その夜、アルバイトから帰った大輔は、バイト先でもらってきたケーキを持ってみさきの部屋に向かった。
明日が休みなので、みさきはまだ起きていると思ってドアを開けたが、みさきの姿は見当たらない。外出した形跡はないし、午後11時近いので、みさきの性格からして外出は考えられない。
心配しつつ自分の部屋に入ってみて驚いた。ベッドで寝入っているのはみさきだった。
しかも、サイドテーブルの上には、大輔が隠してあったワインの小瓶とワイングラスが置いてある。みさきが飲んだと思われる。
まだ子供のくせに……と思ったが、みさきの可愛い寝顔を見ると怒る気にもなれない。その可愛い顔を覗きこむと、顔のあたりがほんのり赤く染まっている。
起こすのが可哀相になり、このまま寝かせておいて、大輔は妹の部屋で眠ることにした。
シャワーを浴びてからみさきの部屋に入った。今まで何度も入ったことはあるものの、いつもは必ずみさきがいる。他に誰もいないので、いつもと違う印象を受けた。いかにも女の部屋といった感じがして、いささか神秘的でさえある。
大輔はすぐにはベッドに入らず、まず机の上を眺めた。どこが変わっているというわけでもない。ごく普通の女の子の机である。
引き出しを開けた。そこに興味を惹くものがあった。何枚かの少年たちの写真が散らばっていた。
裏を見ると、写っている当人と思われる字で、簡単なコメントが記されている。『きみは美しい』とか『真心をこめて』とか、とても気障なものが多い。なかにはハートに矢が突き刺さっているものもある。
写真の他に、少年たちから送られたらしい手紙も何通かあった。悪いとは思ったが、大輔は文面を読まずにいられなかった。
明らかに愛の告白と思われるものもある。子供だ子供だとばかり思っていた妹が、思いのほか大人の世界に近いところにいることを知って、大輔はいささか動揺した。
一番最後に読んだ分厚い手紙の送り主の名は、『T・O』とイニシャルだけが書かれてあった。長い手紙なのでもっとも興味があり、最後に残したのである。
読んでみると案の定、完全な愛の告白であった。しかも驚いたことにそのT・Oなる人物は、夜ごとみさきをオナペットに励んでいると、堂々と書いていた。
これを読んだみさきは、どんな気持ちになったんだろう……。
大輔はまだ会ったこともないT・Oに激しい憎しみを感じた。
手紙はさらにつづいていた。
『きみがバージンであることを信じる。そしてそのバージンが、やがておれによって散らされることを祈る』
なんて奴だ!……
憎悪と嫌悪感と嘔吐感が、同時に大輔を襲った。いつか出会うことがあったなら、叩きのめしてやろうと思った。そしてにわかに、みさきはまだ処女だろうかという疑問が湧いた。
あまり身近にいるだけに、妹を、一度だってそういう目で見たことはない。
自分のまわりにいる女の子たちには、みさきと同じ年に処女と決別した者だっているだろう。
ふと、D組の天野みどりのことを思った。天野は普段の会話から察するに、とても処女だとは思えない。平然とボーイフレンドを取っかえ引っかえしている感じである。
大輔は、自分がみさきに関してあまりにも無関心であることを思い知らされた。と同時に、妹が自分の知らない世界に勝手に羽ばたいていることを知って愕然とした。
穢らわしい手紙など捨ててしまえばよさそうなものなのに、それらを捨てきれずにいるのは、みさきだって関心があるからだろう。そう思うと、ちょっぴりみさきに対して腹も立った。
この分だと、もっと秘密があるかもしれないな……。
そう思いつつ、大輔は部屋のなかをひと通り見まわした。
壁面にかけられたポスターや素人っぽい絵画など、いかにも高校生らしい。だが、そういうものは表面だけだという気がした。
クロゼットを開くと、白い西洋箪笥がある。いつも目にしているものだが、なかを見たことはない。さすがに気がひけたが、思いきって引き出しを開けた。
一番上にはハンカチやタオル類が整然と重なっている。二番目にはブラジャーとパンティがつまっていた。まだ高校生だというのに、かなりの数である。
三番目の引き出しもブラジャーとパンティが入っていたが、こちらはすべてペアで、白やピンクやブルーなど、一対ずつきれいに分けられていた。
一番下には、パジャマが入っていた。何気なく引き出しの奥に手を突っこんでみると、缶詰めが出てきた。細かい字を読んでみると、鮭の缶詰めのように見えるが、中身はパンティのようで、しかもそれらはどれも凝った形をしているらしい。
しかも缶詰めは三個もあった。きっと誰かがプレゼントしたものであろう。どの缶詰めも封を切られた形跡はない。捨てるに捨てられず、仕方なくしまっておいたのだろう。
大輔はひどく疲れを感じた。ベッドに潜りこもうとして、掛布団をまくりあげた。
!?…………
そこに黒いブラジャーとパンティが、シーツの白さと対照的に投げだされてあった。
思わず手に取り、じっと見入ってしまった。
こんな大人っぽいものを妹が着けているのかと、内心ではびっくりした。
鼻に近づけると、酸味の強い匂いがした。
大輔はそのままベッドに引っくりかえった。
短い間にみさきの思いがけない面を知ったことで、少なからず動揺した。平静でいられなかった。
一人で兄のベッドに潜り込んだりする妹の心境をはかり知ることができない。面白くてやったとは思えない。なにか悩みをかかえている気がした。年齢から考えて、それは性的な悩みではないかと推測した。
枕の横には黒いブラジャーとパンティがあったが、その色が、まだ子供だとばかり思っていたみさきの心情を象徴している気がした。
このまま部屋へ戻って、素知らぬ顔でみさきの横に寝たら、あいつ、どんな顔をするだろう……。
ふっとその気になりかけ、あわてて気持ちを封印した。しかし、いったん起こった気持ちは、若いだけに容易に引っこまない。
なんだよ、おれって奴は……。
すでに体の一部が敏感に反応して、形を変えはじめていた。
パジャマズボンを膝までおろすと、分身の膨張は一気に加速した。
大輔はいつになく淫らな気分だった。手が自然と黒いみさきのパンティに伸びていた。
それを分身に巻きつけると、自分がみさきに対してひどくいやらしい気持ちを抱いているような気がした。
目を閉じて、ゆっくりとペニスを摩擦した。パンティの布地の感触が、女性器であるように想定すればするほど、淫蕩な気持ちがぐんぐんとひろがっていく。
射出の予感があったが、我慢した。そんななか、みさきの面影が交錯した。
「ああ……」
深い吐息をついた直後、かすかな物音がした。
目を開けた大輔は、ギョッとなった。いつの間にかドアが開いていて、そこにパジャマ姿のみさきが立っていた。
大輔はあわてて掛布団を引き寄せた。死ぬほどの恥ずかしさで、口もきけなかった。唇を噛みしめたまま天井を睨んだ。
あさましい姿を、妹はなんと思うか。大輔は錯乱の一歩手前にいた。
目を閉じた。沈黙がつづいた。
耐えきれなくなって、「あっちへ行けよ」と唸るような声を出した。
少し間を置いてドアの閉まる音がしたので、目を開けた。
またもびっくりした。目の前にみさきが立っているではないか。
「可哀相なお兄ちゃん」
少し眠たそうな声のみさきは、どういうつもりなのか大輔のすぐ横に腰かけた。
大輔はなにかを言いだせる立場になかった。いってみれば、手枷足枷をはめられた囚人と同じだった。恐ろしい判決を待つ身と一緒だった。
転校が決まって以来の、固かった結束の兄妹に、大きなヒビ割れが生じたのだ。それを作りだしてしまった罪深き男が自分だと、大輔は思った。弁解の余地はない。まともに顔を合わせられない。観念した。
ところが、思いがけないことが起こった。脇に腰かけていたみさきが、そっと身を伏せるようにして顔を近づけると、頬をすり寄せたのだ。
「可哀相なお兄ちゃん……」
みさきは再び同じことを呟くと、掛布団をめくった。
黒いパンティを巻きつけたまま、分身は小さく縮んでいた。
大輔は不思議な気分に浸っていた。本来ならみさきの不可解な行為を強い態度で拒否すべきはずなのに、それができなかった。
「ごめんね。私がいけなかったの」
間のびした声は、眠たそうであり、酔っているようでもあった。
「私がお兄ちゃんを刺激してしまったのね」
大輔は、妹のいじらしさに感動した。なにもかも責任は自分にあるという態度をとるみさき。しかし、いったいなにをするというのだろうか。
みさきの手が、まとわりついていたパンティを取り払った。そのまま掛布団がかけられると思ったが、そうではなかった。萎えたままの陰茎を、みさきの指先がつまんだのだ。
大輔は妹の顔を見た。
眠そうにしていたみさきの顔が、初めて笑った。可愛らしい笑顔だった。
「よくわかんない……」
舌足らずの声を出しながら、指先が陰茎を前後に揺さぶった。
心地よさに大輔は力んだ。
「あっ……」
みさきの驚きの声は、陰茎の変化によるものだった。
変化は一気に加速した。
みさきの指の動きがとまり、息を呑む気配がした。
大輔は恥ずべき自分の立場を忘れた。窒息しそうな興奮が全身を包みこむと、分身は極限にまで膨張した。
「よくわかんない……」
困惑と甘えのまじったみさきの声を聞くと、大輔は初めて兄らしい声を出した。
「そのまま握ってくれ。握ったら擦るんだ」
みさきは忠実だった。
大輔は恥ずべき姿を可愛い妹にさらしていることに興奮した。
「これでいいの?」
くぐもったみさきの声は、彼女も興奮していることの表われだった。
急速に射出する予感があった。だが大輔は耐えた。耐えることも大きな快感だった。
みさきを見た。こわばりを凝視して、馴れない手つきで懸命に擦っている。紅潮した顔に時折り妖しい影が走る。
押し倒してしまいたい衝動が大輔を襲った。今ならば、みさきが受け入れてくれそうな気がした。幼い時から大輔に逆らったことのない妹である。現実に、今やっていることだってそうではないか。拒否して当然のことを受け入れている。
「お兄ちゃん……」
「?…………」
「なんだか怖いみたい」
「男は……みんなこうなる」
「びっくりした……ほんとにびっくりした」
「ごめんよ」
「ううん、平気……ね、気持ちいいの?」
興味津々といった顔で問われると、大輔の内部に、不意に露悪的なことを言いたい欲求が湧いた。そして話をしていれば、少しでも射出の時間を遅らせることができるようにも思った。
「そりゃそうさ。自分でするより、ずっといい。お前だって、オナニーしたこと、あるだろう?」
みさきは膨れあがった亀頭を見つめているだけだ。
「どうなんだ、みさき? お前、もう16なんだぞ」
「いやーン、変なこと聞かないで」
「じゃ、したことあるんだな」
「知らない。もうやってあげないからね」
本気とは思えなかったが、みさきの手の動きがとまると大輔はあわてた。快感の中断が切なかった。
「ごめん……もう聞かないからやってくれ」
「本当ね」
「本当だ」
「じゃあ、してあげる」」
再び肉棒が、ぎごちないが優しく擦られると、大輔は少し大袈裟に唸りながら、妹の顔を盗み見た。大きな特徴のある瞳が、いつしか濡れたように光り、耳たぶの後ろまでが朱色に染まっていた。
射出感が迫った。
「お兄ちゃん、はちきれそう……手のなかで、大きくなってく……」
途切れとぎれにかすれた声を出しながら、みさきは落ち着きなく腰をもじもじさせ、両脚を組み直した。
一瞬、妹も濡れているのかもしれないと想像した。そして、それはほとんど確実だと思った。
あーっ、触ってみたい……。
勃然と湧いた邪悪な欲求に、大輔は打ち克つことができなかった。急激に上昇した快感が、彼を男にした。
「あああっ……」
のけ反りながら、パジャマの上着の裾に手を差し入れた。
ひどく熱いお腹に触れるや、みさきはビクッとしてパジャマの上から奥へ侵入しかかった兄の手を押さえた。
「ああ、みさき……みさき!」
大袈裟な演技に酔うと、なおさら大胆になれた。
「出そうだ。出ちゃうよ」
「どうするの? どうすればいい?」
「あああ!」
胸の近くまで指先が進んだ時、やはり興奮したみさきが強い力で肉棒の表皮を押しさげたので、極限にまで膨らみきった肉棒は堪える力を失い、一気に爆発してしまった。
みさきの目の前で白いものが宙に舞い、みさきの胸もとにもぶち当たった。
みさきの呆然とする姿を、大輔は力強い射出をつづけながら凝視した。
不思議な気分だった。快感だけではなく、清純な妹を穢したという非人間的な喜びがともなっていた。矛盾しているが、それが実感であり、現実だった。
いつもとは違う状況下にあったためか、普段なら急速に萎えるはずの分身が、まだ未練たっぷりの風情で、半勃起状態のままひくついていた。
それをみさきが霞んだ目で見つめつづけていた。その光景そのものが、大輔にとっては大いなる喜びであり、快感だった。
「すごくよかったよ、みさき」
大輔はゆっくり起きあがり、わざと分身を揺らしたまま、ティッシュで飛び散った粘液を拭き取っていった。
あまりのショックのためか、みさきは彫像のように身動きひとつせず、座りつづけている。
大輔は、パジャマの胸もとに付着した汚れを拭いた。ほんの一瞬、ブラジャーをしていないバストの感触が指先に伝わったが、それでもみさきはぼんやりしたままだ。
手のひらも白濁した液体で汚れていた。その手を取って指の間まで丁寧に拭いてやると、まるで気を失ったように、みさきの上体が大輔の胸に倒れこんだ。大輔はパジャマに包まれただけの妹の体を優しく抱いて、背中を撫でさすった。
「ごめんよ、変なことをさせちゃって」
みさきは小さく頭を横に振っただけだった。
大輔はみさきを横たえた。顔を覗きこむと、まるで魂を抜かれたような表情だ。
「ごめん」
耳もとに唇を触れるようにして囁くと、どういうつもりかみさきの手が大輔の顔を撫で、やがて首の後ろにまわった。意志でそうやっているのではなく、無意識のうちにやっているようだ。
大きなショックを与えたに違いないのに、大輔には後悔はなかった。
おれは悪い兄貴だ……。
その気持ちが追い打ちをかけるように、大輔をもうひとつの行動に走らせた。
目は見開いているものの、半ば気を失っているも同然のみさきの唇に、唇を押しつけただけでなく、舌まで挿しこんだのだ。
すぐにやめるつもりだった。ほんの一瞬の迷いがこうさせたのだと、大輔自身も思っていた。
だが、みさきの反応は意外なものだった。首の後ろにまわした手に力が加わり、より強く大輔の顔を引きつけたのだ。
二人の唇がピタリと密着した。
大輔は唇を貪り吸いながら、サクランボのような味だと思った。
みさきの反応はそこまでだった。まるで夢のなかで浮遊しているようなやり方に、今度は大輔のほうが戸惑い気味だった。
「みさき……」
唇を離し、呼びかけると、うなずくのだから、我れを忘れてしまったというわけでもないらしい。
「みさき……」
もう一度呼ぶと、またうなずく。
みさきは自分を見失ってはいない……。
それがはっきりすると、大輔は今までにない大胆な行動に出た。パジャマの胸もとから手を入れて、小ぶりだが形よく盛りあがっている乳房を、きっちり自分の手のひらにおさめたのである。
みさきがなにも気づかないような状態だったなら、やらなかっただろう。兄として、それだけの配慮はあった。
反応を見た。みさきがいやがる素振りを少しでも見せたならば、すぐに中止する心構えはできていた。
みさきが細い顎を上に向けた。伸びきった細い喉が痛々しくひきつった。しかし眉根に寄せた皺と薄く見開いた目からは、嫌悪や憎悪を表わすものは見当たらなかった。
大輔は手のひらでやわやわと揉んだ。
「あ、ああーン……」
消え入りそうな甘い声に、大輔は兄としてでなく、男としての喜びを感じた。
少しもいやがる素振りを見せないばかりか、胸を押しあげるような仕草を見せる妹。
中指と人差し指の間に乳首を挟んだ。ちょっぴり頭をもたげかけている乳首は、二本の指が微妙に動きだすと、明らかに硬さを増して、わずかずつ体積を増してきた。
大輔は聞きたいことを我慢した。せっかくスムーズにいっている関係を、よけいな言葉を吐くことで中断したくない。その質問がみさきを困らせるものであればなおさらである。
みさきはもはや少女ではないという認識を新たにした。乳房への愛撫を甘受している、この愛らしさ、いじらしさ。快感のなかに身を委ねているのは、もはや疑いの余地がない。
気持ちよくなっている……。
大輔は確信した。
とうとう乳首は硬いしこりとなり、その存在をはっきりと誇示した。
今の今まで、子供だと思っていたことを反省した。小さい頃からのぞみにリードされてきただけに、年下のみさきに関しては、守ってやるという意識だけが強かった。しかし、その認識の浅さを今になって思い知らされた。
二人の間にひと言の会話もなかった。接触している手と乳房だけが、二人の気持ちを代弁していた。言葉はいらなかった。
みさきの息があがってくるに従い、大輔は男としての自信を持った。
女対男。そこには兄妹ではなく、性に対する好奇心旺盛な二人の男女がいた。
大輔はさらに冒険を試みた。思いきってパジャマのズボンを一息にずり下げた。
そこには、みずみずしい16歳の、子供と大人が同居している下半身があった。ぴっちり張りつめた小さな白い布地に包まれた腰は、スリムな体に不似合いなほど発達していたし、とりわけ女の中心である陰部の盛りあがりは見事だった。
みさきは目を閉じたままだった。
大輔は激しい性的な欲求を感じた。たった今しがた、当のみさきの手によって著しく吐射した直後だというのに、欲望は強烈に彼を押しあげた。
だが、自分は男だと自負する前に、兄であらねばならなかった。なんでも言うことを聞くからといって、みさきにそこまで強権を使うわけにはいかなかった。
みさきが拒むことを願った。少しでもそういう態度を示したなら、すぐにいつもの自分に戻るつもりだった。
にもかかわらず、みさきは黙したまま、じっとしていた。その姿は、あたかも大輔の次なる行為を待っているかのようだった。
いや、そうなんだ!……
大輔の心のなかで、別の大輔が力強く、そして自信ありげに言い放った。
薄い布地の上から女らしいふくらみを撫でまわした。身じろぎひとつしないみさきを、この時ほど愛おしく思ったことはない。
耐え忍んでいるというのではない。むしろ自分も初めてであろうと思われる新しい冒険に、すすんで身を挺しているといった風情である。
兄のために犠牲になっているのではない確信が、大輔にはあった。だからなおさら可愛かった。
このまま突き進んだとしても、すべてを受け入れるのでは……。
大輔は、自分の膨れあがった欲望を、もはやコントロールできなくなっていた。なにかに衝き動かされたように、パンティの縁に指をかけ、一気に引きおろした。
ヒップの丸みに引っかかった後ろの部分が、まるでゴムのように伸びた。そしてすぐに丸みを越えて小さく縮むと、足首からいとも簡単に引き抜かれてしまった。
湿った匂いが17歳の若者の鼻腔に入りこんだ。
みさきになんの変化も起きなかった。観念してるとか、覚悟を決めているとかいった感じではなく、そうなることを当然のように受けとめているふうに見えた。二人の視線が合った時も、みさきの目は自然に語りかけているかのようだった。
ふくらみの上に小さくまとまった恥毛は、いかにも思春期にさしかかった少女を思わせるほど、つつましやかだった。
大輔は優しくキスをした。そうせずにはいられなかった。
みさきは目を閉じた。子供が大人にすべてを委ねて安心しているような雰囲気に、大輔はたじろいだ。
やはりどこかで自制しなければならない。そのことに気がついた。みさきを見る限り、おそらく、されるがままになるだろう。
表面だけのキスに終わらせるつもりだったのに、みさきの両脚がゆっくりと開いていく。再び混乱が大輔の気持ちを撹拌した。
しかし、よくよく見れば、両脚は決してみさきの意志で開いたわけではなかった。緊張感が解けて、全身から力が抜けたお蔭で両脚が弛緩し、その結果として間隔が少しだけ開いたのだった。
わずかに亀裂の一部が見える。暗い谷間の奥に、鮮やかなサーモンピンク。
大輔は見とれた。ただ見つめていた。
長い時間、そうしていると、みさきの下半身が揺らいだ。切なげにも見えるし、もどかしげにも見える。決していやがっているふうではなかった。
それはおれの思いすごしだ……。
大輔は静かにパジャマのズボンを穿かせてやった。
ふと見ると、それまで目を閉じていたはずのみさきが、大輔を見つめている。
「おれ、どうかしていた……ごめんよ」
みさきは無言だった。恨みがましい表情ではないのが、大輔にとっては救いだった。
「二人だけの秘密……いいね」
「秘密だなんて……私がいけないんだわ」
「どうしてお前が……いけないのはおれだよ」
「私、なんとも思ってない」
「ありがとう」
気障とも思うことなく、みさきの頬にキスすることができた。みさきの微笑みがうれしかった。
「おやすみ」
部屋を出る時、大輔は夢の世界から抜けでる淋しさに包まれていた。
おわり