「後藤さん!」  
「ダ、ダメだよ! いまボク汗臭いから!」  
俺たち以外誰もいない更衣室。そこで俺は後藤さんを強く抱きしめた。  
 
 
後藤さんと一緒に帰ろうと、その日も俺は陸上部の練習を見ていた。  
健康的に躍動する後藤さんの肢体。走るたびになびく黒髪。ゴールの瞬間見せる輝いた笑顔。  
しなやかで、でも力強さに満ちた若い肉体を見ていた俺は次第に胸が苦しくなっていく。  
後藤さんと付き合い始めてそろそろ3ヶ月。キスはした。……でもそこまで。  
もっと触れ合いたい。もっと深い関係を持ちたい。そんな気持ちが高まるのを俺は感じた。  
女の子らしく適度に丸みを帯びた腰つき。そしてそれを包むブルマー。  
俺の目は自然とそこに、中でも足の付け根の部分に釘付けになっていった。  
(あの中を見たい! 後藤さんと一つになりたい!)  
気付くと痛いほど勃起している。さりげなく位置を修正し、気付かれないようにする。  
 
練習が終わる。部員が解散するが後藤さんはまだ残っている。  
俺に近付いた後藤さんは  
「ごめんね、もうちょっとだけいい?」  
と言った。  
「うん。後藤さんが満足するまで練習しなよ」  
「ありがとう。でも遅くなるかもしれないから先に帰ってもいいよ」  
「それは俺が断る。ずっと待ってるよ」  
「そんな……」  
「だからって適当に切り上げちゃだめだよ。自分が納得するまで練習すること。いいね」  
「……うん、ありがとう。じゃあボクもう少し走ってくるね」  
そう言うと元気に駆け出していった。  
 
 
あたりが夕闇に包まれ、校庭が暗くなるころに後藤さんの練習が終わった。  
「お待たせ、ごめんね」  
「気にしないでよ。俺、自分の意志で残ったんだし」  
「……うん」  
「さ、帰ろ」  
「じゃあボク着替えてくるね。……それでさ、悪いんだけど」  
「いいよ、付き合うよ」  
更衣室は蛍光灯が切れかけていて、点滅したり長く消えたりする。  
それに気付いたのは昨日だが、今日になってもまだ直されていなかった。  
後藤さんはそれが気味悪いらしく、俺に更衣室の外にいてくれと頼んだ。  
 
パチッ  
スイッチを入れる。しばらく待っても反応がない。  
「あれ?」  
ちょっとあせりが感じられる後藤さんの声。  
「点かない?」  
「そうみたい」  
「う〜ん……」  
「あ〜あ……ボクがもっと早く練習やめてればなぁ」  
校舎の影に位置する更衣室は普段でも薄暗い。蛍光灯が点かないのでは心細いだろう。  
幸い戸口の電灯は生きている。その光がほの暗いながら室内にも届く。  
「これのおかげで少しは明るいね。大丈夫? 着替えできる?」  
「うん……」  
「なんなら俺、中に入ろうか?」  
「そ、それはダメ!」  
「冗談だよ。じゃあ俺ここにいるから、何かあったら呼んでね」  
「う、うん」  
いつもの活発さはどこへやら、おどおどした様子で後藤さんが更衣室に入っていった。  
 
どれぐらい過ぎたろう? 1分も経っていないと思う。  
ガタンッ  
中で何か音がした。と同時に  
「ワァーーーー」  
後藤さんの悲鳴。  
「どうした!」  
俺はとっさに中に飛び込んだ。  
 
上半身は裸で、下半身にブルマーを穿いただけの後藤さんがうずくまっている。  
「どうしたの? 平気?」  
「そ、そこの影が動いた」  
震える声で部屋の一隅を指差す。  
「え?」  
後藤さんのそばに寄り、安心させるように肩を抱いてからその方向を見た。  
光が射さず陰になっている部分はあるが、怪しい気配はまったく感じられない。  
(後藤さんの勘違い? 痴漢は怖くないのにお化けは怖いのかなぁ?)  
「なんともないよ」  
「で、でも」  
「怖いと思うからありもしないものが見えるんだよ」  
「だって……」  
そのとき、点かないと思っていた蛍光灯が灯った。  
「あ、点いた」  
安心した表情で俺を見上げた後藤さんが、半裸の自分に気付いて胸の前で腕を交差させた。  
「やだ!」  
「ご、ごめん」  
あわてて背を向け部屋を出ようとしたとき、再び蛍光灯が消えた。  
「わぁっ! 早川くん待って!」  
後藤さんの悲鳴と切迫した声が響いた。そして俺は後ろから後藤さんにしがみつかれた。  
 
抑えていた欲望が頭をもたげる。俺の中で抑制されていた本能が一気に解放された。  
「後藤さん!」  
振り向きざまに唇を合わせる。  
そのまま胸のふくらみに手を当て、直接柔肌に指を這わせた。  
「ダ、ダメだよ! いまボク汗臭いから!」  
俺から逃げるように身体をひねって抵抗する。  
両腕で後藤さんの肩をしっかりと押さえ、もう一度口付ける。  
俺たち以外誰もいない更衣室。そこで俺は後藤さんを強く抱きしめた。  
 
唇を割り舌を後藤さんの口腔に差し入れる。  
歯を食いしばる後藤さんの歯列を舐め、肩を抱いていた手で耳たぶを優しくくすぐる。  
もう片方の手を腰に回し、力強く抱き寄せる。  
そうこうするうち、腕を縮めて抗う後藤さんの体から少しずつ力が抜けていった。  
 
唇が力を失い、歯のすき間から舌が差し出される。  
俺はその舌を強く吸い、からませ、唾液をすすった。  
後藤さんの腕が俺の背中に回される。のどの奥で甘いうめき声を上げ抱きついてくる。  
むさぼるような熱いキスだった。  
 
たっぷりと時間をかけたキスが終わり、俺たちは顔を離した。  
「……後藤さん、後藤さんが欲しい」  
性の衝動に理性がマヒした俺が思いを告げた。  
「早川くん……」  
見つめ合う。  
沈黙。  
永遠ではないかとさえ長く感じられた時間のあと、  
こっくり  
後藤さんがうなずいた。  
「愛してる」  
愛をささやいた俺は再び後藤さんを強く抱きしめた。  
 
手を後藤さんの後ろに回し、お尻のふくらみを手のひらで撫でる。  
「やだ……」  
小さな声で身じろぐ後藤さんの女の子らしい仕草に興奮が煽られる。  
左手で腰を抱き寄せたまま右手の4本の指をブルマーの中に忍び込ませる。  
指に少し湿り気を帯びた薄手の布の感触があった。  
(そういえば汗をかいたって言ってたっけ……)  
少しだけ隙間の空いた場所に左手の指先も進ませる。  
そして両の手でショーツの上から後藤さんのお尻の肌触りを感じ取るように動かした。  
「ぅん…ふ……」  
鼻を鳴らすような声を立て、後藤さんがすがりつく。  
「後藤さん?」  
「ボク、怖いよ……」  
「大丈夫、俺が付いてるから。ね?」  
後藤さんの長い髪に顔をうずめ、安心させるようにささやく。  
「……うん」  
小さな声が答えた。  
 
(まるで吸い付くようだ……)  
ショーツを通しても、みずみずしく張りのある肌が感じられた。  
俺は手首を立て、両手を曲線に沿う形で下にずらしてブルマーを引き下ろした。  
「後藤さん」  
声をかけ、一旦身を離すと少しだけしゃがんでブルマーをさらにずり下げる。  
ひざを通過し、ふくらはぎのあたりまで下りると後藤さんが足を上げて協力してくれた。  
そうして足元から抜き取る。  
 
立ち上がった俺はもう一度、ゆっくりと後藤さんを抱きしめる。  
そっと指先で後藤さんの唇を撫で、頬を静かにさする。  
そのまま後頭部に手を滑らせると少しだけ顔を上向け、唇を合わせた。  
 
俺はブレザーを脱いで床に敷くと、その上にそっと後藤さんを横たえた。  
後藤さんにのしかかるようにして体を重ねる。  
「早川くん…早川くん……」  
何度も俺の名が呼ばれる。  
「ここにいるよ」  
抱きしめながら、俺はそれに答える。  
「うん」  
恥ずかしそうに、だが嬉しそうに後藤さんが微笑んだ。  
 
普段はブラに隠されているふくらみが今は俺の目の前にある。  
仰向いているせいか、後藤さんの二つのふくらみはそれほど大きいようには見えなかった。  
だが、鍛えられ締まった体の上でそれはしっかりとした存在感で自己を主張していた。  
その双球に手を伸ばす。  
指を押し返す弾力と、見た目から感じる以上の重量感が伝わる。  
「ぁ……」  
小さな声で身をよじる後藤さん。  
後藤さんの顔を見る。  
目を閉じているが、嫌がったり不快を感じている様子はない。よし、続けよう。  
頂の小さな蕾と、それを取り巻く少し色の濃い部分を重点的に攻める。  
と、蕾が固くしこるのが分かった。  
「ん……」  
艶を帯びた声が後藤さんの唇から漏れる。  
(感じているのか?)  
「気持ちいいの?」  
「……うん」  
後藤さんは薄く目を開けると、俺の目を見て肯定の意を示した。  
 
「後藤さん、お尻持ち上げて」  
ショーツのウエストに指をかけ、静かに引き下ろす。  
足元から抜き取ると、それは小さく丸まった。  
(女の子の下着ってこんなに小さいのか!)  
先ほどまで後藤さんの恥ずかしい部分を包んでいた布きれを少し離れた場所に置いた。  
そうして俺も脱いでいく。程なく俺もトランクス一枚を残し裸となった。  
 
後藤さんの「女の子」の部分に目をやる。  
淡く翳った下腹部。毛のあることは分かるが、部屋の暗さのせいでその奥がよく見えない。  
(後藤さんの全部が見たいけど、今日は我慢だ)  
「ボク…恥ずかしいよぉ」  
泣き出しそうな声で後藤さんが言った。  
「さわるよ」  
後藤さんの声には返事をせず、しかし断ってから股間に手を伸ばした。  
 
成熟した女性のそこは見たこともないし、さわったことも当然ない。  
子供のときに見た妹の女性器の記憶をたどりながら静かに指で秘裂を割っていった。  
ぬるりっ  
思った以上に湿り気と粘り気をたたえた柔らかな部分が俺の指を包んだ。  
「んんっ!」  
同時になまめかしさを含んだ後藤さんの声があがる。  
濡れた溝の中に一ヶ所、くぼんだ部分があることを指が探りあてた。  
(膣か?)  
少しだけ指を中に入れてみる。  
「ぅあっ!」  
のどを反らして後藤さんが艶っぽい声を出す。  
(感じている?)  
指を奥に進めると、思ったとおり抵抗もなく指がうずまっていく。  
(ここだ!)  
「はっ…はぁっ…んっ!」  
俺の知らない後藤さんの濡れた声。やはり感じているんだ!  
 
指を抜いてさらにその周辺を撫でまわすと、今度はぷっくりと膨らんだ小さな突起が見つかった。  
「あぁっ!」  
指が触れた瞬間、今まで以上に淫らな声で後藤さんがうめく。  
(クリトリス?)  
思い切ってそこを重点的に攻めることにする。  
いやらしい粘液を指にまぶし、力を入れずに小さな芽を転がす。  
徐々に力を加え、ある程度までいくと指先でつまみ、こするように摩擦する。  
引っかくように弾き、軽く爪も立ててみる。  
その間、後藤さんは俺の官能を刺激する声を出して悶えつづけた。  
 
何分ぐらい攻めたろうか?  
「どうかなっちゃうよぉ! ボクはどうしたらいいの? どうすればいいの?」  
荒い息でうわ言のように後藤さんがつぶやく。  
「そのまま感じてて」  
俺はそう言うとさっきよりも力を入れてクリをなぶった。  
「んはぁ!」  
強く息を吸い、声にならない声を上げて後藤さんがよがる。  
俺は後藤さんの頭をそっと胸に引き寄せる感じで抱き、そのまま額にキスをする。  
「ダメダメダメ………」  
後藤さんは俺にしがみつくと、初めて聞くような淫らな声を上げた。  
「ちゃんと掴まって。イクときは教えてね」  
俺の身体にしっかり腕を回すと、後藤さんは激しく腰を振った。  
「イク、イク、イク、ぁあああ!!」  
突然後藤さんの体が跳ね上がった。  
腰を突き上げたまま動きを止め、そしてゆっくりと崩れ落ちた。  
「はぁはぁはぁ……」  
あたりには後藤さんの荒い息だけが響いていた。  
 
恥ずかしい話だが、快楽に悶える後藤さんの姿に俺は軽く精を放ってしまったようだ。  
下着を汚した粘液の感触が不快感を伴って股間に張り付く。  
「後藤さん、俺も脱ぐね」  
そう言ってから下着を脱ぐ。  
陰茎が解放される。かすかに漂う精液の香り。やはり漏らしてしまったようだ。  
だが、剛直は痛いほどそそり立っていた。  
射精してなお衰えないほどの興奮が俺を支配していた。  
 
後藤さんと一つになる。  
「後藤さん」  
名前を呼び、足の間に入る。  
「……うん」  
小さくうなずくと後藤さんは大きく足を開いた。軽くひざを立て、插入が容易な体勢を取る。  
後藤さんを抱きしめると、俺は勃起を静かに後藤さんの股間にあてがった。  
そしてここだろうと思う場所を何度か突く。  
だが入っていかない。  
柔らかな肉の感触はあるが、入るべき場所が見つからなかった。  
「そこ…違う」  
俺の目を見て後藤さんが首を振った。  
「え?」  
「もっと下……」  
「そ、そうなの?」  
「……うん」  
「わかった。ごめんね」  
再開する。  
だが依然として後藤さんの中に入らない。  
と、勃起が握られる感触があった。見ると後藤さんだ。  
そしてかなり下だと思える場所に先端を誘導すると  
「ここ」  
そう言って目を閉じた。  
 
「わかった……いくよ」  
目を閉じたままの後藤さんがうなずく。そのまま俺の背中に手が回された。  
(行くぞ!)  
ぐっ  
腰を突き出す。  
「んんっ!」  
こわばりが狭い空間に固定される感覚と同時にくぐもった後藤さんの声。  
入った!  
「くぅっ!」  
眉根を寄せ、歯を食いしばる後藤さん。  
「ごめん、痛い?」  
「……平気!」  
抜こうにも、俺の上半身は後藤さんによってしっかり抱きとめられている。  
「ボク平気! だから、奥まで入れて!」  
「でも……」  
「お願いだから!」  
「……うん」  
さらに腰を突き出す。  
メリメリ  
「ぅあぁっ!」  
のどを絞るような悲痛な叫び。  
「後藤さん!」  
「好き! ……だから…ボクを……早川、くんの……ものに…して!」  
途切れ途切れの後藤さんの懇願。途中でやめるわけにはいかなかった。  
そのうち、先端が奥にコツンと当たった気がした。根元まで後藤さんに収まっていた……。  
 
「入ったよ。全部入ったよ。後藤さん、分かる?」  
「……うん」  
涙をいっぱいにためた目で俺を見上げ、しっかりうなずく後藤さん。  
「ごめんね、痛い?」  
「……大丈夫」  
「無理しないで。後藤さんの涙は見たくない!」  
「違うよ……痛いから泣いてるんじゃない。ボク嬉しいんだ!」  
「!」  
「早川くん……好き、大好き!」  
「俺も、俺も後藤さんのこと、愛してる!」  
「! …うれしい!」  
背中に回された腕をほどくと、その腕を俺の首に回して後藤さんがすがり付いてきた。 
俺も後藤さんを強く抱きしめる。  
そうして何度も愛をささやく。  
「好きだよ。大好きだよ後藤さん!」  
「ボクも、ボクも好きぃ!」  
温かいものに心が満たされる。  
それに呼応したか、急速に射精感が高まっていった。  
「ぅあっ! イキそう……」  
根元に精液が押し寄せる。限界が近付く。  
そのとき後藤さんが俺の顔を両手ではさんだ。そして  
「イクとき、ボクの目を見て」  
ささやくように言った。  
それが決定打となった。  
「あっ…後藤さん! 育美っ育美っ……くっっっ!」  
最後の瞬間、意志の力を振り絞り育美の中から引き抜く。  
直後、  
どびゅっ! どぴゅっ! ずびゅぅっ!……  
育美を見つめながら俺はイッた。ガクガクと腰を痙攣させて何度も射精する。  
俺の首に回した腕に力をこめ、育美が俺にしがみついた。  
 
「はぁはぁはぁ……」  
波が引くように快感が収まる。  
見ると育美の下腹部から胸元あたりに白い粘液が飛び散っていた。  
「ボクのこと、初めて『育美』って呼んでくれたね」  
「そうだね」  
「ね、これからもずっと『育美』って呼んでくれる?」  
「うん」  
「うふふ。ボク幸せだぁ」  
そう言うと育美が唇を重ねてきた。  
 
『閉門時間です。校内に残っている生徒は……』  
「あっ!」  
「あっ!」  
放送を聞いた俺たちは同時に声を上げた。  
「マズイよ育美、早くしないと門が閉まっちゃう」  
「うん……あ、ボクのパンツどこ?」  
「え? あ、ここ」  
俺が置いた育美のショーツを手渡す。  
下着を穿き、シャツに袖を通し、あわてて制服を身に着けていく。  
「せっかくいいムードだったのにね!」  
ちょっとふくれた顔の育美がぼやく。  
「そうだな。……ねぇ、今度はもっとゆっくりできるところで……ね?」  
「は、早川くんのえっちぃ!」  
「はははは。あ! ホントに急がないとマズイぞ!」  
「う、うん」  
身支度を整えると俺たちは見つめあい、キスを交わした。  
「行こう!」  
「うん」  
手をつないで更衣室を出る。光に満ちた外の世界へ。  
育美。大好きな育美。とっても大切な育美。  
今日が俺たちの新たな始まりの日になった。  
 

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