デスマーチ、デスマーチ、デスマーチ、デスマーチ……
僕は毎日、PC部のデスマーチの真っ只中にいます。
デバッグ作業は思っていたのとは全く違うものです。
最悪の敵はフリーズです。
何時間も何日も、パソコンの前にうずくまり、デバッグに追われて暮らすのは、どんなものか想像もつかないでしょう。
クーラーは効いていますが、モニターを見続けているので、目は石の塊のようです。
何個かのマウスは動かなくなりました。
−森崎勇太、姉に宛てた心の手紙より−
「……森崎、あんた今『映像の世紀』のこと考えてたでしょ」
とげとげしい声にはっと我に帰る。
ふりかえると、自分の座った席のすぐ後ろに、神谷菜由が腕組みしながら立っていた。
「な、なんでそれがっ!?」
本気で驚く勇太に、はあ、と呆れた声を出しながら菜由はこめかみを押さえる。
「……あんたが勝手にブツブツつぶやいてんのよ。しっかりしてよねー……開発大詰めなんだからっ!」
菜由の片腕がさっと挙がった。その手には大きなハリセンが握られている。
びくっと首をすくめる勇太に菜由のハリセンが炸裂した。
ぱあーん
大きな音と共に、周りのコンピュータ部員もはっと目を覚ましたように姿勢を正す。
「ほらほら、みんなも。今日中に提出しないといけないんだからね。気合入れないと、あとでひどいわよ!」
そんな菜由の声に、部員たちは必死でモニターに向かう。
ハリセンより、菜由の脅しの方がよほど恐ろしい。
「やれやれ……森崎はみんなに何か飲み物用意して。あんたじゃデバッグになんないわ」
そう言って、菜由は勇太の代わりにパソコンの前に座った。
席を追われた勇太は、うん、とつぶやいて部屋を出て行く。
約二週間前、菜由から電話があったときは、こんなことになるとは勇太は夢にも思っていなかった。
菜由の用件は、毎年コンピュータ部が参加しているオリジナルソフトコンテストの追い込みの手伝いだった。
菜由曰く、
「例年コンテストは文化祭の後だったのだが、今年から日取りが変更になった」
「そんなわけで今年は夏休み返上でコンテストと文化祭用のソフトを同時開発しなきゃならない」
「でも、文化祭はともかくコンテスト用はどうも間に合いそうにない」
ということらしかった。
そこで菜由が考えだしたのが今回の「追い込み合宿」だ。
合宿といってもどこかに泊り込むのではない。
ただ毎朝学校のPC室が開くと同時に部員が一斉に集まって、帰宅させられるまで作業するというだけである。
ところで、毎朝暗いうちに集合し、夜遅くまでパソコンに向かう作業は恐ろしく消耗するだろう。
だから誰か部員の福利厚生を担当する人間がいる。
「……それが、僕って訳?」
「そうよ、毎日コンビニ弁当やカップラーメンじゃ、体調壊すわ。
あんたなら、家庭科室で10人分の食事を用意するぐらい、朝飯前でしょ」
そう言って、菜由は集合時間を告げると電話を切った。拒否はできないらしい。
菜由と夏休み前から付き合うようになって、少々のことでは驚かなくなった勇太だが、さすがに今回はあきれた。
部活動は勇太の感知しないところである。それに巻き込まれるとは……。
いや、実際のところ買出しや食事とおやつの準備は勇太にとって大した問題ではなかった。
どうせ毎日家で食事を作っているのだ。
だが、締め切りまで一週間を切ったとき、菜由は非情にも、勇太にも開発を手伝うように命じた。
プログラムなんて出来ない、と抗議する勇太に、菜由はきっぱりと言い放った。
「森崎の仕事はデバッグ。とにかくソフトを考えられるありとあらゆる方法で動かすの。
……それで、問題なく動くか確かめてほしいの、簡単でしょ?」
最後の「でしょ?」には、拒否したらただでは済まさない、という響きがあって、勇太は承諾するしかなかった。
しかし、毎回手順を記録しながらひたすらソフトを使い続けるというのは、勇太にとって想像以上の拷問だった。
しかも食事の準備は相変わらず自分ひとりでしなければならない。
真っ先に体調を壊すのは自分ではないか、と勇太は何度も思った。
そして、コンテストの締め切り当日。開発が終わるかどうか、まだ予断は許さなかった。
ところが、事態はあっさり解決した。
勇太が飲み物を用意してパソコン室に帰ってくると、部員たちは晴れ晴れとした顔でぞくぞくとPC室から出てくるではないか。
そして、彼らは口々にお疲れ様、という言葉をかけ、帰っていく。
勇太がPC室に入ると、菜由と、菜由にいつも振り回されている副部長が何やら打ち合わせをしているところだった。
「か、神谷さん。どうしてみんな帰ってるの?」
入るなり、勇太がそう尋ねる。それを聞いて、菜由の特徴的な目が、きゅっとつりあがる。
「どうしてって、開発終わったからよ」
「い、何時の間に?」
「森崎が出て行ったすぐ後にね」
菜由はあっけらかんと言ってのける。勇太は体中から力が抜けるのを感じた。
「な、なんでそれを先に……」
勇太が抗議しかけると、
「あー。あとあと。今大事な話してるんだから」
菜由は勇太の言葉を手でさえぎって、副部長との会話に戻った。
「じゃあ、オリジナルは私がノートに入れて持ってかえるから、あなたがバックアップを持って帰ってね」
「うん」
「で、あなたはその足で郵便局に向かう。着いたら……」
「神谷の携帯に確認のメールを入れる。分かってるよ。心配性だな、相変わらず」
そういうと、副部長はCDケースほどの大きさの封筒を手に取った。どうやらソフトが入っているらしい。
そして、あと頼むな、と勇太に声をかけるとPC室を出て行った。
その背中に向かって、菜由は「落とさないでよ!」と声をかける。
その様子を勇太は黙って見守っていた。
というか、呆れて声も出なかったのだが。
「……ふう」
菜由が小さく息を吐いた。
一瞬、疲れた顔を見せた菜由は、勇太の方を向いたときには、すでにいつもの顔に戻っていた。
「……で? なんだって?」
「……なんで、もうすぐ終わるって言ってくれなかったのさ。わざわざ飲み物まで用意させて……」
「あら、お茶いれるのってそんなに大変?」
菜由が不思議そうに尋ねる。勇太はむっとして声を荒げた。
「手間隙の問題じゃないよ。……もうすぐ終わるならそう言ってほしかっただけだ。それにっ」
「それに?」
「僕だって、ちょっとだけでも参加したんだ。……終わるところにはちゃんと立ち会いたかった」
そう言って勇太は静かに目を伏せた。菜由は何も言わなかった。
こつ。
乾いた靴音がして、勇太の足元に小さな影が落ちた。菜由がそっと勇太の目の前に立っていた。
「……言えるわけないじゃない。みんな最後の最後の力を振り絞ってるのに……。
『もうすぐ終わるかも』なんて言ったら、緊張の糸が切れちゃう」
菜由は静かに言った。
「そんなとき、必ず致命的なミスが発生するのよ。間違って訂正したリスト消しちゃったり、コンセント足に引っ掛けたりね」
その声は、勇太を説得するというより、自分に言い聞かせているように聞こえた。
勇太は目を挙げる。
ぼんやりと菜由を見つめる勇太。そんな勇太に菜由はちょっと悲しげに微笑んだ。
「でも、ごめんなさい。森崎も、チームの仲間だったのにね。
……完成したとき、一緒に居られなかったのは私のミス。やっぱ、ミスは起こっちゃった」
そういって、照れるように菜由はえへへ、と声を出して笑った。
「リーダーって、難しいのよね。みんなのために、あえて憎まれ役も引き受けなきゃいけないし……」
合宿という手段に部員が心から納得しているわけではないことは、勇太も察していた。
「それに、私わりと心配性だから、全部自分で管理できないといらいらするのよ。リーダー失格かもしれないけどさ」
そういって菜由は勇太にそっと背を向けた。
「ごめん」
勇太は菜由の背中にそうつぶやいた。
「あら、なんであなたが謝るの?」
「神谷さんが一番大変なのに、僕、全然分かってなかった」
そう言って勇太は頭を深々と下げる。そのまま、何秒のときが過ぎた。
「……ぷっ」
菜由の噴出す声に、勇太はさっと顔を挙げる。両手で口を押さえ、笑いをこらえる菜由がいた。
「ぷはははっ……!相変わらず、真面目ねぇ。ま、森崎らしいけどね」
「な、なんだよ。その言い方……」
思わず勇太が言い返そうとすると、
「……でも、ありがとう。あなたがいなかったら、私はこんなに頑張れなかったわ」
そういって、菜由は勇太の胸に顔をうずめ、両腕を勇太の背中に回した。
「神谷さん……」
勇太はそういって、菜由をしっかりと抱きとめた。
ひとつになる勇太と菜由の影。菜由の髪が発する、飾り気のないシャンプーの匂いが勇太の鼻をくすぐった。
やがて、菜由の方から、勇太の体を静かに解き放った。
「……ねえ、あなた、よくこの二週間、我慢出来たわね?」
その不可思議な言葉に、勇太ははっとして自分の下半身を見る。
「私のお腹に、あなたのアレ、当たってた」
勇太のペニスが、ぎんぎんに勃起して、ズボンの上にはっきりと浮かび上がっている。勇太は慌ててそれを両手で覆う。
「まあね。私みたいな美少女を、二週間もおあづけなんて、たいていの男には拷問よねぇ?」
微笑む菜由。その言葉には挑発的な響きがあった。
勇太には自分の顔が火照るのがはっきり分かった。しかも、勇太のいきりたった物は納まる気配を見せない。
「……ねえ、森崎。ここで……しない?」
驚いて、菜由を見る。
目に妖しげな光をともし、菜由は勇太の目の前で軽く両足を開いて立った。
菜由の手が、膝上丈のスカートのすそを掴む。そして、そのまま上へと持ち上げていく。
その光景を勇太は息一つせず見ていた。
スカートが巻くりあげられ、菜由の下腹部が露になる。
薄いシルクの、シンプルなショーツ。菜由の陰部を覆う茂みが、うっすらと見える。
「私もね……」
菜由の声にうっとりとした響きが混ざる。
「さっきあなたを抱いたとき、濡れてきちゃったのよ……」
そういうと、菜由は片手でスカートを持ったまま、ショーツを太ももの途中までずりおろした。
つやつやとした光沢を持った菜由の陰毛が姿を現した。
よく見ると、太ももの内側を、細い愛液の筋が走っている。
菜由が体を動かすたびに、その筋の放つかすかな輝きが勇太の目に映った。
勇太は何も言えない。ただ、目の前の光景に釘付けにされている。
もちろん、菜由と交わるのは初めてではない。既に何度となく体を重ねている。
しかし、今目の前で自分を誘う菜由には、いつもと違う言いようのない色香が感じられた。
……狂おしいほど、勇太を求める、雌の匂い。
「……ぼんやりしてないで。こっちにきて」
そんな風に、菜由はわざと強い調子で勇太に命じる。
言われるがままに、ふらふらと菜由に近づき、その前にひざまずく勇太。
「私のアソコ、舐めたいんでしょ? 舐めさせてあげる」
菜由の台詞は、勇太の願望を鋭くとらえていた。
勇太は黙ってうなづくと、菜由の陰部にそっと口を近づけた。
ちゅっ……
おずおずと、勇太は舌で菜由の割れ目からあふれる愛液を下から上へと舐め取っていく。
まるで餌を与えられた動物のように。
だが、舐めれば舐めるほど、ますます菜由の肉壷からは汁があふれ出る。
それを必死で舐め取る勇太。
やがて、鼻からあごにかけて、勇太の顔はべっとりと菜由の愛液で塗れていった。
それでも勇太は愛撫を止めない。むしろ必死で、あふれる菜由の液を全て舐め尽そうとする。
「うふっ……んン……いいわよ、そのままクリトリスも舐めて」
ことさら強い調子で菜由は勇太に告げる。
言われるがままに、勇太は舌を菜由の小さな肉豆へと伸ばし、ちろちろと舌先で擦った。
「ん……もっと……もっと全体を舐めて……私の好きなところ、知ってるんでしょ……?」
そう言われて、勇太はますます必死に菜由の陰部を刺激する。
赤く充血した菜由のクリトリスを、口ではさみ、唇をこすりつけた。
やがて、菜由の口から熱くくぐもった吐息が漏れ始める。
「き、気持いい……?」
勇太は愛撫しながら、そう尋ねる。
「ええ……とっても上手よ……あなたはどう?」
「ぼ、僕は……」
そう言って勇太は黙ってしまう。
勇太のペニスは、菜由を愛撫することでますます興奮し、ズボンを突き破らんばかりの勢いだった。
「も、もう限界かも……」
「……ふふ……森崎のあれ、出そうなの?」
菜由の言葉に黙ってうなづく勇太。
一刻も早く、菜由の膣内にその肉を突き入れたい。今や、勇太の頭にはそれしかなかった。
だが、そんな勇太の心を見透かすかのように、菜由は冷酷に言い放った。
「じゃあ、ここでマスターベーションして見せて」
「……えっ……」
思いがけない言葉に、勇太は菜由を見上げる。
「私、あなたが射精するところがみたいわ……。見せてくれたら、させてあげる」
そう言って菜由は、勇太と同じように跪くと、その股間に手を伸ばした。
とっさにそれを止めようとする勇太。
しかし、無常にも菜由は勇太のズボンのジッパーを引きおろすと、中に強引に手を突っ込んだ。
菜由のちいさな手が、勇太のズボンの中をもぞもぞとまさぐる。
そしてトランクスごしに勇太のペニスをじらすように擦る。
「か、神谷さんっ!」
「あは……本当にカチカチなんだ……」
笑いながら勇太のペニスを掴むと、外へと引きずり出す。
赤黒く、怒張した勇太の肉茎が、ジッパーの間から勢いよく飛び出した。
菜由は取り出した勇太のペニスを握ったまま、手を荒々しく上下に動かした。
「ほら、こうするんでしょ?」
初めて経験する菜由のマッサージに、思わず体を振るわせる勇太。
しかし、数度擦っただけで、菜由はぴたりとその手を止める。
「……自分でするのよ。間違わないで」
そう言って立ち上がる菜由。
そして再び勇太の目の前で軽く足を開くと、今度は自分の指でヴァギナの割れ目を開いて見せた。
「……中も舐めて」
勇太はもう何も考えられなかった。ペニスを片手で掴むと激しく擦り始めた。
そして同時に、目の前にさらけ出された菜由のピンク色の膣に、夢中で舌をねじ込んでいた。
「ふぅ……んっ。そ、そうよ……やれば出来るじゃない……ちゃんと、イクまでして……」
その言葉に何度もうなづく勇太。一度動き始めた手は、もう止まるところを知らなかった。
そして、同時に暖かく柔らかな菜由の中の味をむさぼった。
「神谷さんっ、神谷さんっ……」
「ふンぅ……はぁっ……あぁ……」
勇太が小さな声で菜由の名前を呼ぶ。それにあわせるかのように、菜由は淫らな声を漏らす。
やがて、耐え切れなくなった勇太が菜由にか細い声で言う。
「神谷さん……もう、出そう……」
もはや、我慢の限界だった。
一気にその精が吐き出されようとした、そのとき。
どんっ
菜由が力いっぱい、勇太を押し倒した。不意を突かれて仰向けに倒れる勇太。
「いたッ……神谷さん……な、何を……」
だが、その言葉をさえぎるように、菜由が勇太の唇にむしゃぶりついた。
「……前言撤回よ。私もう我慢できないの……」
それだけ言うと、菜由は勇太の腰にまたがり、自らをゆっくりと下ろしていく。
念入りに愛撫された菜由の膣口が、勇太のペニスを迎え入れるようにあてがわれた。
「入れるわね……」
菜由が淫靡な笑みを浮かべながら、ゆっくりと狙いを定める。
次の瞬間、菜由は自らの腰を勢いよく勇太へと沈めた。
「うぁぁぁっ」
「はあぁんっ」
二人の叫びが重なる。一瞬で、勇太のそれは菜由の中に完全に咥え込まれていた。
「か、神谷さん……」
「森崎のおちんちん、いつもよりずっと大きい……」
そうつぶやくと、菜由はためらいがちに腰を上下させはじめた。
小さな菜由の膣内は、勇太の爆発寸前の陰茎をぎゅうぎゅうと圧迫する。
「ふぅっ……はぁっ……ああ……ああっ……に、二週間ぶりの……森崎……」
まるで食いちぎるような激しさで勇太のペニスが締めつけられ、無数の襞がねっとりと絡みつく。
だが、菜由は自らがすっかり勇太をくわえ込んだのを確かめると、ためらうことなく激しい上下運動を始めた。
「か、神谷さん……そんな、そんなに激しくしたら……」
「まだ……出さないで……ちゃんと私をイかせて……」
うわごとのようにつぶやきながら、跳ねるように体全体で勇太をむさぼる菜由。
小さいが形のいい菜由の乳房が、服の下でまるでゴム鞠のように跳ねた。
勇太は必死で射精をこらえ、菜由の動きにあわせて腰を動かす。
そして微妙に角度を変えながら、自らの肉棒で菜由のもっとも乱れるポイントを突いた。
「ふわぁっ、やっ、森崎ぃ……そこぉ……!」
不意に自らの弱点をいじられ、悶える。
菜由は熱に浮かされたように体をゆすり、自らの内部を、勇太のペニスでかき回した。
結びついた秘所から、肉が打ち合わされる音が響く。
「森崎……キスしよ……ね……」
激しく交わりながら、菜由は勇太に覆いかぶさる。
二人の舌が互いを求め合い、蛇のように絡まりあう。
だが、その間も菜由の腰は止まらない。狂ったように勇太の体へと腰をたたきつける。
ヌチュッ! ヌチュッ! ヌチュッ!
打ちつけあう二人の体。唇をかみ締め、快感を全身で味わう菜由。
一方の勇太は、既に限界を迎えようとしていた。
「か、神谷さん……もう、我慢できないよ……」
「私も……私も……もうすぐなの……」
「だ、ダメだよ……抜いてくれないと、な、中で……」
出してしまう、そう言おうとした勇太の言葉を遮って、菜由が言葉を発した。
「抜いちゃだめよ。そのまま中に出して……」
そして、絶頂に向かってますます腰使いを早めていく。
勇太は、菜由に中だししてしまう事を恐れ、思わず逃げそうになる。
しかし菜由は両足で勇太の腰を捕らえ、膣は勇太のものを咥えて放さなかった。
最後の瞬間、勇太の体がびくっと振るえ、次に大きな快感の波が背中を走って駆け抜けていった。
「で、出るっ」
「あァっ……!」
まるで勇太のすべてを逃すまいとするように、菜由の膣がぎゅっと縮こまった。
そこへ、熱い勇太の精液が一気に放たれる。
勇太の分身たちは、菜由の奥へ奥へとほとばしり、受けきれなかったものが、二人の交接した間からあふれ出た。
「はっ……はぁっ……ああ……」
射精の脈動にあわせて、菜由が甘い息を吐き出す。
「うふ……中に、出てる……」
それだけつぶやくと、菜由は力尽きたように勇太の上へと倒れこんだ。
菜由と勇太はしばらく抱きしめあいながら、久しぶりの性交の余韻を味わっていた。
下半身はまだしっかりと結びついたままだ。
「神谷さん……」
「森崎……」
二人はしばらく見つめ合う。互いに目を放すことが出来ない。
「そろそろ、帰ろう……か?」
「う、うん……」
菜由がゆっくりと勇太の上から脇へと体をどける。
ぬらり。
菜由の秘所から、精液と愛液にまみれた勇太のペニスが抜き取られた。
先ほどまでの大胆さが嘘のように、菜由は恥ずかしそうに素早くショーツをはきなおす。
それを見ながら勇太も立ち上がり、汚れた床の始末を始める。
「忘れ物、ない?」
「……大丈夫。ノートPCだけ忘れなきゃいいから」
もう一度部屋を点検し、電気を落とすと、二人そろってPC室を出た。
並んで歩く学校の廊下。
夕暮れが迫り、オレンジ色の太陽が二人を照らしていた。
「おう、神谷、帰りか。副部長から聞いたぞ、終わったんだってな」
曲がり角を曲がったところで、コンピュータ部の顧問である男性教師が姿を現した。
一応、合宿の引率ということで、この二週間学校に通って、ずっと職員室で自分の仕事をしていたのだ。
「はい、先生。おかげさまで何とか」
菜由がそう言ってぺこり、と頭を下げる。
「最初は俺も驚いたがな。この二週間、よく部員を引っ張ったな。ご苦労」
そう言って教師は菜由の肩を軽く叩いた。
「森崎も、すまんな。こいつのわがままに付き合ってもらって」
そんなことはありません、楽しかったです、という勇太の言葉を聞いて、教師は嬉しそうに何度もうなづいた。
「そう言ってくれると俺も気が楽になる。じゃあな、気をつけて帰れよ」
それだけ言って、教師はさっさと歩いていった。
取り残される勇太と菜由。
二人はしばらく教師の背中を見送っていたが、不意に菜由がふふふ、と小さく笑った。
「どうしたの?」
「さっきね、先生と話してたとき……」
そう言って菜由は自分の内股を指で軽くなでる。そして、その指を勇太の方に差し出す。
「……たれてきちゃった」
それは、菜由の膣からあふれた、勇太の精液と菜由の愛液が混ざり合ったものだった。
「え、ええっ!?」
「ふふ、何でもない顔するの、大変だったんだから」
そう言って菜由は指ですくった勇太と自分が交じり合った液を口に含んで見せた。
それを見て、勇太が大事なことを思い出す。
「そ、そういえば、今日は中だし……」
普段ならきっちりと避妊具をつけている。
それは勇太としては当然の菜由に対する配慮だった。
だが、今日は。
「あら、そういえばそうね」
あっけらかんとしている菜由に、勇太は恐る恐る尋ねる。
「も、もちろん安全日なんだよね?そうじゃなきゃ……」
ところが、菜由はそれに大してやれやれ、といったように肩をすくめた。
「私、毎日体温測るのめんどくさくてさー。安全日とか、よく分かんないのよね」
さーっ。勇太には血の気がひいていく音が聞こえた。
「ど、どうしよう……も、もし……その、出来ちゃったら……」
呆然と立ち尽くす勇太に、菜由がいたずらっぽく笑う。
「そのときは、責任とってね。……『パパ』」
「え、ええ? ……えええーっ!?」
絶望的な勇太の叫び。
「あら、あなたは女の子を孕ませて、逃げるような男なの?」
「え……だ、だって今日は神谷さんが……」
「男が言い訳しないのっ……それとも、私じゃイヤ?」
首をかしげて、勇太の顔を覗き込む菜由。少し寂しそうな顔。
勇太はそんな菜由を見て、ううん、と首を横に振る。
「そのときは、責任取るよ」
力強く、菜由の手を握り、そう告げた。
ぽっ、と顔を染める菜由。
「……ありがとう」
それから、手をつないだまま二人は並んで歩き始めた。
「ねえ、今日あなたの家に泊まっていい?」
「え? な、なんで?」
突然のことに思わず聞き返す勇太。
「バス乗って帰んの、面倒なのよねー。親にはうまく言っとくからさ。いいでしょ」
う、うん。ためらいがちにうなづく。菜由は白い八重歯を見せてにっこりと微笑む。
「それに、まだヤリたりないし」
「ええっ!」
「当然、生だからね。どうせ一回も二回も同じでしょ」
勇太、絶句。思わず菜由の手を放して、棒立ちになる。
先を行く菜由が、振り返りながら言った。
「今日は、寝かせないわよ?」
勇太のデスマーチはまだ終わりそうになかった。
−終わり……?−