今日は丘野とのデート。二人で海水浴に行くんだ。  
(11時か、時間ちょうどだな。さ〜てと、丘野は……)  
 あたりを見回す。駅前に丘野の姿はない。  
(いない……。なんとなく予感はしてたけど、やっぱり遅刻か……仕方ない、待つか)  
………  
(11時30分……。まさか、約束を忘れてるんじゃ……ありうる)  
 さすがに不安にさいなまれた頃、  
「やっほー、小笠原」  
 能天気な丘野の声がした。  
「ああ、丘野っ! どうしたの? 遅かったじゃないか」  
 何かあったのか? 怒るよりも心配が先に立って強く出られない。  
「エヘヘ、ちょっと寝坊しちゃった」  
(やっぱり……)  
「……しょうがないなぁ」  
 でも丘野の笑顔を見ていると怒る気になんかなれない。俺、丘野が好きなんだな……。  
「ごめん、ごめん」  
 頭をかきながら謝る丘野。かわいい……。  
 丘野の顔を見て安心したせいか、ようやくその日の服装に目をやるゆとりが出てきた。  
「それにしても……その服……」  
「かわいいでしょ?」  
「うん、かわいいよ。でもちょっと露出しすぎじゃない?」  
「そっかな〜、そんなことないよ。それに今日は暑いでしょ。このくらいじゃないと倒れちゃうよ」  
「ま、まあ、いいんだけど……」  
「なぁに?」  
 俺が何にこだわっているのかちっともわからない、という風に丘野が聞く。  
「他の男に丘野の肌、見せたくない……」  
 嫉妬心が沸く。だがそれに気付かないのか丘野が続けた。  
「えぇ〜っ! だって海行くんだよ? このあと水着になるんだよ?」  
「そ、そうだけど……。ともかく時間もったいないから行こう!」  
「うんっ!」  
 ま、なるようになれだ。今日一日、思いっきり楽しもう!  
 
 海に着く。  
 着替えるために一旦別れ、砂浜で落ちあうことにした。  
 
(え〜と……丘野は……)  
 あたりを見回すが丘野の姿はない。俺のほうが先に砂浜に出たようだ。  
「小笠原、お待たせーっ!」  
「あっ、丘野……」  
 『遅いぞ!』。そう言いかけて固まる。  
 目の前には煽情的なビキニをまとった丘野がいた。  
「わっ! す、すごい水着だな……それ」  
「カッコイイでしょ。今日のために買ったんだ」  
(目のやり場に困るな……)  
 思わず挙動不審な態度を取ってしまう。  
「どうしたの?」  
「目のやり場に困る水着だなと思って……」  
「そんなのだめだよ。もっとよく見てくれなきゃ」  
「そ、そうは言っても……。俺だって男だし、そんなの見せられたら変な気になっちゃうだろ?」  
「へ? 変な気って?」  
 よく言えば天真爛漫、悪く言えば無頓着な丘野には男のメカニズムは理解不能か……。  
 俺はとっさに話題を変えた。  
「……あ、でも変わった柄だよね」  
「でしょーっ。探すの大変だったんだよ! なかなか売ってなくてお店5軒も回って見つけたんだ」  
「そうなんだ、大変だったね」  
 あまりにも普通な丘野の態度に、変に気を回した俺は恥ずかしくなった。  
(そうだよな、このぐらいの水着、みんな着てるしな。俺、変なこと考えすぎだぞ……)  
 
「さ、さあっ! 泳ごうよ丘野」  
「そうだね。ようしっ! 今日はめいっぱい泳ぐぞ〜」  
 こうして夏の日差しを浴びながら思いっきり泳いだ。  
 躍動するみずみずしい素肌がまぶしい。水を切って泳ぐ丘野は輝いていた。  
 丘野の健康的な笑顔は俺の心を弾ませる。俺たちは夏の日を目いっぱい楽しんだ。  
 
 何時間泳いだろう? 時々は休んだ俺に比べ、丘野はその間も水から出なかった。  
 泳ぎ疲れた俺は砂浜に座って丘野を目で追っていた。  
 それにしても丘野、すごい体力だな……。ずっと泳ぎっぱなしだ。ついていけないや。  
 
 丘野が水から上がってきた。  
「どうしたの? 小笠原、もっと泳ごうよ」  
 俺の手を引っ張る。  
「タンマ、タンマ。もうちょっと休ませてよ。俺もうヘトヘトだよ」  
「ぶぅ〜。だらしないなぁ、もう」  
 頬をふくらませて不満げな丘野。  
「丘野が元気すぎるんだよ」  
「じゃあ、あたし、ジュース買って来るよ」  
 一転して笑顔になった丘野の提案。  
「本当? じゃあ俺、コーラ」  
「うん、わかった」  
 そう言って丘野は駆け出していった。  
(丘野、元気だよな〜。あんな小さい身体のどこにあんなにパワーが入ってるんだろ)  
 
「ねえねえ、小笠原」  
「お帰り。あれ? コーラは?」  
「そんなことよりっ、あっちで水着コンテストやってたんだ」  
「水着コンテスト? ……見に行ってみようか?」  
「あたしね、エントリーしちゃった」  
 自慢げに胸を張る。  
「えっ、本当に?」  
「うん、すぐにあたしの番だから、見においでよ」  
「あっ、丘野……」  
 それだけを告げると丘野はまた戻っていく。  
(水着コンテストにエントリーだって? ……はやく見に行かないと)  
 俺は慌てて丘野の後を追った。  
 
「次はエントリーナンバー13番。丘野陽子さん、どうぞっ!」  
(本当に出てる……)  
 一段高い特設ステージに出てきた丘野は、物怖じせずにあたりを見回す。  
 と、  
「やっほ〜、小笠原っ!」  
 俺の姿を見つけた丘野が、大きく手を振って叫ぶ。  
(こ、こら、俺の名前を呼ぶなって、恥ずかしいじゃないか)  
 周囲の視線が集まる。恥ずかしいぞ!  
 
 そんなこんなで水着コンテストは終わった。……丘野は優勝を逃した。  
 
「残念だったね」  
「ほ〜んと、みんな見る目ないよね〜。あ〜あ、優勝すればスイカが3コももらえたのにな」  
「それが目当てだったのか」  
「きっとあたしの胸が小さいからダメだったんだよ!」  
「べ、べつにそういうことじゃないと思うけど……」  
「だって、優勝した4番の子の胸って、ボイ〜ンって、すっごく大きかったよ」  
 そう言いながら手で胸を強調するような仕草をする。  
「たしかにそうだったけど……」  
 優勝した子の胸を思い浮かべる。……ホントにあれは大きかった、うん。  
「あたしの胸ももっと大きかったらなぁ。おっきくなる方法ないかな〜」  
 口を尖らせて不満げにつぶやく丘野。  
「きっとそのうち大きくなるんじゃない? もっとも俺は今の丘野の胸ぐらいの方が好きだけどね」  
「そのうちじゃなぁ〜」  
「じゃあ、胸が大きく見える水着を……」  
「ああ、そうかっ! その手があったか。よし、今度買いに行こうっと」  
 急に晴れやかな表情になると、丘野は握りこぶしを作って言った。  
「いや、ためしに言ってみただけで、何もそこまでしなくても……」  
 
「あれ? でも小笠原小さい胸の方が好きなの? なんで?」  
 さっきの俺のセリフに気がついたのか、不思議そうに丘野が聞く。  
「なんでって言われても……そう、胸が大きいと肩こるっていうし、それに泳ぐ時きっとジャマだよ」  
 特に意味はない。が聞かれれば答えないわけにはいかない。何とか理由をひねり出して答えた。  
「でも〜、大は小を兼ねるっていうし……」  
 まだ納得していない丘野の声。  
「それはちょっと違うんじゃないか? とにかく、俺は丘野ぐらいの大きさが好き」  
 恥ずかしいとは思ったが俺は丘野にきっぱりと言い切った。  
「小笠原がそう言うなら、まあ、いいか」  
 どことなく釈然としない感じの声だった。  
 
 そうか、丘野って胸が小さいことが悩みなのか? よし、だったら。  
「……なぁ丘野ぉ、揉まれると大きくなるっていうけど」  
 迷信とは思うが、何かで聞いた知識を口にしてみた。  
「そうなの?」  
「ああ、よくそう言うよ」  
「それって、自分でやっても効果あるのかな?」  
「さあ、そこまでは……」  
 自信はなかった。そもそも、揉まれると本当に大きくなるかどうかなんて知らない。  
 
「じゃあ、小笠原、やってくれない?」  
「はあ?」  
「ねえ、やってよ」  
 ま、まさかこんな展開になろうとは……。そんなつもりじゃなかったのに……。  
「い、いいの?」  
 思わず声が上ずる。  
「うん!」  
 ニコニコと、何の不信感も抱かぬかのように丘野がうなずいた。  
 
「じゃ、じゃあ……あっ、でもここじゃなんだから他から見えないところへ」  
「ほえ? ……うん、いいよ。でもどこへ?」  
「そうだなぁ……」  
 あたりを見回す。シーズンの海水浴場で人目を避けられる場所なんかない。  
「丘野、海に入ろう。あそこなら誰にも気付かれないよ」  
 そう言って俺は丘野の手を取り、波打ち際に歩いていった。  
「小笠原ぁ、なんで気付かれたら困るのぉ?」  
「! とにかく行くよ!」  
 
 丘野の首の少し下まで水のある場所に着くと振り向く。  
 大きく深呼吸すると  
「丘野、じゃあ行くよ」  
 声をかけ、そっと丘野の胸に手を伸ばす。そしてビキニのブラの上から静かに揉んでみる。  
「きゃははは、小笠原くすぐったいよ!」  
 そう言って身をよじる。  
「う、動くなよ……」  
 狼狽するが、今さらやめられない。  
「う、うん……」  
 俺の真剣な眼差しに丘野が動きを止めた。  
 そのままゆっくりと手のひら全体を使ってふくらみをなでまわす。  
 決して大きいとはいえない丘野の胸だが、その柔らかい感触は俺を夢中にさせた。  
 
 何度か揉むうち、直接触りたくなった。  
 二つのふくらみを覆う布地は中央がヒモで結ばれていた。そこに指をかけ、ゆっくりと引っ張る。  
「あ……」  
 丘野の声が聞こえたが、忌避の感じはなかった。それに意を強くした俺はさらにヒモを引く。  
 ……ついに丘野の胸があらわになった。  
 
 上を向いてつんと尖った乳首が指先に感じられる。  
 水さえなければこの目で見られるものを……。それが残念だった。  
 
 指を微妙に動かすと、丘野がはっと息を飲む。  
「丘野?」  
 頬を上気させた丘野が潤んだ眼差しで俺を見る。  
 
 正面から丘野を抱く形で腕を回し、俺は執拗に丘野の胸を揉み続けた。  
 両方の手のひらで乳首を転がすように動かす。  
 指を立て、乳房全体に静かに圧を加える。  
 それに合わせ、ふっくらした中に張りを感じる小ぶりの双乳が形を変える。  
 
 最初はくすぐったそうにしていた丘野だが、徐々に声に湿った感じが混じってくる。  
「小笠原ぁ、なんか変な気持ちになってきた……」  
「気持ちいいの?」  
「わかんない……」  
 丘野の胸を愛撫するうち、俺の頭に血が上っていくのが感じられた。  
 と同時に股間に血液が集まっていく。  
 俺は丘野に抱きつくように身を寄せると、股間のこわばりをぐっと押し当てた。  
「あれ? 何か固いのが当たってるよ?」  
 男の生理を理解していないのか、丘野が不思議そうに尋ねた。  
(当たってるじゃなくて当ててるんだよ!)  
 丘野は性的に未熟なのかな? 知識もないみたいだし……。  
 俺は調子に乗ってますます強く股間を押し付けた。  
 
 俺は丘野に腰を突き出し、さらなる快楽を求めてこすりつける。  
 その間も胸を揉み続ける。  
 少しずつ丘野も感じ始めているのか、徐々に息が荒くなっていく。  
 そのうち立っていられなくなったのか、丘野の右手が伸び、俺の胸に当てられた。  
 そのまま胸板をなぞる。指が乳首に触れた。  
 決して狙ってしたことではないのだろうが、その微妙なタッチが俺の性感をあおる。  
 
(ヤバイ、イクかも……)  
 急に射精感がこみ上げてきた。  
「あっあっ、丘野っ! っっっ!」  
 次の瞬間、丘野を強く抱きしめた。  
びゅくっ! びゅるっ! どぴゅっ!………  
 暴発した。  
 陰茎が脈動するたびに水着の中に生あたたかい感触が広がる。  
「お、小笠原?」  
 俺の態度の急変にびっくりした丘野の顔を見ながら、俺は精液を射ち出し続けた……。  
 
「お、丘野……も、もういいだろ?」  
 射精したことで冷静になった俺は丘野から身を離した。  
「そ、そろそろ上がろうか」  
 そしてそう告げると海から出た。  
 
「結局コーラ飲んでないだろ? 俺、買ってくるよ」  
「う、うん……」  
 飲み物を買いに行く振りをしてシャワー室に飛び込む。  
 べっとりと股間を汚した粘液をシャワーで洗い流す。  
 
 こうして、海水浴は終わった。はあ〜、いろいろと疲れた……。  
「ふう〜、楽しかったね!」  
 まだまだ元気いっぱいといった感じで丘野が言う。  
「ちょっと疲れたけどね」  
(余計な体力も使っちゃったしな……)  
「コンテストで優勝できればもっと楽しかったのになぁ……」  
 丘野が本当に残念そうに言った。  
「ま、仕方ないさ。来年、もっと胸が大きくなったら今度こそ優勝だよ」  
「へへへ、じゃあ小笠原にいっぱい揉んでもらわないとね!」  
「お、丘野!」  
「電車混むよ、早く帰ろうよ小笠原」  
「お、おう!」  
 
 今日のことで、丘野が性に関しての知識がないことがわかった。  
 興味や感心はあるのかな? 17歳の女の子だもんな、きっとあるよな……。  
 それにさっきのセリフ。胸を触ることの意味、分かってるのか?  
 あ〜あ、でも丘野とエッチしたいけど、当分はできないみたいだなぁ。  
「はぁ〜」  
 そう思うと自然とため息が漏れた。  
「ん? 小笠原どうしたの? ため息なんかついて、疲れちゃった?」  
「いや、そういうことじゃないんだ……」  
(やっぱり無理だ……)  
 それでもニコニコと俺を見ている丘野を見ているとそんなことはどうでもよくなってきた。  
(よし、今年の夏は丘野といっぱい思い出を作ろう!)  
 俺たちの夏はまだ始まったばかりだった。  
 
 
    おしまい  
 

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