ぎゅっ。
緋菜の手を、大きくて暖かい「彼」の手が掴む。
「好きだ…楠瀬さん」
「本当?…私、うれしいっ」
「彼」の胸に飛び込む緋菜。見詰め合う二人。そして…
「はぁっ!あぁっ、んぅ!」
「いいよ。楠瀬さん。すっごく気持ちいいよっ」
緋菜の中に、激しく打ちつけられる「彼」の分身。緋菜の体を、しびれるような感覚が襲う。
「森崎くん!森崎くんっ!」
「いくよ、楠瀬さんっ」
「いいわ、来てぇっ!!」
「はああっ!」
「彼」が絶頂に達する。緋菜めがけて、熱いものが注ぎこまれていく…はずなのだが。
「あ、あれ?何で私何にも…?」
「はぁはぁ………良かったよ、楠瀬さん…」
「ま、まって?私何にも感じないの…」
「それじゃあ、僕、るり姉のご飯作らないといけないから」
「彼」が急速に遠ざかっていく。それを必死で引きとめようとする緋菜。しかし掴んだ「彼」の腕は幽霊のように緋菜の手をすり抜ける。
「じゃあねー」
「待って!森崎くん!も…」
「も、森崎くん………!」
緋菜はそこで目を覚ました。あわてて頭を枕から持ち上げ、周りを見渡す。
ここは、緋菜の部屋。緋菜ははっとして掛け布団を持ち上げ、自分の体を確かめる。
さっきまで(?)裸で「彼」を抱きしめていた体は、おきにいりのライトグリーンのパジャマで覆われている。
もちろんベッドに横たわっているのは自分ひとりだ。
枕もとの目覚まし時計に手を伸ばす。それは朝の5時30分を指している。起きるにはまだ早い時間だった。
「………」
緋菜はもう一度頭を枕に沈めると、小さく息を吐いた。
「また、変な夢見ちゃった…」
これでもう何度目だろうか。ここのところ、緋菜は数日おきに同じ夢を見ていた。
初めて見たのは、親友の曜子に励まされ、ずっと好きだった「森崎勇太」くんに告白した、その何日か後だったと思う。
「はぁ………。何で…いきなり『えっち』なんだろ?」
「森崎くん」と激しく交わる夢。デートでもお話をするのでも、ない。ただただ体を求め合う夢。
「私…エッチなのかな…」
緋菜は男と女がどのように愛し合うのか、それが何を意味するのかは、もちろん知っていた。
性教育は小学校、中学校と受けたし、大学生の彼氏がいる曜子は、自分の性体験を時々緋菜に懇切丁寧に語ってくれた。
緋菜は親友の「大人な体験談」を恥ずかしがりながらも、結構興味津々で聞いていたから、知識だけはかなりあると言ってもいい。
「そうよ。曜子が変な話ばっかりするから…」
そう言いながら、緋菜は布団の中で、自分の両足をぎゅっと抱きしめ、丸くなる。
体が火照っている。この夢を見ると、緋菜はいつもの自分ではないのを経験的に理解していた。
まるで勇太の前にいる時と同じように胸が高鳴り、体がじんわりと熱を帯びる。そして、起きあがることも出来ない。
「まだ…時間あるよね…」
誰に言うでもなくつぶやくと、緋菜は丸くなったまま、指をパジャマの上から、自らの秘部にあてがった。そして、割れ目にそって指を動かしていく。
「う…ううん………」
緋菜が自慰を憶えたのは、つい最近のことだった。
初めて勇太とセックスする夢を見たあと、まるで意思を持ったように自分の手が動き出すのを、緋菜は止めることが出来なかった。
それ以来、夢を見たあとは必ず自らを慰めるのが習慣になってしまっていた。
「ふぅん、う………ん」
指で「あそこ」をこすりながら、もう一方の手は胸へと伸びていく。そしてパジャマ越しに、自分の胸を揉む。
普段からたっぷりとしたボリュームを備えた緋菜の乳房が、次第に張りを増していく。自らの乳首が緊張していくのを感じた緋菜は、その小さな突起をパジャマの生地越しに摘む。
最初自慰を覚えたころは、胸を直接触っていたが、緋菜は今はパジャマの生地の感触で自らの乳頭を刺激するのが癖になっていた。
「ふぅん!はぁ………うぅンっ!」
緋菜は、指先で自分のあそこが熱くなっていくのを感じていた。最初の緩やかな動きが嘘のように、片方の手の指で激しく陰唇を刺激する。
もう一方の手は、荒々しく乳房を揉みしだき、その先をこねくり回す。
「ん、ふうっ、んん」
口から自然に漏れてくる嬌声を必死で噛み殺しながら、緋菜は体の向きを仰向けに変えると、パジャマのズボンを素早くはぎとった。
そして、小さな白いショーツの中に手を滑り込ませる。すでに緋菜の内股は汗と愛液でぐっしょりと濡れていた。
緋菜は指で愛液を割れ目にそって塗りつけ、また夢中で指を動かし始めた。
「森崎くん………」
愛しい人の名前が、口をついて出る。緋菜は胸を触っていた手を止めると、枕もとの写真立てに手を伸ばした。そしてそれを胸にしっかりと抱きしめる。
去年の体育祭の時、学校が撮った写真。勇太が写っている写真だった。緋菜は、どうしてもその写真がほしかったが、注文する勇気が無かった。
曜子がそんな緋菜を見て、勇太と同じクラスの友達に手を回して手に入れてくれたのが、この写真だった。
「うンっ…森崎くん…ううンっ…」
緋菜の指がいっそう大胆に動く。目を閉じて、緋菜は夢中で自らの秘所に愛撫を続けた。そして勇太自身にかわいがってもらっている自らの姿を思い描く。
「森崎くん…もっと…」
粘り気を含んだ音が、静かに部屋に響く。
「森崎くん…もっと…もっと…うんっ…もっとして…!」
次第に緋菜の指の動きが早くなっていく。緋菜はまだ怖くて、自分の膣に指を入れることは出来なかった。
挿入は自分を抑制しているタガを壊すことになりそうだったし、もし「アレ」に傷がついたらどうしよう、という想像が、緋菜を押しとどめていた。
『初めては、絶対森崎くんに…』
それは緋菜の誰にも言えない、いや緋菜自身はっきりと自覚すらしていない願望であった。それが緋菜の行為をかろうじて抑えていた。
緋菜は指を挿入する代わり、陰核を刺激することにしていた。そして絶頂に向かって、その小さな突起をつまみ、強く、あるいは弱くいじくった。
「ふぅん…はぁっ…んっ!ううん!…森崎くんっ!」
緋菜の下半身に痙攣が走る。そして、それにあわせて勇太の写真を力いっぱい抱きしめた。
「うん………はぁ………」
体中から力が抜け、緋菜は長い息を吐き出した。
「また………しちゃった…」
緋菜はゆっくりと上半身を起こすと、ショーツだけに覆われている下半身に目をやった。
「染みに…なってる…」
緋菜の秘部を隠す部分の布地に、汗と愛液が交じり合って作った、はっきりとした染み跡が残っていた。
「…ごめんね、森崎くん」
抱きしめていた写真立てを枕元に戻すと、小さな声であやまる。自己嫌悪と、ささやかな満足感を噛み締めながら、緋菜はベッドから立ち上がった。
もう、下腹部のうずきも、胸のしこりも納まっている。
「こんなことしてるから、おっぱい、大きくなっちゃうのかな…」
そう言って、自分の胸をそっと触ってみる。友人たちにはうらやましがられるが、緋菜にとって胸が大きいことはちょっとコンプレックスだった。
ふう、とため息をついて、ベッドから立ち上がる。もう朝の光がカーテンの隙間から、はっきりと部屋の中を照らし始めていた。
「下着…換えなきゃ…」
そうつぶやいたときだった。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
目覚まし時計が勢いよく鳴り始めた。あわてて時間を確かめる緋菜。
「ええっ!もうこんな時間っ?あ、朝連に遅刻しちゃうっ…!」
緋菜はどたばたと朝の身支度を始めた。
「ああ、楠瀬さん、こんにちは」
昼休み。2年A組の前を通った森崎勇太は、緋菜に声をかけた。
「あ、も、森崎くん…こ、こんにちは」
朝のことがあって、動揺を隠せない緋菜。
「どうしたの?そんなに慌てて」
「な、なんでもないよ!?」
そう言いながらぶんぶんと首を振る。その様子に勇太は首をかしげる。もちろん、勇太に朝緋菜に何があったか分かろうはずが無い。
「森崎くん、今からお昼ご飯?」
「そう、今から学食。自分で作った弁当なんて、あんまり食べたくないしね」
勇太はそう言って笑った。その代わりるりへの弁当は毎日作っていて、今日もそれは変わりないのだが、あえて口には出さなかった。
「じゃ、じゃあさ。一緒に、ご飯、食べない?」
緋菜は勇気を振り絞って言う。意表をつかれた勇太が、目を丸くして聞き返した。
「一緒に?楠瀬さんと?」
「あ、あのね、今日二つ、お弁当作ってきたんだ。森崎くん、いっつも食堂でしょ?だ、だからたまにはどうかなっ、て…」
早口にそこまで言ってから、緋菜は恐る恐る勇太の顔を覗き込む。
「楠瀬さんの手作り弁当…?」
「そ、そう………い、イヤ、かな?」
「………」
下を向いて黙り込む勇太に、緋菜は悲しそうな表情で尋ねる。
「ぃ…」
「『ぃ』?」
「ぃやったぁ!!…さあ食べよう、ほら食べよう!」
「うわぁっ」
突然そう叫んだ勇太に、緋菜は驚いて確実に二三歩あとずさった。
「あっ、ご、ごめん………女の子の手作り弁当なんて初めてでさ、つい…」
勇太がびっくりしている緋菜に向かって軽く頭を下げてみせる。それを見て微笑む緋菜。
「くすっ。じゃあ、決まりだね」
「あ…でも、どこで食べる?今日雨だし…屋上と中庭は無理だし。学食最近込んでるから、『弁当持ち込み禁止令』でちゃったでしょ?」
流石にどちらかのクラスで食べるというのは、お互い恥ずかしいのか、選択肢にも上らない。
「あ、それなら大丈夫。私いい場所しってるんだ」
そう言うと緋菜はさっと教室に入って、弁当箱の入った巾着を二つ、それにお茶入りポットを持って戻ってきた。
「いい場所って?」
「まあ、私に任せて。さ、行こっ!」
緋菜は満面の笑みを浮かべると、勇太の手を取って走り出した。
「うまかった〜」
「本当?ありがとう」
お腹をさすりながら満足そうに言う勇太を見て、緋菜は幸せそうに笑う。
「うん、楠瀬さん、料理上手だね」
お世辞ではないと分かるその口ぶりに、緋菜は顔を赤らめながら、ポットから注いだ麦茶をはい、と勇太に渡した。
実は、今日の緋菜の行動は全て曜子の授けた秘策だった。
勇太が基本的に学食利用であると知った曜子は「手作りになびかない男はいない!」と力説して、緋菜に弁当を二つ作るよう命じたのだった。
そして学食に向かう勇太が通りかかるのを待ち伏せするために緋菜を廊下に立たせた、というわけだった。「いい場所」の情報とともに…。
「でも、家庭科準備室が空いてるなんて、知らなかったよ」
「穴場でしょ?」
次の授業の用意のためなら、生徒は家庭科準備室に自由に入ることが出来る。
しかもこの日は昼休み後の授業は2年A組…緋菜のクラスだった。だから緋菜が入るのに全く問題はない。
「でも、僕らしか居ないね。ちょっと…恥ずかしいね」
「えっ、そ、そうね…」
実は曜子はクラス中の女子を協力を取り付け、緋菜と勇太がふたりきりになれるよう、お膳立てをしてくれていたのだった。
最初はお弁当作戦そのものを恥ずかしがっていた緋菜も、クラス全員の応援とあっては、実行せざるを得なかった。
「………」
「………」
そこで会話が途切れた。ずずっ、と勇太がお茶をすする音が響く。外はしとしと雨が降り続いている。
「雨、好き?」
「え?雨?」
勇太の突然の質問に、緋菜が驚いて聞きなおす。
「うん。雨。僕は結構好きなんだ。雨の匂いと降ったあとの土の匂い…なんか、楽しかった子供のころを思い出さない?」
「…そ、そうだね」
微笑みながら自分を見つめる勇太に、緋菜は思わず視線を避けてしまう。時々見せる勇太の笑顔、それだけで緋菜の胸は高鳴り、顔を見ることが出来ない。
じゅんっ
(えっ、こ、こんな所で?)
秘所が熱くなるのを感じて、緋菜は戸惑った。目の前にいる勇太と、夢の中の自分を抱いてくれる勇太が重なる。
そんなこと考えてはいけない、そう思うたびに、今日見た夢と、今朝の行為を思い出し、自分の体が熱を帯びていく。
(だ、駄目、森崎くんに気づかれたらどうするのっ)
頭に血が上るのを自覚して、緋菜はお茶のポットに手を伸ばした。とにかく落ち着かなければ。
もし…もし森崎くんにばれたら、変な女の子だと思われてしまう、軽蔑されてしまう…。
しかし、ポットに伸ばした手を、別の手がさっと掴んだ。
「えっ!」
「楠瀬さん…楠瀬さんの匂いも、とってもいい匂いだ」
はっとして隣を見ると、対面にいたはずの勇太が、何時の間にか緋菜のすぐ傍に座っている。
「楠瀬さん…今、告白の答え言っていいかな」
「えっ。う、うんっ」
驚きの連続で、緋菜はうなづくことしか出来ない。
「僕も…僕も、楠瀬さんのことが好きだ。だから僕の恋人になってほしい」
「えっ、えっ、そ、それって、つまり………OKって事?」
緋菜は聞き間違いかと思って、勇太を見詰めながら問い返す。
こくり。はっきりとうなづく勇太を見て、緋菜の目がうるむ。勇太の両腕がやさしく緋菜の体を抱きしめる。
「好きだよ、楠瀬さん」
「………私も。森崎くん…」
やがて、二つの影が、かすかな雨音の中で重なった。
「楠瀬さん…」
勇太の唇が緋菜のそれに近づく。緋菜は全てを理解して、目をつぶって軽く自分の唇を差し出した。
チュッ
ちいさな音と共に、緋菜の唇が濡れた。それは夢のような感触。緋菜のその感触を一生忘れないでいよう、と思った。
「楠瀬さんの髪、いい匂い…」
唇を離した勇太は、緋菜のツインテールの片方をやさしく手に取ると、その匂いを嗅いで見せた。
「へ、変なことしないで森崎くん…恥ずかしいよ…」
緋菜は勇太の吐息を首筋に感じて、恥ずかしさにうつむいた。しかし、勇太は緋菜の顔を真正面から見据えてくる。緋菜と勇太の視線が交わる。
「それに…」
勇太は緋菜を見詰めながら言った。
「『ここ』からエッチな匂いがする…」
そういって、勇太は緋菜の下腹部をスカート越しに触った。
「ええっ。…だ、駄目よ森崎くんっ」
しかし、緋菜は金縛りにあったように動けない。勇太はスカートの上から、緋菜の太ももの間に手を突っ込み、秘所を探る。
「楠瀬さんって、エッチなんだね」
「ち、違うの森崎くんっ」
そんな緋菜の言葉を無視して、勇太はさらに緋菜の熱い下腹部を指でまさぐる。
「こんなに熱くなって…」
「そ、それは森崎くんが…」
勇太はにやり、と笑うと、床にひざまずいた。
「この中は、どうなってるんだろ?見てみたいな」
そういうと、勇太は緋菜の制服のスカートを捲り上げようとする。
「そ、それは駄目っ!み、見ないでっ!」
緋菜は体をよじって逃げようとする。だが、勇太の手は容赦なくスカートを捲り上げていく。
緋菜の白い太ももがあらわになる。勇太は、スカートの布地を捲りながら、太ももの間に片手を侵入させていく。
緋菜は勇太を押しとどめようとするが、彼の手の動きは止まらない。やがて、太ももの小さな三角の谷間が露わになる。
その谷を覆っているのは、小さなピンクのリボンがあしらわれた、小さなショーツ…朝、緋菜が着けていたものである。
「こんなに、染みを作って…楠瀬さん、濡れやすいんだ」
「ち、違うのっ。それは今朝…」
言ってから、はっとして緋菜は口をふさぐ。しかし、その言葉を勇太は聞き逃さない。
「今朝?今朝どうしたの?」
「な、なんでもないの…」
顔を紅潮させる緋菜。勇太は全て理解した上で、悪魔的笑みを浮かべる。
「僕のこと考えて、オナニーしてたんでしょ?」
「そ、そんなことっ」
図星である。緋菜は言い訳できないほど真っ赤になった。
「それじゃあ、もっと気持ちよくしてあげなきゃね」
勇太はそういうと、緋菜の秘所を、布地越しに刺激し始めた。しかもその舌を使って。
「い、いやっ。森崎くん…うぅんっ」
緋菜の拒絶の言葉は、完結しない。湿った感触が、緋菜の敏感な部分をショーツ越しにつんつんと突き、舐める。
「こっちのほうが良いかな?」
勇太は口全体を緋菜の秘所に押し付けた。
「だ、駄目ぇ…すっちゃ、すっちゃイヤ…」
しかし緋菜はもう逃げることも出来なかった。朝と同じように、体が熱を持ち、力という力が抜けていく。今の緋菜は、ただ勇太の愛撫を受け入れるしかなかった。
「ああっ、ん、ふぅん…声、出ちゃうよ…」
緋菜は慌てて口を押さえる。そして思い出す。ここは学校だ。今ならまだ間に合う。何とかして勇太を止めなければ。
しかし。
「…楠瀬さん。脱がすよ」
その勇太の言葉に、緋菜は魔法にかかったように答える、陶酔した声で。
「……う、うん。いいよ…」
そして、椅子から少し腰を浮かすと、自らの手でショーツをずり下ろす。その動きを勇太が引き継ぐ。
引きおろされたショーツが、緋菜の太ももを、膝を、ふくらはぎを滑っていく。
すべて脱がされるのを待ちきれず、緋菜は片足をさっとショーツから引き抜いて、勇太が愛撫しやすいように両足を少し開いてあげる。
片方の足首に、小さく丸まったショーツが引っかかっている。
「楠瀬さん…もうびしょびしょだよ…」
「うん…森崎くんのこと、好きだから…」
その言葉を聞くと、勇太は再び緋菜の下腹部に口を当てた。捲り上げられていたスカートが、勇太の激しい動きにつられて、勇太の頭を覆う。
「ん、んン…ふうん…もっと、キスして…」
緋菜は、自分のスカートの中に頭を突っ込んで、緋菜自身に愛撫する勇太を見ながら、うっとりとした声で求めた。
勇太の舌は割れ目をなぞり、小さな豆を転がした。その唇は陰核を挟み、吸い、ねじった。
その動き一つ一つで、緋菜の口からは甘ったるい声が漏れ、体はピリピリとしびれた。
「ふぅん、うん…はぁン…もっと、もっと…」
「楠瀬さんがこんなにエッチだったなんてな…」
勇太は夢中で緋菜の秘所をむさぼりながらつぶやく。
「森崎くんが…いけないんだよ…ずっと、私を独りぼっちにして…」
緋菜はこれまで待った時間を埋め合わせるかのように、快感に酔った。そして、自ら腰を動かして勇太の顔に秘部を押し付けた。
「これからは、ずっと可愛がってあげるよ…」
「………うれしい、森崎くん…」
やがて、緋菜の体の芯から、波のような感覚が押し寄せてきた。それは勇太に愛撫されている下腹部から、背中を通って緋菜の頭へと駆け上っていく。
「はあっ、ンあっ…ふんっ、ん、ん、私も、もうだ、ダメかも………」
「いかせてあげるよ」
勇太はそういって緋菜の陰核を、これまで以上の力で激しく吸い上げた。
「んっ、あっ、ふわっっっ………」
緋菜の体が一瞬ふるふる、と振るえ、やがて全ての力を失って、床に崩れ落ちた。
「楠瀬さん、テーブルに座って」
緋菜が勇太に促されて立ち上がると、勇太はさっき二人でご飯を食べた机を軽くたたいて見せた。
「す、座るの?」
緋菜はそう言いながらも、素直にテーブルの上に腰を下ろした。
「何を…するの…?」
だが、緋菜の言葉は質問ではなかった。半ば答えは分かっていた。勇太は何も言わず緋菜の両足首を掴むと、Mの字になるように緋菜の足を持ち上げた。
スカートがまくれ上がり、緋菜の下腹部が勇太の目の前にさらされる。
「こ、こんな格好、恥ずかしいよ…」
勇太はその言葉を笑みを浮かべたまま聞き流した。そして、自分のズボンのジッパーに手をかける。
ぱっ、とズボンの前が開く。開かれたそれからは、勇太の一物が勢いよく姿を現した。それは硬くこわばって、天井を向いている。
「楠瀬さん。いいよ…ね?」
緋菜は、自分の期待していた展開に、一瞬だけとまどったものの、やがて静かにうなづいた。
勇太の肉が、緋菜の割れ目にそっと添えられる。緋菜は両腕で自分の上半身を支えながら腰を動かして、勇太のそれを導いた。
「じゃあ、行くよ?」
「…うん…お願い…します………」
次の瞬間、べとべとに濡れた「緋菜」に勇太の分身が突きたてられた。
「んふうっ!」
生まれて初めての感覚に、緋菜の口からひときわ大きい声が漏れた。
「…は、入ったよ、楠瀬さん…」
「…うん…感じるよ、森崎くんの、入ってる…」
「痛くない?」
「うん………」
実際、緋菜はほとんど痛みを感じなかった。それは勇太の念入りな愛撫のおかげと、緋菜の喜びのためだった。
今、私は森崎くんに抱かれている…その感情は、どんな痛みより強いものだった。
勇太は、入ったことを確かめようとそこに目をやる。結合した二人のその部位から、じんわり赤いものが染み出している。
「…これって…」
「…うん。初めてだから………嬉しい。森崎くんに私の『初めて』を貰ってもらえて…」
緋菜のそんな告白に、勇太は初めて照れたような笑みを浮かべた。
「じ、じゃあ、動くね」
「うん、もっと気持ちよくして…」
緋菜の言葉に促されて、勇太はゆっくりと前後運動を開始した。
「んっ、うんっ、ふぅっ…」
「楠瀬さんの膣、気持ちいいよ、やわらかくて、あったかくて…」
「わ、私も…いいよ…」
最初のためらいがなくなってしまうと、勇太の腰使いは驚くほど荒々しいものになっていった。
それは緋菜の体全体を動かすほど激しく、抜けてしまうのではないかと緋菜が考えるほどだった。緋菜は必死で自分の下半身を勇太の方へ突き出した。
「楠瀬さん、僕を抱きしめて」
勇太の言葉に、緋菜は我に帰った。確かに、そのほうがより密着できる。緋菜は上半身を前へと曲げ、勇太の体をしっかりと抱きしめた。
緋菜がつかまったのを確かめると、勇太はさらに激しく動き始めた。緋菜は突き上げてくる勇太自身を感じながら、必死で抱きしめ続けた。
「う、うん、ふぅんっ」
緋菜の体が、勇太の腰使いにあわせて軽く跳ねる。
「楠瀬さんっ!楠瀬さんっ」
勇太の口から緋菜を呼ぶ声が漏れる。それを聞きながら、緋菜は夢中で勇太の背中を抱き、甘美な感覚をむさぼった。
「く、楠瀬さんっ、もう僕、いくよ?いくよ?」
「う、うん。私も…私もいく…」
二人は高みをめがけて、さらに激しく体を動かした。
にちゃっ!にちゃっ!
湿り気と、肉が打ち合わされる音。二人の口からは荒々しい息が吐き出される。
「ふうんっ、ふうんっ、ふぅん!はぁん!」
「ん、んん、んんんっ!楠瀬さん!」
「森崎くん!森崎くぅん!」
「いくよっ、楠瀬さん!楠瀬さん!楠瀬さん………!!」
「…楠瀬さん!楠瀬さんってば!」
呼ばれる声に、ふっと我に帰る緋菜。
「え?も、森崎くん!?」
目の前には勇太の顔がある。その手には空っぽのコップが握られている。
「どうしたの?お茶ちょうだいって言ってるのに、ぼーっとして」
「え、あ、ああ、あのね…」
緋菜はやっとこちらの世界に戻ってくる。
「ちょ、ちょっと考え事してただけ。お茶ね。…はいっ」
慌てて勇太の手からコップを取り、お茶を注ぐ。
(何時からあんな変な想像をしていたんだろ?ああ、そうだ。森崎くんの言葉に胸が熱くなって…)
そうだ、下半身が熱くなるのを感じたときからだ。そして、今朝のことを思い出して…。
そうだ、下着。今朝は結局換える時間がなくて、朝のまま、染みが残ったままだ。だから変な想像を…。
苦笑する緋菜。しかし、淫らな感情とか、下腹部の熱は、既にどこかへ消え去っていた。
「もう昼休み終わりだよ。教室帰ろ」
「そうね。私もいったん戻るわ」
緋菜はそういって弁当箱を片付け始める。勇太は使ったテーブルを拭き、コップを片付ける。
二人がそろって家庭科準備室を出たところで、勇太が頭を下げた。
「今日はありがとう。おいしかったし、楽しかったよ」
「…私も」
緋菜の顔も自然にほころぶ。
「同じ弁当でも、誠太郎と食べたって、こんなにおいしくないと思うよ。楠瀬さんと一緒だから、まるで恋人同士みたぃ…あっ」
緋菜の顔が曇る。そう、まだ答えは出ていない。緋菜の告白に対する、答え。
いつかは答えを出さなくてはならない。しかしそれがいつになるのか、勇太にもはっきりとは分からなかった。
それが緋菜を苦しめている、そんなことは勇太にも分かっていた。緋菜は黙って、二つのお弁当箱を胸に抱いた。
勇太が自分の言葉を取り繕おうとしたそのとき。
「森崎くん?」
緋菜が、悲しさを振り払うように笑って見せた。
「また、一緒にご飯食べてくれる?」
それは精一杯の強がりだったのかもしれない。だが、勇太はおわびの気持ちからではなく、本心から答えた。
「そりゃ、もちろん」
「…よかった」
微笑みあう二人。
「じゃあ、戻ろうか」
先に歩き始める勇太の背中を見ながら、緋菜はつぶやく。勇太に聞こえないように。
「…いつか、なれるよね?恋人同士」
今の緋菜にそれが何時のことになるかは分からなかったが、確かな未来のように思えた。
−終わり−