルシイ…タ…ケテ…」   有森「え!?」  
勇太は何かを思い出そうとしていた。  
 
【-24-  理性】  
 
森崎「グォォ!グォォォォォォォオオォォォ!」  
上半身を大きく振り回し苦しそうにする勇太  
森崎「こいつ!離れろ!離れろぉぉぉぉぉぉ!」  「グジュ!グジュルルル!」  
何本もの触手がのた打ち回る、何本もの触手が暴れながら勇太に絡みつく  
森崎「離れろ!はなれ…  …グ、グァァァァァ!」  
目が血走り、青筋を立てる、体の右上半分が触手に覆い尽くされた…  
 
森崎「ウォォォオオオオォォォォォオオオォォォオオオォォオ!」  
大きな咆哮とともに右腕から伸びる触手が瞳美の首を締め上げる  
有森「いやぁ!いや!いやぁぁぁぁあぁ!」  
泣き叫んでも容赦なく首を締め上げる触手、そのまま瞳美を持ち上げた  
瞳美「やめて!やめてよぉぉぉ!」  
 
森崎「ハッ!ハッ!   コフー!コフー!」  
苦しそうな表情で涙を流す瞳美を容赦なく締め上げる  
有森「あ…あああ…」 首を絞められ意識がどんどん遠のいた  
 
カツン…  
 
力が抜けた瞳美の手からクローバーのお守りが落ちた  
森崎「グォ…」   勇太は落ちたお守りを何気なく目で追う  
有森「…も…もり…さきく…」   森崎「グォ…センパイ…」  
有森「え…!?」  森崎「センパイ!先輩!」  
森崎「うぉぉぉぉぉぉぉおおおぉおぉぉぉおぉぉ!」  
勇太は左腕で右半身を覆う触手の根元に掴みかかった  
森崎「せんぱーーーーーーい!」  「ギィィィィィィィ!」   
左手で触手を掴み、無理矢理引っぺがすと、地面に思い切り叩きつけた!  
有森「ゲホッ!ゲホッ!」   首に巻きついていた触手が外れた…  
森崎「ハァハァ…ハァハァ…」  有森「も…森崎くん…」  
 
【-25- 火葬】  
 
森崎「先輩…無事でしたか…?」  有森「ええ…」  
森崎「ボク…その肉のオバケに取り付かれてから無我夢中で…  
   さっきまでのことを覚えてないんですけど…」  
有森「森崎くん…」   勇太は寄生されている間、意識を半ば乗っ取られていたようだ…  
 
「グジュル…」   有森「!!」  森崎「!!」  
勇太が床に叩きつけた「何か」が再び動き出した!  
広がった触手をウネウネとくねらせながら小刻みに脈動している。  
 
森崎「せ、先輩!」  有森「ま、まだ生きてる…」  
森崎「こいつ!僕が相手だァ!」  勇太は近くにあったモップを左手で取り、怪物に突きつけた!  
森崎「くそ!この!」   触手がモップに絡みつく!!  
所詮は片腕だけの力なので、今にも触手との「棒引き」に負けそうだ……  
 
有森「…ど、どうしよう」  瞳美は辺りを見回した  
 
「消毒用」「エタノール」とラベルに書いてある大瓶、机に置かれたアロマキャンドルが目に入った。  
有森「もしかして…」     
机の引き出しを調べると、思惑通り「火種」であるオイルライターが入っていた…  
 
有森「えい!」   「ギシェ!」   瞳美はエタノールを「何か」に浴びせた。  
有森「あなたみたいな化け物、消えてなくなってよ!」    
瞳美はライターに火をつけ、エタノールを浴びた「何か」に投げつけた!!  
 
ボッ!     「ギシャアアアアアアァァァァァアアアアア!!」  
 
エタノールに引火し、「何か」は大暴れしながら燃えあがった、  
紙くずのように燃え、辺りに肉の焼ける匂いが漂う。  
 
【-26- 退去】  
 
森崎「…!」  有森「ハァハァ…」  
 
ブスブスブス…  
 
肉の化け物は焼け焦げ、完全に動かなくなった…  
有森「やっつけた…」  
 
カシャ   シュワワワーーーー!  
 
一足遅れてスプリンクラーが作動した  
森崎「うわ!部屋から出ましょう!」  
二人は肉の化け物と、桂さんの死体を置いて部屋を出る  
有森「なんとか濡れずにすんだわね…」  
 
真理「あれ、なに?部屋から出て、どうしたの?」  
根州「ん?なにかあったか?」    有森「実は…」  
 
瞳美は帰ってきた二人に事情を説明した。  
胎内の「何か」のこと、怪物と寄生された勇太にされたことを  
勇太に聞かれないように…。  
瞳美は勇太に傷ついて欲しくなかったので、  
勇太には細かいことを聞かれないようにした……  
 
根州「なんてこと…そんな…」   真理「なんで惨い…」  
 
戻ってきた二人は話を聞いて、あえて部屋の中を見ようとはしなかった…  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!