「じゃあ行って来るわ。留守番お願いね」  
「行ってらっしゃい、お土産よろしくね!」  
「はいはい。みさきにも大輔にも買ってくるからね」  
「なんで俺の名前があとなんだ?」  
「お兄ちゃん細かいことは気にしないの!」  
「大輔、ちゃんとみさきの面倒見るのよ」  
「お母さん、あたしもう子供じゃない!」  
「バーカ、お前まだガキだろ?」  
「なによぉ。ケンカ売ってる?」  
商店街の福引きで当たった温泉旅行一泊二日。  
四名様のご招待となっていたので早川家ご一行で温泉へ、となるはずだった。  
ところが日程が平日だったため俺たち兄妹は留守番となり、両親は日頃から仲のいい広瀬家を誘って出かけることとなった。  
「ちょっとケンカしない!大輔、あんたお兄ちゃんでしょ」  
「は〜い」  
「やーい、怒られた」  
「みさき、あんたもお兄ちゃんの言うこと聞いておとなしくしてるのよ」  
「は〜い」  
「じゃあほんと、頼んだからね」  
「「いってらっしゃい」」  
両親を送り出すと俺たちも身支度を整え、登校した。  
 
昼休み、みさきが俺のところにやって来た。  
「お兄ちゃん、今日友達のところに泊まっていい?」  
「は?」  
「今日は親がいないんだって話してたら、なぜだかそういうことになったの」  
「普通は親がいない家に泊まりに来るんじゃないのか?」  
「うるさいわねー。とにかく、そう決まったからよろしくね!」  
「俺の飯はどうすんだよ?」  
「のぞみお姉ちゃんに作ってもらえばいいじゃない」  
「みさきぃ」  
「あ、あたし家に帰らないで直接友達のとこ行くから。じゃあねぇ」  
それだけ伝えると、みさきは自分のクラスへ戻っていった。  
おいおい、俺はお前の面倒見ろって頼まれてるんだぞ。  
 
「大輔、みさきちゃん友達のところに泊まるの?」  
のぞみだ。今の話を聞いていたらしい。  
それ以外にも何人かが俺たち兄妹を見ていた。  
ま、自分のクラスに見たことない顔がいれば普通は注目されるよな。  
「聞いてたろ。ホント勝手だよな、あいつ」  
「じゃあ今日は大輔の好きなもの作るね」  
「え?」  
「え?じゃなくて……って聞いてないの?」  
「何を?」  
「私、大輔たちの夕飯と明日の朝ご飯頼まれてるのよ」  
「聞いてないぞ」  
「そう。とにかくそういうことだから夜はうち来てね」  
「のぞみが飯作るの、みさきは知ってるのか?」  
「さぁ?あんたが知らないんじゃみさきちゃんも知らないかもね」  
「うちの親、変なところは気が回るくせに肝心なところは抜けてるからなぁ」  
「あんた見てれば想像つくね」  
「のぞみ言い過ぎ」  
「ごめん…」  
「大丈夫、怒ってないから。というより、のぞみの方が正しい」  
「あんたも言い過ぎ。じゃあまたあとでね」  
「ああ」  
とりあえず飯の心配はなくなったな。  
でも今晩は一人か。ちょっと寂しいかな?  
 
下校の時のぞみに声をかけられた。買い物に付き合えという。  
のぞみは唐揚げの材料やその他の食材を買い込むと、俺に持たせて家路をたどった。  
夕刻、のぞみの家に向かう。  
「のぞみぃ、来たぞぉ」  
のぞみがキッチンから顔を出す。  
「あ、大輔ごめん。まだ出来てないのよ」  
「のぞみにしちゃ珍しいな。何か手順間違ったか?」  
「ちょっとね。テレビでも見て待ってて」  
「あいよ」  
居間に行くとつばさとこだまがいた。  
「あ!兄ちゃんだ」  
「大輔兄ちゃん!」  
弟たちが寄って来る。いつ見ても元気だねぇ。  
「大輔ごめん。もうちょっとかかりそうなんだ」  
しばらく弟たちに付き合ってアニメを見ていると、のぞみが申し訳なさそうに言ってきた。  
「俺はかまわないけど、どうした?」  
「ほんとにゴメン。一度戻る?出来たら呼びに行くから」  
「そうだな……いいよ、ここにいるよ」  
「そう」  
「ああ、うちにいても一人だしな」  
「大輔ホントにゴメン、もうちょっと待っててね。あんたたちは先にお風呂入っちゃいなさい」  
俺に何度目かの詫びを入れると、弟たちにそう声をかけた。  
 
「兄ちゃん一緒に入ろ」  
「俺も俺も!」  
予想外の反応が来た。俺とのぞみが同時に声を上げる。  
「「え?」」  
「兄ちゃんと入るー」  
「兄ちゃんと入りたーい」  
「あんたたちねぇ!大輔、あんたもダメって言ってやって」  
「なんでー」  
「いいじゃん、姉ちゃんのケチー」  
俺としては賛成でもなければ反対でもない。それにとくに断る理由もない。  
「いや、俺は別にかまわないけど?」  
「「やったー」」  
「いいの?」  
「何かまずいことでもあるのか?」  
「「入ろっ!入ろっ!」」  
「大輔いやじゃないの?」  
「どうして?」  
「大輔がいいって言うなら……」  
「じゃ決まりだな」  
「お願いできる?」  
「いいよ。でも着替え取ってこないと」  
「「兄ちゃん早くー」」  
「そうよね」  
「ちょっと行って来るよ」  
「ありがとう。ごめんね」  
「いいって。おいお前たち、兄ちゃんうち行って着替え取ってくるからちょっと待ってろ」  
「早く戻ってきてねー」  
「わーい」  
のぞみの家に戻ってきたとき、弟たちはすでに風呂場で騒いでいた。  
のぞみの家の風呂に入るの、何年ぶりかなぁ?  
 
風呂から上がると夕飯の支度が出来ていた。唐揚げだ。美味そうだなぁ。  
のぞみの料理はいつ食べても失敗がない。みさきとは大違いだ。ほんと凄いよなぁ。  
楽しい夕食の最中、いきなり弟たちが衝撃的な発言をした。  
「兄ちゃんスゲェよ、ちんちんモジャモジャだもんな!」  
「のぞみ姉ちゃんも同じぐらいモジャモジャだよな!」  
「ぶっ!」  
「ゴホッゴホッ…」  
俺は味噌汁を吹き出し、のぞみは咳込む。  
それに動じることなく、モジャモジャ談義を続けるつばさとこだま。  
「ちょっ、ちょっとあんたたち!」  
のぞみが真っ赤になって話をやめさせる。  
なぜ叱られているのか分からずキョトンとする二人。  
その後の食事はギクシャクしたものとなってしまった。やれやれ……。  
 
食事が終わり、のぞみは洗い物をしにキッチンへ、弟たちは居間でテレビを見ている。  
家族の団欒を邪魔しちゃ悪いよな。そろそろおいとまするか。  
「のぞみ、俺そろそろ帰るよ」  
「え?もう帰るの?」  
「うん、学校の準備もしなくちゃいけないし、親父たちから電話あるかもしれないから」  
「そう。……さっきはあの子たちが変なこと言ってごめんね」  
「い、いや。あははは……」  
引きつって笑みを浮かべるしかない俺。  
「兄ちゃん帰っちゃうの?」  
俺たちの話を聞きつけ、つばさとこだまがやってきた。おいおい、今度は変なこと言うなよ。  
「ゲームしようよ!」  
「一緒に遊ぼう!」  
だから俺は帰るんだっつうの。  
「「ねぇねぇ!」」  
結局、ゲームに付き合わされた俺は帰れなくなってしまった。  
 
「ほらあんたたち、もう何時だと思ってるの?いい加減に寝なさい!」  
俺がゲームをやらされている間に風呂に入っていたのぞみが、まだ起きている弟たちに声をかける。  
「兄ちゃん一緒に寝よう!」  
「寝ようよぉ!」  
左右から手を引っ張られ、振り子のように揺れる俺。  
ゲームも一段落し今度こそ帰る気でいたのに、今度は一緒に寝ようってか?  
「お、おい……。のぞみぃ、何とかしてくれよ」  
「この子たち一度言い出すときかないのよねぇ…大輔、今日みさきちゃんいないんでしょ?泊まっちゃえば?」  
「泊まるったって何も用意なんかしてないぞ」  
「近いんだからちょっと取りに行けばいいじゃない」  
「「寝ようよぉ!寝ようよぉ!」」  
「それに今うち、女と子供しかいないから男の人いると安心なのよねぇ」  
こうなったらもう泊まるしかないか……。  
「分かった分かった。うち行って着替えや洗面道具持ってくるから、ちょっとその手を離してくれ」  
「「わーい」」  
 
俺が来たのがうれしいのか、いつまでも寝ずに騒いでいた子供たちも12時を回る頃には寝付いた。  
やれやれ。さすがに疲れたよ。  
そのとき、部屋の戸がノックされるとのぞみの声がした。  
「大輔、起きてる?」  
「ん?どうした?」  
「表で変な音がするのよ」  
「何?」  
布団から起き上がると耳を澄ませる。何も聞こえない。  
弟たちを起こさないように布団を抜け出すと部屋を出た。  
パジャマ姿ののぞみが青い顔で立っている。  
「聞こえた?」  
「いや、聞こえないぞ」  
「大輔、私怖い」  
「どこで音がした?」  
「私の部屋の外」  
まさか痴漢?女と子供しかいないと知った変質者でもいるのか?  
「ここ2階だぞ?」  
「だって」  
「とにかく見てみるよ」  
「気をつけて。大輔に何かあったら私……」  
「心配するな、なにがあってものぞみと弟たちは俺が守るから」  
「大輔……」  
 
のぞみの部屋に入る。考えてみれば子供のとき以来だ。  
女の子らしい調度品が目に付く。それに、女の子の甘い匂い。  
一瞬股間が反応しかけた。官能にとろ火が着いた気がした。  
だが今はそんなことに浸っている場合じゃない。確かめなくては。  
「どの辺?」  
「この壁の向こうあたり」  
窓を開けて身を乗り出せばそこを目視できる。  
「よし」  
そのとき、壁の向こうで間違いなく物音がした。  
「大輔」  
のぞみが抱きつく。  
のぞみの胸が俺の腕に当たっている。のぞみの髪からいい匂いがする。  
いかん!心を乱されるな!のぞみは俺を信じきっている!のぞみの気持ちを裏切るな!  
気持ちを外に集中、息を殺して気配を探る。  
壁の向こうは静かになった。人がいるような感じはない。  
のぞみを離れさせると俺は窓辺に向かった。  
「よし!」  
気合いを入れると窓を開け身を乗り出し、音のした辺りに目を走らせる。  
「のぞみぃ」  
「だ、大丈夫?」  
「お前さぁ、ほんと臆病な」  
「え?」  
「雨どいが外れてて、壁にぶつかってる」  
「え?」  
「風が吹くと揺れて壁にぶつかるんだよ」  
「え?え?」  
「だからぁ」  
「えぇ?」  
後ろでへなへなと座り込むのぞみがいた。  
 
その一件で気持ちが昂ぶったのか、俺ものぞみも目が冴えてしまった。  
眠くなるまで話そう。どちらからともなくそういう雰囲気になり、のぞみの部屋でしゃべることになった。  
俺はのぞみのベッドに腰掛け、のぞみは自分の椅子に座る。  
子供のころの思い出や学校の話、友人のことなど取りとめもなく話す。  
そのうちひとわたりの話題が出尽くし、沈黙が多くなった。  
「気が抜けちゃったわね」  
ぽつりとのぞみが言った。  
「ほんとのぞみは気が小さいよな。カミナリもまだ怖いんだろ?」  
「それとこれとは関係ないでしょぉ」  
「ま、何もなくてよかったじゃないか」  
「ほんと。でも、ありがとう」  
「いいって。気にすんなよ」  
「私ね、大輔が私たちを守るって言った時、すっごくうれしかった」  
「そりゃ男として当然だろ」  
「ねぇ、男だから言ったの?私じゃなくてもよかった?」  
いつになく真剣な表情でのぞみが聞く。  
「え?」  
「ね、答えて」  
まっすぐに俺の目を見て訊ねるのぞみ。  
「のぞみだから……のぞみだから守ろうと思った」  
俺は気圧されたようになり、思わず本心を語ってしまった。  
 
「大輔!」  
のぞみが抱きついてきた。  
その勢いに、俺はベッドに押し倒される格好になる。  
「の、のぞみ」  
「ありがとう。私うれしい」  
のぞみの肌が、柔らかい体が、体温が、のぞみのすべてが俺の五感を刺激する。  
押し殺していた感覚がよみがえってきた。  
股間に血液が集まっていくのを感じる。  
まずい、このままだと取り返しがつかなくなる。  
「の、のぞみ!」  
のぞみを引き離そうとする。  
だがのぞみは離れない。それどころか、より強くしがみついてきた。  
 
正直に言おう。俺はのぞみでオナニーしている。  
のぞみの笑顔、声、ちょっとした仕草、すべてが好きだ。  
いつから、というのは意識したことがない。  
だが、気が付くとのぞみのことが好きになっていた。  
オナニーは中1で覚えた。  
それ以来、常にのぞみで欲望を発散してきた。  
想像の中でのぞみと何度も愛し合った。奉仕させた。犯しもした。  
俺に見せてくれた笑顔を思い浮かべながら射精したときは罪悪感も持った。  
のぞみの知らないところで俺はのぞみを穢している。そう思うと自分に腹が立ったこともある。  
だが俺はのぞみが好きだった。誰よりも、どんなものよりも。  
そののぞみへの想いは誰にも気付かれぬよう、そっと心に秘めてきた。  
今そののぞみが俺の胸の中にいる。  
ここ3日ほどバタバタして性欲を処理していなかったことが災いした。  
それが引き金になった。  
理性が音を立てて崩れていく。  
 
体勢を入れ替え、のぞみを組み伏せた。  
のぞみの表情に怯えが走った気がした。だがもう止められない。  
「のぞみ…のぞみ」  
何度も名前を呼びながら、股間の剛直を押し付けた。  
トレーナーは滑稽なほど突っ張っている。それをのぞみの下腹部に何度も押し当てた。  
童貞の俺に手順を考えるゆとりはなかった。  
「大輔、痛い…」  
のぞみの声に我に返った。のぞみの両手首を、色が変わるほど強く握り締めていた。  
「ご、ごめん。俺……」  
「いいのよ」  
「え?」  
「大輔の好きにしていいよ」  
耳まで朱に染め、のぞみが言った。  
その一言で冷静さが戻ってきた。  
あまりの興奮に感覚が麻痺したのかもしれない。  
勃起はそのままだが、ともかくのぞみに優しく接することができるようになった。  
 
のぞみにこすりつけていた下半身がこれ以上触れないよう、注意深く腰を浮かす。  
そうしてのぞみの肩を抱き、身を起こさせる。  
「のぞみ」  
無言で俺を見つめるのぞみ。だがその目は穏やかだった。  
「のぞみ」  
もう一度名前を呼び、優しく抱きしめる。  
のぞみの手が俺の背中に回される。  
今、俺はのぞみを感じている。  
のぞみが俺から体を離した。  
見つめ合う俺たち。のぞみは目を閉じると心持ち顔を上向けた。  
唇を合わせる。触れるか触れないかのかすかな口付け。  
直後、いったん離れた唇がもう一度重なる。  
俺たちはお互いの唇をむさぼるように求めあった。  
舌が絡み、唾液が交換される。  
のぞみが切なそうな吐息を漏らす。  
俺たちは唇を離し、もう一度見つめ合った。  
のぞみのパジャマの一番上のボタンに手をかける。  
ひとつずつ、丁寧に心をこめてはずす。  
「大輔、優しいね」  
のぞみの声を久しぶりに聞いた気がした。それだけで心が明るくなった。  
 
俺はのぞみが好きなんだ。改めて実感した。  
パジャマを肩からはずし袖を抜く。  
のぞみの上半身はシックなデザインの施された白いブラジャーだけとなった。  
そっと胸に手を置く。  
柔らかいが張りがある。俺の指を押し返す弾力が感じられる。  
恥ずかしいのだろう、白い肌を赤く染め、それでものぞみはまっすぐに俺を見ている。  
のぞみの気持ちに応えなければいけない。いい加減なことは出来ないししたくない。  
のぞみの背中に手を回す。  
ブラジャーの留め金は後ろにあるはずだ。  
乏しい知識でそれらしい場所をまさぐる。  
手に金具が触れた。だが何度力をこめてもはずせない。  
「ごめん、はずし方がわかんない……」  
張り詰めたのぞみの表情がほのかに和らいだ気がした。  
のぞみが手を後ろに回すと、俺があれだけ苦戦したブラジャーがあっけなく外れた。  
手で胸を隠すようにブラを押さえているのぞみ。  
俺は肩紐に手を伸ばし、片腕ずつ抜き取った。  
とうとうのぞみの上半身が裸になった。  
腕を組むようにして胸を覆っているが、のぞみの上半身をさえぎるものはもう何もない。  
「のぞみ、のぞみの胸が見たい」  
のぞみの腕が下ろされる。二つのふくらみが目に飛び込んでくる。  
美しい。心からそう思った。  
 
言葉を失い、俺は呆けたようにのぞみの胸を見つめていた。  
「大輔……恥ずかしい…」  
消え入るようなのぞみの声がした。  
「ご、ごめん。でも…のぞみ綺麗だ」  
うつむくのぞみ。顔にまた赤味が増したようだ。  
「のぞみ」  
一声かけ、決して乱暴にならないよう、そっとのぞみを横たえる。  
心配そうに、しかし畏れた顔は見せずにのぞみが俺を見る。  
「うん」  
のぞみを安心させるように笑顔を返すと、俺はパジャマのズボンを脱がしにかかった。  
パジャマの腰のところを手に取り、そのまま下に滑らす。  
滑らしたつもりだったが、お尻に引っかかって指が外れた。  
パチン!という音がしてゴムがのぞみの腹を打った。  
「あ、あれぇ?」  
思わず間抜けた調子の言葉が口をついた。  
「うふふふ」  
それで緊張が解けたのか、のぞみが笑った。  
 
よかった。いつもののぞみに戻った。  
「ごめん、のぞみのお尻が大きすぎて脱がせられなかった」  
俺にも冗談を言う精神的な余裕が出てきた。  
「ひっどーい!」  
「ま、のぞみのケツがデカイのは昔からだけどな」  
「何それ!」  
「いいじゃん。お尻が大きいのは安産型だってよく言うし」  
「そんなに大きくありません!」  
「あはははは」  
「うふふふふ」  
ひとしきり笑った俺たちは続きを始めた。  
今度はのぞみもリラックスしてるようだし、俺も股間以外はほぐれている。  
「のぞみ、お尻ちょっと持ち上げてくれる?」  
「う、うん」  
二度目はすんなり腰を通過した。そして両足一緒にパジャマを取り去る。  
のぞみは淡いグリーンのショーツをはいていた。  
よく見ると股のところにしみが出来ている。  
(濡れてる。のぞみも興奮してるんだ)  
「ちょっ、ちょっと大輔、私だけ脱がせてずるい」  
「あ、ご、ごめん」  
俺はのぞみから身を離すと、手早く着ている服を脱いだ。  
 
のぞみは上半身を起こし、俺を見ている。  
トランクスを下ろすときはさすがに抵抗があったが、気合いを入れて一気にいった。  
足首から抜き、完全に全裸となる。  
それまでののぞみとの行為で十分に興奮していた俺の砲身はすでにたけり立っている。  
のぞみが息を飲むのが聞こえた。のぞみの視線の先に俺の屹立がある。  
「大輔……」  
少し恐怖を含んだようなのぞみの声音。  
「見るの初めてか?」  
「あ、当たり前でしょ!」  
「弟と風呂入ってるんだろ?」  
「だってあの子たちの、こんなになってない……」  
「そうだよな」  
「お父さんのだって、こんなじゃなかったし……」  
「娘の裸で大きくしてたらヤバイだろ?」  
「そ、そうよね」  
「怖い?」  
「ちょ、ちょっと怖いかな」  
「のぞみのこと、好きだから」  
ついに言った。今まで誰にも言わなかった心のうちを、ついにのぞみに告げた。  
 
「え?」  
「大好きな女の子と愛し合いたいから、こうなるんだ」  
「大輔……。ありがとう。私も大輔のこと、好き」  
「ほんとに?」  
「うん。ずっと前から…好きだった」  
「のぞみ!」  
そのままのぞみを抱きしめた。  
「だ、大輔、苦しいよ……」  
「ご、ごめん」  
あわてて力をゆるめる。  
「………」  
「のぞみ?」  
「お腹に当たってる……」  
「あ、ご、ごめん」  
「ううん、いやじゃないよ。それより痛くないの?」  
「え?」  
「そんなに腫れてるよ」  
「あ、あぁ…大丈夫」  
「……勃起、だよね」  
「うん。保健で習ったろ」  
「まさか実地で体験すると思わなかったわ」  
「やめる?」  
「……大丈夫。自分で決めたことだから」  
「じゃあさ、俺だけ裸ってのもなんだから、のぞみも脱いでくれる?」  
「あ…」  
「それとも俺が脱がす?」  
「大輔!」  
のぞみはちょっと俺をにらんだが、そのままショーツに手をかけた。  
 
わずかなためらいののち、のぞみはショーツを下ろした。  
俺から顔を伏せ、片足ずつショーツを脱ぐ。  
そこには生まれたままの姿ののぞみがいた。  
「弟たち間違えてないか?」  
「え?」  
「のぞみのあそこ、そんなに濃くないよな」  
「バ、バカ!」  
胸と下半身を隠すように身をちぢこめるのぞみ。  
「ごめん。でも、のぞみの裸、きれいだ……」  
「大輔……私、初めてなの」  
「俺だってそうだよ」  
「大輔に…あげるね」  
「俺のものぞみにあげるよ。もらってもうれしくないかもしれないけど」  
「ううん、うれしいよ」  
「俺もうれしいよ。のぞみの最初の相手になれるんだもんな」  
「最初で最後の相手だったりして」  
「え?」  
「ううん、なんでもない」  
「のぞみだって俺の最初で最後の相手かもな」  
「そうなったらいいよね」  
「そうだな」  
 
「大輔…あのね」  
のぞみが言いよどむ。言いにくいことか?  
「避妊はちゃんとしような」  
「…ありがとう」  
のぞみが笑顔で答える。  
「コンドームどこ?」  
「ちょっと待ってて」  
青空高校では生徒一人に一つずつコンドームが配られていた。  
俺がもらったやつは自分でするとき練習がてら使ってしまった。  
もちろんのぞみを思い浮かべて、だ。  
いつかは使うかもしれないと思っていたが、まさか今日ここで、それものぞみと使うとは……。  
「大輔がもらったのどうした?」  
「え?」  
(まさかのぞみのことを考えて使いましたとは言えないよな)  
「あ、ああ、うちにあるよ」  
(ごめん、ほんとはもうない)  
「そうよね。相手がいなくちゃ使えないもんね」  
「……ああ」  
小物入れらしき場所から大事そうに取り出したコンドームを俺に手渡す。  
 
「ねぇ、大輔は着けたことある?」  
「……ごめん、やっぱりのぞみに嘘はつけない。つきたくない」  
「な、何?」  
「俺がもらったの、もうない」  
「え?」  
「練習のつもりで使っちゃった」  
「あ……」  
何を想像したのか、見る見る赤くなるのぞみ。  
「だから一度だけ着けたことある」  
「そ、そうなんだ……」  
「のぞみ、最初だけ着けないでしてもいい?」  
「え?」  
「のぞみの初めては自分の肌で感じたいんだ」  
「それって……」  
「あぁ、違う違う。入れたらすぐに抜いてちゃんと着ける」  
「………」  
「だめ?」  
「ううん。大輔のこと信じる」  
「ありがとう」  
 
のぞみにのしかかると体を重ねる。  
二人の体に陰茎がはさまれ、そこから生まれた快感が俺に声を上げさせた。  
「う…」  
「大輔?」  
「気持ちいいんだ。こんなの初めてだから」  
「……私も気持ちいいよ」  
「のぞみ……」  
童貞の俺には未知の場所、のぞみの「女」の部分が見たい。  
そう思った俺は体をずらし、のぞみの股間に移動した。  
なんと言えばいいのだろう。  
大須賀たちとビデオで見たものとは色も形も違っていた。  
醜悪。そんなイメージしかなかったそれは、意に反し端正だった。  
中心に二筋あるぼってりした肉のひだが小陰唇だろう。  
その奥でヒクヒクとうごめく亀裂がいやらしい感じで濡れて光っている。  
あとからあとから粘性の高そうな液体が染み出てくる。これが愛液?  
(ここに入れるんだ)  
憑かれたように見入る。  
「恥ずかしいよ……」  
のぞみの声に呼び戻された。  
いつまでそうしていたのか、気が付くとこれ以上ないぐらい赤くなったのぞみが俺を見ていた。  
 
「ごめん……のぞみのここ、とってもきれいなんで……」  
「いや……」  
手で顔を覆い、俺の目から逃げるのぞみ。  
もう一度のぞみの股間に目を向ける。  
そっと触れてみる。  
ぬるぬるした感触が指にまとわりつく。  
そのまま溝を上下に撫ぜる。  
中ほどに一か所くぼんだ場所があることが分かった。  
(ここだ)  
ためしに少しだけ指を入れてみた。  
ぬるりっ。  
なんの抵抗もなく第一関節の少し下まで指が沈む。  
「あぁっ!」  
その途端のぞみが嬌声を上げる。  
「ご、ごめん。痛かった?」  
「違う…」  
そう言うとのぞみが手を広げ、俺に差し伸べた。  
(抱いてほしいってことか?)  
俺は膣から指を抜くと、またのぞみにおおいかぶさった。  
のぞみが俺を強く抱きしめる。  
唇を求めてくる。  
これまで以上に激しいキス。  
同時に腰が押し付けられる。  
のぞみのあえぐ声が官能を揺さぶった。  
 
入れたい。のぞみに射精したい。その気持ちがどうしようもないほど高まった。  
「のぞみ…俺……」  
「うん、いいよ」  
俺は体を起こすと、のぞみの足の間にひざをついた。  
腰の奥のほうに熱いものを感じる。  
出したくてたまらない。精液が出口を求め、すぐそこまで来ているかのようだ。  
(まずいな、これじゃあちょっとの刺激でイキそうだ)  
挿入して数秒で射精などという事態は避けたい。男としてのプライドがある。  
失敗はできない。気を逸らしながら膣口をじっくり見て探す。  
見つけた。あとはここにあてがって、腰を突き出すだけだ。  
「いくよ」  
腰を進める。のぞみのぬめった陰唇に亀頭が触れた。ヌチャッとした濡れた感触がする。  
その瞬間、留め金が外れた。  
「っ!」  
「きゃっ!」  
のぞみが驚いた声を上げたのが聞こえる。  
めくるめく快感が背筋を走り、熱いものが尿道を通っていく。  
俺は体を震わせ、欲望を吐き出し続けた。  
一瞬だった気がする。もっと長い時間だった気もする。  
劣情の時間が過ぎ去った。  
 
のぞみの下腹部に目をやると、そこには白い粘液が付着している。  
挿入してもいないのに射精してしまった。  
「……ご、ごめん」  
恥ずかしさと情けなさの混じった複雑な思いで、やっとそれだけを口にする。  
「ううん、平気。いきなりだったからびっくりしただけ」  
のぞみはそう言って微笑んだ。  
破瓜の痛みを免れた安心感なのか、のぞみが元気を取り戻したようにも感じる。  
「ほんとにごめん。俺……」  
「気にしないで。だって、私の体に感じてくれたってことでしょ?」  
「のぞみ……」  
「うれしかったよ、大輔」  
「のぞみ、ありがとう」  
「えへへ。あれ?大輔、それ」  
「ん?あぁ、射精したからな」  
「射精…すると縮むんだ」  
射精という言葉を、のぞみは頬を赤らめながら発音した。  
「うん。知らなかった?」  
「知るわけないでしょ!」  
「そうだよな」  
そんなことを話している間も、先端から欲望の残滓を垂らしたモノをのぞみは見つめている。  
 
「ティッシュどこ?」  
急に恥ずかしくなった俺は慌てて話題を変える。  
「あ、そこ」  
指差された箱を手にベッドへ戻ると、のぞみは俺の精液を指にまとわりつかせていた。  
「の、のぞみ」  
「こんなにドロッとしてるんだ……。精液っていうからもっと水っぽいものかと思ってた」  
「溜まってると濃くなるんだよ」  
「じゃあ大輔溜まってたの?」  
「あ、いや……」  
「溜まってたんだぁ」  
そう笑って言いながら、のぞみは指を開いたり閉じたりしている。  
「もういいだろ、拭けよ」  
「ネバネバする。変なにおいもするね」  
のぞみが生まれて初めてかぐにおい。それは俺の体内から射出されたものだ。  
のぞみを征服した。なんとなくそんな気になった。  
「くさいだろ?」  
「う〜ん……変なにおいだけど、嫌なにおいじゃないよ。大輔のだからかな?」  
のぞみはまぶしい笑顔でそう答えた。俺の方が恥ずかしいよ……。  
「バ、バカなこと言ってんなよ!ほら、手拭いて」  
「ふふ。大輔、気持ちよかった?」  
「あ、ああ。良かったよ、とっても」  
 
隣にのぞみがいる。  
最愛の女性が何もまとわず俺の隣にいる。  
俺の二の腕を枕にし、甘えたように身をすり寄せている。  
秘密を共有した。そんな意識が二人の距離をいっそう近づけたようだ。  
もうただの「幼なじみ」ではない。「男と女」だ。  
睦み言を交わす。  
足が絡む。  
キスする。  
意味もなく笑いあう。  
お互いの体を密着させる。  
のぞみの髪をなでる。  
俺の乳首が触られる。  
のぞみの笑顔がすぐそばにある。  
こんなにも心安らかで落ち着いた気持ちは初めてかもしれない。  
だが腰の奥には燠がある。少しのきっかけで再び火がつくだろう。  
たしかに一度出しているとはいえ暴発だった。  
何度も絶頂の寸前で踏みとどまり、十分に快感を得た上で発射したわけではない。  
納得も満足もしていない。  
それに若い性欲はとどまるところを知らない。  
何度目かの口づけを終えたとき、股間が膨脹していくのを感じた。  
 
鎌首をもたげるのがのぞみにも分かったようだ。  
「大輔…」  
「また立ってきちゃった」  
「うん」  
頬を染めるのぞみ。  
「のぞみを抱きたい。のぞみと一つになりたい」  
「うん」  
俺は身を起こすと、今度は性愛の意味をこめたキスをした。  
軽くついばむようなキス。唇を愛撫するキス。舌を絡めるキス……。  
キスだけで性感が高まっていく。  
さっきは俺だけイッてしまった。  
今度はのぞみをイカせたい。  
溜まっていた精液を少しでも出したせいか、俺は落ち着いていた。  
キスしながら耳や頬に触れる。髪をなでる。  
「好き」  
「俺もだよ」  
愛をささやきあい、また唇を重ねる。  
同時にのぞみの胸を手で攻める。  
のぞみの柔らかい唇の感触は何よりも素敵だ。  
いつまでも触れていたい。  
だがそうしてばかりもいられない。本格的に胸へ移行する。  
 
両の乳房は重力の影響で少しつぶれ気味だが、ほどよい大きさを残している。  
そっと口を寄せると舌先で乳首を転がした。  
そのまま舌で押し込むように力を加える。  
「あん!」  
効いたのか?のぞみが鼻にかかった声を出す。  
のぞみの顔を見上げる。目を閉じて眉根を寄せている。  
「痛かった?」  
「平気……」  
恥ずかしそうにのぞみが答える。  
よかった。のぞみを傷つけるようなこと、痛がるようなことだけはしたくない。  
愛撫の最中にも何度もお互いの名を呼ぶ。  
これだけのぞみの名を呼んだのは初めてだ。  
再開する。のぞみの乳首を唇でしごく。  
最初の頃に比べ、乳首がとがったように感じる。  
(乳首が立つってこれのことか?)  
柔らかいのだが、硬さも残したのぞみの乳房。  
触っててこんなに気持ちいいものがこの世にあったのか。俺は感動した。  
のぞみの胸を揉みながら腿のあたりに手を伸ばす。  
いきなりクリトリスを触るのは早いと思ったのだ。  
腿を手のひら全体で愛撫する。すべすべして気持ちいい。  
「大輔…大輔…」  
少し開いた口からのぞみは可愛いあえぎ声を出し、俺の名も呼んでいる。  
 
感じているんだ……。  
意を決してのぞみの股間に触れた。  
恥丘に手を乗せる。最初に和毛の感触があった。  
少しずつ指を伸ばす。  
「!」  
身をよじるのぞみ。  
まだ早かったか?それとも感じているのか?  
判断できかね、手が止まる。  
のぞみの顔を見る。  
のぞみは俺の目を見、しっかりとうなずいた。  
大丈夫だ。のぞみは嫌がっていない。  
俺は指を進めた。  
濡れた中を探るうち、小さな突起が見つかった。  
「あ!」  
同時にのぞみの首がのけぞる。  
のぞみの様子を見た。のぞみも俺を見た。  
 
「そこ、優しくして……」  
小さな声でのぞみが言った。  
これがクリトリスか。  
慎重に、だが適確に愛撫を集中させる。  
場所がわかればあとは指だけでいい。  
俺はのぞみを抱き寄せると唇を重ねた。  
俺の首に腕を回し、全身ですがりつくのぞみ。  
「のぞみはオナニーしたことあるの?」  
「な、な、ないよっ」  
真っ赤になり、上ずった声で吃るのぞみ。おい、バレバレだよ。  
「どこが気持ちいいか教えて。そこいじってあげるから」  
「………」  
「のぞみ」  
「クリ……」  
聞こえるか聞こえないかの小さな声がのぞみの唇から漏れた。  
やった!女の子にクリって言わせた!  
「クリじゃわかんない。ちゃんと言って」  
「バカ!」  
俺に顔を見せまいと腕に力を入れてしがみつくのぞみ。か、かわいい。  
 
左手をのぞみの肩から首の後ろに回す。のぞみと見つめ合う。  
のぞみの右側に横になると、そっとクリトリスに手を這わせる。  
「好きだよ、とっても」  
「大輔…好き……」  
「痛かったら言ってね」  
そう告げると静かに、優しく、そしてゆっくりとクリトリスを指の腹でもむ。  
「ん!」  
のぞみの目がきつくつぶられる。  
だめだ、強すぎた。  
「ごめん!」  
「違うの…気持ちいいの……」  
「のぞみ?」  
「痛かったらちゃんと言うから、心配しないで続けて」  
「わかった」  
さっきと同じぐらいの力でクリを揉む。俺の指にのぞみのヌルヌルした愛液が絡みつく。  
ある程度の力を入れてものぞみが痛がらないことが分かる。  
少しずつ力を強くした。  
俺の首に回された腕に力がこもる。だがのぞみは痛がっていないようだ。  
それどころか鼻を鳴らすようななまめかしい声を出している。  
さらに力を増した。  
 
静かに撫でるだけだったクリを、転がしたり、皮膚の中に埋め込むように強く押さえつけたりする。  
あるときは羽根のように軽やかに触れる感じの刺激を与える。  
「あっあっあっ」  
のぞみの息が荒くなる。体もうっすらと汗ばんでいる。  
感じているんだ!  
こんなエッチなのぞみは見たことがない。  
のぞみは腰を持ち上げるようにして俺の手にクリを押し付けてくる。  
俺は執拗にクリトリスをなぶった。  
突然のぞみが声を上げた。  
「大輔っ!…だめっ!……だめっ!」  
イクのか?  
ここぞとばかりに肉芽を強く圧迫する。  
「ひゃう!」  
そう声を上げると、俺の首に抱きついていたのぞみが硬直した。  
ぶるぶると身を震わせたあと、静かに力が抜ける。  
イッたのか?  
「のぞみ?」  
荒く大きな息をついて目を閉じているのぞみ。  
さっきまでとは明らかに違う。イッたんだ……。  
俺がのぞみをイカせた。俺がのぞみを!  
男としての自信が沸いてきた気がした。  
「大輔……」  
しばらく息を整えていたのぞみが力なく俺の名を呼ぶ。  
初めて聞くような優しい感じだ。  
「イッちゃった?」  
「知らない……」  
そう言うと俺の胸に顔をうずめた。  
 
のぞみが落ち着くのを待つ。  
いよいよのぞみを俺のものにするんだ。  
さっきみたいに早漏ってことはないと思うが、入れた瞬間イッてしまうかもしれない。  
そうなったら望まない妊娠の可能性だってある。  
「のぞみ、今度は最初からコンドーム着けるよ」  
「いいの?」  
「うん。のぞみに俺の子供産んでもらいたい。でもそれは、俺がのぞみの人生に責任を持てるようになってからにする」  
「大輔……」  
コンドームの袋を破ると、手順を思い出しながら装着した。  
のぞみが興味深そうな面持ちでそれを見る。なんだか照れくさい。  
どうやら上手く着けられたようだ。  
練習が役に立ったと初めて思えた。  
「のぞみ」  
「うん」  
再びのぞみの陰核に手をやると、そっとつまんだ。  
 
一度イカせているだけあり、触り方や強弱はだいたい分かる。  
さっきと同じようにのぞみを抱くと、クリに添えた右手を動かした。  
クリトリスを刺激しながら、今度は膣にもそっと指を入れてみた。  
「ん!」  
のぞみが声を出す。  
さっきとは違った抵抗があり、奥に入っていかない。  
体をひねり、のぞみの膣を見た。  
俺の指は第二関節のあたりまで入っているように見える。  
だが実際は肉のひだの厚みのせいで、第一関節までしか入ってなかった。  
もう少し力をいれて侵入を試みる。  
きつい。指が締め付けられる。痛いぐらいだ。  
セックスの経験がない俺には、その締め付けが平均的なものなのかどうかが分からない。  
指を抜く。  
そろそろ入れたい。  
精液がこみ上げてきているのを俺は感じていた。  
「のぞみ、いくよ」  
そう声をかけ、軽く唇を合わせたあとでのぞみの足の間に割って入った。  
今度は失敗したくない。  
手を添えてのぞみの亀裂で何度か勃起を上下させる。  
のぞみの粘液を先端になすりつけると、狙いをつけて腰を押し出した。  
 
「痛い痛い!大輔痛いよ!」  
あわてて抜く。  
「大丈夫?」  
「ごめん、痛い」  
のぞみのそこは真っ赤に充血している。微かに血もにじんでいるようだ。  
「のぞみ」  
のぞみの中に亀頭が入っていけない。  
これではのぞみと一つになるのは無理か……。  
「ごめん、大丈夫だから、もう一回して」  
俺は首を振るとコンドームをはずす。  
「のぞみに痛い思いはさせたくない」  
「でも」  
「いいから!」  
黙るのぞみ。重苦しい空気が流れる。  
沈黙を破ったのはのぞみだった。  
「ごめんね大輔。私の体、おかしいのかな?」  
「そんなことない。俺が慣れてないせいだよ、きっと」  
「ごめんね」  
「謝るなよ。のぞみのせいじゃない。それに俺たちこれからだろ?あせる必要ないよ」  
「ありがとう……でも大輔、それ平気?」  
「え?」  
のぞみの目が勃起を見ている。  
 
俺の分身は痛いほど硬直している。出さないことには収まりがつきそうにない。  
「実は……出したくてしょうがないんだ……」  
「私どうすればいい?」  
「……手で、してくれる?」  
「うん……。でもしたことないからわかんない。どうすればいいの?」  
「手で握って上下にこすってくれればいいよ」  
「うん。こう?」  
おずおずと手を伸ばすと、のぞみは俺の怒張をそっと握った。  
「うん。でももっと強く握っても大丈夫だよ」  
のぞみの手のひらに力が加わる。  
「これぐらい?」  
「そう。そうしたら上下に動かして。……あぁ、気持ちいいよのぞみ」  
のぞみの手が上下する。まだぎこちないが一生懸命さが伝わってくるようだ。  
俺を射精させよう、満足させようという気持ちを感じる。  
「本当は口でしてあげたいんだけど、なんか怖くて」  
「ううん、手でしてくれるだけで十分だよ」  
「ありがとう、大輔」  
 
ベッドの上に座るように向かい合った俺たち。  
のぞみは俺の腰をはさむかのような姿勢で足を大きく開いている。  
もしも後ろから見る者がいれば、俺たちは対面座位で交わっているように見えるだろう。  
だが俺たちはまだ、童貞と処女だった。  
俺はのぞみを抱きしめ、のぞみは俺の股間で手を動かす。  
 
俺は自分の感じる部分をのぞみに刺激してもらおうと指示を出す。  
袋を揉んだり、先端の割れ目を指の腹でなでたり、カリ首を爪で軽く引っかいたり。  
これまでのオナニーで得た俺の性感帯を、のぞみは忠実に愛撫した。  
「こう?」  
「うん、すごくいい…」  
「気持ちいいの?」  
「あぁ、のぞみ…のぞみ……」  
うわごとのように名前をつぶやく。  
「大輔…大輔…」  
のぞみもそれに応えるように俺の名前を呼び返す。  
 
射精が近づいてきた。腰骨のあたりがうずく。  
一心にこわばりを揉みしだくのぞみの真剣な表情。  
これまでのぞみを可愛いと思ったことは何度もある。だが今日ののぞみは綺麗だと思った。  
俺のために額に汗を浮かべて奉仕するのぞみが愛しい。  
美しいものを汚しているという背徳感。  
しかしその美を自分だけが汚せる優越感。  
そして、初めて見るのぞみの「オンナ」の顔。  
のぞみの肌から立ちのぼる「メス」の香り。  
部屋に立ち込める、愛液と精液の混じったにおい。  
それらが渾然となったとき、興奮が限界を超えた。  
「のぞみっ、のぞみっ……うっっっ!」  
ドピュッドピュッドピュッ……  
のぞみの手にしごかれ、肉棒は白濁をほとばしらせた。  
音がするのではないか。そう思えるような激しい脈動が何度も起こる。  
目の前が真っ白になるような悦楽の境地が俺を襲う。  
これほどの性の愉悦は一度として味わったことがなかった。  
いちばん好きな女の子に精液をぶちまける。まさに快楽の極致だった。  
 
激情が去る。  
淫欲の塊を出し尽くして萎えた一物。それに添えられた手をのぞみはまだ動かしている。  
亀頭は射精直後で敏感になっている。くすぐったい何ともいえない感覚が我慢できない。  
男の生理を知らないのぞみ。  
かわいいと思った。  
のぞみと俺の手を重ね、動きを止めさせる。  
「ありがとう。すっごく良かったよ……」  
「大輔……」  
そのままのぞみを抱きしめ、軽くキスをする。  
のぞみははにかんだ表情を浮かべたまま俺を見つめている。  
ふと見ると、のぞみの首筋から胸、腹のあたりにかけて精液が飛び散っている。  
のぞみの手も俺の吐液にまみれている。  
「汚しちゃったね」  
「あ…」  
初めて気が付いた、という風で自分の体を見下ろすのぞみ。  
のぞみの美しい体を俺の精液で彩った。それがたまらなくうれしかった。  
のぞみの体を拭うと、俺はのぞみを抱きしめたまま横になった。  
「のぞみ、俺、のぞみのこと一生大切にする」  
「大輔……」  
「のぞみ、好きだ。大好きだ」  
「私も…私も大輔が好き!」  
「のぞみ!」  
俺たちはそのまま長い口付けを交わした。  
                    第一部 完  
 

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