俺が天野みどりと正式に交際を始めてそろそろ半年になる。  
その日、俺たちは屋上に通じるドアの内側、階段を上りきった踊り場にいた。  
使わない机や椅子が何脚か置かれているだけの場所。  
そこで俺たちはいつものように身を寄せあっていた。  
 
四季を通じ、放課後の屋上は天野みどり専用という感があった。  
施錠されているわけではない。しかしほとんど誰も近付かない。  
いきおい俺たちが二人だけの時間を過ごす場所として定着していった。  
 
学年末も近いこの時期、吹きっさらしの屋上に出ようという物好きなど誰もいなかった。  
直下の3階は3年生の教室があるが、卒業を控えた今、登校日以外は学校に来ない。  
家族と同居する俺たちにとり、屋上への出口は格好の「二人だけになれる場所」だった。  
 
隣り合わせて座る。抱き合う。抱擁の合い間に口づけを交わす。  
何度も味わった天野の柔らかい唇。甘い吐息。艶を帯びた声音。  
さらに、意識はしてないのだろうが腕をからませてふくよかな胸を押し付けてくる。  
それらは俺を興奮させるのに充分だったが、学校という場所が俺をためらわせていた。  
これまで機会がなかったわけではないが、俺は一線を超えられないでいた。  
天野はどう思ってるんだろう……。  
 
「ねぇ早川ぁ」  
「どうしたの?」  
「海であたしの胸見たでしょ」  
たしかに去年の夏、水着を流された天野の胸を見た。だが事故だ。狙ったわけではない。  
触ったことも何度かある。だがすべて服の上からで直接見たのは夏以来ない。  
「な、なに、いきなり?」  
「ううん、言ってみただけ」  
「なんだよ、気になるじゃん」  
「なんでもないったらぁ」  
そう言って天野は下を向いた。他にも何か言いたそうだ。  
 
「また見たい?」  
「え?」  
「だからぁ……わたしの胸」  
 
めったに見たことのない真っ赤な天野。かなり恥ずかしい思いで口にしたに違いない。  
天野が誘っているのか? 勇気を出せないでいた俺をもどかしいと思ったのか?  
心に天野への愛おしさが湧いた。  
 
「天野、愛してる」  
俺は何度もささやいた言葉を天野に告げた。  
「え? う、うん。わたしも……愛してるよ」  
「俺でいいの?」  
「……早川じゃなくちゃイヤだよ」  
「ありがとう。俺、すごく嬉しいよ」  
天野を思いっきり強く抱きしめた。  
「く、苦しいぃ〜」  
「あ、ご、ごめん」  
「もぅ、もうちょっとやさしくしてよね!」  
 
胸を見せてもらえるだけでいい。  
そう思った俺だが、淫らな雰囲気に飲まれたのか、性的な感情が沸き起こった。  
「天野が欲しい」  
「こ、こんなところで?」  
「いや?」  
「だ、だって……誰かに見られたら……」  
「俺、もう我慢できないよ」  
「……わかった。いいよ」  
逡巡のあと、天野が小さくうなずいた。  
 
「わたし、遊んでるように見られてるけど……初めてなんだよ」  
最後のほうは聞き取れないほど小さな声。  
「天野の本当の姿、俺は知ってるよ。それより……俺も経験ないんだ」  
「そうなんだ……てっきりしたことあるのかと思ってた……」  
「どうしてそう思うの?」  
「大須賀とエッチな話してるじゃん。それも結構具体的に」  
「話だけだよ。俺もあいつも、そんなにもてないって」  
「大須賀がもてないのはわかるけど、早川は人気あると思うよ」  
「そうなの?」  
「だってわたしが好きになった人だから……」  
「あ、天野……」  
温かいもので心がいっぱいになった俺は、天野を抱き、キスをした。  
 
「天野、脱がすよ」  
ブレザーのボタンに手をかける。上着を脱がし、丁寧にたたんでそっと置く。  
次はジャンパースカートだ。でも脱がし方がわからない。一瞬手が止まる。  
「ちょっと寒いね」  
天野が腕を抱きながら言った。  
春は目の前とはいえ、この季節はまだまだ寒い。  
ことに屋上に通じる踊り場は校内のどこよりも気温が低かった。  
「全部脱ぐのはキツイか……。それに誰かに見られたらマズイし。」  
「うん……」  
「天野、胸はまた今度見せて。もっとあったかくなったらでいいから」  
「う、うん」  
天野を脱がせるのをあきらめると、俺はズボンのベルトに手をかけた。  
 
ズボンを下ろす。寒くて我慢できないほどではないが、たしかにスースーする。  
俺も全部脱ぐのはさすがにつらかった。  
それに、天野が服を着ているのに俺だけ全裸というのは余計に誤解されるだろう。  
「寒いからこれでいい。天野もスカートめくってくれればいいから」  
ひざのあたりまでズボンを下ろすと、俺は天野に声をかけた。  
「うん」  
天野が安堵の表情を浮かべて答えた。  
 
「今日かわいいパンツはいてるんだよ」  
スカートをまくって俺に見せながら天野が言う。  
「ごめん。俺、女の子の下着のことよくわかんなくて」  
「もぅ! 種類や名前は知らなくてもかわいいかどうかならわかるでしょ!」  
「あ、う、うん。……かわいいと思う」  
「やっぱりぃ? ねぇ、どこがどこが?」  
「色……かな?」  
パステルイエローの、なんという種類かわからないがかわいいデザインのショーツだった。  
「他にはぁ?」  
「形も……」  
「でしょでしょ〜。ここらへん『せくしぃ』じゃない?」  
そう言って天野はレースに縁取られた腿の部分を指差した。  
何の気なしに視線を送った俺は、その横のふっくらと盛り上がった恥丘に心を奪われた。  
俺の態度に気付いたのか  
「やだ……」  
そう言ってスカートを戻す。のみならず、身をすくめるように天野がしゃがみこんだ。  
 
そんな天野にふと我に返った俺は、急いで話題を戻した。  
「俺に妹いるの知ってるだろ?」  
「うん。一年生だよね?」  
「子供のころ妹の下着姿見たことあるけど、それに比べれば大人っぽいなって思う」  
「そりゃそうだよ。だってこれ子供のパンツじゃないもん」  
「うん。……なんていうか、大人っぽくてキレイ、かな」  
「早川のパンツだって弟のと違うよ」  
「天野弟いるんだ」  
「うん。あの子もブリーフだけど早川とは違うな」  
「どこが?」  
「アソコの形がはっきりわかってスケベだよね」  
天野が俺の股間のふくらみのあたりにチラチラと視線を送りながら言う。  
俺は痛いほど勃起していた。ウエストゴムからは亀頭が覗きそうなほど張りつめている。  
「わたしとえっちしたいんだよね」  
「うん……」  
「わたしも……早川とえっちしたいよ……」  
目元を朱に染め、天野が言葉を継いだ。  
色っぽい。そう思った。  
 
天野の視線に晒されたまま、俺はゆっくりブリーフを下げた。  
今まで感じたことのない興奮が体を包んでいる。  
あせったせいか布地に勃起が引っかかり、反動で勢いをつけて上下する肉棒。  
本来なら笑ってしまうほど滑稽な動作だったが、俺も天野も笑わなかった。  
笑えないほど二人とも緊張していた。  
今まで誰にも見せたことのない俺のもう一つの姿を天野の前にむき出しにする。  
天野は魅入られたように勃起から目を離さなかった。  
 
「ねぇねぇ、これってホーケーっていうんでしょ?」  
沈黙を破り、皮をかぶった俺のペニスを指差して天野が言う。  
「……うん」  
「皮剥けるの?」  
そう言うと、ためらいもなく肉棒を握り皮を根元に動かす。  
俺は毎朝の入浴が習慣だった。今朝も登校前に風呂に入っている。  
しっかりと洗っているおかげで恥垢はないし、においもしないはず。  
それがせめてもの救いだった。よかった。そう思えた。  
 
「わぁっ! ほんとに剥けるんだぁ!」  
キャッキャッとうれしそうに笑う天野。  
「天野ぉ、いやじゃないの?」  
「なにが?」  
「包茎は女の子がイヤがるって聞いた……」  
「早川のって仮性でしょ? ちゃんと洗ってるならいいじゃん」  
「………」  
「わたし、処女だけど知識だけはあるよ」  
「………」  
「もぉ! 暗くならないでよぉ!」  
「だって……」  
「……好きな人のなら、どんな形でも平気だよ」  
「………」  
 
「わたしのこと、相手の体の特徴を知って好き嫌い選ぶような女だと思ってる?」  
「まさか! 天野がそんな子じゃないのは俺、よく知ってる!」  
「だったらぁ、いつもみたいに笑ってよ、ね!」  
「ごめん。そうだよね。俺、どうかしてた」  
「ふふふ、でも、男の子ってそういうこと気にするんだ……」  
「まあね……」  
「子供作るのに不都合はないんでしょ? だったらいいじゃん!」  
「天野、もう子供欲しいの?」  
「違うよ、たとえばの話!」  
「そうだよな、俺たちまだ高校生だし。でも俺、天野に俺の子供産んでもらいたいな」  
「早川……」  
「あ、もちろんもっと大人になってからだけどね」  
「……うん。わたしも早川の子供産みたいな……」  
「天野……」  
俺は天野を抱きしめると、そっとキスをした。  
 
結婚。  
そのとき俺は初めて意識した。  
天野を人生の伴侶としてともに生きていく。  
漠然とではあったが、俺はその姿を想像した。  
悪くはないな。  
心からそう思った。  
 
「ねぇ、おちんちんいじってもいい? 興味あるんだ」  
「あ、うん……」  
「へぇー、こうなってるんだぁ……」  
袋を持ち上げて裏側を見たり、袋の皮を伸ばしたりといたずらが続く。  
俺の股間をオモチャに、いろいろな角度から観察する天野。  
 
そんなことをされているうちに我慢の限界が近づいてきた。  
「あ、天野ぉ……」  
「なに? きゃっ!」  
 
『イキそう』。そう告げる前に暴発した。しゃくりあげるようにして何度も射精する。  
手で角度を固定された陰茎は、天野のあごのあたりに精液を放った。  
 
「やだぁ〜、なにこれぇ!」  
「ご、ごめん」  
「あ、ううん、びっくりしただけ。……これが精液、なんだ」  
あごを拭い、俺の出した白濁を手で受けた天野。続けて  
「あぁ、ヌルヌルしてるぅ〜。それにベトベトぉ〜」  
と、かなりイヤそうな感じの声。  
「ご、ごめん」  
「初体験が顔射ってのはわたしも想像してなかったなぁ〜」  
「ほんとにごめん、我慢できなかった……」  
「謝らなくていいよ。イッちゃうぐらい感じたんでしょ?」  
「うん。天野にしてもらうの、すごく気持ちよかった」  
「……バカ」  
まんざらでもない顔をした天野が制服のポケットからティッシュを取り出した。  
 
指、そしてあごを拭く。  
事を処理すると、天野は汚れたティッシュをポケットにしまおうとした。  
 
「天野、それ……」  
「へへへ、二人の記念品」  
「よせよポケット濡れちゃうって。それにそんなの、天野が望めばいくらでも出すから」  
「わかってないなぁ、最初に出されたものだから価値があるのに」  
「いや、天野に出したのこれが最初じゃないし……」  
「え?」  
「あ、いや……天野のこと思って何度も自分でしたから……」  
「……あっ!」  
一瞬の間のあと、俺の言葉の意味を解したか、天野が紅潮した。  
 
「そんなにわたしで何度も?」  
「……うん」  
「……えっち」  
上目遣いでにらむように俺を見る天野。  
「ごめん」  
「もうそんなことしないでよね!」  
「………」  
「わたしがしてあげるから……」  
そう言って天野はにっこりとした。  
 
「天野、今度は天野のが見たい」  
「……うん」  
これまでビデオでしか見たことのない女性器。それを直接見ることができる。  
普通の状態だったらそれだけで興奮しきって言動がおかしくなってしまう恐れがある。  
だが、暴発とはいえ精液を射ち出したことで俺は落ち着いていた。  
これなら天野に嫌な思いをさせず、女性の体の構造を堪能できる。そう思えた。  
 
天野がスカートの中に手を入れる。ショーツを下ろすのだろう。  
「天野、俺が脱がしてもいい?」  
「え?」  
「脱がしたい」  
「ダメ! ……恥ずかしいぃ」  
「いいでしょ?」  
「どうしても?」  
「うん」  
「……しょうがないか」  
天野はあっさり折れた。  
「スカート押さえててくれる?」  
「えぇ〜!」  
「だってスカート押さえながら脱がせられないし」  
「それじゃあ早川の目の前で脱がせられるわけ?」  
「そうなるね」  
「やっぱダメ」  
「なんで!」  
「恥ずかしいから」  
「天野ぉ〜」  
「……わかったわよぉ」  
 
天野がスカートをたくし上げ、  
「早くしてね」  
そう言って顔をそむけた。  
天野の顔を見る。  
よかった。嫌がっているわけではなさそうだ。単に恥ずかしがっているだけのようだ。  
俺はショーツに触れた。  
 
先ほど目を奪われた恥丘のふくらみ。それが目の前にあった。  
柔らかな曲線を描き、はっきりと自分を主張する陰阜。  
ブルマーやスクール水着を通して何度か見たことのあるこんもりとした丘。  
内側から持ち上がり、天野のオンナを意識させるずっと憧れていた秘密の場所。  
それが今、一枚の布を隔てるだけですぐ近くにあった。  
指先に全神経を集中させ触る。  
張りのある、しかし柔らかい肉の抵抗。胸とは違った手触りだった。  
心に淫欲の火がともった。他にもっと触ってみたい場所がある。  
俺は恥丘の部分を経、クロッチに指を滑らせた。  
 
濡れている。  
最初に感じたのはそれだった。  
まるで失禁したかのように水分を含んだ布地は俺を驚かせるのに充分だった。  
「天野……」  
「恥ずかしいから触らないで……」  
俺との行為で天野も興奮している。感じている。  
それがうれしく、また俺の自信にもなった。  
 
何度か股間で指を前後させる。  
湿った布の中で、一ヶ所だけコリコリした突起があるのを指が探りあてた。  
そこを指が通過すると天野の息が荒くなるのもわかった。  
間違いない。ここがクリトリスなんだ。  
 
実物が見たくなった俺は天野のショーツに指をかけ、静かに引き下ろした。  
目の前に恥毛が姿を見せた。  
淡いかげりが見えた瞬間、俺の中で何かが弾けた。  
俺は思わずそこに顔を寄せた。そして胸いっぱいに香りを吸い込む。  
「やだっ!」  
途端に視界が暗くなる。あわてた天野がスカートを離してしまったようだ。  
そのまま身を引いて俺から逃れようとする。  
だが腿まで下ろされたショーツが天野の動きを封じる。  
俺は天野の腰を押さえると、そのまま構わずに匂いをかいだ。  
心の奥底から情欲が揺さぶられるような香りがそこからした。  
初めてかぐ天野のメスのにおい。  
射精したばかりの陰茎に血液が集まっていくのを俺は感じた。  
 
涙声になり激しく抵抗する天野の声が俺を現実に引き戻した。  
天野の嫌がることをしてしまったのか? 俺は後悔した。  
スカートから出、天野の顔を見る。  
目にいっぱい涙をため、しかし責める様子もなく天野が俺を見た。  
申し訳なさでいっぱいになった俺に天野が声をかけた。  
「いきなりそんなことしたら驚くよ」  
「怒った?」  
「ちょっと怒った……」  
「ごめん」  
「もうしないなら許してあげる」  
「うん。天野にだけは嫌われたくないから、天野の許しがなければしない」  
「……ありがとう。ごめんね」  
「俺の方こそごめん」  
俺は立ち上がって天野を抱きしめた。  
天野が俺の唇を求める。俺たちは激しいキスをした。  
 
剛直が熱を帯び、痛いほどそそり立っている。  
もう出さないかぎりおとなしくなりそうもない。  
天野を抱こう。そう決意した。  
 
いつかはこんな日が来るかもしれない。  
そう思った俺はコンドームを準備していた。  
財布に入れ、いつでも使えるように用意していたゴムを取り出す。  
自分で着ける練習も何度もした。そのせいか滞らずに装着を済ませられるはずだ。  
 
「ねぇ、着けさせてくれる?」  
「天野、着けたことあるの?」  
「ないよ。でも興味あるのそういうの。……だめ?」  
「……いいよ」  
つい今しがた天野の手で射精させられた。  
しかしそれ以外に人に触ってもらったことはない。もう一度天野に触ってもらいたい。  
その衝動も手伝い、俺は天野にコンドームを渡した。  
 
天野は興味津々といった感じで四角いビニールの上からゴムの感触を味わっている。  
「雑誌で読んだだけだから、間違ってたら教えてね」  
そう言って袋を破ると中からゼリーで覆われたゴムを取り出す。  
何度か裏返し、どちらが表か確かめると精液溜めを指でつまんで勃起にかぶせた。  
(ちゃんと知ってるんだ……)  
「えっとぉ、」  
そのままクルクルと根元までゴムを戻していく。  
天野の指の感触が心地いい。さっき射精していなかったらまた暴発していたかもしれない。  
それほどの快感だった。  
 
と、突然あわてたような天野の声。  
「あっ!」  
「どうしたの?」  
「破けちゃった……」  
「え?」  
見ると茎胴の真ん中あたりのゴムが裂けている。  
「爪立てちゃったみたい」  
「そうなの?」  
「ごめんね、代わりのある?」  
「……ない」  
「……そっかぁ」  
「今日は出来ないのか……」  
「ねぇ、早川がいやじゃなかったらそのままでもいいよ」  
「え? そんなのダメだよ。天野妊娠したらどうするの?」  
「今日ね、安全日……」  
「そう…なの?」  
「……うん」  
「でも……」  
「早川は着けないとイヤ?」  
「俺は構わない。っていうかそっちの方がうれしい。だって天野を直接感じられるから」  
「わたしもだよ」  
「ほんとにいいの?」  
「うん」  
「わかった」  
 
破れたコンドームをはずすと俺は天野を抱き寄せた。  
椅子に腰かけた俺にまたがる形で天野が腰を下ろす。  
俺の勃起を握り、固さや手触りを確かめるようにしごく。  
すべてはスカートの中で天野の手で行なわれているため、俺には目視できない。  
それでも女の子の手でいじられる快感はこれまで味わったことのないものだった。  
先端が熱くヌルヌルしたものになすりつけられる。  
天野の陰唇だ。そう思った。  
天野が俺を握ったまま腰を浮かせる。  
いよいよ天野の中に入っていくんだ。  
 
心臓が激しく脈打つ。こんなに興奮したのは初めてだ。  
自分で角度を調節すると、天野はゆっくりと腰を落とした。  
「んんっ!」  
くぐもった天野の声。  
俺のモノがきついものの中に入っていく感触があった。  
「はぁ〜ん」  
泣き声にも似た声が天野の口から漏れる。  
「天野、痛いなら無理しなくていいぞ」  
「平気……」  
あまり『平気』じゃなさそうな天野。  
 
抜いたほうがいいのか? だが椅子があるため、俺は自分の意志で抜くことができない。  
それにいま腰を動かしたら天野の中により深く食い込むだろう。  
ダメだ、動けない。  
俺は天野に任せるしかなかった。  
 
天野が少しずつ腰を落とす。ついに俺は根元まで天野の膣に収まった。  
「天野、平気? 痛くない?」  
「痛い……」  
「抜いてもいいよ」  
「だめ」  
「天野の痛そうな顔見てらんないよ」  
「痛くないから続けて」  
「痛いんだろ?」  
「痛くない……」  
虚勢を張る天野。すべては俺を満足させるためなのか?  
胸が熱くなった。  
 
少しでも天野の痛みを和らげるには早く射精するしかない。  
「天野、動くよ。痛かったら言えよ」  
「……うん」  
天野に負担をかけないように少しずつ腰を動かす。  
とはいえ、天野が俺の上に乗っているため俺の動きは制限される。  
ペニス全体が強く握られたような軽い痛みの中、俺は天野の中で動きつづけた。  
 
何度か動かすうち、俺の性感も高まっていった。  
射精したい。その欲求が強くなった。  
腰が快楽を求め、自然に上下する。そのたびに天野の顔が苦痛にゆがむ。  
少しずつ高まっていく射精感の中、たびたび俺は天野への気遣いを忘れそうになった。  
その都度、意志の力で腰を止めようとするが、気が付くとまた腰が動いていた。  
 
限界が近付く。  
もういつ射精してもおかしくないほど俺は甘い感覚に包まれていた。  
天野が腰をよじった。  
それが最後だった。  
突き上げてくる快感に耐え切れなくなった勃起が悲鳴をあげた。  
 
「天野、天野っ! ……うっっ!」  
びゅくっ! どくっびゅっ! ずびゅっ!………  
尿道を快楽の塊が通過していく。俺は天野の最奥で白濁をまき散らした。  
待ちわびていたように発射されたこってりした精液。  
「ひゃん!」  
俺のほとばしりを感じたのか、天野がしがみつく。  
意識が遠のきそうな快感の中で俺は天野を抱きながら何度も精液を送り込む。  
尽きることのない快楽の余韻が俺の体を満たした。  
長い長い射精だった。射ち出された精液は天野の胎内に染み込んでいった。  
 
天野は大きく息をつくと、俺の首に回していた腕をゆるめた。  
「気持ちよかった?」  
「うん」  
「そっか……うれし」  
「天野……」  
「ね、ティッシュ取って」  
「あ、うん」  
 
天野にティッシュを渡すと、股間に当てて立ち上がる。  
スカートの中に手を入れたまま情交の跡を処理する。  
「俺が出したの感じた?」  
「うん。おちんちん、ビクビクッて動いたよ。それでイッたんだってわかった」  
「初めてなのに中で出しちゃってよかったのかな……」  
「わたしの最初がゴムなんて悲しすぎるじゃん。いいんだよ、これで」  
「うん。ありがとう」  
「でもさぁ、中で熱いものを感じるってのはウソだね〜」  
「そうなんだ」  
「うん。それは感じなかった」  
「なるほどね」  
 
「あ……」  
無意識に汚れたティッシュを見た天野が声を上げる。俺もつられてソレを見た。  
血の赤と、精液の白とに彩られたティッシュ。天野の処女の証が付いていた。  
「わたし、えっちしちゃったんだね」  
「後悔してる?」  
「するわけないじゃん。いちばん大好きな人にあげられたんだよ。うれしいって」  
「天野……」  
「でもずるいよね、早川は気持ちよかったんでしょ?」  
「うん……」  
「わたしは痛いだけだったよぉ。大好きな人とじゃなかったら二度としない!」  
「ごめん……」  
「あ〜ん、まだ足の間になんか挟まってる感じがするぅ……」  
「ごめんね」  
「早川のおちんちん大きすぎるんじゃないのぉ?」  
「そ、そうかな……」  
「わたし、壊れちゃうかと思ったよ。今度は…やさしくしてね……」  
天野はそう言うと俺の胸に顔をうずめた。  
 

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