「……お姉さん、本気にしちゃうゾ」
「本気にしてくださいっ!」
俺は香坂さんを抱きしめた。
発端は家庭科室の前を通りかかったときだった。
いつものように放課後の校内をうろついていた俺。
家庭科室の扉が少し開いていたのを見つけた俺は、何の気なしに中を覗いてみた。
「あら、君子ちゃんのお兄さん。ちょうどよかったわ」
香坂さんの声。
「お、お兄ちゃん!」
続けて、少しだけあせった感じの君子の声。
「ちょうどよかったって何がですか?」
そうか、この時間は家庭部が活動してるんだったな。
香坂麻衣子さん。
家庭部の部長の3年生で、君子も何かとお世話になっている。
その縁で俺も顔なじみとなり、家庭部のお茶会に呼んでもらったことも何度かある。
今日は部活でクッキーでも焼いたのかな?
香坂さんに好意以上の感情を持っていた俺は浮き立った気持ちで家庭科室に入っていった。
「新しい飲み物ができたの」
「新しい飲み物?」
「お、お兄ちゃ〜ん……」
君子が泣きそうな声を出す。今ひとつ事態が飲み込めない俺。
ま、ちょうどのども渇いていたところだ。ありがたく頂戴しよう。
「どうぞ召し上がれ」
香坂さんの手のソレを見る。
(げっ!)
毒々しく紫色に光る液体がグラスに注がれていた。
もう一度液体をよく見る。
(な、なんかうごめいてるし……)
暗い音のない世界で三つに増殖した正義の魂を持った粘体のようだ……。
(こ、これを飲むのかぁ?)
「お、お兄ちゃん……無理しなくていいんだよぉ……」
俺が固まっているのを見て取った君子が助け舟を出す。
その声音がおろおろしているのがよく分かる。
(君子も心配してるってことか?)
いくらなんでも毒ってことはないよなぁ……。
香坂さんを見る。
心の内面が表れたかのような澄んだ笑顔を絶やさずに俺を見ている香坂さん。
信じて……いいよな?
よし、俺も男だ!
俺は不気味な液体で満たされたグラスを取ると一息にあおった。
…………
ここはどこだ? 俺は何をしてるんだ?
そうだ、香坂さん特製の紫色の謎の物体?を飲まされ、もとい飲んだんだ。
その後は……ダメだ、思い出せない。でもアレ、不味くはなかったよなぁ……。
「お、お兄ちゃ〜ん……」
「君子ちゃんのお兄さん」
誰だ?
見回すと、香坂さんと君子が俺の顔を覗き込んでいた。
「あ……香坂さん」
ここはどこだ?
どうやら保健室のようだ。俺はベッドに横になっていた。
「大丈夫? 体はなんともないかしら?」
「お兄ちゃん平気なの?」
「あ……大丈夫みたいです」
「お腹痛いとか気持ち悪いとかもないの?」
言われて少しだけ感覚を澄ませてみる。
「はい、なんともありません」
「そう……よかったわ」
「ふぅ……」
君子が安堵のため息をついた。
「俺、どうしちゃったんですか?」
「ドリンク飲んだあと、急に倒れちゃったのよ」
「はぁ……」
どうやらそういうことらしい。
命に別状はなかったが、倒れるようなものはもう飲みたくないなぁ……。
俺に異常のないことが分かると君子は
「じゃあ私、うち帰って夕飯の支度するね。香坂先輩、あとお願いします」
と帰っていった。
ちょっと無責任だぞ、君子。
「ありがとうございます、もう大丈夫です」
そう言ってベッドから降りようとした。
「はい、これ。……あらぁ……」
俺の上履きを揃えようとしゃがみこんだ香坂さんが頬を赤らめ、視線を反らした。
(? なんだ?)
香坂さんが見ていたあたりに視線を送る。
(げっ!)
ズボンの前が不自然なほどに突っ張っていた。
自分の意志とは無関係な上に、勃起している感覚もない。
思わず触って確認してしまったが、まぎれもなく硬直している。
昨夜も寝る前にオナニーしている。そんなに溜まっているとは思えない。
ま、まさか、あのドリンクのせいか?
香坂さんは体を斜めに向けて困ったような顔でもじもじしている。
「こ、香坂さん……」
「な、なぁに……」
ほんのりと目元を染めた香坂さん。とってもきれいだと思った。
違う! 邪念を払い、聞きたいことを聞く。
「さっきのドリンク、中に何が入ってたんですか?」
香坂さんが言うには、
『滋養強壮に効く成分をいくつかと、ある種の麻酔薬のようなもの』
だそうだ。
仕事が続いて疲れているお父さんを体力的に補助しようと作ってみたという。
もちろん今日初めて作ったもので、言うなれば俺が実験体だったわけだ。
君子が『最近お兄ちゃん疲れてるみたいなんです』などと言ったらしい。
それを聞いた香坂さんが親切心から俺にも飲ませてくれた、というのが真相のようだ。
ドリンクにはさらに飲みやすくするための甘味料や調味料の類も入れたとのこと。
どうやらそれらが化学反応のようなものを起こしたのだろう。
目が覚めてしばらくしたせいか、体の各器官が感覚を取り戻してきた。
それにつれ、目の前の女性、香坂さんに対してよこしまな欲望が湧いていくのを感じた。
女の人なら誰でもよかったわけではない。
君子を通じて知り合った香坂さんに俺はいつのまにか魅かれていた。
綺麗で、女性らしい優しさに満ちていて、物腰が優雅な香坂さん。
育ちのよさを感じさせる立ち居振舞いと、聡明さがにじみ出た言葉遣い。
実際に良家のお嬢さんだということを君子からも聞いていた。
それでいて、おっとりした温かみのある性格は親しみも感じさせてくれた。
俺はそんな香坂さんと、もし許されるなら真剣に将来を見据えた交際がしたかった。
もちろんそんなことは一度として口にしたことはなかった。
君子を仲立ちとした今の関係を壊すのが怖かったのだ。
だが、ほんの少し沸き起こった欲望が俺に歯止めをなくさせた。
「香坂さん、好きです。ずっと前から香坂さんが好きでした」
「もう…君子ちゃんのお兄さんったら……年上をからかうものじゃないわ」
「からかってなんかいません。俺、本気です!」
「……お姉さん、本気にしちゃうゾ」
「本気にしてくださいっ!」
俺は立ち上がり、香坂さんをこちらに向かせるとそのまま抱きしめた。
「あっ……」
突然の俺の行動に対し、戸惑いを隠せない香坂さん。
「ね、君子ちゃんのお兄さん……」
「俺には小笠原雅人って名前があります」
「あ…ごめんなさい。そういうつもりじゃ……」
「香坂さんにとって俺は君子の兄というだけの存在なんですか?」
「ううん…とっても大切な人……」
「……え?」
「君子ちゃんは家庭部に大切な人。でも、雅人くんは私にとって大切な人……」
「香坂さん!」
夕日に染まる保健室。
学内に残っている生徒はいないのか、いつもの喧騒が嘘のように静かだった。
「香坂さん」
「はい」
「いま言ってくれたこと……本当ですか?」
「……はい」
ためらいがちに、だがはっきりと香坂さんはそう言った。
俺の片思いじゃなかったんだ!
「香坂さんが好きです」
「……私も……雅人くんが好きです」
俺は香坂さんをさらに強く抱きしめた。
香坂さんはスタイルもいいし背も高い。
男の俺のほうが少しだけ背が高いが、必然的に同じような高さに顔が来る。
見つめ合う俺たち。と、香坂さんが目を閉じた。
俺はそっと唇を重ねた。
柔らかい感触といい匂いがする。
初めてのキス。
どうしていいのか分からず、俺は唇を合わせたまま動けずにいた。
「ん……」
香坂さんが身じろぎをする。
あわてて離れる。
「はぁはぁ…苦しかったわ。いつ呼吸すればいいか分からないわね」
「こ、香坂さん息しなかったんですか?」
「あら? してもいいの?」
「しないと死んじゃうじゃないですか!」
「そうね……そうよね。う〜ん……」
なにやら考え込んでしまった香坂さん。
……待てよ、ということは今のが香坂さんのファーストキスなのか?
「雅人くんはキスしたことあるの?」
「いいえ、今のが初めてです」
「あらぁ、私とおんなじね」
やっぱり……。
「すいません、俺、香坂さんのファーストキスを……」
「いいのよ。好きな人とするのが女の子の夢なんだから」
「え?」
「雅人くんこそ私でいいの?」
「はい! 俺、こんなうれしいことありません!」
「まぁ……」
「あの…もう一回いいですか?」
「え?」
香坂さんは一瞬ためらったのち、頬を染めて目を閉じた。
香坂さんを抱き寄せる。
さっきと同じように唇を合わせる。
今度は香坂さんも呼吸をしているようで、俺の頬に柔らかい息が当たるのが感じられる。
長くキスできる。それだけで天にも昇るような心地だった。
だが迷いもあった。知識としては舌を使うと知っているが、タイミングがつかめない。
どうしようか?
このままじっとしていても始まらない。
意を決した俺は軽く唇を開き、そのすき間から舌を伸ばしてみた。
香坂さんの唇に舌が触れる。
香坂さんは唇を閉じていたが、そっと舌先でさするように動かしてみた。
と、香坂さんの唇が動き、こわごわといった感じで舌が差し出されてきた。
お互いの舌先が触れる。電気が走ったようなしびれる感覚がした。
たまらず香坂さんを強く抱きしめた。
「ん!」
香坂さんの鼻が鳴った。
俺は体中の神経が鋭敏になった気がしていた。
香坂さんに触れているすべての部分から甘い感覚が立ち上る。
とくに股間は快楽を与えてくれる器官のせいか、そこからの刺激はどこよりも強かった。
俺の意思とは関係なく、肉体が快楽を求めていた。
香坂さんに股間を押し付ける。
ちょうど下腹部のあたりに俺のこわばりを感じているのか、香坂さんが身をよじった。
その刺激が男に快感を与えるとは知らない香坂さんの動きに俺の情欲があおられる。
体を反転させ、香坂さんをベッドに押し倒す。
一瞬身を硬直させた香坂さんは、それでも抵抗することなく俺に身を委ねていた。
「香坂さん! 香坂さん!」
むしゃぶりつく俺の頭に手が置かれると、香坂さんの優しい声がした。
「我慢しなくてもいいのよ」
その一言が俺を冷静にさせた。
俺は香坂さんが大好きだ。
大好きな香坂さんだからこそ傷つけてはいけない。
香坂さんが望まない形での行為は絶対にしてはならない。
自分の欲望だけで突っ走るわけにはいかない。
「香坂さん……」
身を離す。
香坂さんはいつもと変わらぬ笑顔で俺を見ていた。
「男の子って衝動が強いって聞くけど、ほんとね」
「違います……香坂さんだからです。誰でもいいわけじゃありません」
「あら……」
「香坂さんが好きです。大好きです」
「私も雅人くんが好きよ」
「ありがとうございます。……でも、香坂さんが好きだからこそ大事にしたいんです」
「まぁ……」
「ごめんなさい、俺……」
「私がしてって言っても?」
「はい?」
「あなたが好きだからして欲しいって私が思ってもダメなの?」
これ以上ないほど真っ赤になった香坂さんが、やっとそれだけを口にした。
「香坂さん!」
「……いいのよ」
「本当にいいんですか?」
こくりとうなずく香坂さん。
「女の子にそんなこと、何度も言わせるもんじゃないわ」
小さな声。
「俺、初めてなんです……」
「私と一緒ね」
香坂さんが微笑む。
だがその笑顔が少しだけ引きつっているように俺には見えた。
保健室に鍵をかけ、念のためカーテンを閉める。
俺は服を脱ぎ、香坂さんの前に勃起をさらした。
驚いて目を丸くしている香坂さん。
「うちは弟がいるのよ」
唐突な物言い。
「そ、そうなんですか?」
「いま中3なの」
「知りませんでした」
「うふふ、いま初めて教えたのよ。知らないのも無理はないわ」
「そうですね」
「あの子もあなたみたいになっているのかしら?」
「え?」
「5年生まで一緒にお風呂入ってたのよ」
「香坂さん中2じゃないですか!」
「違うわ。私が5年生のときまでよ」
「あ……すいません、勘違いしました」
「男の子がこんなになってるの、初めて見たわ」
「エッチな気持ちにならないとこうなりませんから……」
「ねぇ、触ってもいいかしら?」
「え?」
「だめ?」
俺が黙っていると、香坂さんが手を伸ばしてきた。
たおやかな指が勃起に巻きつく。
「触ってもいい?」
「……香坂さん、もう触ってます」
「あら…ほんと」
しばらく肉茎をいじったあと、香坂さんは袋をさわった。
くにっくにっ
「こ、香坂さん!」
香坂さんが玉を静かに揉む。
「あらぁ……左右が入れ替わったりはしないのねぇ」
「え?」
「二つあるのは知ってたんだけど、こうなってるのね」
そう言いながらなおも玉を優しく揉む。
軽い痛みと同時に快感が沸きあがってくる。
「くっ!」
香坂さんの指に力が加わり、俺は痛みに声をあげた。
「あら?」
「香坂さん痛いです。大事なところなんで、もっと優しく……」
「あら……ごめんなさい、こうかしら?」
再び香坂さんがやわやわと揉みほぐしだした。
ひとしきり玉を触った香坂さんは、次にビクビクと脈打つ肉茎に指をからめた。
そして上下にしごいたり、指先で亀頭を摩擦する。
先端の割れ目を広げ、指の腹で撫でるような愛撫を加える。
ベッドに腰かけた俺の股間を香坂さんがまさぐる。
いつもは笑顔を絶やさない香坂さんだが、今日は真剣な眼差しだ。
香坂さんの淫靡な指使いに射精感が高まる。
精液がこみ上げてくるような感覚がずっと俺の体を支配していた。
このままでは射精してしまう。
「香坂さん……そんなにされたら……イッちゃいます」
「イク?」
本当に知らないのか、あどけない仕草で首をかしげる香坂さん。
「出ちゃいそうです……」
「あ……射精するのね……いいわ、出して」
そう言って香坂さんは勃起にさらなる刺激を与えた。
香坂さんの手になぶられた俺に限界がきた。
「あっ、あっ……出る!……うっっ!」
ぴゅっ! ずびゅっ! どぴゅうっ!………
極限まで高められた性感が一気に解放される。
根元にたくわえられたまま放出の瞬間を待っていた淫液が飛び散る。
白濁は香坂さんの整った顔に何発も降りかかっていった。
射精の快感に放心していた俺だが、急いで意識を戻すと香坂さんを見た。
驚いて目を見開いたままの香坂さん。
鼻の横や頬、口元からあごにかけていやらしく精液が垂れている。
垂れた精液は襟元からスカーフ、そして制服までも汚していた。
「ご、ごめんなさい!」
放出後の気だるさも吹き飛んだ俺はあわててティッシュを探す。
香坂さんは自分の顔を汚した粘液を指で拭うとまじまじと見た。
「これが精液……男の子ってこういうふうに出すのね」
そのまま指を口に含んだ。
「こ、香坂さんっ!」
「あら、変な味」
「え?」
「う〜ん……美味しくはないけど不味くもないわね」
「………」
「雅人くんは舐めたことないの?」
「……ありません」
「そう……」
不思議そうな香坂さん。
いや、普通は自分から舐めたりはしないと思うけど……。
香坂さんが制服を脱ぎ始めた。
「これってシミになったりしないかしら?」
脱いだセーラー服の上着を手に俺に聞く。
精液はすでに布地に染み込んでいた。
「下着に着いたのが乾くとパリパリになるのは知ってますが、セーラー服はちょっと……」
「あら、セーラー服に射精したことないの?」
「ありません!」
「君子ちゃんに聞いたら分かるかしら……」
「君子もそんなこと知りません! っていうか知ってたら俺が許しません!」
「あらぁ……」
香坂さんは俺や君子がどういう人間だと思ってるんだ?
……天然なんだろう多分。いつもそうだし。
「どうしましょう……」
真剣に悩んでいるのか、ただ言ってみただけなのか分からない口調の香坂さん。
「水で落ちることは知ってるんで、とりあえず濡らしてみましょう」
俺はハンカチを水道で濡らすと、軽く絞って精液を拭き取りはじめた。
香坂さんは黙ってそれを見ていた。
家庭部だからシミ抜きのやり方は俺より知ってるよな。
ただ、普通の女子高生の生活で付く汚れじゃないし、人にも聞けないもんなぁ。
そんなことを思いながら作業を続ける。
おかげで青葉台のセーラー服の構造に詳しくなってしまった。
次の機会があれば、誰にも聞かずに脱がせられるな。そんなことも思った。
……でも香坂さんのセーラー服、いい匂いがしたなぁ。
だいたいの処理を終わらせる。
「これでいいでしょう」
そう言って振り向くと、香坂さんがショーツを脱ごうとしているところだった。
「わっ! こ、香坂さん!」
「どうかしたの?」
「な、なに脱いでるんですか!」
「だって雅人くんだけ裸だったから」
「いや、それはそうなんですけどね」
「それに……」
「え?」
「裸にならないとできないわ」
香坂さんが赤い顔で言った。
香坂さんがショーツを脱いだ。
体を隠すわけではなく、かといって誇示するわけでもない。
いつものように右手の人差し指を頬に当てる姿勢で立っている。
「このあとはどうすればいいのかしら?」
緊張感のない香坂さんの声。
この場にはそぐわない感じがしたが、かえって俺は安心できた。
「香坂さん、ベッドへ」
「そうね」
香坂さんがベッドに腰を下ろす。
「失礼します」
俺はそう言うと隣に座った。
そして香坂さんを抱き、口づけを交わす。
香坂さんの長い髪を片手に寄せ、肩口から前に垂らす。
そのまま静かに香坂さんを倒し、ベッドに横たえた。
香坂さんと一つになる。
そう考えたら射精したばかりの陰茎がムクムクと頭をもたげ始めた。
香坂さんの胸に手を伸ばす。
重力の影響で少しつぶれ気味だが、それでもはっきりと存在を見せつけるふくらみ。
そっと触れる。
ピクンッ
香坂さんの体が震えた。
経験のない俺は触り方すら分からない。
どうすれば香坂さんは気持ちよくなってくれるのか?
「香坂さん、どう触ればいいんですか?」
「雅人くんの好きなように触ってくれていいのよ」
「香坂さんは自分で触ったりしないんですか?」
「そうねぇ……私の場合は……あら」
「?」
「女の子にそんなこと聞くもんじゃないわ」
香坂さん、自分でしてるな……。
「すいません、軽率でした」
「ううん、いいのよ。そうねぇ、全体をソフトに押し上げるような感じで揉んでくれる?」
「はい」
言われたとおりにやってみる。
「あんまり強くすると痛いから、丁寧にね」
「はい」
俺は指先で乳輪をグルグルと軽くなでたり、乳首をはじくような感じで触ってみた。
ふもとから頂上にかけ、強弱を変化させながらもみ上げてもみた。
女性の張りのある乳房。
俺は憑かれたようにそれを触りつづけた。
香坂さんの息がだんだんと乱れていくのが分かる。
感じているんだ。
少しだけ自信を持った。
「胸だけじゃなくて、他も……」
香坂さんが絶え絶えの息で言葉を継いだ。
香坂さんの両ひざに手をかけ、ゆっくりと開く。そしてその部分に目をやる。
女性の裸は母親と君子、かすみのものしか見たことがない。
このうち、なぜか母親の裸はぼんやりとしか覚えていない。
頭や体を洗われるだけで、風呂場で戯れる時間がほとんどなかったせいかもしれない。
記憶が鮮明なのは君子だ。
君子とはお互い話題にしないようにしているが、恥ずかしい思い出がある。
風呂場でそれぞれの性器をいじりあったのだ。
もちろん性に目覚めていない子供のころで、純粋な生物学的興味からだった。
その「遊び」がどういう危険なものだったかを今は分かっている。
だから俺たちは意識してそのことに言及するのを避けた。
忘れることはできないが、思い出す必要もない幼児期のあまりよくない思い出だ。
よせばいいのに、俺は君子で得た知識をかすみで試したこともある。
意味がわからなかったのだろう、かすみも嬉々としてそれに応じた。
すべては幼稚園の頃のことだ。
……忘れてるといいなぁ。無理かな?
ともあれ、成長した女性の裸をまじまじと見るのは初めてだった。
写真やビデオですら見たことのない女性器、それが目の前にあった。
保健の教科書に載っている図解を思い出す。
簡略化されたそれとは違い、本物は複雑な形状をしている。そう思った。
ひくひくとうごめいている肉のひだ。そこは光を反射してぬめぬめと光っていた。
肉の合わせ目のところのぷっくりとしたふくらみ。これがクリトリスだろう。
その下の小さな穴は尿道口だと思う。
さらに下の穴が膣か。こんなに小さいのに本当に入るのだろうか?
そっと指で触れる。
ヌルヌルとした、そして熱い粘体が指にからみついた。
これが愛液なんだ……。
女性はクリトリスが性感帯だと聞いたことがある。
ぬめりをまとった指をそこに進める。
「そこは力を入れないで……」
俺がクリを目指しているのが分かったのだろう、香坂さんの声がした。
「はい」
俺は返事をし、羽根が触れるような力の入れ具合で押してみた。
「はぁん!」
香坂さんの艶を帯びた声がした。ここを攻めればいいんだ。
頂を指の腹でこするように動かす。
前後運動から回転運動へ。速度や力にも緩急をつける。
「あぁんっ……ふんっ…あっ、はぁ……んっ!」
香坂さんは白いのどを反らして首を振っている。
感じているんだ。
いったんクリから指を離すと、中指を溝に沿って上下させる。
何度か動かして愛液を指に絡ませ、再びクリを揉む。
「いやっ! そんなにしたら……おかしくなっちゃう!」
香坂さんの声に追い詰められたような響きが入った。
このまま続ければいいのか? それとも膣を攻めた方がいいのか?
どうすれば女性がイクのか判断できない俺はクリへの愛撫を中断した。
そしてこれから俺が入るであろう膣に指をもぐりこませた。
ぬるりっ
何の抵抗もなく指が沈む。
中は熱く、指一本をもきつく締め上げていた。
(指でこんなにきついのに、俺のが入るのか?)
その一方、この締め付けに陰茎が与えられる快楽を想像し胸が高鳴る。
香坂さんが一度射精させてくれたとはいえ、たぎる性欲は次の絶頂を求めている。
入れたい。
その思いが強くなった。
「香坂さん、入れます」
「……いいわ、でも、やさしくしてね」
「分かりました」
香坂さんの股間にひざをつく。
分身に手を添えると、肉のひだの間を上下させてぬめりを塗りたくった。
陰茎が香坂さんのヌルヌルの吐液に包まれる。
俺は手で角度を調節し、膣口にあてがうと静かに腰を突き出した。
「んんっ!」
香坂さんの体が上にずり上がる。はずみで俺の欲棒が抜ける。
もう一度、今度は香坂さんの腰を押さえて肉筒を挿入しようとする。
ベッドの縁につかえ、それ以上は逃げられない香坂さんの体に俺のこわばりが入っていった。
抵抗のあった肉穴だが、
プチンッ
音がしたような感じがしてなめらかになった。
俺は少しずつ少しずつ勃起をくり出し、ついには根元まで香坂さんに収めた。
香坂さんと一つになった。俺は思いを遂げた。
「香坂さん、大丈夫ですか?」
香坂さんは眉を寄せ、それでも薄目を開けると俺に微笑んだ。
「ちょっと痛いけど平気よ。雅人くんは痛くないかしら?」
「俺は大丈夫です。ごめんなさい、痛いですか?」
「ううん、気にしなくてもいいのよ」
「気にします。香坂さん、やめますか?」
「やめないで……続けて」
香坂さんは俺の背中に手を回すと、俺が離れられないように力をこめた。
「香坂さん……」
「あなたの喜ぶ顔が見たいの。だから続けて」
「……分かりました」
香坂さんに負担をかけないようにゆっくりと前後させる。
あんなに濡れていたはずなのに、香坂さんの中は信じられないほどきつかった。
狭い膣壁を戻るときのカリが引っかかる感触、進むときの裏スジが引きつれる感触。
そのいずれもが俺に今まで体験したことのない快感をもたらした。
香坂さんの処女を俺がもらえた喜びと、肉茎に加えられる圧力が俺の興奮をあおる。
精液がこみ上げてきているのが感じられた。
もうそんなには持たない。
どうする?
このまま中に出してもいいのか?
「香坂さん、俺……イキそうです」
「中はダメ……お願い、外に!」
「……はい」
香坂さんを妊娠させるわけにはいかない。まだ俺には責任が取れない。
快楽のために混濁する意識の中でそれだけがこだまする。
絶頂が近い。
精液が根元まで来ているのが分かった。
もうダメだ!
「香坂さん……俺……もう我慢できない!」
ギリギリで引き抜く。
直後、熱いものが尿道を駆け抜けていった。
どぴゅっ! ずびゅう! びゅびゅっ! どぴゅぅぅ!………
香坂さんに白濁を飛ばせて俺は射精しつづけた。
けだるいが心地よい疲れの中、俺たちは抱き合っていた。
「私のほうが年上なのよ。それでもいいの?」
「年なんか関係ありません。俺は香坂さんが好きなんです」
「本気にしちゃうわよ」
「本気にしてくださいよ。俺、嘘なんか言いません」
「……ありがとう」
「お礼を言うのは俺のほうです。これからもずっと、香坂さんのそばにいます」
涙を浮かべた香坂さんが俺にキスをした。俺もそれに応えた。