「お兄ちゃん…ちょっとまぶしいよ」  
「そうか」  
 雅人はうなずいたが、目を細めている君子の事をそれ以上何もせずにじっと見つめていた。  
 隙間、と言うよりはもう少し大きめに開けられたカーテン。そこから朝の光が、カーテンが開けられているのと正確に同じ幅だけを持って差し込んできている。その角張った領域に立ちこめた微細な埃が節度を持った輝きを示していた。  
 そして光に照らされた君子の髪は、より鮮明な形で輝きを放っている。  
「お兄ちゃん、カーテン閉めて」  
「いや…」  
 寝起きの子供っぽい君子の表情に、小市民的な幻想風景がよく合っていた。  
「まぶしいよ…」  
 そう言う君子を、雅人は言葉ではなくパジャマの裾をめくり上げる事で制止する。ふわりとした感触のお腹を何度か撫でてから、雅人はさらにパジャマをめくり上げ、ホワイトのブラジャーに包まれた胸のところまで外に出させる。  
しゅるん…  
 雅人はブラジャーを上にずらして、君子の乳房を視界の中に入れた。  
ふにゅ…ふにゅ  
 君子が目を細めたままに見つめる中、雅人は軽い手つきで君子の乳房を揉み上げる。弾力のある膨らみが少し変形しては元の形に戻り、雅人の手の中で滑らかに震えた。  
「…ん」  
 雅人が胸の先端に口づけると、君子が鼻にかかった息を漏らす。  
ちゅる…ちゅっ…ちゅっ  
 桜色に染まり始めた先端だけを雅人は舌で丁寧に味わった。朝という空間からしても、雅人の舐めている部分の直接的意義からしても、それはミルクの匂いに象徴されるものだ。  
 母性的で柔らかな甘い芳香を雅人は存分に味わい、君子の胸の先を唾液ですっかりべとべとにしてしまう。  
 
「お兄ちゃん、時間…」  
「ああ」  
 ベッドの脇の目覚まし時計を見ながら、君子が言うと雅人も時計の示す時間に気づいたようだ。  
 君子のパジャマのズボンをさっと脱がしてしまう。そしてブラジャーとそろいのショーツの上から、三本の指で4回だけ膨らんだ部分をタッチする。  
するっ。  
「どこまで…なの…?」  
 雅人がショーツを脱がすと、君子が頬を赤くしながら問うた。  
「最後まで」  
「大丈夫かな」  
「シャワー浴びてる時間くらいあるだろ」  
「二人なんだから、二倍時間がかかるんだよ」  
「俺はいいって」  
「だめだよ…」  
 光に差されたままの目が、雅人を諭すように見つめる。  
「わかったよ…早くするから大丈夫だ」  
「うん」  
 雅人は綺麗に整った淡いヘアの中に指を侵入させ、秘裂を左右に広げた。そこに、胸への口づけで濡れたままの唇を押しつける。  
「んぅっ…」  
 君子が、わずかに腰を浮かした。雅人は舌を使って全体を刺激してから、ぴちっとした肉の結び目を乳頭と同じようなタッチでくすぐる。  
ぴちゅ…  
「…こういう時、君子だと便利だよな」  
「お兄ちゃんが舐めるからだよ…」  
 たちどころに透明な液体を含み始めた膣孔を雅人がつつくと、君子はかくんと腰を落としながらつぶやいた。  
 雅人はずるっ、と自分のパジャマとトランクスを下ろす。生理的反応と君子のかもし出す魅力的な匂いが、すっかり雅人のペニスを高ぶらせていた。  
 
 がし、と君子の体を押さえつけるようにのしかかり、君子の腰を再び自分の腕で持ち上げてペニスを押しつける。シーツの上を君子の体が滑って、朝陽の光から君子が抜け出してしまった。  
「ふぅっ…」  
 ぱち、ぱちと君子が何度か目をしばたたかせる。  
じゅぷん。  
 急に君子の体温を強く感じながら、雅人はペニスを奥深くまで挿入した。  
「…あぁっ」  
 吐息のような声と共に、君子が雅人のペニスを締め付ける。また君子の体温が強くなる。  
 ミルクの香りはいつの間にか変化を起こして、純粋に興奮を誘うエロティックな香りになってきていた。それが結合部分からも零れだしている君子の体液に象徴されているのは間違いない。  
じゅぷ、じゅぷ…  
「う…ああ…お兄ちゃん…」  
 それから、こういう君子の声。締め付け。水っぽい挿入の音。あちこちを好き勝手に向いている、起きたてのままの君子の髪の毛。そういうものだ。それが、仕組まれていたかのように体液の甘酸っぱい香りと絶妙にミックスされる。  
じゅぷっ…ぐちゅぐちゅ。  
 それが君子なのだから、当然と言えば当然だ。  
「あっ…ああっ…あっあっ」  
 雅人が強めに腰を打ち付け、膣壁の下腹部に近い方をこすると君子が快感を訴えて声を高くした。さっき中身を半分のぞかせておいた陰核への刺激も加わっている。  
 君子は次第次第に雅人のモノを締め付ける力を強くして、腰も高く浮かせ始めた。さらに、雅人の抽送に合わせてぐっぐっと腰をグラインドさせ始める。  
じゅちゅ、じゅちゅ。  
 絶頂は近い。そう確信した雅人は、さらに強く君子の中を突いた。比例して、雅人自身の快感も高まってくる。  
 
「はぁ…お兄ちゃあんっ…もう…私」  
「俺もだ…君子」  
 睡眠の直後のペニスは、パッケージから出したばかりのボールペンのように素直だった。雅人のペニスを、極めてシンプルに心地よい脈動が走り抜けていく。  
じゅくっ…  
びゅっ、びゅっ…びゅるっ。  
「あ…」  
 直前で引き抜かれたペニスから、熱い精液が飛んで半裸の君子に降りかかっていった。最初の一撃は君子の顔の真ん中まで飛んで、紅色に染まった頬を伝っていく。  
 ひゅくひゅく、と全身にかすかな痙攣を見せながら、君子はそれを甘んじて受け止めていた。  
「はぁっ…学校…はぁっ…行く…はぁ…前なのに…」  
 隠し事をしているような小さな声で、君子は困った顔を見せる。  
「洗濯してシャワー浴びるんだからいいだろ。お前さっさと入ってこいよ」  
「うん…」  
 君子は体についた精液を拭き取ろうともせずにベッドの上に立ち上がった。そして、危なっかしい足取りで床に下りる。  
「バカ、ティッシュで拭いてけよ…」  
「あ…うっ、うんっ」  
ぽたっ。  
「あ…」  
「バカ…拭いておくから、さっさと体だけ拭いておけよ」  
「ご、ごめんね、今日帰ってきたら掃除するから」  
「あー。時間ないって言ったのはお前だろ。早くしろ」  
 雅人は君子に向かって乱暴にティッシュの箱を投げた。  
ぽたっ。  
 それを受け止めようとして、君子はまた顔についた精液を床に垂らした。  
 
おしまい  
 

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