文化祭。いつもの学校が、まるで遊園地のように非日常の空間にかわる一日。  
見慣れたはずの校舎も、同級生も、普段とは違う顔を見せる。いつもは小うるさい先生も、この日だけは大目に見てくれる。  
文化祭。彼と過ごす、初めての文化祭……!  
 
「ほらーっ、森崎先輩、もっとよく見てあげてくださいよー」  
「ねー、向井、かわいいでしょ?」  
快活な二人の女の子の声に圧倒されて、勇太はおずおずとうなづいた。  
ここは弥子のクラスの1年B組。出し物は文化祭の定番「甘味処」、ぜんざいとみたらし団子が楽しめる。  
勇太は弥子の当番が終わるちょっと前にあわせて1−Bを訪ねていた。  
教室で待ち合わせ、弥子の当番が終わりしだい二人で文化祭を満喫するというのが、かねてからの約束だった。  
だが今、勇太は二人の後輩 ―相原早希と水村洵― にがっちりと捕らえられてしまっていた。  
目の前には、弥子が紺の和服に赤い帯、たすきがけに白い前掛けという姿で恥ずかしげに立っている。  
手には小さな丸いお盆。まるで時代劇に出てくる「茶屋の看板娘」といった雰囲気だった。  
「も、もう! 水村も相原も恥ずかしいからやめて」  
そういって弥子はお盆でちょっと顔を隠す。その様子を見て、早希と洵はにんまりと笑う。  
「なーに言ってんの。このさいなんだから、彼氏に自分の新しい魅力見せつけときなさいよ」  
「そうそう、さっきまであんなにはしゃいでたじゃない。『もうすぐ勇太が来る』って」  
「は、はしゃいでないっ」  
そう言って弥子は顔を真っ赤にしながらお盆を二人に向かって振り上げて見せた。  
きゃーっと楽しそうな悲鳴をあげて、二人は厨房へと逃げていった。  
残されたのは勇太と弥子。二人とも恥ずかしそうに、お互いを見ることが出来ずにもじもじとしている。  
「……でも、よくこれだけ衣装集まったな」  
勇太がぽつりとつぶやく。  
店内には、弥子と同じような格好の女子が数人、同じく和服姿の男子が1人、忙しそうに接客している。  
「……だって、これ浴衣よ?」  
「え?」  
弥子の言葉によくよく見れば、それは勇太にも見覚えのある浴衣だった。  
この夏、二人で祭りに行ったときに着ていたのと同じものだ。  
 
「どうせ甘味処するなら、雰囲気出して和服にしようって盛り上がったんだけど、さすがにね」  
数がそろわなかったので代用ということらしい。  
勇太は、不意にクラスの雰囲気が茶店というより縁日に変わった錯覚を覚えた。  
「寒くない?」「中にTシャツ着てるから大丈夫」  
顔を見合さずに、言う。勇太は横目でちらっと弥子を見てから、そっとつぶやく。  
「でも、よく似合ってる。……その……かわいいよ」  
「あ、ありがと……」  
そう言って二人はまたもじもじと照れあう。  
すでに初体験も済ませたというのに、まだ付き合っているという事実だけでも恥ずかしい勇太と弥子だった。  
「じゃあ、行こうか」  
そう言って勇太は先にたって歩き出す。その後ろに黙って続く弥子。人前ではまだ手もつなげないのだ。  
それを目で追う二つの黒い影。早希と洵。  
『いけませんなあ……あんなことでは』  
二人の声が重なった。  
 
 
夕闇が久夏高校を覆う。  
生徒達の名残惜しさを振り払うかのように、校庭のキャンプファイヤーが全てを灰にしていく。  
看板も、劇の衣装も、弥子たちの甘味処の暖簾も、何もかも。  
キャンプファイヤーの周りは人だかりが出来ている。そんな様子を遠くから弥子と早希と洵の三人はぼんやりと眺めている。  
早希と洵は制服姿で。勇太と遊んでいて着替える暇のなかった弥子は、浴衣に前掛けのままだった。  
「終わったね……」  
「そうね」  
弥子は早希の言葉に一言つぶやく。  
弥子は今日一日、勇太と楽しく遊んだ。体育館で軽音部のコンサートを聴いたり、二人でゲームしたり焼きそばを食べたり。  
でも今はそれも嘘のよう。  
明日からはまたいつも通りの学校生活が始まるのだ。  
今日という日は、弥子と勇太にとって、大事な思い出になるのだろうか?  
それとも幼い日の約束のように、消え去ってしまうものなのだろうか?  
弥子には、分からない。だから、ぼんやりと今日一日を振り返るために、ここに座っているのかもしれなかった。  
 
「おーい」  
遠くから、馴染み深い声が聞こえる。  
その声に、三人は一斉に声のした方を振り返る。勇太が軽く手を振りながらやってきた。  
「こんなところにいたんだ。キャンプファイヤーの近くかと思って、探したよ」  
「ちょっと、三人でたそがれてたの」  
そう言って弥子は立ち上がる。早希と洵もつられて立ち上がった。  
「ふーん……なあ、ちょっと歩かないか?」  
そんな勇太の言葉に、弥子ははっと目を見開き、それから小さくうなづいた。  
それを見て、また勇太はくるりと身を翻して歩き出す。弥子が続く。  
ふと何かに気がついたように弥子が立ち止まる。  
「じゃあ、また後でね」  
弥子は一瞬振り返ると、早希と洵にそう告げて、勇太を小走りで追いかけた。  
勇太と弥子が闇の中に消える。  
二人をしばらく見送った早希と洵は、やがてどちらともなく顔を見合わせた。  
「後、つける?」  
「モチ」  
そういうと、二人は勇太と弥子の後を静かに追った。  
 
 
「今日は楽しかったよ」  
「わ、私も」  
そんな会話が、早希と洵の耳に届く。勇太と弥子は人波をさけるように、校舎の脇を並んで歩いている。  
「色気、ないわねえ」  
早希がそんな感想を漏らす。  
どうせ人目が無いんだから手をつなぐぐらいすれば良いのに、早希がそう思ったときだった。  
くしゅんっ  
弥子が小さなくしゃみをした。いくら中に着込んでいるとはいえ、この時期、しかも夜に浴衣は寒い。  
両腕で自分の肩を軽く擦る弥子。それを見て、勇太は無言で弥子に近づく。  
学生服の上着を脱ぐと、勇太は弥子の肩に黙ってそれを掛けた。  
「あ、ありがと……」  
 
恥ずかしそうにつぶやく弥子。勇太はまた黙って歩き始める。  
「水村、見た?」  
「見た見た。なんかマンガみたい……森崎先輩もなかなかいいとこあるわね」  
そんな感想を互いに交わしつつ、早希と洵は気づかれないように勇太と弥子の後を尾行し続けた。  
やがて、二人(正確には四人だが)は、普段でもめったに人の来ない「校舎裏」にやってきた。  
静かに立ち尽くす勇太と弥子。それを木の陰にしゃがみこんで見守る早希と洵。  
「こんなところに向井を連れ込んで……森崎先輩何する気かしら?」  
「何って……そりゃナニでしょ。やっぱキスぐらいはするんじゃない?」  
二人の少女はそうささやきあうと、黙って勇太と弥子の様子に見入った。  
しばらく黙っていた勇太は、やがて静かに弥子の肩を抱き、ぎゅっと抱きしめた。  
「勇太?」  
不意のことで言葉が途切れる弥子。勇太は黙って弥子を抱きしめ続ける。  
やがて、弥子もおずおずと両腕を勇太の体に回し、しっかりと抱きしめた。  
抱きしめ合いながら、目と目を合わせる二人。  
どちらともなく唇が重なり、月に照らされた影は一つとなった。  
「キスしてる……」  
「だから、そりゃするって。当たり前じゃない」  
そう言いながら、生まれて初めて目にする生のキスの現場に心を奪われる早希。  
くちゅ、ちゅっ……  
勇太と弥子の口元から、そんな濡れた音が響く。  
音にあわせて二人の顔がうねるように動くのが、早希と洵にもはっきりと分かった。  
「ディープだ……」  
「は、入ってるんだ……舌」  
二人の声が聞こえたかのように、勇太と弥子は互いの唇を離して、舌をくねくねと絡めあった。  
その様子が早希と洵の目にも映る。  
甘いため息が口から漏れ、弥子は思い切り勇太の頭を抱きしめる。  
そして飛び上がるようにして勇太の唇にまた激しく自分の唇を重ねた。  
「ふぅ……うぅん……」  
初めて聞く、友人の甘美な吐息。狂ったように動く唇。早希と洵の目はその光景に釘付けにされた。  
勇太と弥子は長い長いキスを交わしていたが、不意に弥子の体が勇太からぱっと離れた。  
 
「ど、どうしたんだろ……」  
キスの様子に夢中で見入っていた早希は、誰に言うでもなくそうつぶやいた。洵も驚いてことの成り行きを見守る。  
弥子は黙って勇太の顔を見ている。  
なぜか勇太は恥ずかしそうにもじもじと手を自分の胸の前で合せている。まるでいつもと逆だった。  
「……勇太のスケベ……」  
そんな言葉に早希と洵は驚いて勇太を見る。  
言われた勇太はますます恥ずかしそうに体を縮こませた。  
「……こんなにして、私にあたるんだもん……」  
そう言ってためらいがちに弥子は勇太の股間に手を添える。その手がやさしく上下に動いた。  
「それは……」勇太がうつむきがちにつぶやく。  
「それは……?」  
弥子の手が勇太のふくらみを円を描くようになぞる。いたずらっぽい瞳が勇太を覗き込む。  
「僕は弥子が好きだから……や、弥子がかわいすぎるから……いけないんだ」  
驚いたように、勇太を見つめる弥子。  
顔を赤らめながら、静かに勇太の前にひざまずいた。  
「もうっ……バカ……」  
そう言うと、おずおずとズボンのチャックに指を伸ばす。  
じーっ  
弥子の手がファスナーをおろす音。  
弥子は人差し指と親指だけを恐る恐るズボンの中に入れると、勇太のペニスをつまむようにして取り出した。  
ぎょっとする勇太。そして、初めて見る男の陰茎に食い入るように見入る早希と洵。  
「今日は……特別なんだから……いつもなら、こんなとこでしてあげないからね……?」  
上目遣いにちらっと勇太を見ると、弥子は充血しきった勇太のモノをぱくり、と口に咥えた。  
「……!!」  
早希と洵の声にならない叫びが上がる。  
だがもちろん、そんなことはおかまいなしに、弥子は勇太のペニスをしゃぶっていく。  
最初、口の中でそれを弄んでいた弥子は、やがて頭全体を前後に動かし、勇太自身を愛撫し始めた。  
ちょうど勇太の体が影になって、早希と洵からその様子ははっきりとは見えない。  
しかしためらいの無い弥子の動きから、彼女がフェラチオという行為に慣れきっていることが伺えた。  
そして、その目には喜びの色が浮かんでいることも。  
 
早希と洵は親友のその姿に驚きを隠せない。  
人前では手もつなげない弥子が、今は大胆に彼の陰茎を咥えている。そしてそれを喜んでいる……。  
「や、弥子……」  
勇太の途切れ途切れの声が、三人の少女の耳に届いた。  
しかし三人の中で、ささやきの意味をちゃんと理解したのは弥子だけだった。  
「うぅん……いいよ……んン……そのまま出していいよ……」  
そう言うと、また弥子は激しい奉仕に没頭する。  
その激しさに、肩にかかっていた勇太の上着が大きな音を立てて滑り落ちた。  
「弥子……弥子……や、やっこぉ……ッ」  
内股を押さえるようにして、勇太の体が折れ曲がる。そして、腰から背中に掛けて、勇太の体をぶるっと震えが走った。  
「ふぅっ!!  ……んっ! ……うん……っ……」  
弥子が夢中で勇太の腰にすがりつく。まるで母乳を求める幼子のように、勇太のペニスをむさぼった。  
静寂が戻った。弥子はゆっくりと咥えていたものから口を離すと、陶然として座り込んだ。  
ごくっ  
弥子の喉がなる音が静寂を破った。  
勇太の精を一滴もこぼさぬよう、弥子は口を固く結び、ゆっくり口の中のものを飲み込んでいく。  
そして、勇太の精液を嚥下し終わると、弥子はほぉっと大きな息をついた。  
(の、飲んじゃったんだ……森崎先輩のせ、精液……)  
早希には弥子の顔がはっきりと見えた。  
熱っぽい目で勇太を見上げながら、肩で息をしている。  
その口元から、うっすらと飲みきれなかった白いしずくがたれている。  
そのしずくに気づいた弥子は、指でそれをぬぐうと、いとおしそうに舐め取った。  
勇太は力が抜けたように校舎の壁にもたれかかっている。  
彼もまた弥子と同じように肩で息をしながら、快楽の余韻を味わっているようだった。  
やがて、のろのろと体を起こした勇太がまず口を開いた。  
「弥子……まだ……元気なんだけど……」  
それを聞いた弥子が、幸せそうな笑みを浮かべてうなづく。  
「いいよ。しよ……」  
(な、ナニ言ってんの向井ってばっ!!)  
早希が言葉にならない声を挙げた。  
 
いくら人がめったに通らないとはいえ、ここは校内、しかも学園祭で人だらけなのだ。  
もし誰か通れば……。  
しかし、そんな事はまるで気にしないように勇太は弥子の手を取り、静かに立たせた。  
「じゃあ、そこの木に手をついて……」  
「う、うん……こ、こう……かな?」  
弥子は木に両手をついて、尻を勇太の方に向ける。浴衣に覆われた弥子の小さなヒップが勇太の前にさらされている。  
「じゃあ、脱がすね?」  
そう言うと、勇太は大胆に弥子の浴衣のすそを捲り上げていく。そして、余った布を弥子の腰のところにまとめた。  
弥子の下半身が月明かりにはっきりと現れた。  
健康的なすらりとした両足、白く滑らかな曲線を描くヒップ。そして、うっすらとした茂みまで。  
「やっぱり、パンティはいて無いんだ……」  
「あ、当たり前じゃない。ラインでちゃうでしょ……」  
嬉しそうに勇太がつぶやく。弥子は勇太の方に顔だけ向けながら、ちょっとすねたように言う。  
「じゃあ、いくよ」  
勇太の言葉に、弥子は軽くうなづく。そして、自分の尻を勇太に向かって少し持ち上げてみせた。  
勇太は弥子の腰を両手でしっかりつかむと、ペニスを茂みに向かってゆっくりと近づけていく。  
そして、その入り口で少し動きを止める。  
ペニスの先で弥子の陰毛の茂みを掻き分けると、しばらく勇太は動きをとめ、弥子のその部位を観察した。  
「じ、じらさないでっ……」  
待ちきれなくなったのか弥子がか細い抗議の声をあげた。  
「……いんらん」  
からかうような勇太の声。  
「ばっ馬鹿ぁ……」  
そう言い返す弥子の声には、怒りはない。ただ愛しい勇太の肉棒を待ち望む響きだけがあった。  
「入れるよ……」  
勇太は一呼吸おいて、ぐっと弥子の中に自分の竿を突き入れた。  
「ふぅっ!」  
小さく響く弥子の歓喜の声。軽々と勇太のペニスが弥子の中に飲み込まれた。  
勇太は根元まで入ったのを確かめるとゆっくりと腰を動かしていく。  
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ  
やがて、激しい勇太の腰使いに合わせ、つながった陰部同士がいやらしい音をたて始める。  
 
「ゆうた……おっぱい……触って……お願い……」  
後ろから激しく突かれながら、弥子がそうつぶやく。  
勇太は弥子の腰から手を放すと、服の上から弥子の胸を揉みしだいた。  
「ブ、ブラもしてないのか……?」  
いつものスポーツブラのそれではなく、まるで直に触れたような感触に、驚いて勇太が問う。  
「そ、そんなわけないでしょっ、ばかッ……。ワイヤが入ってないのしてるの。線がでないようにね……」  
そう憎まれ口を叩く弥子の声にも力が入らない。  
勇太は腰使いに合わせて、まるで乳をしぼるように弥子の胸を揉んでいく。  
「……最近、大きくなったなあ……弥子の胸……」  
「う、うん。勇太に揉んでもらってるから、かな? ……も、もうすぐ、し、Cカップ……だよ?」  
恥ずかしそうに告白する弥子。  
「それじゃあ、もっと頑張って揉まないとな……」  
「……ばかァ……」  
その言葉を最後に、勇太と弥子は言葉も交えず、ただ夢中で互いの体を味わった。  
 
早希は、目の前で繰り広げられる淫靡な光景に、自分の下腹部が熱くなるのを感じていた。  
オナニーの経験はあるけれど、そんなものとは比べ物にならない、陰部にこもる熱。  
思わずスカートの中に手が伸びる。  
はっとして、その手を止める。  
隣には洵がいる。いくらなんでも、友達のすぐそばで自慰を始めるわけにはいかない。  
そう思って、そっと隣の洵の様子を見たとき、早希はまた信じられないものを見た。  
洵の右手は、スカートの中でもぞもぞと動き、もう片方の手は制服の上から胸をいじっている。  
(水村……)  
ほんのすぐ先では、親友とその彼氏が激しくセックスしている。その隣ではそれを見て自らを慰める友人。  
早希の理性は、とろけるようにどこかへ消え去っていった。  
自らの手でスカートをまくり、ショーツの中に指を突っ込む。じっとりとした愛液が早希の指に絡む。  
そのぬめりを指全体にしっかりと絡めてから、早希は膣の中に自分の指を侵入させた。  
ぬちっ、ぬちっ、ぬちっ……  
「あ、あっ、あんッ……ゆうたぁ……あっ……」  
「弥子……弥子ぉ……」  
 
勇太と弥子がお互いを呼びあう。  
くちゅっ、くちゅっ、くちゅ……  
「はぁ……はぁ……」  
隣から聞こえる、洵の吐息、オナニーの音。  
ちゅく、ちゅくっ、ちゅくっ……  
自らの生み出す、ヴァギナをいじくる音。  
早希は、目の前の勇太と弥子の光景も目に入らない様子で、自らの行為に没頭していった。  
その「自慰」という行為そのものが、早希の性的興奮を高ぶらせる。  
そして、早希には分からなかったが、実はそれは洵も同じだった。  
「あぁんっ、はぁっ、あっあっあっあっあっあっ……」  
リズムを高めていく弥子の声。それと同じペースで小刻みに叩きつけられる勇太の腰。  
「イ、イくっ、ゆ、ゆうたぁッ!!」  
「弥子ッ!」  
二人の絶頂の叫び。そして、  
「いやぁぁっ!」  
「あぁぁぁんっ!」  
オルガズムに達した洵の声と、早希の声。4つの声が、同時に校舎裏に響いた。  
 
 
早希が我に帰ったとき、既に勇太と弥子の姿はなかった。おそらく、キャンプファイヤーの方に戻ったのだろう。  
ふと隣を見ると、顔を赤く染めた洵が、黙って早希を見ている。  
自分の姿に気づく。スカートを捲り上げたはしたない姿。あわてて早希はスカートを元に戻した。  
興奮が去ってしまえば、残ったのは親友の前で自慰にふけったという忌まわしい事実だけ。  
なぜこんなことをしてしまったのか。興味本位の出刃亀ですら、今は弥子への冒涜に思えた。  
互いに何も言えず、じっと黙っている。  
「あ、あのさ……」  
洵が先に口を開いた。目を伏せていた早希は、驚いたように洵を見つめる。  
「わ、私達も、頑張って彼氏……見つけようね?」  
と、洵は恥ずかしげに頬をぽりぽりとかきながらつぶやいた。  
その言葉に早希も思わず大きくうなづく。  
 
「そ、そうね! む、向井ばっかりいい思いして、ずるいよね!?」  
そう言って勢いよく立ち上がる。とにかく、空元気をふるわなければ動けなかったのだ。  
「さ、戻ろう? キャンプファイヤーのところにいないと、向井と森崎先輩に変に思われちゃう」  
「そう……だね」  
二人の少女はゆっくり並んで歩いた。  
明日から、弥子や勇太とまた何ごともなかったように付き合えるのか、二人にも確信はなかった。  
いや、今や早希と洵にも、互いに言いあらわせないわだかまりがある。  
今日の出来事は、文化祭というハレの場が生み出した、一時の気の迷いなのだろうか?  
それともこれが友人達の真の姿なのだろうか?  
早希はそこまで思って、考えることを止めた。  
そんなことは、時と共に分かること。今考えても仕方が無い。  
それより、あとわずかな後夜祭を楽しまなきゃ!  
校庭まで戻ってきた。キャンプファイヤーの炎が目に映る。そしてそこには親友とその彼氏の姿もあった。  
軽音部やブラバンが奏でる陽気な音楽。文化祭もいよいよ終わり。  
「相原ーっ! 水村ーっ! どこ行ってたのーっ?」  
弥子が大きな声で二人を呼ぶ。そして大きく両手を二人に振って見せた。  
「ねえっ、みんなで踊ろうよ! ね? 勇太も!」  
そういって、弥子は勇太の手を握るとキャンプファイヤーを囲む生徒達の踊りの輪に走っていく。  
早希と洵は、その様子を見て、顔を見合わせて笑った。  
「いこっか?」「うん」  
そして、二人手をとって、勇太と弥子の後を追いかけた。  
 
―終わり―  
 

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