「ぷは…どう?きもちいい?」
根元をつまんで口からペニスを引き出し、君子は聞く。
「ああ、すげえいい…」
「うれしい…」
幸せそうに頬を染めて微笑む君子は、
可愛らしい手で唾液に濡れそぼった俺のペニスを優しくしごき、
淫嚢に舌を這わせ、両の睾丸を口に含み、舌で転がすように愛撫する。
あまりの快感に目の前が暗くなる。うなじのあたりが引きつる。
俺は左手を後ろに付き、右手で君子の綺麗な髪を撫でる。
君子は、再びペニスを口に含んだ。
こうして風呂上りに処理してもらうようになって1週間が経つ。
君子の初潮以来、習慣になっていた風呂上りの自慰。
毎日、洗濯籠から拝借した君子のパンティを嗅ぎながらそれをしていた。
横になり、顔全体にパンティを擦りつけるようにしながらペニスをしごく。
目を硬く閉じて君子の細い四肢と甘く薫る秘所を夢想する。
俺はうめく。
「君子…!」
「おにいちゃん」
目を閉じたまま、俺は硬直した。背中を冷たい何かが走る。
小さい頃、留守番をしていて何か大きなヘマをやらかした時の感じだ。
俺は、少し目を開いた…。
君子は、ベッドに横になった俺の目の前に、ぺたんと座っていた。
君子は泣くでもなく、怒るでもなく、じっと俺を見つめていた。
我に返った俺が慌てて身を起こす、と同時に、君子は俺のペニスに手を添えた。
「君子…?」
「知ってたもん…いつもドアに耳あてて、聞いてた。
すっごくうれしい…。だから、手伝わせて…?」
どうしたらいいか分からなくなった俺は顔を伏せて黙った。
間違いなく耳まで真っ赤になっていただろう。
「こう?」
君子は左手で、俺の、屹立したままのペニスをしごき始めた。
俺は横になった体勢なので、親指側から入って小指側に抜ける形になった。
初めて自分以外に、それも以前から想っていた妹にしてもらう手淫は気持ちよかった。
快感に体を震わせ、しらずしらずシーツを握っていた俺の右手に、
君子はそっと空いていた右手を添えてくれた。
切羽詰っていた俺はそれを思い切り握り返した。変な形に歪む君子の手が見えるようだった。
痛かっただろうに、君子はなにも言わず、淡々と俺のペニスをしごき続けた。
「うっ…!」
堪らず、俺は射精した。
射精の瞬間、腰を引いてしまったせいでペニスは君子の手から外れ、
勢いよく飛んだいつもより多めの精液は、君子の顔と髪に、少し床にも、降りかかった。
少しの沈黙があった。
「またね」
と、相変わらず顔をふせたまま肩で息をする俺に君子は言って、小走りに部屋を出ていった。
あれから今日までの6日間、俺は君子に俺の知りうる舌技、口淫術の全てを教えた。
そのたびに君子は真剣に聞き、熱心に練習し、見事に実践してみせた。
手では強くしごきすぎないこと、歯を立てないことから始まり、
唾を十分に溜めてから咥えること、唇はカリ裏にひっかけるようにすること、
舌先で尿道口を回すようにえぐること、ペニスを横に倒して根元を甘噛みすること、
肛門も指と舌で愛撫すること、へそも意外な弱点であること…。
「うっ…!」
回想は途切れ、俺は限界を迎えようとしていた。
手の中の睾丸の蠢きと、口の中でペニスが硬さを増し、ほんの少し大きくなるのを感じた君子は、
3日前に俺が教えたとおり、亀頭を喉でくわえ込み、強く吸い込んだ。
ベッドに腰掛けている俺は、声無き叫びを上げると同時にびくんと前かがみになり、
両手で君子の頭を鷲掴みにして思い切り抑えつけた。
俺のペニスは、君子の食道の中で、ありったけの、やや黄ばんだ濃厚な精液を、
例えるなら、そう、散水機のジェットモードよろしく、
その、真紅に腫れ上がった亀頭の尿道口から勢いよく、かつ力強く噴き出した。
君子は頭を抑えつけられたまま、俺の固い陰毛に鼻をうずめてそれに耐えている。
いや、耐えているのかは分からない。俺からは見えない君子の表情は至福のそれであるかもしれない。
精通した時のような、長く、激しく、そして恐怖にも似た凄まじい快感を伴なう射精は終わりを告げた。
君子は、おとといまでのようにむせることもなく、最後まで舌全体で裏筋を優しく愛撫し、射精の律動をうながしてくれた。
俺は、しばし放心しつつ余韻を味わい、体を起こして両の手を後ろに付き、天井を見上げてなおも荒れる息を整えた。
それが口から抜いてよい合図であると、きのう教えた。
君子は、尿道に残った精液を搾り出すためにと、これも俺が5日前に教えたとおり、
抜くときは根元をつまみ、舌先で裏筋の根元を強く押さえ、そのまま引き出し、唇を締め、最後まで吸いつづけ、
ちゅぽんと音を立ててペニスを口から引き抜いた。
いくらか硬さを失って、てろんと左に首をかしげる俺のペニスを虚ろな目で眺めながら、
俺のせいで髪がくしゃくしゃになってしまった君子は喉を動かしている。
食道に残った俺の精液を反芻して口に戻し、味わおうとしているのだろう。
これは、俺の教えたことではない。
君子は目を閉じて、俺の脚の間で、可愛い顎をゆっくりと動かしている。
「…うまいか?」
乾いた声で尋ねる俺に、君子は満面の笑顔で、淀みなく答えた。
「おいしいよ」
俺は初めて君子とキスをした。
猫背になって、両手で君子の頭を持ち上げるようにして。
君子が驚いた目をして、涙ぐんで、目を閉じて、その涙が長い睫毛を濡らして落ちていくのを見届けてから、俺も目を閉じた。
鼻息がかかるのも構わずに、俺は君子の口の中を荒々しく、まんべんなく舐めまわした。しょっぱい味がした。
おずおずと、俺の舌に、君子は舌を絡めてきた。俺はそれに応えた。君子の舌は柔らかかった。君子の味がした。
目を閉じたまま、互いの舌を、絡め、甘く噛み、先を吸った。くしゃくしゃの髪を手で梳いた。薄い肩をにぎりしめて引き寄せた。
鯖折りをするようにして、手の平で背中を愛撫した。指をかみあわせて強く手を握りあった。
俺の頬が濡れた。君子は涙を流しつづけているらしい。時折しゃくりあげる。
キスを終えると、君子は手で顔を隠してそそくさと立ち上がり、部屋を出ていった。
昨日までは俺に感想を聞いたり、新しい舌技を教えてくれとせがんでいたのに。
ふと、涙の意味はまさか、と、考え込んで、不安に駆られて青ざめる俺に、君子がドアの向こうからくぐもった声をかけた。
「またね」