「私たちって相性いいわよね」  
「んあ? 俺とのぞみの場合は相性っていうより腐れ縁だろ?」  
 
 下校時、校門のところでのぞみに『一緒に帰ろう』と声をかけた。  
 一人で帰るのがつまらなかったし、何より方向が同じだ。本当の理由は別だが……。  
 ちょっと考え込む様子を見せたのぞみだが、結局一緒に下校している。  
 
「昔から知ってるってだけで一緒に帰ったりしないでしょ?」  
「一緒に帰るから相性がいいとも限らないだろ?」  
「大輔は私と帰るのイヤ?」  
「いやだったら誘わないって」  
「……え?」  
 一瞬のぞみの表情がほころぶ。  
「ま、気が合うのは事実だけどな」  
「大輔……」  
「のぞみと帰っても噂にならないし、その意味じゃ安全パイかな」  
「……私と噂になるのはイヤ?」  
 あまり見たことのないのぞみの不安そうな顔。  
ドキン!  
 心臓が高鳴る。  
 だが俺はそんな素振りはおくびにも出さずに続ける。  
「噂になりたかったらもっと素直になれよ。お前、俺に遠慮なさ過ぎ。誰もそんな目で見ないぞ」  
「………」  
 何か言いたそうに口を開くが、そのまま黙ってしまうのぞみ。  
 
「ま、まさかのぞみ、俺と噂になりたいのか?」  
 驚く。あせる。戸惑いが心に広がる。鼓動が早くなる。  
「私のこと、嫌い?」  
 真剣な眼差しで俺を見つめるのぞみ。  
(ま、まずい。なんと答える?)  
 と、一転  
「なぁんてね!」  
「へ?」  
 拍子抜け。と同時に軽い失望感。  
「大輔には恋愛感情持てないわ」  
「は?」  
 とどめを刺すように続けるのぞみ。  
「大輔だってそうでしょ? 私のこと、女として見てる?」  
「いや、全然」  
「もう! 大輔そういうこと他の子に言える?」  
「まさか」  
「それが相性いいってことなのよ」  
「そんなもんかねぇ」  
「そんなもんよ」  
 などと話しているうちにのぞみの家の前に着く。  
「じゃあな」  
「うん。また明日ね!」  
 そう言ってのぞみは家に入っていった。  
(俺、本当はのぞみのこと好きなんだけどな……)  
 
 胸ポケットから生徒手帳を取り出す。開くと中を見る。  
 俺はそこにのぞみの写真をはさんでいた。  
 中学の修学旅行で撮られた一枚。もちろんのぞみしか写っていない。  
 無防備な瞬間を狙った。そのためにもっとも自然な笑顔が焼き付けられている。  
 俺のお気に入りのベストショットだった。  
(のぞみ……)  
 写真に呼びかける。  
(どうして俺は自分に素直になれないのかなぁ……)  
 俺は手帳を閉じると自分の家の門をくぐった。  
 
 翌日、今度はのぞみから『一緒に帰ろう』と誘われた。  
 俺が断る理由はない。それどころかこちらからお願いしたいほどだ。一も二もなく賛成した。  
 
 宿題の話や部活動の話、二人の共通の思い出など話題は尽きない。  
 先ほどから手が、指先が触れ合うのを感じていたが、俺に手をつなぐ勇気はなかった。  
 と、のぞみが手を伸ばす。そして俺の人差し指と中指を握るように手がつながれる。  
 そのまま、やんわりと握ったり力をゆるめたりしてくる。  
「!」  
 それとなくのぞみの顔を見るが、のぞみはニコニコして前を向いているだけだ。  
(無意識にやってるのかなぁ?)  
 指を握られているため、俺としては手を握り返せない。  
 振りほどいてつなぎ直せばいいのだろうが、さすがにそれは気が引ける。  
(ま、いいか……)  
 俺たちはそのまま歩いた。  
 
 曇り空からパラパラと雨が落ちてくる。と見るや一転して強い降りになった。  
「うそ! 天気予報で降るなんて言ってなかったわ」  
 駆け出す。  
 家まではまだ距離がある。俺たちは近くの軒先で雨宿りすることになった。  
 
「あ〜あ、ついてないわねぇ」  
「のぞみ、傘は?」  
「持ってないわ。大輔は?」  
「俺が持ってると思うか?」  
「あんたに聞いた私がバカだったわ」  
 
 スコールを思わせる降りは俺たちの制服をしとどに濡らした。シャツまで水が染みている。  
「くっそ〜、なんて雨だ。……ずいぶん濡れたな。のぞみ、寒くないか?」  
「大丈夫」  
 のぞみはハンカチを取り出すと額や顔、首筋を拭く。  
 几帳面なのぞみらしく、ぴしっとアイロンのかかったハンカチだった。  
 続いてブレザーを脱ぐ。そうして背中側の水滴も拭き取っていく。  
 雨に濡れたブラウスが肌に張り付き、のぞみの腕の線をくっきりと際立たせている。  
 それどころか、大きく開いた脇からはやはり濡れたブルー系のブラジャーが透けて見える。  
 女らしい曲線や下着の線を目の当たりにし、目のやり場に困った俺もブレザーを脱いだ。  
(……でも、のぞみってこんなに綺麗だったか?)  
 濡れた髪が魅力的に映るのか、その時ののぞみは今まで見たことがないほど美しく見えた。  
 
「いくらこの季節でも、濡れたまんまだと風邪引くぞ」  
 恨み言をつぶやく。  
 独り言のつもりだったが  
「もうちょっと待って小降りになったら帰りましょ。ほんとに風邪引いちゃうわ」  
 自分に話しかけられたと思ったか、のぞみが応じた。  
 
 雨が小降りになってくる。  
「大輔、行きましょ!」  
 そう言うとのぞみが雨の中に一歩を踏み出す。  
「まだ少し降ってるぞ!」  
「もう濡れてるから同じよ。このままじゃ風邪引いちゃうよ。さあ」  
「そうだな、家まで突っ走るか」  
 俺も遅れまいとブレザーを小脇に抱えたまま後を追う。  
 
 走り出そうとした勢いで胸ポケットから何かが滑り落ちた。  
パサッ  
 生徒手帳だ。  
(ヤバイ!)  
 あわてて拾おうとするが、それより先にのぞみが拾いあげた。  
 渡そうとして、俺の必死な顔に気付いたらしくのぞみが意地悪く聞く。  
「何あせってるの?」  
「あ、あせってなんかないぞ」  
「ふぅ〜ん」  
 そう言って中を見るような素振りをした。  
 
「いいから返せよ!」  
 手を伸ばす。  
 それより一瞬早く、のぞみはさっと手を後ろに回し俺の手から手帳を隠した。  
 
「あっ!」  
「え?」  
 勢いあまり、手帳のあった場所、のぞみの胸を鷲づかみにする。  
 ……そのまま時が止まった。  
 
「ご、ごめん!」  
 急いで手を引っ込める。顔が熱い。間違いなく赤面しているはずだ。  
「な、な、なにすんの大輔ぇ!」  
 一拍遅れてのぞみが叫ぶ。  
「ま、待てっ、わざとじゃないっ!」  
「わざとされてたまるもんですかぁ!」  
「じ、事故だ事故!」  
「バカ! スケベ! 変態! 最低っ! 何よっ、大輔なんか大っキライっ!」  
 機関銃のように浴びせられる罵声。  
(何もそこまで言わなくても……)  
 だが黙って耐えるしかない。  
「そんなにこの手帳が大事なの!?」  
 そう言ってのぞみが振り回す。その勢いで中から写真が舞い落ちた。  
 自然と目で追ったのぞみがそれを見る。そのまま動きが止まる。  
 
「……え」  
(まずい、見られた……)  
「どうして……私の写真」  
「……イヤか?」  
「え……」  
「俺がお前の写真持ってたら……イヤか?」  
 のぞみは黙って下を向いた。  
 構わず続ける。  
「そうだよ、のぞみの写真だよ。それがいつのかのぞみもわかるだろ?」  
こっくり  
 下を向いたままのぞみがうなずく。  
「中学のころから……違う、もっと前からのぞみが好きだった。そういうことだよ」  
「……ごめんなさい」  
 小さな声でそう答えると、俺に手帳を突っ返してのぞみは走り去ってしまった。  
(振られたか……。終わったな)  
 自嘲気味の笑みが浮かぶ。泣きたいが、涙は出てこなかった……。  
 
 その晩は久し振りに泣いた。布団に入ると自然に涙が出てきた。  
 大人だったら酒でも飲んで忘れるんだろうが、あいにく俺は高校生だった。  
 
 眠りながらも泣いていたらしく、起きると枕は濡れ、目は腫れていた。  
(もう今までみたいにのぞみとは話せないんだな……)  
 朝から憂鬱な気分だった。  
 
 みさきが俺の様子のおかしいことに気付いたらしく、珍しく優しい言葉をかけてくる。  
 理由もわからないくせに俺を励まし、元気付けるようなことを言う。  
 そんな心遣いが嬉しかった。いつもはムカつくだけの妹が、今日は愛らしく思えた。  
 
 のぞみに会いたくない。正直そう思った。  
 同じクラスであることを今日ほど呪ったことはない。  
 それでも学校を休むわけにはいかない。思い足取りで登校する。  
 
 教室に入るとのぞみがいた。  
 きっとあいつも俺と顔を合わせづらいだろうなぁ……。ぼんやりと考える。  
「大輔、おはよう」  
 だがのぞみは今までと一つも変わらない態度で俺に接してきた。  
 それどころか俺に笑顔を見せる。軽口を叩く。……どういうつもりだ?  
 のぞみにとっては俺の告白など些事なのか? 俺はそれだけどうでもいい相手なのか?  
 息苦しいほどの絶望が俺を包んだ。  
 
 それからも俺たちの日常は変化なくくり返された。  
 二人の関係を悪化させまいとするのぞみの精一杯の優しさ。そう俺は理解した。  
 ならば俺も今まで通りに振る舞うべきだ。そう考え実行した。  
 俺たちの関係は元に戻ったかに見えた。  
 
 自分を殺す生活の続いていたある日、俺は自室でぼんやりと時を過ごしていた。  
 何とはなしにベッドに寝っ転がり、天井を見る。  
 だが目がそこに向いているというだけで、実際には見てはいなかった。  
 と、  
「大輔ぇ、入るわよぉ」  
 ノックもせずドアが開けられた。  
 のぞみだ。  
 なぜここに? 疑問が湧いたが、それを聞く前にのぞみが続ける。  
「相変わらず散らかった部屋ねぇ〜。少しは片付けなさいよ」  
 幼なじみで、お互いをよく知っているからこそのあけすけな物言い。  
 いつもなら心地よいのぞみの口調も、今の俺には厳しいものがあった。  
 
「何か用か?」  
 寝たまま、顔すら向けずに聞く。  
 自然に俺の口調もよそよそしい感じになる。  
「うん……」  
 むこうから用事があって来たはずなのに、言葉を濁す。  
 のぞみが言わないかぎり、俺としてはそれを待つしかない。  
 
「大輔ぇ……あの、さ……」  
「なんだよ」  
 自分でも突き放した口調とわかる。自己嫌悪……。  
「……今日ね…柳沢くんに『付き合ってくれ』って言われたわ」  
「……え?」  
 思わず上半身を起こす。  
 心が波立つ。心臓の鼓動が早くなる。しかし……  
 俺はのぞみに振られた。のぞみが誰と付き合おうと俺に止める権利はない。  
「何か言ったら?」  
 のぞみが聞く。  
 俺は屈辱で胸がいっぱいになった。  
 
 それでも可能なかぎり笑顔を作って答える。  
「……おめでとう。柳沢はいいやつだよ。きっとのぞみのこと、本気で大切にしてくれる……」  
「どうして?」  
 のぞみが俺の言葉をさえぎる。  
「え?」  
 のぞみは何を言ってるんだ?  
 理解できずにそれ以上の言葉が出てこない。  
「どうして『そんなの断れ、俺だけを見ろ!』って言ってくれないの?」  
 珍しく激昂したのぞみが言葉を継ぐ。  
 
「のぞみ……」  
「私は大輔が好き!」  
「え? だって俺……のぞみに振られた」  
「何それ? 私そんなことしてない! 大輔を振ってなんかない!」  
「だって、生徒手帳の写真のとき、のぞみ『ごめんなさい』って……」  
 
「……あっ!」  
 記憶をたどるようにしばらく考えていたのぞみが声を上げた。  
「違う! 大輔の気持ちに気付かなくてごめんなさいって言ったの」  
「……え?」  
「うれしかった……だって…私も大輔のこと……好きだったから……」  
「のぞみ……」  
「最近大輔の態度がちょっと変だなって思ってたけど……誤解させてた?」  
「……うん」  
「あの時、私恥ずかしくて自分の気持ちをちゃんと伝えられなかった……」  
「それで逃げるように走って行ったってこと?」  
こっくり  
 のぞみが首を振る。  
(すべては俺の思い込みか? 俺の今までの苦労はなんだったんだ?)  
 乾いた笑いが唇から漏れた。そしてそれは徐々に泣き笑いになっていった。  
 
「だ、大輔……」  
 俺の様子にまごついたのか、のぞみが心配そうに聞く。  
「あぁ、大丈夫。安心したら…力抜けた……」  
「ごめんね、私がはっきりしなかったから……」  
「いや、もうどうでもいい。のぞみの気持ちがわかったからそんなのどうでもいい」  
「大輔……」  
 のぞみは俺に近付くと、慈母のような笑みを浮かべて俺の頭を抱きしめた。  
 
 のぞみに抱かれたまま目を閉じる。  
 かすかに響くのぞみの心臓の鼓動、そして呼吸とともに上下する胸を感じる。  
 そのまま少しだけ頭を動かすと、のぞみの胸のふくらみがより強く感じられた。  
 俺はそっとそのふくらみに手を伸ばす。  
びくっ  
 一瞬のぞみの体が震えたようだが、そのまま俺に身を任せている。  
「今日は……怒らないのか?」  
「……何が?」  
「俺、今わざとのぞみの胸さわってるぞ」  
「……バカ」  
 小さくつぶやき、一層の力を入れて俺の頭を抱き寄せるのぞみ。  
 
 のぞみに対してわだかまっていた感情はすでにない。  
 こうしてのぞみの気持ちが確かめられた今、俺の心の中に別の感情が芽生え始めていた。  
(のぞみが欲しい)  
 だが、たった今お互いの気持ちが確認できただけで俺たちは付き合っているわけじゃない。  
 キスどころか、意識して手をつないだこともない。デートに行ったこともない。  
 性急すぎるのではないか?  
 そんな考えもあったが、それを邪魔するように性の欲求は高まっていった。  
 
「のぞみ」  
 名前を呼んで腕から逃れる。  
 見つめ合う。  
「のぞみ」  
 もう一度呼ぶ。  
 俺はのぞみの上腕を両手で抱いた。  
こっくり  
 のぞみがその意味を理解したのか、うなずくと静かに目を閉じた。  
 そっと口づけを交わす。  
 唇が触れるだけの優しいキス。  
「大輔……」  
「いいのか?」  
「……初めてなの。……優しくしてよね」  
 俺から少しだけ視線を逸らして小さな声で答える。  
「ずっと……ずっと好きだった……」  
 返事の代わりにそう言うとのぞみを抱きしめる。  
「私も……大輔、大好き!」  
 俺に抱かれたのぞみが涙声で答えた。  
 
 机の引出しから大須賀たちとふざけて買ったコンドームを取り出す。  
(まさか本当に使う日が来るとはな……)  
「大輔、それ……」  
「うん、コンドーム」  
「……どうして持ってるの?」  
 固い声。  
「前に興味本位で買ったことがある」  
「そう、なんだ……」  
 沈んだ感じでのぞみが答える。  
「俺、初めてだからうまく出来なかったらごめんな」  
「う、ううん。……そっか、大輔も初めてか……」  
 少し安心したような笑みをのぞみが浮かべた。  
 
 のぞみとセックスする。そう考えただけで冷静ではいられない。  
 破裂するのではないか。そう思えるほど心臓が激しく脈打つ。  
「のぞみ」  
 声をかける。そうして俺は自分のシャツのボタンに手をかけた。  
 だが手が震えて普段のようにうまく外せない。  
 ようやくボタンが外れ、シャツを脱ぎ捨てる。  
 それを見ていたのぞみも服を脱ぎはじめた。  
 シャツを脱ぎ、ブラをはずし、ジーンズを下ろす。  
 
「大輔……あんまり見ないで」  
 赤面したのぞみの声に我に返る。俺はのぞみが脱ぐ姿を凝視していたらしい。  
「ご、ごめん……」  
 そう言って俺も再開した。  
 
 下着一枚を身に着けただけの姿となった俺たちは見つめあった。  
 のぞみを優しく抱きしめると、そっとキスをする。  
 キスをしながら、初めて見た胸のふくらみに右手をあてがう。  
 曲線に合わせて指を曲げ、重量感のある丸い乳房を静かに揉んでみた。  
「ん……」  
 のどを鳴らしてのぞみがうめく。  
「痛い?」  
「ううん、平気。でも、あんまり強くしないで……」  
「わかった」  
 のぞみの髪に頬ずりするように抱き寄せ、左手で腰を引き寄せる。  
 勃起がのぞみの下腹部に押し付けられ、そこから快感が立ちのぼった。  
 指の腹で胸の頂にある小さな突起をそっと転がす。続けて軽く押してみる。  
 人差し指と中指で乳首をはさむと、わざとそこを避けて周りの色の濃い部分をさする。  
 すると、最前までは感じられなかったポツポツと粟だった感触を指が知覚した。  
「んふぅ……」  
 鼻にかかった甘い声でのぞみがむせぶ。  
 その声に性感が急速に高まった俺は、さらに腰を強く押し付けた。  
 
 腰に回していた左手でのぞみの手を取る。  
 のぞみから腰を引き、二人の体の間に隙間を作ると、俺はその手を剛直に持っていった。  
ぐっ  
 こわばるように体に力を入れるのぞみ。俺はそのまま手を動かし、のぞみの手で刺激させる。  
ビクンッ  
 肉棒がさらに硬度を増し、それに合わせて何度も脈打つ。  
「大輔ぇ……」  
 戸惑いを含んだのぞみの声。  
 俺はウエストゴムから手を滑り込ませると、そのまま勃起をのぞみの手に触れさせた。  
「んっ!」  
 声にならない声を上げてのぞみが固まる。  
「のぞみ……さわって……」  
 のぞみの髪に顔をうずめてささやく。  
 しばしのためらいのあと、のぞみの指が俺の肉茎に巻きつけられた。  
 
「熱い……やけどしそう……」  
 注意しないと聞き漏らしそうな小さな声でのぞみが言う。  
「のぞみのことが好きだからこんなになるんだよ」  
「……うん」  
 のぞみは小さくうなずいてそう答えた。  
 
 胸をまさぐっていた手を下におろす。  
 そうして両手でのぞみのショーツの腰の部分をつかむと、  
「脱がせるよ」  
 そう伝えて静かに引きおろした。  
 
 手が届く範囲までショーツを下ろす。するとのぞみが足をすぼめたのがわかった。  
ふぁさっ  
 かすかな衣擦れの音とともにショーツが足首まで落ちる。  
 のぞみは足を交互に上げてショーツを足先からはずした。  
 
 そうしている間ものぞみは俺の肉棒を握っていた。  
 それだけではなく、やわやわと揉みほぐすような動きやかすかに前後もさせていた。  
 無意識なのか、何かで知識を得ていたのかはわからない。  
 だがのぞみのそれらの動きは俺を高まらせるのに充分だった。  
 のぞみの背中に手を回し、俺はしばしその感触を楽しむ。が、  
「くっっっ!」  
 俺にいきなり限界が訪れた。  
どひゅっ! ずびゅっ! びゅっ!………  
 のぞみの手に握られた肉棒が何度もしゃくりあげ、そのたびに熱を持った白濁が発射される。  
「え?」  
 驚いたような声を出し、のぞみが身を固くする。  
「うっ! うぅっ! うぁぁ!」  
 精液が尿道を通過するたび、あまりの快感に自然とうめき声が漏れる。  
 のぞみを抱いたまま、俺は下着とのぞみの指とを汚して射精を終えた。  
 
「はぁはぁはぁ………」  
 呼吸が荒い。立っているのがやっととも感じられるほどの悦楽の境地。  
 今の射精はそれほどの快感を俺にもたらした。  
「だ、大輔……」  
 心配そうなのぞみの声。  
 俺の様子や顔を見ようと身じろぐが、俺に抱きすくめられたままで動くことができない。  
「あぁ、平気だよ。のぞみありがとう、すごくよかった……」  
 腕の力をゆるめ、のぞみの顔を見ながら言う。  
「ほんとに平気?」  
 俺の言葉を聞いても、なおも心配そうに尋ねる。  
「射精は知ってるだろ?」  
「知ってるけど、あんなに苦しそうな声出すんだもん、そんなの知らなかった。心配しちゃった」  
「ごめん、いつもは俺もあんなにならないよ。……それだけのぞみの指、気持ちよかったんだ」  
「……え」  
 頬を染め、とっさに俺から視線を逸らす。  
 そしてそのまま恥ずかしそうな様子で下を向いた。  
 
 射精はしたが、どちらかといえば暴発に近いもので完全な満足は得ていない。  
 そのせいか陰茎には水平方向を指す程度の固さがまだ残っていた。  
 処理のために下着を脱ぐ。むっとする青臭い匂いがあたりに漂った。  
 
 粘液にまみれたのぞみの指を最初に拭こうと手を取る。  
「いいわ、自分でやる」  
 そう言って俺からティッシュを受け取ると、のぞみは指を拭いた。  
 そうしながら  
「これ、精液の匂い?」  
 なんともいえない微妙な表情でのぞみが聞く。  
「くさい?」  
「……変な匂い」  
 指を鼻先にかざし、ためらいがちに言葉を継ぐ。  
「だろうな」  
「匂いがあるのも知らなかったわ」  
「まぁ、そこまでは教科書にも書いてないしな」  
「……うん」  
 そう言いながら、のぞみは俺が精液を処理するところを見ていた。  
 
 のぞみに見られていることは恥ずかしくもあったが、なぜか興奮もした。  
 徐々に角度が急になっていく。同時に硬度も増していく。……充分に勃起した。  
 俺は用意したコンドームを取り出すと、先端をひねって肉棒にあてがう。  
 そのまま根元までかぶせはじめたとき、  
「私に着けさせて」  
 のぞみが言いながら手を伸ばした。  
「構わないけど……やりたいの?」  
「何事も経験よ」  
 そう言うと、見よう見真似で丁寧にはめていった。  
 
 コンドームは装着した。いよいよのぞみと……。  
「のぞみ」  
 俺はのぞみを横たえて唇を重ねると、濃厚に舌を絡ませた。  
(のぞみの処女をもらうんだ!)  
 その感激に呼吸が震えた。  
 息が苦しくなった俺は唇を離し、のぞみの額に口付ける。  
 そしてのぞみの瞳を見る。恥ずかしいのか、のぞみは  
「ぃゃ……」  
 小さく言うと目を閉じた。  
 
 期待と興奮で胸が苦しいほどだ。コンドームの締め付けだけで達してしまいそうになる。  
 何度か深呼吸して気持ちを落ち着かせると、俺はのぞみの下腹部に手を伸ばした。  
 
 女性らしい丸みを帯びたすべらかな曲線に手を這わす。  
 そのまま下に手を進めると、しゃりしゃりした陰毛の手触りがあった。  
 その場所を手のひらで撫でる。弾力に富むこんもりと盛りあがった丘をしばらく堪能する。  
 再びのぞみに口付ける。するとのぞみから舌を絡ませてきた。  
 甘い声で鳴くのぞみ。小さくあえぐのぞみ。かすかに身を震わせて俺にしがみつくのぞみ。  
 
 恥丘から下に指先を進める。ねっとりした熱い空間が俺の指をくるみこむ。  
「んんっ!」  
 のぞみの舌の動きが止まった。  
 構わず舌を動かし、唾液を送り込む。  
 音を立てて唾液を吸い、のどを鳴らしてそれを飲み込むのぞみはメスの顔をしていた。  
 
 蜜壺に指を少しだけ差し入れる。熱くトロトロした粘液がさらに強く感じられた。  
 そのぬめりを指先にまとうと、肉のひだの中を静かにかき混ぜる。  
「あぁっ……んっ…っ…ン……んん! あんっ……あッ…んッ! んんッ……」  
 首を振った拍子に俺たちの唇が離れた。そのまま声を立てて悶えるのぞみ。  
 のぞみの痴態に射精欲が高まる。放出の欲求に胸が苦しくなる。  
 
 俺は身を起こすとひざでのぞみの股間に進んだ。  
 屈み込んで片手を突き、もう片方の手で肉茎を支える。  
 
「あっ……」  
 先端を膣口にあてがうと、のぞみがあえいでピクンと震えた。  
「いい? 力を抜いて。初めては痛いっていうから俺につかまってて」  
 のぞみにささやく。  
 両手で俺の腕をつかむとのぞみが力を入れる。  
「いくよ」  
 そしてのぞみがうなずくのを確認すると俺は腰を押し出した。  
 
「くっ……!」  
 のぞみはのけ反ると、息を呑んで身をこわばらせた。  
 そして痛みのためかずり上がろうとする。その体を俺は押さえた。  
 
 そのまま腰を進める。  
 強靭な膣の抵抗に逆らい、カリ首がもぐりこむ。  
「うっ! ぐぅっ!」  
 のぞみが歯を食いしばる。  
 汚れを知らない陰唇が押しひろげられ、亀頭の半分がくわえ込まれる。  
 
 俺は一旦のぞみを休ませようと動きを止めた。  
「お、終わった?」  
 熱くせわしい息でのぞみが尋ねる。  
「まだ。……先の方しか入ってない……」  
「んっ…」  
 苦しそうな息をつくのぞみ。  
「やめる? 今ならまだ処女膜は残ってると思う」  
「ううん、いい。……続けて。大輔にあげたいの……」  
「わかった。……じゃあ行くよ。もっと痛いと思うけど我慢してね」  
「うん」  
 のぞみが唇を噛んだ。  
 
 俺は右手でのぞみの左足を持ち上げ、腰をわずかに挿し入れた。  
「くぅっ! ぐ……」  
 のぞみがうめく。  
 処女の膣はきつく、なかなか奥に入っていけない。  
 俺は一気に貫くのではなく、少しずつ出し入れをくり返してのぞみに入っていった。  
 
 ようやく根元までのぞみに収まる。  
 だが、ペニス全体を押しつぶそうとする圧力が感じられ俺は少しも動けなかった。  
「のぞみ、わかる? 全部入ったよ。のぞみの処女、俺がもらったんだよ」  
「……うん」  
 涙をいっぱいにためた瞳でのぞみが見上げる。  
「のぞみ、ごめん。痛い?」  
「ううん、嬉しいの。……心配しないで」  
「……うん」  
 
 俺はのぞみに苦痛を与えまいと動かずにいた。それでも膣の蠕動が快感として伝わる。  
 このままでも射精してしまうかもしれないほどの甘美な感覚に包まれる。  
 すると  
「動かないの?」  
 のぞみが荒い息で聞いた。  
「え?」  
「動かないと……射精……できないんでしょ?」  
「……のぞみ」  
「私だってそれぐらい知ってるわ」  
 目元を染めたのぞみが言った。  
「痛いんだろ?」  
「平気」  
「無理するなよ……のぞみの顔見てれば痛いってことはわかる。出来ないよ……」  
「大輔……私はいいから大輔気持ちよくなって。ね?」  
「のぞみ……」  
「お願い」  
「……わかった。じゃあ動くけど、本当に我慢できなくなったら言えよ」  
「うん」  
 
 ゆっくりとしたペースで前後する。  
「くぅっ! んんっ!」  
 俺の動きに合わせてのぞみがうめく。  
 苦悶に満ちた表情から痛みの激しさが感じられる。  
 だが俺はのぞみを気遣う余裕がなくなっていた。  
 じわじわ高まる射精感。それに伴って自然と腰が動いてしまう。  
 快感を得ているとは思えないのぞみだが、その膣壁は俺の肉棒に絡みつき快感を与える。  
「くっ!」  
 快楽のあまり、俺の口からは思わず声が漏れる。  
「大輔……気持ちいい?」  
 涙を流しながらのぞみが俺に声をかける。  
 俺はのぞみの顔に口を近づけると、その涙をすすった。  
「うん、気持ちいい。ごめんね俺だけ気持ちよくなって……。のぞみ、好き、大好き!」  
「大輔…大輔!」  
 熱に浮かされたように互いの名を呼ぶ。  
 
 のぞみがしがみついたとき、耐えていた俺に限界が来た。  
「のぞみ、出るっ、出るっ!……うっっっ!」  
 射精の瞬間、俺はのぞみの首筋に顔を押し付けた。  
 甘い体臭をかぎながら絶頂に達する。  
どぴゅっ! どぴゅっ! ずぴゅっ! びゅびゅぅぅ!………  
 激しい快感に貫かれ、俺はのぞみの中ですべてを放出した。  
 
「私、大輔のものになったのね」  
 射精を終え、膣中で硬度を失ったモノを収めたままのぞみが言う。  
「ああ、もう誰にものぞみは渡さない。絶対に」  
 本心から誓った。  
 
 二人の愛の行為の処理を終え、横になって抱き合う。  
 のぞみがポツリと言う。  
「明日、柳沢くんに断るね」  
 のぞみが吹っ切れたような笑顔になった。  
「うん……ってお前、最初からその気がないなら告白されたときに断れよ!」  
「違うわ、『今晩ゆっくり考えて、明日返事を聞かせてくれ』って言われたのよ」  
「そうか……でも俺がのぞみのこと好きなの知ってるだろ?」  
「でも大輔最近なんかよそよそしかったから、あの告白は嘘なんじゃないかって疑っちゃった」  
「ま、俺も勘違いしてた部分はあったからな」  
「……私たち、やっと素直になれたね」  
「ああ」  
「ねぇ大輔」  
「ん?」  
「好き……キスして」  
 のぞみのあごに手を添えて少し上向けると、そのまま唇を重ねる。  
 
「幸せ……」  
 唇が離れると、うっとりした声音でのぞみが言った。  
「のぞみ、遅くなっちゃったけど帰らなくて大丈夫か?」  
 ふと気付き、尋ねる。  
「え? あっ! 大変!」  
 時計を見たのぞみはあわてて服を身に着けはじめた。  
 俺も服を着ていく。  
「ばたばたしちゃってごめんね。明日また学校でね!」  
 身繕いを終えたのぞみはそう言うと、自分の家へ帰っていった。  
 
 のぞみが帰ったあとも俺は今しがたの行為の余韻に浸っていた。  
 俺に処女を捧げるため苦痛に耐えたのぞみ。何度も俺の名を呼んでしがみついたのぞみ。  
 一糸まとわぬ姿を見せてくれたのぞみ。俺の勃起に指を回し感嘆の声を上げたのぞみ。  
 はにかんだ笑顔で俺を受け入れるために足を開いたのぞみ。のぞみの喘ぎ声。甘い吐息。  
 そしてのぞみへの愛と思いの丈をこめた白濁をしぶかせたフィニッシュ……。  
 
 ティッシュを染めた処女の証。拭っただけの陰茎からのぞみの匂いが立ちのぼる気がする。  
 肉茎に力がみなぎり始める。のぞみの膣で果ててからまだそれほど時間は経っていなかった。  
(のぞみ……)  
 完全に勃起する。  
 あまりにも鮮烈な体験だったため、思い出すだけで興奮が限界近くまであおられる。  
 
(ダメだ……抜かないと収まらない……)  
 オナニーしようとズボンを下ろした。そこに  
コンコン  
 ドアがノックされる。  
「お兄ちゃん、入っていい?」  
 みさきだ。  
 急いで剛直をしまいこむ。  
 
「いいぞ」  
 みさきは入ってくるなり、大げさにため息をついた。そして  
「あのさぁ、少しは気を遣ってくれないかなぁ、隣りに年頃の女性がいるんだけど」  
 と恐ろしいことを言う。  
 
「な、何のことだ?」  
 動揺が声に出る。  
「とぼけなくてもいいわよ。のぞみお姉ちゃんとエッチしたんでしょ?」  
「な、な、なにを言うんだお前は!」  
 声が裏返る。  
「あれだけ大きな声出してれば聞こえないほうがおかしいわよ」  
「!」  
「ちゃんと避妊したみたいだからいいけど、もし子供できたらお兄ちゃん責任取れるの?」  
 いつになく厳しいツッコミをしてくるみさき。  
 しかしそんなところまで聞こえていたのか?  
 
「まさかのぞみお姉ちゃんにかぎってこんなお兄ちゃんをねぇ……」  
 そう言ってジト目で俺を見る。  
「とにかく! のぞみお姉ちゃん泣かしたら、私が承知し・な・い・わ・よ!」  
 みさきは真剣な表情でそう告げると、自分の部屋に戻って行った。  
 
 のぞみとみさき。最も手ごわい二人に俺は一生頭が上がらないんだろうなぁ……。  
 一人になった俺はそんなことを考えていた。  
 
 
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル