水谷由梨香さん。白百合女子学園水泳部の部長だ。  
 白百合水泳部が青空に来校しているため、校内でその姿を見かけたことが何度かある。  
 
 白百合の水泳部は全国大会常連の強豪校だ。その白百合のプールは今、改装工事中だそうだ。  
 夏の大会が終わったのを機に、さらに設備を充実させるため工事しているのだという。  
 しかし練習は一日も休めない。そのため、うちのプールで練習している。  
 女子高がなぜ共学校に? しかも電車で一時間はかかる距離にある。  
 その理由は青空高校は近隣にはない温水プールが完備されているからだった。  
 理事長同士が知り合いだというのも関係しているらしいが、詳しくはわからない。  
 ともかく工事終了までの約1ヶ月、水谷さんたちは青空に通ってきていた。  
 幸か不幸かうちの水泳部は不祥事のため活動停止中だ。練習も禁じられている。  
 プールを白百合が独占することに問題はない。そのあたりも理由の一つなんだろうな……。  
 
 寸暇を惜しんで練習を続ける水泳部。お嬢様学校のうわさどおり、気品ある物腰だった。  
 偏差値も高く、男女交際も校則で禁じられていると聞く。まさに高嶺の花だ。  
 しかも水準以上のかわいい女の子ぞろいときている。  
 その中にひときわ目を引く美少女がいた。  
 そのときは名前を知らなかったが、それが水谷さんだった。  
 
 きれいな人だなぁと思った。それは認める。  
 だが俺には縁のない人だと最初からあきらめていた。  
 大須賀はなんとかきっかけをつかもうと頻繁にプールに足を運んだ。  
 そんな下心に満ちた態度が警戒されたのか、あいつは出入り禁止を喰らった。  
 一方、俺はといえば一ヶ月もすれば接点がなくなることを思って近付かないようにしていた。  
 
 
 放課後の校内を歩いていると、見慣れないセーラー服がうろうろしているのに気が付いた。  
「君、誰? どうしてこんなところにいるの?」  
 振り向いた少女は一瞬安堵の表情を浮かべたように見えた。  
 が、ややもすると冷厳に聞こえる口調で聞いてきた。  
「わたしは白百合女子水泳部の水谷由梨香。職員室はどこかしら?」  
「あぁ、プールの……。職員室はここをまっすぐ行って突き当たりを……」  
 簡単に説明する。  
「ありがとう」  
 素っ気ない感じで答えると水谷さんは歩いていった。  
(あのきれいな人、水谷さんっていうんだ……)  
 なんとなく目で追っていると、水谷さんは教えたのとは逆に突き当たりを折れた。  
「あっ! 水谷さん、そこ違う!」  
 あわてて追いかける。人の話聞いてないのかなぁ……。  
「俺も一緒に行くよ。ついてきて」  
「そ、そう。……ありがとう」  
 
 俺たちは並んで廊下を歩いた。何人かがすれ違いながら興味深そうな視線を送る。  
 水谷さんはそんな視線がまったく気にならない様子で胸を張って堂々と歩いていた。  
「あなた、名前はなんておっしゃるの?」  
「早川大輔っていうんだ。この学校の2年生」  
「ふふふ、この学校の生徒でないのはわたしのほうよ」  
「あ、そうだね」  
「わたしも2年よ。早川くん、よろしくね」  
「うん、こちらこそよろしく」  
 
 その一件が俺たちの知り合ったきっかけだった。  
 知っている人が一人もいないよその学校。水谷さんも心細かったのだろう。  
 困っていたのを結果として助けたことになった俺は、その後も何度となく頼りにされた。  
 誰もが目を止める美少女の水谷さんに頼られて、男として嬉しくないはずがない。  
 『かわいい子が多い』と巷間言われる青空の中にいても、水谷さんの美しさは際立っていた。  
 
 その後、ときどき一緒に下校するほど俺たちは親しくなっていった。  
 ゲームセンターや駅前通りなど、まったく予期しないところで水谷さんに会ったこともある。  
 成績の掲示を見られたこともあるし、神社で願い事をしているのを見かけたこともある。  
 水谷さんのいろいろな面を知った。普段人には見せないだろう姿も知ることができた。  
 高飛車なお嬢様は誤解だということを俺が知るのに、それほど時間はかからなかった。  
 
 そんなある日、俺たちはいつものように一緒に下校していた。  
「早川くんは付き合ってる人、いるの?」  
「いないけど、どうして?」  
「な、なんでもないわ。あなたなら恋人ぐらいいてもおかしくないと思っただけよ!」  
 怒ったような口調で水谷さんが言った。  
「水谷さんは彼氏はいるの?」  
「うちは女子高よ。男の人と知り合うきっかけなんてないわ」  
「じゃあ一人なんだ」  
「わ、悪い?」  
「いやぁ、意外だなあと思って。なんかもったいないよなぁ……」  
(そうか、付き合ってる人はいないんだ。俺にもチャンスはあるな)  
「ねぇ、早川くん好きな人っているの?」  
「どうだろうね」  
(水谷さんだよ、とは言えないよなぁ)  
「秘密ってわけ?」  
「ま、いいじゃないか」  
「わたし、立候補してもいいかしら?」  
「え?」  
 俺はドキンとした。  
 俺の表情がこわばっていることに気付いたのか、水谷さんは  
「なぁんてね、本気にした?」  
 といたずらっぽい目で笑った。  
 やっぱり脈なしなのかなぁ……。  
 そのうち俺たちは駅に着き、そこで別れた。  
 
 
 白百合が青空で練習する最後の日、俺は水谷さんに告白した。  
「そんなに真っ直ぐわたしのことを見つめるの、あなたが初めてよ」  
 そう言って、水谷さんは俺の思いを受け止めてくれた。  
「ほんとはね、早川くんが何も言わなかったらわたしから告白するつもりだったのよ」  
「え?」  
「なんでもないわ、うふふ」  
 そう言って水谷さんはまぶしい笑顔になった。  
 
 俺たちの交際が始まった。  
 校則の厳しい白百合は男女交際にもうるさいらしい。俺たちは白百合から離れた町でデートした。  
 映画、スケート、温水プール……。いろいろなところに行った。すべてが楽しかった。  
 
 初めてのキスは街が一望できる高台だった。  
「わたし、初めてなのよ……責任とってもらうわよ」  
 そう言って水谷さんはいたずらっぽい目で笑った。  
 
 交際が順調に続いていたそんなある日、俺たちはデートでプールに行った。  
 水谷さんの華麗な泳ぎはいつ見ても目を見張るものがある。  
 実際、周りの人たちも感嘆の目で水谷さんを見ていた。  
 そんな水谷さんと付き合っていることが俺は晴れがましくもあり、誇りでもあった。  
 
 プールを出た俺たちは、冬にしては暖かい陽だまりの中で河原で楽しく語り合う。  
 他愛もない話に声を立てて笑う。そんな小さなことが俺には何物にも替えがたい幸福だった。  
 
 一匹の猫が近付いてきた。  
 家で飼われているのか、やけに人懐っこい猫は何の警戒心も抱かず俺たちのそばに寄る。  
 そのまま俺の足元に身をすり寄せてきた。  
「慣れてるなぁ。どこかの飼い猫かな?」  
 抱き上げる。首の下をくすぐるついでに首輪が見えた。  
「やっぱりそうだ。ほら水谷さん見てごらん、可愛いよ」  
 水谷さんはこわばった表情で固まっている。  
「? 水谷さん?」  
「あ、ああ、何かしら」  
「ほら、この猫可愛いよ」  
「そ、そうね」  
「? 水谷さん、もしかして猫キライ?」  
「そ、そんなことなくってよ」  
「じゃあ恐い?」  
「そ、そんな…こと……」  
「水谷さん?」  
 
 そのとき、猫が水谷さんのペンダントにじゃれついたらしく、水谷さんに飛びついた。  
「きゃっ!」  
 あわてて飛びのいた水谷さんがバランスを崩す。そして変な体勢で倒れた。  
「痛っ!」  
「み、水谷さん大丈夫!?」  
 あわてて駆け寄る。  
「大丈夫よ、心配かけてごめんなさい」  
 そうは言ったが、足首に手を当て苦しそうに顔をゆがめる。  
 転んだ拍子に足首をひねってしまったのか?  
「痛いんじゃないの?」  
「……ちょっとね」  
 
 その騒ぎで猫はどこかに行ってしまった。  
 俺は水谷さんのそばにしゃがむと  
「ちょっとごめんね」  
 そう断って足首を診てみた。  
「う〜ん、腫れてはいないなぁ。捻挫なのかな?」  
「ちょっとひねっただけよ。しばらく冷やしておけば痛みも引くわ」  
「そうなの?」  
「心配かけてごめんなさい。本当に平気だから」  
「でもここじゃ冷やすったって水道もないし、川は護岸工事と堤防のせいで降りられないし」  
 そう言いながらあたりを見回す。  
 俺の目がホテルの看板を捉えた。  
 
「どうしたの?」  
 黙ってしまった俺の視線の先を見た水谷さんも絶句する。  
「……早川くんもそういうことに興味があるのかしら?」  
 抑揚のない、怒りを抑えているようにも聞こえる声で水谷さんが告げる。  
(マズイ、怒らせた! ……あれ? 今『早川くんも』って言った?)  
 やや混乱した頭で恐る恐る水谷さんの顔を見る。  
「あそこなら水道はあるでしょうし、きっと氷もあるわね」  
 感情がまったく読めない無表情な水谷さんが続けた。  
「……水谷さん」  
 俺の方が躊躇する。  
「手当てするために入るだけよ」  
「そうだね。うん、そうだね」  
「あなたはわたしが好きになった人よ。……信じるわ」  
 そう言って、やっと微笑む。  
「ありがとう。歩ける?」  
「ええ、痛いけど、歩けないほどじゃないわ」  
「じゃあ俺につかまって」  
 水谷さんに肩を貸すと、俺たちはそのホテルに入っていった。  
 
 部屋に入る。  
 大きなベッドがいやでも目に入る。……意識するなという方が無理だ。  
 俺は水谷さんをベッドに掛けさせるとバスルームに行った。  
 洗面器に水を汲み、冷蔵庫から氷を取り出すとタオルを浸す。それを水谷さんの足首にあてがう。  
「冷たくて気持ちいい……」  
 水谷さんが気持ちよさそうな声を上げた。  
 
 何度かタオルを交換し、しばらく冷やしているうちに腫れも引いたようだ。  
「ありがとう、だいぶ楽になったわ」  
 水谷さんの表情も幾分和らいできた。俺にもあたりを見回すゆとりが出てきた。  
 興味深そうにあたりを見回す俺に、水谷さんが  
「そんなに気になるの?」  
 少し笑いを含んだ声で聞いてきた。  
「いや……別にそういうわけじゃ……」  
 図星を指されてちょっとだけうろたえる。  
 声にそんな響きが入っていたのだろう、水谷さんが笑う。  
「女だって興味はあるのよ」  
 目元を染め、それでもまっすぐに俺を見据えて水谷さんが言う。  
「そんな女の子、キライ?」  
 続けて、少し不安そうな声音で上目遣いになる。  
「え……」  
 なんと答えたらいいのか……。  
 黙っていると、  
「こういうところに入るからは……覚悟は出来てるわ」  
 水谷さんはそう言うと俺の顔を見てにっこりと微笑んだ。  
 
「水谷さん……いいの?」  
「……ええ」  
「ありがとう。俺、水谷さんのことが好き。だから、ずっと大切にする!」  
 精一杯の思いを込めて自分の気持ちを伝える。いい加減な気持ちでは水谷さんを抱けない。  
「わたし……初めてなの。その……」  
「うん。……優しくするね」  
「……ありがとう」  
「だけど俺も初めてなんだ。上手く出来なかったらごめん……」  
「……ううん」  
 そのまま口づけを交わした。  
 
 押し倒すようにベッドに横になる。  
 服の上から水谷さんのふっくらした胸を触る。ロングスカートのひざのあたりを撫でまわす。  
 脱がしたいとは思うが、女の子の服の構造も手順もよくわからなかった。  
「早川くん、わたし自分で脱ぐわね」  
 そんな俺の考えを察したのか、水谷さんがそう言って身を起こした。  
 そのまま服を脱ぎだす。  
「う、うん」  
 つられて俺も脱いでいく。そうして  
「よかった。どうやって脱がそうか困ってたんだ」  
 と素直に自分の気持ちを伝えた。  
「うふふふ、あなたらしいわ」  
 水谷さんが笑った。まぶしいばかりの笑顔だった。  
 
 俺たちは下着を残して裸になった。ベッドに座ったまま見つめ合う。  
 お互いに牽制しあい、その一枚が脱げずにいたというのが正解だろう。  
「俺、脱ぐね」  
 ブリーフのため、脱がなくても形がはっきりわかるほど一物は隆起していた。  
 そう水谷さんに声をかけたが、さすがに恥ずかしく後ろを向く。  
 後ろから水谷さんの視線を感じる。俺は大きく深呼吸するとブリーフを下ろした。  
 
 俺の後ろにいた水谷さんが、背後から手を伸ばしてモノを握った。  
「えっ!」  
 そのまま固まる。  
 何が起きたのか、どうなっているのかがわからず頭は思考を停止したままだ。  
 背中に水谷さんの豊かな乳房が当たる感触がある。  
(な、何が起きているんだ!?)  
 
 自分でするのと同じ角度だが、自分とは違った感触でモノがいじられる。  
「どうすれば気持ちいいか教えて……」  
 恥ずかしそうな水谷さんの声。  
 ようやく頭が動き始めた。同時にそれを楽しむ余裕も出てきた。  
(水谷さんが俺を……)  
 俺は水谷さんに手を重ね  
「ここが気持ちいいから、こんな感じで触ってくれる?」  
 と性感帯を伝えた。  
「うん……こんな感じ?」  
「あぁ…気持ちいい……水谷さん、袋も触ってくれる?」  
「え、ええ」  
 右手でしごきながら左手は袋を優しく揉む。玉を転がし、竿を刺激する。  
 自分で触るのではないもどかしさが徐々に快感へと変わっていく。  
(くっ! こ、こんなの初めてだ……)  
 ひざ立ちしていられなくなった俺はベッドに手をついて前かがみの姿勢になる。  
 口からは自然と快楽のうめきが上がる。  
「早川くん、感じるの?」  
「あぁ! すごいよ、すごいよ水谷さん!」  
「由梨香って呼んで」  
「由梨香、由梨香ぁ……」  
「早川くん……」  
「あ、イク! イクよ由梨香!」  
 由梨香が左の手のひらを亀頭にかぶせた。  
 
「っっっ!」  
 その瞬間、淫液がほとばしる。  
どくっ! どぷっ! ずびゅっ!………  
 由梨香の手にせき止められ、行き場を失った精液はそれでもあとからとめどもなく発射される。  
 小さな手のひらに収まりきらない粘液がポタポタとシーツに落ち、しみを作った。  
「はぁはぁはぁ……」  
 長かった射精もようやく終わった。精嚢が空になるかと思えるほど俺は大量に放出していた。  
 
「由梨香……」  
 やっと落ち着いた俺が振り向く。  
 由梨香のような美少女が、これほど積極的な態度を取るなど夢にも思わなかった。  
 指を汚した白濁をじっと見ると、由梨香はその指を鼻先に持っていった。  
「プールの匂いがする……」  
「え?」  
「カルキ……塩素の匂いに似てるのね」  
「あぁ、そうかもね。俺、当たり前すぎて考えたこともなかったよ」  
「早川くんは何度もかいだかもしれないけど、わたしには生まれて初めての匂いよ」  
「……そうなんだ。俺、なんかうれしいよ」  
「え?」  
「だって、由梨香にこんなことできる男って俺だけだもんな」  
「……そうね。ふふ。あなただけよ。……でも、男の子の体って不思議なのね」  
「俺からすれば女の子の体だって不思議だよ」  
 そう言って由梨香にキスをした。  
 
 由梨香の指を汚した粘液を拭き取ろうとティッシュを取る。  
 細く美しい由梨香の指。これが男の醜悪なものを握り、射精までさせてくれた……。  
 そんなことを考え、手を握ったまま感懐に耽っていると  
「どうしたの?」  
 由梨香が不思議そうに聞いてきた。  
「あ……なんでもないよ」  
 そう言って由梨香の指を拭う。  
「早川くん、おかしい」  
 声を立てて由梨香が笑った。  
 
「びくびくってして、勢いよく出てきたわ」  
 先ほどの行為だろう、由梨香が感想を述べる。  
「は、恥ずかしいよ……」  
 改めて解説されると羞恥心が増す。  
「気持ち…よかった?」  
 不安そうに由梨香が聞く。  
「うん、最高。こんなに気持ちよかったの初めて。俺どうかなっちゃうかもって思った」  
「そ、そうなの?」  
「うん。すごくよかった。由梨香ありがとう!」  
「う、うん……」  
 満更でもない顔で由梨香がうなずく。  
 本当に気持ちよかった。今度は由梨香の番だ。そう思った。  
 
「今度は由梨香を気持ちよくしてあげるね」  
 そう言って静かに横たえる。  
「早川くん……あの……」  
「コンドーム着けるからね」  
「……ありがとう」  
「でも俺、着けたことないんだ」  
「え……」  
「ということで今から練習!」  
 俺は枕元のコンドームを取ると袋を破いた。  
 
 射精して間もないのに、すでに半分ほど硬度は戻っていた。  
 由梨香がそれを何度か手でしごくと、たちまち弾くと音を立てそうなほど張りつめた。  
「じゃあ着けてみるね」  
「ねぇ、わたしがしてもいい?」  
「いいけど、由梨香着けたことあるの?」  
「ないわ。でも保健で習ったからやり方はわかるわ」  
「白百合ってそんなことも教えるの!?」  
 正直、ちょっとびっくりする。  
「避妊は女にとって大切なことよ。相手が着けなければセックスさせないわ」  
「そ、そう……」  
 微妙に気後れする。  
「だから早川くんが『着ける』って言ってくれたときは嬉しかったわ」  
 そう言って少し潤んだ目で俺を見た。  
「あ、ありがとう……」  
「うふふ。えぇと…たしか……」  
 由梨香は何度かしくじったが、ようやくコンドームを装着し終えた。  
 あとで掃除に来た人、俺たち7回もえっちしたって思うのかなぁ……。  
 
「わたしも……脱ぐわ」  
 そう言うと由梨香はショーツを下ろした。  
 足先から抜くと、俺の目に付かないようにすばやく隠す。  
 そうして横になるとそのまま目を閉じた。  
 かすかにカチカチと音がする。見ると由梨香の唇が震えている。  
 歯の根が合わないぐらい震えている。まさか恐いのか?  
「由梨香、怖いならやめるよ」  
「違うわ、緊張してるだけ。心配しなくても大丈夫よ」  
「でも……」  
「本当に平気」  
「……うん」  
 由梨香を信じるしかない。  
「ダメだと思ったらいつでも言ってね」  
 そう伝えて俺は愛撫するために由梨香の股間に顔を近づけた。  
 
 水着を着るためだろう、手入れされた恥毛が俺の鼻先でそよぐ。  
 くっきりとしたビキニラインが劣情を催す。  
 初めて見る成熟した女性の「そこ」に心が躍る。  
 そっと舌を伸ばす。  
 ひくひくとうごめき、粘り気のある液体が湧き出る由梨香の「女」の部分に舌先が触れる。  
 その途端、由梨香の腿に力が入り、俺の頭を締め付ける。  
 両手で腿をこじ開けるようにして頭を押し込み、もう一度そこを舐めた。  
 そこはプールの塩素のにおいとともにかすかに塩気がした。  
 興奮で何も分からなくなる。俺はその部分を必死に舐めまわした。  
「あぁっ!」  
 ただ舐めているだけという稚拙なテクニックだが、由梨香が声を上げる。  
(感じている?)  
 確信は持てなかったが、少なくとも嫌悪や忌避ではないらしい。俺はそのまま続けた。  
 
「あぁ、くっ……うんっ、あっ……」  
 あとからあとから分泌される液体を俺は必死に舐め、すすり、飲み込む。  
 抵抗感は少しもなかった。愛しい由梨香の体から出るものならどんなものでも愛せた。  
「ふぁっ! ううんっ、あぁア! あンっ……ンっ」  
 由梨香の匂いやひだの微妙な舌ざわりといった初めての感触に興奮が高まる。  
 俺は膣口をチロチロと舌先で味わい、さらに奥へと浅く潜りこませた。  
 なめらかで柔らかい内部で舌をうごめかす。  
 すると、ひだの収縮と新たな愛液が感じられた。同時に由梨香の嬌声が激しさを増す。  
「あぁン…き、気持ち…いい……ンっ! ぁ……」  
(由梨香が感じている。)  
 陰唇を唇にはさんだまま鼻を恥丘に押し付ける。コリコリとした恥骨を弾力の中に感じる。  
 とらえどころがなくトロトロと潤う膣からの分泌液で、俺は口の周りはおろかあごまで濡らしていた。  
 それがシーツにしたたり、新たなしみを作っていた。  
 
 そのまま今度はクリトリスを攻める。  
 小粒でありながら自分の存在を主張する肉芽を強く吸う。  
「きゃん!」  
 と、由梨香が声を上げ、張りのある太ももがギュッと俺の顔をはさみつけてきた。  
(気持ちいいんだ!)  
 他人に愛撫を与えられることのなかった由梨香が身悶える。  
 ビクンビクンと腰を跳ね上げて反り返る由梨香から離れまいと懸命に押さえつける。  
 そうしてクリを必死に伸ばした舌で転がすように揉みこんで刺激する。  
 
 舌の根が疲れ果てるまで、俺はクリをこすり、生あたたかい愛液をすすった。  
 そのとき、  
「ひゃうぅ!」  
 のどの奥から絞り出すような声を上げ、由梨香の体が大きくのけぞった。  
 その反動で俺の顔が由梨香の股間から外れる。  
 俺が見たのはパクパクと口を開け、ぜいぜいと声を漏らしている恍惚とした表情の由梨香だった。  
(由梨香がイッた!)  
 そのまま力が抜ける。性の絶頂に達した由梨香はぐったりと身を横たえた。  
 
 すでにこれ以上はないというほど勃起している。  
 高々とした屹立は由梨香の前ではじめて裸になったときよりもはるかに硬度を増していた。  
 そして由梨香の秘唇を目指し、恐ろしいほど隆々とそそり立っていた。  
(由梨香を俺のものにする! 一つになる!)  
 そう決めて足の間ににじり寄る。  
 その雰囲気を察したか、いまだ性感の頂付近に身を置く由梨香がぼんやりと目を開ける。  
 そして俺を見るとしっかりとうなずいた。  
「入れるよ」  
 そう声をかけ、雄々しく突き立つ肉茎を膣口に押し当てる。  
ぐっ!  
 充分すぎる愛液が由梨香の破瓜の痛みを軽減させたのか、顔をしかめた程度で俺を受け入れる。  
 俺はひくつく肉ひだの感覚を味わいながら少しずつ勃起を挿入していった。  
 
 狭い内部に勃起が締め付けられる。快感が全身に広がる。  
 ひとりでに収縮をくり返す熱い柔肉に包み込まれたまま、俺は由梨香に体を重ねた。  
 由梨香が俺の背中に手を回す。  
「ぅっ! ぐっ…早川…くん……痛…い……」  
「痛い? ごめんね!」  
「ううん、痛くないわ。わたしそんなこと言ったかしら?」  
 薄目を開けて由梨香が首を振る。  
「いま言ったよ、痛いって言ったよ?」  
「平気。きっとそういうもんだと思って言っただけだわ。苦しいけど我慢できないほどじゃないわ」  
「由梨香……」  
「信じて。本当につらかったらちゃんと言うわ」  
「……わかった」  
 俺は腰を押しつけるようにして由梨香と密着した。  
 前後運動することは頭ではわかっているが、動かし方がわからなかったのだ。  
 少しだけやってみたが、どうも腕立て伏せのようになってしまいうまくいかない。  
 それに大きく動かない方が由梨香に与える苦痛も少ないだろうと思ったからだ。  
 
 密着したまま唇を重ねる。  
 甘く湿り気のあるあえぎを吸い込みながら少しだけ腰を動かす。  
「ぅあっ!」  
 由梨香が眉根を寄せ顔を反らせる。その反動で唇が離れた。  
 その瞬間、由梨香のナカが波打つように引き締まった。  
「っっっ!」  
 同時に俺の一物に刺激が伝わり、信じられないほど早く限界を迎えた。  
どびゅっ! どびゅっ! どぴゅっ!………  
 由梨香を抱きしめたまま何度も精液を発射する。  
 目もくらむ快感の中、俺は由梨香に射精しつづけた。  
 
 激情が去る。  
 性の満足を得て大きく息をついた俺は、そこで初めて由梨香との結合部を見た。  
 ……血がにじんでいる。由梨香の太ももにも血が伝っていた。  
「由梨香、血が出てるけど平気? 痛くない?」  
「思っていたほど痛くはないわ」  
「ほんとに?」  
「ええ。……心配してくれてありがとう」  
 そういって微笑むが、笑顔が少し痛々しく感じる。  
 だが由梨香がそれ以上言わないのならば俺にはどうしようもない。  
 
 忘れていたもう一つの懸案を思い出す。  
「由梨香、足は?」  
 言われて何度か動かす由梨香。  
「かなり楽になったわ。この分なら明日には完全に治るわね」  
「そうか……よかった」  
「ねぇ、重いわ……」  
 恥ずかしそうに由梨香が言った。俺は由梨香に乗ったままだった。  
「あ、ごめん」  
「それとも……またするの?」  
 笑って言う由梨香。中で少しずつ硬度を取り戻しつつある肉棒を俺たちは感じていた。  
 
 

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