夕暮れの住宅街、いつもの学校の帰りの道で、  
「今日、勇太の家、寄っていい?」  
何気ない調子で弥子がそう言ったので、勇太もいつもの調子で「ああいいよ」と答えた。  
二人が付き合い始めて約2ヶ月。  
勇太は最近ようやく弥子のことを「恋人」として見れるようになったけれど、でもまだ「幼馴染のやっこ」という気持ちが先にたってしまう。  
時間を合わせて一緒に登校するのも、弥子の部活終わりを待って一緒に帰宅するのも、遊びに行くのも、それ以外の何もかもが幼馴染の「ソレ」の延長のように思えてしまう。  
そして、ふと「恋人としての弥子」という当たり前のことを改めて思い出し、どうしていいか分からなくなるときもあった。  
ともかく、二人は夏休みの間、長い長い時間を一緒に過ごし、お互いの「好き」という気持ちをより確かなものにしていった、はずだった。  
 
「何でわざわざ聞くのさ?」るり姉は部活と予備校で毎日遅いし、父親は仕事でいつもいないことぐらい、弥子も知っているはずだった。  
「そんなの、礼儀以前の問題でしょ。何も言わずにひとの家に上がり込んだらおかしいじゃない」  
「ま、そうだけど」  
「………ほんと、勇太は抜けてるんだから」  
ふ、と息を吐いて弥子があきれたような声で言う。  
「なんだよ。僕の漫画読みふけって、夕食まで食ってくのが、礼儀にかなってんのかよ」  
売り言葉に買い言葉で、思わずそう言い返してしまう勇太だった。  
「…いいじゃない。勇太の家で何したってさ」  
そう言って弥子は不機嫌そうにそっぽを向いた。ならんで歩く勇太から表情はよく分からないが、大体どんな顔しているかは想像がついた。  
痛いところを突かれたときの定番、ふくれっつらだろう。弥子お得意の「自分ルール」が飛び出すのは決まってこういうときだ。  
…まあ、最近は勇太も、そういう弥子をかわいいと思えるようになっていたが。  
 
ふと、勇太の脳裏に閃くものがあった。そこで勇太はわざとそっぽを向いてる弥子の正面に回りこんで、言った。  
「…この前のスマブラ大会のリベンジしたいんだろ?」  
この前(といっても3日ほど前だったが)、珍しく早く帰ったるりと三人でゲーム大会を開き、弥子はこてんぱんに負けたのだった。  
「昔から弥子は負けず嫌いだからなあー」  
弥子の前を歩きながら、わざとからかうようにそう言うと、  
「こ、子供じゃあるまいし、そんなんじゃないわよ!」  
弥子は顔を真っ赤にして叫んだ。  
「………」  
「ん?何か言ったか?」  
前を行く勇太には弥子のつぶやきは聞こえない。  
「なんでもない!」  
勇太の背中にべーっ、と舌を出す。それに気づかず、先を行く勇太。  
弥子はふと寂しそうな顔をして、もう一度さっきつぶやいた言葉を口にする。  
「そんなんじゃ、ないのに」  
 
 
「で?どうする?今からゲームする?」  
家について居間に入るや否や、勇太は弥子に尋ねた。  
ちなみに森崎家には勇太の自室にあるゲーム機しかない。だから居間の大きなテレビで遊ぶにはセッティングが必要だった。  
「だから、ゲームしたいんじゃないって、言ってるでしょ!」  
「はいはい」  
ムキになって勇太に言い返す弥子の言葉を聞き流しながら、勇太は台所に入っていった。  
「じゃあ、僕の部屋で待っててよ。今お茶入れるから」  
「………わかった」  
弥子は居間に投げ出してあった勇太のカバンをひろうと、小走りに二階へと上がっていった。  
 
 
「おまたせ…ありゃ?」  
紅茶のポットとカップ2つを乗せたお盆を持って自分の部屋に入ると、勇太はそんな間抜けな声を出した。  
と、いうのも、いつもなら勇太のベッドに寝転んで漫画を読んでいる弥子が、今日は神妙な様子で部屋の隅に座っていたからだった。  
それもドアのすぐそば、窓から一番遠い位置に、クッションをしいて、膝を抱えるように座っている。  
「なんでそんなとこに座ってんだよ?」  
「なんだっていいじゃない」  
「そんな隅っこじゃ話にくいだろ。こっちにこいよ」  
お盆を自分の机に置きながら、勇太は言った。  
「………やだ。勇太がこっちに来て」  
「はぁ?」  
思いがけない言葉に勇太の口から間抜けな声第二弾が漏れた。  
とりあえずお茶はそのままにして、勇太は弥子の隣にぺたり、とあぐらをかいた。  
「どうしたんだよ。今日は何か変だぞ」  
膝をかかえたまま、身動きしない弥子の様子に、流石に勇太もいつもと違う何かを感じていた。  
「別に、変じゃないよ」  
弥子は膝の間に顔を隠すようにしてそう言った。  
「気分でも悪いのか?それなら薬でも」  
部屋に射し込む夕日のせいでよく分からないが、弥子の顔がやけに火照って見える。勇太は本気で熱があるんじゃないか、と考えていた。  
「………そんなんじゃないって」  
「でも、今日の弥子、本当に変だぞ」  
勇太は腰を浮かすと、弥子の顔を良く見ようと、よつんばいの体勢で近寄った。  
 
こんな弥子は初めてだった。  
小さいころから、とにかく思ったことはすぐに口に出し、即実行するのが弥子の特徴だった。だからこそ、勇太は長年の弥子の内に秘めた自分への思いに気づかなかったのだが。  
「どうしたんだよ。とにかくはっきり言ってくれなきゃ、わかんないよ」  
しかし、弥子はじっと押し黙ったままだ。ふう、と小さくため息をつくと勇太は弥子のすぐ隣に座った。  
1-2分経っただろうか。  
弥子が意を決したように顔を上げると、勇太の方を見た。  
「………あのね。私たちが付き合いだして、もうすぐ2ヶ月よね?」  
突然弥子が口を開いたので、勇太はびっくりして彼女の顔を見つめた。  
「うん。それくらいかな」  
今が9月終わりで夏休み直前に付き合い始めたから、大体そんなもんだろう、と勇太は頭の中で計算した。  
「………本当に?」  
意外な弥子の質問に、今度は勇太が問い返す番だった。  
「『本当に?』って言われても、『本当だよ』としか言えないよ。だって僕が告白して、それで付き合おうって…」  
「私の言ってるのは、そんなことじゃないの!」  
弥子の叩きつけるような口調に、勇太は言葉を失った。  
「………私、ずっと不安なの。勇太が好きなのは『幼馴染のやこ』で今の私じゃないんじゃないかって。だって、二人でいる時、勇太はすぐに『昔の弥子は』『あのときの弥子は』って、昔の話ばっかりするんだもん」  
勇太は自分を見つめる弥子の瞳を覗き込んだ。そこにはうっすらと涙がにじんでいる。  
「もっと今の私を見てよ!もっと私を女の子として扱ってよ!私はいつまでも、引越ししたときの小学生のままじゃないの!」  
そこまで言って、弥子は黙った。しかし、その目はまっすぐに勇太のそれを見ている。その口ぶりの激しさに勇太も言葉を失って、二人はただ見つめあった。  
 
もう弥子の目からははっきりと涙がこぼれている。そして、その頬は夕日の中でもはっきりと分かるほど紅潮していた。  
「だって………」  
つ、と弥子は目をそらすとか細い声で続けた。  
「え?」  
「だって、私勇太にキスもしてもらってない………」  
弥子の言葉に、勇太はとまどった。あの弥子が、あのやんちゃなガキ大将のようだった弥子が、僕にキスをせがんでいる?  
でも、確かに弥子の言うとおりだった。二人の関係は幼馴染のままだった。  
いや、勇太は怖かったのかもしれない。二人が幼馴染ではなく、恋人になったとき、本当にちゃんとした関係を築いていけるのか、を…。  
だから、これまでずっと幼馴染という関係を壊さないように振舞ってきたのかもしれない。  
「ごめんな、弥子」  
勇太の言葉に、弥子は再び顔をあげた。  
「ごめん」  
勇太はもう一度そう言うと、自分の顔を弥子の顔にすっと近づけた。  
お互いの息が感じられるほどの距離で、二人はまた見詰めあった。そして、弥子の顔には、勇太の突然の行動に対する驚きと、とまどいが浮かんでいた。  
「僕が、弥子の気持ちに気づかなかったから。弥子に寂しい思いをさせた。ごめんな」  
そういうと、勇太は唇を、弥子の唇にそっと重ねた。  
 
唇が離れたとき、弥子はまだ何が起こったのか信じられない、という顔で勇太を見詰めていた。  
「こ、これでいいだろ?これからは、もうそんなこと言うなよっ」  
勇太は気恥ずかしさから、弥子の視線から逃れるように顔を背けてしまった。  
すっ、と弥子のスカートがすれる音がして、弥子が立ち上がる気配がした。勇太は弥子を見ることも出来ず、体を強張らせて目をつむって、弥子の次の行動を待った。  
 
自分の顔に熱い吐息がかかるのを感じて、勇太はうっすら目を開けた。  
弥子の顔がすぐ目の前にあった。  
「………今度は、私がしてあげるね」  
弥子はそういうと、目をつむって勇太と二度目のキスをした。  
勇太は、二度目でやっと弥子の唇の感触を感じる気持ちの余裕を持つことが出来た。しっとりと濡れた弥子の唇は、これまで勇太が触れたどんなものより柔らかく、暖かいように思えた。  
勇太が弥子の唇の感触を味わっていると、自分の唇にもう一つ別の柔らかな感触が当たるのを感じた。  
それはまるでドアをノックするように、勇太の唇を突き、こじ開けようとしている。  
勇太は突然のことに一瞬パニックに陥ったが、やがて全てを察し、そのやわらかな感触−弥子の舌−を受け入れた。  
二人のぎこちない「大人のキス」は、それからしばらく続いた。最初はおずおずとだった二人もやがて狂おしくお互いの唇を求め合い、舌を絡めあった。  
勇太は、舌を使って自らの口腔を大胆に刺激する弥子に、彼女のこれまで積み重ねられた自分への思いを感じ、とまどうよりも愛おしいと思った。  
 
長いキスが終わって唇と唇が離れると、二人は放心したようにお互いの顔を見つめあった。  
激しく息をする勇太は、自分の下半身の変化に気づいていた。勇太の「それ」は体を包む脱力感とは正反対に、ズボンの中で熱く、硬く怒張していた。  
「………勇太のエッチ」  
そう言われるまで弥子の視線が、自分の下半身に注がれていることに勇太は気づいていなかった。言われてあわてて勇太はズボンの前を隠したが、もはや言い逃れは出来なかった。  
しかし、弥子の口調には非難の色が伺えなかった。勇太が戸惑っていると、弥子は勇太の隣にもたれかかるように座り、頭を勇太の肩にあずけてきた。  
勇太の鼻を弥子の髪の匂いがくすぐる。  
「………勇太………しても、いいよ」  
やがて、弥子は勇太を上目遣いに見詰めながらささやいた。  
 
「いいの?」  
勇太はおずおずと聞き返す。  
「うん」  
そういうと、弥子は勇太の胸に顔をうずめるようにすがりついた。  
「本当に、いいの?」  
「うん。だって………私もエッチな気分になっちゃったから…」  
消え入りそうな声で、そう告白する弥子の声を聞いて、勇太の最後の精神のタガは弾けとんだ。  
 
「じゃ、じゃあ、とりあえず立とう」  
勇太がそう言って、わたわたと腰を上げると、それにあわせて弥子もゆっくりと立ちあがった。しかし、その体は勇太にしっかりと寄り添ったままだった。  
立ち上がったまま、勇太がどうしていいか分からず凍り付いていると、  
「あ、あのね?い、今から服脱ぐけど、恥ずかしいからこっち見ないでよ?」  
「う、うん」  
「…もし見たら、ぐ、グーで殴るからねっ」  
「み、見ないって…僕も脱ぐから………」  
「じ、じゃあ、終わったら『いいよ』って言うからねっ」  
そういうと、弥子は勇太に背を向けると、制服のチャックにさっと手をかけた。  
あわてて勇太も背を向けると、急いで制定シャツと学生ズボンを脱ぎ、下着がわりのTシャツを脱ぎ捨てた。  
 
………ぱさっ ………ぱさっ  
 
背後から聞こえる、弥子が服を脱ぎ捨てる衣擦れの音が、勇太の興奮をますます掻き立てていった。  
そして、振り向いてその様子の一部始終を見たいという思いが、否応無く高まったが、どうしても振り向く勇気が、そのときの勇太の心からは沸いてこなかった。  
実際はほんの数分だったろうが、弥子が服を脱ぐ間が、勇太には1時間にも感じられた。  
「………いいよ」  
弥子の声に、勇太はおずおずと振り向いた。  
薄いブルーのスポーツブラと、それにあわせたショーツだけを身に着けた弥子が、胸と秘所を手で隠すようにしてそこに立っていた。  
勇太はしばらく、声を失って弥子の姿を見つめ続けた。  
普段と何も変わらない自分の部屋に、愛しい恋人が下着姿で立っている。その非現実的な光景が、勇太の興奮を誘った。  
勇太の視線にさらされることが恥ずかしいのか、弥子の顔は火照ったように赤く染まっている。いや、体全体がまるで熱をもったように桜色に染まっている。それは薄暗い部屋の中でもはっきりと見て取れた。  
「…こっちおいでよ」  
弥子が目を伏せたまま、立ちすくんでいるので、勇太は勇気を振り絞ってそう誘った。弥子は小さくうなづくと、勇太の元にそろそろと歩み寄った。  
 
二人が並んだところで、とりあえずベッドに腰掛けさせようと、勇太は弥子の肩に触れた。  
「ひっ」  
びくっ、と弥子の体が振るえ、勇太の手を拒絶した。弾かれたように勇太の手が離れる。彼女の体が強張っているのが、傍目からも良く分かった。  
「…怖いの?」雄太は恐る恐る聞いてみる。  
「…大丈夫、ちょっとびっくりしただけ」  
「本当?」  
その質問に、弥子は小さくうなづいただけで肯定してみせた。そして、勇太の意を察して、自らベッドの端に腰掛けた。  
勇太もその傍に腰掛けたが、弥子の体に触れることはためらわれた。だがその一方、一刻も早く弥子の体を隅々まで触ってみたいという思いが高まるのを抑えることが出来なかった。  
二人はしばらく視線を合わせないまま黙っていたが、やがて弥子が意を決して言った。  
「…ね、もう一回キスして・・・?」  
その声には、いつもの弥子には決してない、甘えるような響きがあった。勇太はその思いに答えるように、弥子に熱情的なキスを浴びせた。  
お互いの唇を重ねあいながら、勇太は一方の手でそっと弥子の手に触れた。すると、弥子が口づけと同じような激しさで、勇太の指に指を絡めてくる。  
勇太はもう一方の手で弥子の体を引き寄せる。弥子はそれに答えるように自らの体を勇太のそれに預け、自らの腕を勇太の背中に伸ばした。  
「…勇太、大好きだよ。勇太…」  
「弥子、弥子…」  
二人は両腕を互いに絡ませながら長い長いキスを続けた。  
やがて、二人は崩れるようにベッドに横たわった。  
 
勇太が弥子に覆いかぶさるようにしながら、キスは続いた。  
「ン、んン………ふうン…」  
キスの間に、弥子の唇からそんな吐息が漏れ始めた。勇太はキスを弥子の唇から頬、耳たぶ、そして首筋へと浴びせていった。  
「んっ、そんな、変なところ、キ、キスしないで…」  
だが、言葉とはうらはらに、弥子はうっとりとした声をあげ、空いた手で勇太の頭を掻き抱いた。  
勇太はキスと同時に、右手を弥子のブラで覆われた手へと伸ばし、水色の布地の上からそっと触れた。弥子が拒絶しないのを確認すると、雄太は彼女の胸をブラの上からじょじょにもみ始めた。  
 
「ま、待って。激しくすると、ブラ伸びちゃうから………脱ぐから待って…」  
「あ、ご、ごめん」  
勇太が体を少し話すと、弥子は手早くブラのホックを外し、枕元に置いた。  
ブラジャーが外され、その下からふっくらした双丘が姿を現した。それは弥子の小麦色の肌とは対照的に白く、ふっくらと盛り上がり、その頂上には小さく桃色の乳首が、ちょこんと乗っていた。  
勇太ははじめて見る、若々しい乳房に、しばらく毒気を抜かれたように見とれた。  
「…そんなに見たら、恥ずかしいじゃない…」  
「で、でも………競泳用水着の時見るより、大きいし…」  
「ば、バカっ。変なこと言わないでっ…」  
「でも、すごくきれいだし………」  
勇太は思ったままの感想を、自然に口にしていた。弥子の胸は、決して大きくはなかったけれど、グラビアなどで見るそれよりはるかに初々しく、清純な美しさを持っているように見えた。  
「な、キスして、いいか?」  
「えっ………うん、いいよ…」  
弥子の許可を受けるか受けないかという早さで、勇太は弥子の片方の乳房を口に含んだ。  
まず柔らかな白いふくらみにキスし、その柔らかさを味わったあと、その乳首にそっと吸い付いた。  
「あっ、んン。へ、変な感じ………あ、赤ちゃんにおっぱいあげてるみたい………」  
勇太は次第に固くなっていく乳房を思う存分吸い上げると、こんどはその先端を舌で転がし始めた。同時に、もう片方の乳房をゆっくりと揉みほぐしていく。  
「や、やさしくしてね…」  
懇願するかのような弥子の言葉を無視して、勇太は乳房を次第に荒々しく揉みはじめた。  
はじめ、はっきりとした反発を伴っていた乳房は、やがて勇太の指に吸い付くような柔軟さとほどよい弾力を持ち始め、勇太の愛撫を受け入れていった。  
そしてそれにあわせて、弥子の口から荒い吐息が漏れる。  
「んン、ふ、ふうン、あっ………ば、バカァ…やさしくって、言ってるのに…」  
初めて経験する痛みと快楽にとまどっているのか、押し殺したような声で弥子が呟く。  
 
「でも、弥子気持ちいいんだろ?」  
「そ、それは…」  
「もっと気持ちよくしてあげる」  
言いながら勇太はより激しく愛撫とキスを浴びせる。勇太は、もう最初の戸惑いを完全に捨てきっていた。弥子に快楽を与えるということ、それだけに全精力を注いでいた。  
それは初めての、ぎこちないものだったが、弥子が自分の愛撫で快楽を感じているという事実が、勇太をますます大胆にしていった。  
「フうン、あっ、あン、あっ、あっ…」  
弥子の吐息と、乳房を吸う粘り気を含んだみだらな音が、呼吸を合わせるように重なる。  
そして、弥子の声とも吐息とも付かないものが、次第にそのトーンを高めていく。やがて、それは短い吐息の連続となっていった。  
 
ふいに、勇太が乳房から顔を離した。  
「どうしたの………?」息を整えながら、弥子は聞いた。  
勇太が、ちょっと不安そうな顔で尋ねる。  
「下、脱がしていい?」  
「くすっ………うん。いいよ…」  
勇太の言葉に、弥子はもう何の抵抗も示さなかった。恥ずかしいとも思わなかったし、それが当然のことに思えた。それよりも、ちょっと神妙な顔で聞く勇太が、かわいい、愛しい存在に見えた。  
「そ、それとも自分で脱ぐ?」  
「ううん、勇太が脱がせて」  
その言葉に、勇太は「分かった」とうなづくと、小さなショーツに恐る恐る手をかけた。それを見て、弥子は脱がせやすいように、ちょっと腰を浮かせて手伝う。  
小さなショーツは、弥子のしなやかな足をするり、と滑っていって、いとも簡単に脱がされてしまった。  
勇太は、脱がせたショーツを放り投げると、改めて弥子の秘所に目をやった。  
恥丘はゆるやかな曲線を見せてふっくらと盛り上がり、その先をビキニラインを綺麗に整えられた薄いヘアが覆っている。勇太は、ヘアヌード写真などで見た陰毛より、弥子のそれがはるかに薄いことに驚いた。  
「そんな、じろじろ見ないで…」  
初めて人前に自分の秘所をさらした恥ずかしさに、弥子は両足でそこを隠した。勇太はゆっくりとその茂みに手を伸ばすが、弥子はますます逃げるように体をひねった。  
「弥子、そんな風にしたら触れないよ」  
「だって、勇太が変な目で見るから…」  
 
弥子の抗議を無視するかのように、勇太は弥子の秘所をまさぐった。  
「ひンっ」  
「あっ、ごめんっ。痛かった?」慌てて手を離す勇太。  
「だ、大丈夫………。突然触られたから………」  
弥子はそういうと、勇太が触りやすいように体の姿勢を変えていく。それに促されるように勇太はまた手を伸ばしていった。  
最初にいきなり直接触った失敗から、勇太はまず太ももの裏からそろそろと触っていった。  
「…くすぐったいよ、勇太」  
弥子がそういって足を組み替えようとする。それをもう一方の手で押さえながら、勇太は内股に沿わせた手を、じょじょに秘部へと動かしていく。  
やがてヘアに指が触れると、勇太はしばらくその柔らかい茂みを玩んだ。そして、やわやわと秘所に手を伸ばしていった。  
「ん…」  
弥子が短い吐息を漏らす。勇太は手を止め、弥子の顔を伺ったが、弥子は小さくうなづいて、その行為を促しただけだった。  
驚いたことに、先ほどのキスと愛撫だけで、弥子の秘所はほんのりと湿っていた。その湿り気を塗りつけるように、勇太は割れ目にそって指を動かしていった。  
「んっ…、んんっ。………ふうン…」  
「まだ、痛い?」  
「ううん、…あっ…だ、大丈夫………続けて…」  
弥子の押し殺したようなあえぎ声が、勇太の欲情も高めていく。勇太は割れ目に沿って指を動かすうち、弥子がもっとも敏感に反応する部位−陰核−の的確なポイントをつかみ、次第に強く刺激していった。  
「ふ、あン、んっ、んっ、んン。ふあっ、や…変な声、で、出ちゃう…」  
初め硬く強張っていた弥子の体は、勇太の愛撫に合わせてその緊張をほぐしていく。  
そして、じょじょにあふれてくるその愛液を使い、勇太は段々と大胆にその場所をこすり、つき、撫でる。  
しかし、指をその中に押し入れようとした試みは、その硬く閉じた入り口で、あえなく阻まれた。しかたなく、勇太は外側の愛撫でより快感を与えられる場所を求めて、指を這わせていった。  
 
「や、やぁン、んっ…ゆうたぁ………ゆうたぁ…」  
初めしっかりと合されていた弥子の両足は、いまや完全にリラックスして、勇太の愛撫にあわせ、ゆったりと動いている。  
勇太は思い切って、秘所を口で愛撫することにした。と、言うより、直接そこを口に含んでみたいという欲求が、もうどうしようもなく高まっていた。  
「ひゃんっ、そ、そんなの………やン、ダメ、ダメだよ………」  
最初、指とは全く違う感触に驚いた弥子だったが、すぐにその新たな刺激が生み出す快楽に酔った。  
湿り気を含んだ音が、弥子の耳にも届く。その響きが、ますます快感を増大させているように、弥子には思えた。  
「ゆうた…はンっ、ねえ、ちょ、ちょっと。ん、待って………」  
弥子がそう言って勇太の頭を押さえたので、勇太はそれを中断せざるを得なかった。  
「どうしたの…?」  
弥子は荒い息をつきながら、仰向けになっていた自分の上半身をゆっくりと起こした。  
「今度は、勇太が横になって…」  
「え?」  
突然の申し出に、勇太はさっぱり訳が分からない。しかし、弥子は強引に勇太の両肩を押さえつけ、ベッドに仰向けに寝かせた。  
「今度は、私がしてあげるね…」  
「ええっ!?」  
勇太の驚きを無視するように、弥子は勇太の下半身に覆いかぶさるように座りなおした。  
そして、勇太のトランクスをゆっくりとずり下げていく。すでにカチカチになっていた勇太のそれは、ちょっとトランクスを下げただけで、すぐに姿を現した。  
まるで柱のように天を向く勇太の男性自身をしばらく見ていた弥子は、それを小動物を抱くようにやさしく握った。  
「…小さいころとは、全然違うんだ…」  
そんな感想を漏らしながら、弥子は勇太のそれをゆっくりとこすり始める。  
「この前弟が着替えてるの、偶然見ちゃったけど、こんなじゃなかったよ…?」  
「そ、そりゃ、今はエッチな気分になってるから…」  
「そうなんだ…そんな風になってるんだ…」  
弥子は感心したようにいいながら、じょじょに激しく勇太の肉棒をこすっていった。初めは幼馴染の大胆さに驚いていた勇太だったが、やがてその快楽に完全に身を任せていった。  
 
「あっ、弥子、気持ちいいよ…」  
「本当…?嬉しい…じゃあ、これはどう?」  
そういうと、弥子は大きく口を開け、勇太の肉棒の先を口に含んだ。  
「!!」  
驚いている勇太を無視して、弥子は口に含んだ亀頭を、アイスをなめるようにやさしく舐めた。  
「ンン…こうやって、なめられると、気持ちいいんだよね?」  
弥子はそういって勇太に微笑んで見せた。  
「そ、そんなの、誰に聞いたんだよ?」  
慌てて勇太が聞き返す。  
「勇太だって、さっき私にしてくれたこと、誰から聞いたの?」  
弥子が意地悪く笑ってみせる。  
「そりゃあ、本とか、友達とかさ…」  
「私だって、そうよ」  
「と、友達とか?」  
「早希とか、他のクラスメートからね」  
本当のところ、耳年間の早希はあいまいな情報を教えてくれただけだったが、口での奉仕が男を喜ばせるということだけは、しっかり憶えていた。  
弥子はそういって再び勇太自身を口に含もうとする。  
「ま、まった。僕、もう…」  
その言葉を無視して、弥子は再びぎこちないが、熱心に奉仕を始めた。  
亀頭を吸い、舐め、そして口を離して手で擦っていく。  
それは、確かに拙いものだったが、比較するすべを知らない勇太にとっては、これまで味わったことの無い快感だった。  
しかも、「あの」弥子が…。その事実が、すでに愛撫され始めたときから、勇太に言いようのない幸福感を与えていた。  
 
「や、弥子、も、もうで、出る…っ」   
搾り出すような声でそう言ったその瞬間、勇太自身から精液がほとばしった。そのほとばしりは、弥子のトレードマークのおでこから、小さな顔、双丘にいたる広い部位に、べったりとこびりついていった。  
「きゃっ?」  
突然、男の生理を見せつけられた弥子は、何が起こったのかわからず、呆然としていた。そして、初めて見る男の精液をしげしげと見つめていた。  
「ご、ごめん!」  
我に帰った勇太は、あわてて枕元にあったティッシュで、弥子の体を拭いていく。弥子は我に帰ると、自分もティッシュを取ってそれを手伝い始めた。  
「ご、ごめん…我慢できなかったから…」  
「………」  
弥子は押し黙ったまま勇太を見詰めている。それを勇太は自分への怒りと取った。  
しかし、何か様子が違う。弥子の視線は自分の顔よりもっと下に向けられている。それに気づいた勇太は弥子の視線の先を追った。いまだに勢いの衰えていない、自らの「あれ」に。  
「…まだ、元気なんだ…」  
弥子は心の底から驚いたように、呆然と呟いた。  
「う、うん」  
「…まだ、出来るんだよね?」  
「う、うん」  
二回とも全く同じ調子で、勇太はうなづく。それを見て、弥子はにっこりと微笑んだ。  
「…じゃあ、最後まで、して」  
 
「本当にいいの?」  
コク。  
仰向けになった弥子は、さすがに緊張しているのか、口数も少ない。  
勇太も口数少なく、弥子の顔を見下ろしている。  
「で、でもね………」  
「な、何?」  
勇太が体勢を整えた瞬間、突然弥子は思い出したように口を開いた。  
「あのね、ひ…」  
「ひ?」  
弥子は一瞬ためらってから、思い切って言った。  
「避妊だけは、して。…ね?」  
弥子の口から、そんな生々しい言葉がでるとは思っていなかった勇太は、一瞬固まったが、すぐに我に帰り、  
「分かった」  
といって自分の机からコンドームを取り出した。  
「ちゃんと、用意してあるんだ」弥子がいかにもおかしそうに笑う。  
「そ、そりゃあ、まさかのときには備えないと」  
本当は、誠太郎が「彼女が出来た記念だ」といって強引にくれたものだったが、今ではそれを感謝してもし足りない気分だった。  
「今日みたいな?」  
弥子はまだくすくす笑っている。  
うなづきながら、勇太は素早くゴムを装着し、弥子の上に覆いかぶさる。  
「じゃあ、行くよ」  
コク。  
やはり、その瞬間となると、弥子からさきほどまでの笑みは消え、緊張した顔になった。  
勇太はペニスを弥子の秘所にあてがおうと、しばらく腰の位置を調整していたが、ふと弥子の方に目をやった。  
 
弥子は、その場面を見まいとしているのか、目を硬くつぶっている。両手は、硬く握り締めたままだ。  
「弥子」  
勇太は弥子にそっと顔を近づけた。弥子がうっすらと目を開ける。  
「やさしく、するから」  
そういってオデコに軽くキスをする。弥子の顔から、強張りが消え、ふっとなごんだ顔つきになった。  
硬く握り締められていた両手は、勇太の体を優しく抱く。  
「じゃあ、お願い」  
「なに?」  
「入ってくるとき、勇太の顔を見てたい」  
「わかった。いいよ」  
実際、その場所をしっかりと見ずにいれるのは難しかった。それに勇太も弥子も初めてだったから、どうにもうまくいかなかった。  
そこで、勇太はおおよその位置に自分をあてがうと、思い切って腰を突き出してみた。  
まず、抵抗感があり、先端が少し割れ目に入ったものの、その先に入るとは全く思えなかった。  
「いッ」  
弥子が、でかかった言葉をかみ殺す。しかしそれは「痛い」であることに疑いはなかった。  
勇太が心配して、弥子に声をかけようとする前に、弥子が先に口を開いた。  
「大丈夫だから…。来て」  
勇太は黙ってうなづくと、弥子の手を握りながら、再度進入を開始した。再び、きつい抵抗感があり、先端すら入りそうにもなかった。  
そのとき弥子が勇太の手をぎゅっと握り締めた。  
「いいよ…」  
その力強さに後押しされるように、勇太は思い切って突き入れた。  
抵抗感は、最初驚くほどあったが、それが突然ふっとなくなり、次の瞬間、勇太の肉は、弥子の中に受け入れられていた。  
「あああンっ」  
弥子の声に、勇太は思わず動きを止めて、彼女の顔に目をやった。  
 
「は、はいったの…?」  
弥子は苦しそうな表情を浮かべながら、勇太を見上げている。  
「うん、大丈夫?抜こうか?」  
「ううん。いいよ。そのまま動いて」  
弥子はそういって微笑んで見せた。勇太はそのいじらしさに心打たれたが、それ以上に弥子の腔内が生み出す快感に酔いしれた。  
それはまだ相当にきつく、勇太が動くのも難しかったが、その締め付けと、暖かさ、そして愛液の粘性が合わさって、勇太に電気が走ったかのような快感を与えていた。  
「気持ちいいの…?」  
「う、うん」  
弥子はそれを聞いて嬉しそうに笑った。勇太は、弥子に負担を与えないよう、ゆっくりゆっくりと動き始めた。  
「う、ン、ンッ」  
動きにあわせて、弥子が苦しそうな声をあげる。勇太はふと、ここで止めようか、とも考えたが、それ以上に自分が動くことで生み出される快感に押し流され、腰の動きをとめるころが出来なかった。  
「…弥子、いいよっ」  
「ン、うン、本当?本当に?」  
「うん、気持ちいいよ、弥子のナカ、気持ちいい」  
「ふうンッ、ん、んン、もっと、もっとしてっ」  
愛液が分泌されるにしたがって、勇太も動きやすくなっていった。  
最初、単純な前後運動に過ぎなかった勇太の腰使いも、動きに余裕がでてきたのにあわせて、角度を変えたり、突く深さを変えてみたり、と次第に複雑な動きになっていた。  
そして、その動きにあわせて、弥子の嬌声はますます激しくなっていった。  
「あンッ、ゆうた、キス、して…」  
搾り出されるような声に促され、勇太は弥子の口に限らず、体中に口付けた。そして、空いた手で、弥子の乳首を擦り、つまみ、激しい愛撫を加えた。  
「ふん、ふわっ、んン、ん、ン、ん、うン、ん………」  
「弥子っ、弥子っ」  
 
弥子は、もうほどんど痛みを感じていなかった。  
それよりも、大好きな勇太に抱かれているという幸福感だけで、泣き出したいほどの快楽を得ていた。  
やがて、おずおずとではあるが、彼女も勇太の動きに合わせて腰を動かし始めた。  
そして、それがますます勇太の動きを大胆にし、二人の快感を高めあった。  
「ゆうた、ゆうた、ゆうた…」  
弥子はうわごとのように勇太の名を呼び続けた。まるで一度でも多く呼べば、それだけ快感が高まるかのように。  
一方、すでに一度の射精を済ませたとはいえ、勇太の快感は限界に達しようとしていた。  
「ん、ふン、ンッ、ンッ、ンッ、ンッ、ンッ、ンッ、ンッ、ンッ…」  
「弥子、も、もう、出る、出るよっ」  
「うんっ、ゆうた、来て、来てッ」  
「あっ…」  
「ふぅンッ…」  
次の瞬間、最初よりも激しい射精が、弥子の膣内で起こった。  
その、ゴム越しでも感じられるような激しい放出を感じながら、弥子は勇太の体をきつく抱きしめていた。  
 
 
「しちゃった…ね」  
「そうだね」  
服を着て、部屋の片付けを済ませると、外はもうとっくに真っ暗だった。二人はさめ切った紅茶を新しく入れなおし、居間で隣あって座りながら飲んでいた。さすがに、勇太の部屋には二人とも恥ずかしくて居続けられなかった。  
「後悔…してない?」  
「なんで?」  
勇太の質問に、弥子が首をかしげる。  
「僕が初めての相手で、良かったのかな、とか」  
少なくとも、ドラマみたいに理想的な初体験ではなかった…と勇太は思う。しかし、そんな考えを振り払うかのように、弥子は微笑みながら言う。  
「私、嬉しかったよ」  
「何で?」  
「勇太が優しいのは知ってたけど、やっぱり優しかったから」  
「変な感想」  
「いいじゃない。私は嬉しかったって言ってるんだから」  
まあそうか、と言って勇太はお茶をごくりと飲み干した。  
「勇太は?」  
弥子がいたずらっぽい笑みをうかべながら、勇太の顔を覗き込む。  
「そうだなあ…」  
勇太はカップをテーブルにおいて、しばらく考える。そう、言うべきことは一つしかないはずだった。  
「これまで、きっと僕は自信がなかったんだと思う。幼馴染って関係を捨てて、弥子と新しい関係を作るのが、怖かったんだと思う」  
弥子は黙って聞いている。  
「だから、弥子にさびしい思いをさせた。でも、今日からは違う。本当に、僕らは幼馴染じゃなくて恋人同士になったんだ」  
弥子の顔がぱっと輝く。それを見て、勇太の顔にも笑顔が浮かぶ。  
「それに………」  
「それに?」  
「それに………弥子がますます好きになった」  
「………良かった」  
二人は微笑みあい、しばらく見つめあってからまた軽いキスをした。  
 
 
ピンポーン  
 
そのとき玄関のチャイムが鳴って、あわてて二人は顔を離した。  
「誰だろ?」  
「るり姉だろ」  
二人は立ち上がり、玄関へ向かった。勇太たちが鍵を開ける前に、玄関のドアがあいて、おなじみのあの人が入ってきた。  
「やーれやれ。今日も疲れたわー…あれ?やっこ来てたんだ」  
「こんばんは、るりちゃん」  
るりは何も言わずカバンを勇太に渡すと、靴を脱ぎながら話し続けた。  
「今日もご飯食べてくんでしょ、やっこ」  
「ううん、今日は帰る。あんまりお世話になってると、親に怒られるから」  
ふーん、と言いながらるりは弥子の顔をじろじろと見回した。  
「ど、どうしたの、るりちゃん」  
「…やっこ、首んとこ、キスマークついてる」  
「えっ!!嘘っ!」  
あわてて首筋を隠す弥子。それを見て慌てる勇太。そんな二人を見ながらるりは  
「…へー、お姉さまがいないのを良いことに、そーんなことしてたんだー」  
にやにやと笑うるり。うつむく弥子。そして後難を恐れてそっぽ向く勇太。  
「今日はやっぱりご飯食べていきなさい、やっこ。くわしく聞かせてもらうわよ」  
「私たち、な、何にもしてないよ、るりちゃん!」  
弥子、ぶんぶん、と首を振る。  
「そんな言い訳通用しないわ!勇太も、厳しく取り調べるからねっ」  
「るり姉〜」  
「るりちゃん〜」  
るりの高笑いが、いつまでもいつまでも続いた。  
 
−終わり−  
 

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