「ねえ、今日ウチに遊びに来ない?」  
いきなり神谷さんにそんなことを言われた。  
「今日? 今から?」  
「そうよ。それとも、何か用事ある?」  
神谷さんはいつでも唐突だ。僕の都合なんて気にしたことない。  
「用事ある?」って聞いてるのも、まあ社交辞令みたいなもんだ。  
「特にはないけど……」  
洗濯物は溜まってないし、夕飯の買い物は昨日済ませてある。  
父さんは帰りが遅くなる日だし、るり姉は予備校で、たぶん夕飯は外食で済ませる。  
「じゃあ、いいわね」  
「それにしても、帰り際になっていきなり言うなんて」  
そう抗議しても、神谷さんはその猫みたいな目を細めて笑うだけだ。  
「今思いついたんだもの、しょうがないじゃない?」  
まあ、しょうがないか、と思ってしまう僕も相当神谷さんに毒されてるみたいだ。  
でも、そんなわがままな神谷さんに僕はるり姉の面影を感じてしまう。  
……だから、僕は神谷さんが好きなのかもしれない。  
「じゃあ、行きましょ。一昨日バー○ャの新作を買ったから、対戦しましょうよ」  
負けないわよ、とガッツポーズを作る神谷さんを追って、僕は歩く。  
神谷さんといっしょに帰るようになって結構経つけど、家に招かれたのは初めて。  
だから、言葉とは裏腹に僕は結構嬉しかった。  
 
神谷さんはバス通学だ。  
神谷さんが使う路線は、途中に久夏を含めて高校が三つ、それにある大きな製薬会社の工場がある。  
だから夕方はいつも満員だ。  
はっきり言ってラッシュアワーの電車並と言っていい。  
「一本遅らせたら?」と神谷さんに言ってみたが、一時間ほどは混み具合はいっしょらしい。  
出来たら時間を変えたいんだけどね、と神谷さんはうんざりしたように呟く。  
しかし部活で遅くなった挙句、一時間も帰宅時間を遅らせる事は出来ないんだそうだ。  
まあ、女の子の家なら当然心配するよな。  
とはいえ。  
 
あまりの混み具合に、はっきり言って身動き一つ取れない。  
僕の目の前に立っている神谷さんが、ぎゅっと僕の方に体を押し付けてくる。  
もちろん、押されているからだ。  
でも、神谷さんの体の感触に、僕は思わず感動してしまう。  
「ああ、神様。女の子はなんでこんなにふわふわなんでしょう?」  
思わず小さな声で感謝の言葉を唱える。  
僕の体に神谷さんの腕や肩が押し付けられているけれど、男と違って、それは本当に柔らかい。  
男とは違う材料で出来ているんじゃないかと思うぐらいだ。  
……どさくさにまぎれて、軽く抱きしめても怒られないかな?  
そんな馬鹿なことを思わず考えてしまう。  
頭に血が登るのが自分でも分かった。  
駄目だ駄目だ、変な事考えると神谷さんにばれちゃうぞ。彼女、勘が鋭いからな。  
そう思って神谷さんを見ると、彼女も心なしか顔が赤い。  
やっぱり、僕と密着して恥ずかしいのかな?  
「神谷さん、大丈夫? 苦しくない?」  
僕の言葉に、一瞬遅れて神谷さんははっと顔を上げた。  
「え? え、ええ。大丈夫よ。ま、全くこんなに混んでちゃ、まるでサウナね」  
そう言って顔をしかめる。  
僕はその様子にふふ、と笑う。  
そんな風に僕たちは降りるバス停まで言葉少なに寄り添っていた。  
 
結局その日、僕は神谷さんちに行って、お茶とお菓子(なんと神谷さんが用意した!)をご馳走になり、  
二人で一時間ほどゲームして楽しく過ごした。  
 
 
**  
今日も、私は森崎を家に誘おうと思う。  
私が初めて会った、心許せる男の子だから。  
「家に遊びにこない?」と誘うまで、こんなに時間がかかったのはたぶん私の男に対する不信感のせいだと思う。  
それとも、私がただ臆病なせいなのかも。  
 
「私は、自分の好きなように生きる」。  
普段からそう言っているくせに、結局私は誰かに寄り添ってもらわないと生きていけないらしい。  
そんな自分が時々イヤになる。  
森崎は、そんな私を嫌いにならないだろうか。  
私はそこまで考えてから、目の前の用事に集中することにした。  
部活の仕事を溜め込んで、また副部長がヒステリーを起こすといけない。  
一時間ほどでコンピュータ部の仕事を片付けてしまうと、私はカバンを背負って校門を目指した。  
やっぱり、いた。  
最近はよく森崎と校門前で会う。  
もしかして私を待っていてくれているのかも、と思うときもあるけど、たぶん偶然だろう。  
私がそこまで人に好かれる人間じゃない事ぐらい、自分でも分かってる。  
「森崎、やっほー」  
私はいつもの顔を作って、にこやかに話しかける。  
「ああ、神谷さん。今帰り?」  
「ええ、あなたも?」  
何気ない会話。でもそれが私には嬉しい。  
「ねえ、今日もウチに遊びに来ない?」  
「え? 今日も?」  
森崎の顔が曇る。さすがに二日連続は無理だったかな。  
「ええ。もし用事がなければ、ね」  
慌ててそんな風に付け足す自分が嫌い。本当は無理してでも来て欲しいくせに。  
森崎は考え込んでいる。この顔は、間違いなく何か用事がある顔だ。  
……きっと断る口実を探しているんだろう。  
ごめんね。私がわがままだから。  
忙しいならいいわ、なんて。そんな気持ちとは反対の言葉を私が発しようとしたとき、  
「いいよ。遊びに行く」  
森崎が笑いながらそう答えた。  
「……いいの?」  
「うん。別に用事もないし。神谷さんの誘いを断ったら後が怖いしね」  
「ぶつわよ、森崎」  
 
そう言いながらも私は顔がほころぶのを隠せない。  
「じゃ、行きましょ」  
嬉しそうな顔を見られないよう、私は先に歩き始めた。  
 
バスは相変わらず混んでいる。  
そして、その混雑が私を恐怖させる。  
身動きできない、牢獄。  
何度か乗るバスを変えてみたけれど、結局結果は変わらない。  
いつもと同じ、人で一杯のバスの中。私の目の前に森崎がいる。  
相手のぬくもりや、鼓動の音が分かりそうなほど密着しながら私たちは揺られている。  
このまま、森崎の腕に守られるように抱きしめられたら、どんなにいいだろう。  
でも。  
それがかなわない願いだってこと、私は知っている。  
そのときだった。  
来た。  
いつもと同じ強さで、背後から私の背中に触れる手の感触。  
ごつごつとして、節くれだった指。固く、がさがさとした皮膚。  
それが私の背中をそっと撫でている。私は思わず身を固くする。  
その反応に気づいたのか、私を撫でる手はいたぶるように私の背をなんども指でなぞった。  
反応したら負け、反応すれば相手はますます喜ぶ。  
そう思っていても、私の体は恐怖ですくむ。  
手がつーっと背をなぞりながら、私のお尻の方に下がっていく。  
そして、お尻のふくらみをスカート越しに軽く撫でた。  
「くっ……」  
思わず挙がりかけた悲鳴を私はかみ殺す。  
ふと目を上げると、森崎が不思議そうな顔で私を見ている。  
たぶん、人ごみに押されて苦しんでいるとでも思っているのだろう。  
 
私を触る手は、しつこくしつこく私のお尻を撫で回している。  
いつの間にか両手で、私のお尻を持ち上げるように下から上に。  
 
いきなり、その手がぐっとお尻の肉をわしづかみにした。  
「ひ、ひゃっ!」  
今度は隠しきれなかった。思わず甲高い声を出す。  
「どうしたの、神谷さん」  
森崎が驚いて問う。私は眉間にしわを寄せ、困った顔を作る。  
「う、後ろから押されてるのよ、全く……」  
そう言っているそばから、手が私のスカートを捲り上げていく。  
今日も、されるのだ。  
お尻を丸出しにされ、私は動けないまま愛撫を受ける。  
ショーツの上からしばらく触ったあと、手は腰の方からそっと中に入ってくる。  
角質化した指の感覚が、じかに私のお尻の谷間をなぞる。  
思わず逃げようとするが、周囲を人に囲まれ、私は身をよじる事も出来ない。  
ショーツにもぐりこんだ手はお尻を撫でながら、静かにショーツをずらしていく。  
指がお尻の谷間から肛門へと伸び、私の穴をぐにぐにと押す。  
気持ち悪い。  
吐きそうになるのをぐっとがまんして、私は唇をかみ締める。  
森崎に、助けて欲しい。  
でも、どう言えばいいのか。  
毎日痴漢されているから助けて、なんて。  
絶対言えない。  
涙が出そうになるのをこらえながら、私は平静を装うので精一杯だった。  
「くっ……ふうぅ……」  
かみ殺しきれなかった苦痛の声が、吐息となって漏れる。  
それが聞こえたのか、痴漢の手はさらに嬉々として動きを強める。  
やがて、私の肛門を撫で回していた指が、私の体のさらに前の方に動き出す。  
さわ、と指の先が私の茂みに触れる。  
指の腹が、私の陰唇に達した。下から私の股間を包むようにして、中指で陰唇を擦る。  
もう、止めて。  
喉元まででかかった声は、恐怖でかき消される。  
手がさらに前進し、私の陰部全体を手で包みながら、クリトリスを人差し指と中指で挟む。  
 
そして、それをそっと撫で回す。  
まだ、私の「中」に指を入れる事はしてこない。  
でも、もし次の瞬間指を挿入されたら。それを考えると怖くて体の震えが止まらない。  
それなのに、私の体は愛撫に反応し、膣からじわりと愛液が染み出す。  
そのぬめりを楽しむように、指が円を描くように動いた。  
割れ目にそって何度も指がなぞる。そして、私の愛液で濡れた指で、さらにクリトリスを弄んだ。  
私は怖くて、悲しくて。  
でも何も出来なくて、ただじっと目の前の勇太の胸の辺りを見つめていた。  
 
 
**  
「くっ……ふうぅ……」  
神谷さんが変な声を出したので、よほど周りの人に押されているのか、と声をかけようとしたとき。  
僕は気づいた。  
神谷さんの顔が真っ赤だ。しかし、それはバスの中の蒸し暑さのせいじゃない。  
必死で隠しているが、はあはあと荒い息をつくさまは、まるで……。  
そっと目線を神谷さんの背後に移すと、不自然なまで神谷さんの背後に密着する男がいた。  
この混雑の中、つり革も手すりも持たず、両手を下ろしている。  
その手が神谷さんの方に押し付けられているのが分かった。  
(痴漢だ……!)  
でも僕はどうして良いのか分からない。  
大きな声を出して注意すればいいのか、黙って相手の手を取るのがいいのか。  
もし間違いだったら? 間違いでなくても、神谷さんが恥をかかないか?  
僕の頭の中は真っ白だ。  
いや、本当は怖かったのかもしれない。初めて見る痴漢というものが。  
そしてその被害者が好きな女の子だという事が、怖かったんだ。  
その時、バスが急停車した。  
乗っていたお客全員が車の前の方に倒れこむ。  
その勢いが僕にある決断をさせた。  
よろけたふりをしながら、神谷さんを片手で抱く。  
そして、抱きしめたままブレーキの反動で後ろに戻るのに合せて僕と神谷さんの体を強引に入れ替える。  
 
「も、森崎?」  
神谷さんが驚いてかなり大きな声を上げた。  
周りの人が迷惑そうに僕らを見たが、あえて無視した。そのまま痴漢と神谷さんの間に割り込む。  
「ごめん、よろけちゃった」  
わざとらしく神谷さんに謝ると、僕は窓の外に目をやる。  
それ以上神谷さんに追求されないように。  
神谷さんもそれ以上は何も聞いてこなかった。  
だけど視界の端で、神谷さんがそっと乱れたスカートを直しているのが分かった。  
 
 
次の日、僕はどうしようかためらいながらも、校門で神谷さんを待っていた。  
今日も神谷さんといっしょに帰るべきか、否か。  
昨日の不自然な態度で、僕が痴漢に気づいたことを、神谷さんは悟ったに違いない。  
それを、神谷さんはどう思うか。  
でも。好きな人が苦しんでいるなら。  
それを助けるのが男、いや人として当然じゃないか。  
そんな風に僕が悩んでいるところに、神谷さんがやってきた。  
僕を見て、とまどったように口ごもる。  
「神谷さん……今帰るところ、だね」  
「う、うん……」  
そう言って、僕たちは黙り込んでしまう。何を話していいか、分からない。  
「じゃ、じゃあね。私急ぐから」  
そう言って僕の側を通り過ぎようとする神谷さんの腕を、僕は突然つかんだ。  
「な、何っ?」  
僕の手からまるで逃げるように、神谷さんは体を引いている。  
「今日も……神谷さんの家に行くよ」  
「な、なんで」  
「行きたいから。それじゃ、駄目?」  
僕は神谷さんの目を見つめる。  
僕の視線を避けるように、目を伏せる神谷さん。  
 
再び沈黙が流れた。  
不意に、僕の耳に蝉の鳴き声が聞こえてきた。沈黙が生んだ、一瞬の静寂を埋めるように。  
僕は神谷さんを見つめ続ける。互いに黙ったまま。  
やがて、おずおずと神谷さんは口を開いた。  
「……いいわよ。遊びに、来て」  
 
 
**  
昨日と同じように、私の前に森崎がいる。  
私の背後には大勢の人。  
その中に、きっといるだろう。アイツが。  
昨日、きっと森崎は気づいた。私が痴漢にあっている事に。  
なのに、私といっしょにバスに乗ろうとしている。  
私は森崎の気持ちが分からなくて、戸惑ったように森崎を見つめていた。  
助けてくれるのだろうか、私を。  
それともそれは考えすぎで、単に私と家で遊びたいだけなのかもしれない。  
でも、それはおかしい。森崎は昨日痴漢に気づいたはずなのに……。  
自分の考えもまとめられないまま、バスに乗ってしばらく経ったときだった。  
来た。  
私の背中にぺたりと触れる、あの「手」が。  
その手は昨日と同じように、いや、いつもと同じように、私のお尻のほうへと動いていく。  
思わず嫌悪感から、森崎の方に体を逃がそうとする。  
でも、人で一杯のバスの中で、私は逃げる事が出来ない。痴漢の手は容赦なく私を撫でていく。  
手が、私のお尻に触れようとした、その時だった。  
森崎が、私を抱きしめた。  
 
 
**  
僕は神谷さんを抱きしめながら、神谷さんの背中を触れる手を思い切り掴んだ。  
神谷さんの向こうにいる、小柄な男が驚いたようにこちらを見た。  
一見、ただのサラリーマン風の、スーツ姿の男だ。  
 
「いい加減にしてください。次見つけたら、警察に言います」  
僕は出来るだけ低い声で言い放った。  
男は目を見開き、僕をじっと見ていたが、やがておずおずとうなづく。  
そして、怯えたように視線をそらすと、男は僕にそっと背を向けた。  
それを見届けてから、僕は神谷さんの背中をそっと抱きしめる。  
神谷さんの体全体から、緊張が抜けていく。  
そして、いつのまにか彼女の手は僕の体に柔らかくまきついていた。  
 
 
バスを降りるとすぐ、僕は神谷さんの体を解き放った。  
まるでタイミングを合わせたように、神谷さんも僕の体を放す。  
お互い目を合わす事もなく、黙って歩く神谷さんの家までの道。  
傾きかけた日が、僕らをオレンジ色に染める。  
今日で三度目の神谷さんの家は、相変わらず誰もおらず、静まりかえっていた。  
お父さんは当然仕事、お母さんは町内会やPTAの用事で忙しいらしい。  
黙って神谷さんは自宅の扉を開け、続いて入った僕は居間に通された。  
「着替えてくるから、ちょっと待ってて」  
僕が神谷さんに話しかけようとすると、それを制するかのように神谷さんが言った。  
僕の返事も待たずさっさと自室へと消える。  
僕は仕方なく居間のソファーに座った。  
目の前にテレビがあるが、勝手につけるわけにもいかない。僕は手持ち無沙汰に部屋を見回していた。  
相変わらず蝉の声がやかましい。いつもは気にならないのに、今日はやけに耳に響く。  
 
やがて、普段着に着替えた神谷さんが戻ってきた。  
シンプルなTシャツにデニムのスカート。  
「麦茶で、いい?」  
僕がうなづくと、神谷さんは黙って台所に行き、麦茶のコップを持って帰ってきた。  
そして、僕の隣に腰をかけると、はい、とコップを僕に手渡した。  
ありがとう。そう言って僕はお茶を飲む。  
そのときになって初めて、自分がとても緊張していて、喉がカラカラな事に気づいた。  
 
思えば、昨日ああすればよかったのに。  
今となっては後悔ばかり沸いてくる。  
そうすれば一日でも早く、神谷さんを助けてあげる事ができただろうに。  
僕は麦茶を飲み干すと、神谷さんの方に目を向けた。  
そのとき、神谷さんは、麦茶に口もつけず、僕を見つめているのに気づいた。  
「神谷さん……?」  
神谷さんはほっとしたような、柔和な顔をしている。  
つ、と僕を見上げ、静かに口を開いた。  
「……今日は、ありがとう」  
そう言って微笑む。それだけで、僕は救われたような気分になる。  
「本当は、早く森崎に助けて欲しかった。でも、言えなかった……」  
「……うん」  
「怖かったのもあるけど、それ以上にあなたにどう思われるかって考えたら、とても言い出せなくて」  
神谷さんは恥ずかしそうに顔を伏せ、笑う。  
「ね……私の事、どう思う?」  
相当頭に血が登ってたんだろう。僕は額に汗をかきながら話す。  
「か、神谷さんが悪いんじゃないよ! アイツが悪いんだから、神谷さんが気にする事ないよ!」  
僕はその場で立ち上がりそうになる勢いで話し始めた。  
すると、神谷さんは顔を伏せたまま苦笑する。  
僕はなぜ笑われているのか分からず、思わずその顔を覗き込む。  
「私の聞きたいのは、そんなことじゃないわよ」  
「え、じゃ、じゃあ……」  
「私は、あなたが好き。……だから、あなたの気持ちが知りたいの」  
そう言って僕の方を見上げる神谷さん。その顔が薔薇色に染まっている。  
一瞬、言葉に詰まった僕。  
不安そうな神谷さんの視線が、僕の心を打つ。  
僕は言った。  
「僕も……神谷さんが好きだ」  
 
 
**  
次の瞬間、私は森崎と口づけをしていた。  
はむはむと相手の唇を甘噛みしながら、そっと唇を重ねる。  
唇を軽く舐めると、ちょっと荒れている森崎の唇を私の唇で湿らせていく。  
突然の私のアタックに、森崎は戸惑っていたみたいだったけど、そのすぐ後に、優しく私の体を抱きしめてくれた。  
私はさらに強く唇を森崎に押し付ける。  
森崎は私の頭をそっと引き寄せながら、私の唇を優しく口に含む。  
「ファーストキス、あげちゃった……」  
私が笑いながら言うと、森崎の目も笑ってる。  
「あげちゃったって言うより、僕が奪われたって方が正しくない?」  
「どっちでもいいわよ。お互い初めてなんだし……初めて、よね?」  
「……うん」  
顔を離し、私たちは笑う。  
一瞬見詰め合ってから、もう一度キス。  
今度はお互いの顔を抱き寄せながら、長めのヤツ。  
私の唇全部を口に含もうとするように、森崎の唇が開いたり閉じたりする。  
応えるように私も口を開いた。  
自然に、お互いの舌が伸びて、先っぽで互いにつつきあう。  
暖かい森崎の舌の感触を確かめ、私はゆっくりと舌を差し出していく。  
森崎も、私の舌に沿わせるように私の口の中に舌を入れてくる。  
ぬめぬめとした舌が、私の中を舐めている。お返しに、私も森崎に同じ事をしてあげる。  
森崎の髪を両手でかき抱きながら、私はさらに深いキスをする。  
ディープキスなんて、気持ち悪い。私はそう思っていた。  
だって舌だよ? 相手の口の中に入れるんだよ? って。  
でも、それは訂正。  
私はディープキスが大好きだ。森崎となら、ずっとしてていい。  
こんなに暖かくて、こんなにいとおしく思うなんて。以前の私に説教したい気分。  
「ふうぅ……」  
森崎が大きく息をついて私の顔を放した。  
 
「ぷはぁっ……」  
私も同じ。二人ともはあはあと息を吐いて、お互いの顔を見つめ合う。  
唇が唾液できらきらと光っている。それをもう一度舐めたい、そんな気持ちが湧き上がる。  
「もう一回、しよ?」  
答えを待たず、私は森崎に抱きついた。そして唇を重ねる。  
森崎も私をぎゅっと抱きしめながら私の唇を味わっている。互いの鼻先が、こつこつと当たっておかしい。  
突然、私のほうへ森崎が体重をかけてきた。  
小柄な私のこと、男性の重みに逆らえるはずもなく、そのままソファーに押し倒される。  
隣に座った状態で押し倒されたから、腰が変な方向にひねられて痛い。  
そんなことに気づかず、森崎は私に覆いかぶさっている。  
「ねえ、ちょっと待って」  
私の言葉に、森崎は不思議そうに体を持ち上げた。  
「ちょっと待って。ちゃんと、横になるから……」  
そう言うと、私はソファーの上に脚を投げ出す。  
私が両脚を立てると、その間に森崎が体を横たえてきた。  
森崎はしばらく私の体を見ていたかと思うと、突然私の胸に手を伸ばしてきた。  
「ちょ、ちょっと! いきなり何すんの?」  
驚いて私が叫ぶと、森崎はぱっと手を引っ込める。  
「ご、ごめん。つい……」  
「もう……。私だって女の子なんだから、もっと優しくしてよ」  
照れくさくてちょっと怒ったように言う。  
それを聞いて、森崎は神妙な様子でうなづいていた。  
 
 
**  
僕はそっと神谷さんの体に手を伸ばす。  
ふっくらとした胸のふくらみを、Tシャツの上からそっと触る。初めての、ブラの感触。  
鼓動が否応なく高まっていく。  
神谷さんは嫌そうな様子も見せず、僕が胸を揉むのを見ている。  
僕はさらに大胆に、神谷さんの胸を何度か揉んだ。  
 
小さくてもしっかりと張りのある弾力が、僕の指を押し返す。  
僕は、感動のあまり「ほおっ」と深いため息をついた。  
笑いをこらえきれず、神谷さんが噴き出す。  
「何、ため息ついてんの?」  
「いや……とっても柔らかいから……」  
僕の答えに、神谷さんはさらに笑いをかみ殺す。  
それから、いたずらっぽく僕の方を見た。  
「……じゃあ、生で触ってみる?」  
「い、いいの?」  
「いいから、言ってんのよ」  
神谷さんはそう言うと、大胆にTシャツを胸の上まで捲り上げた。  
薄いピンクのブラが露になる。その下には、真っ白な神谷さんの肌。  
「森崎が、外して……」  
そう言われても、僕は外し方を知らない。  
手を伸ばしかけて僕が困っていると、神谷さんが片手でプチン、とフロントホックを解いた。  
ふわり、とブラが乳房から浮き上がる。  
「後は、出来るわね」  
そう言うと神谷さんは目をつぶり、僕に続きを促した。  
僕は恐る恐るブラを剥ぎ取る。  
僕の目の前に、神谷さんの二つの乳房がある。  
「小さいでしょ? がっかりしちゃった?」  
「そ、そんなことないよ」  
確かに大きい、とは言えなかったが、それでもふっくらとした盛り上がりを見せている。  
その頂きに、桃色のかわいらしい乳首。  
「は、早く触って」  
神谷さんが僕の視線に耐えかねたのか、そう言って僕を急かした。  
僕はゆっくりと乳首の先に触れる。  
「んっ!」  
「あ、い、痛い?」  
「大丈夫、触っていいよ……」  
 
その言葉に、僕はぎゅっと神谷さんの乳房に両手を添えた。  
暖かい。そして、柔らかい。  
そんな当たり前の事に感激しながら、僕は乳房を揉み始める。  
「柔らかい……」  
「胸ばっかりいじらないで。キスもしてよ」  
興奮のあまり僕は胸にかかりきりになってしまっていた。改めて神谷さんの唇を吸う。  
もちろん、手は神谷さんの胸の感触を楽しんでいる。  
指先で乳首を優しくつまむ事も忘れない。こりこりとした感触が、僕の胸を高ぶらせる。  
いじくるにつれて、乳首の弾力が徐々に増していくのが分かった。  
「ふ、ふぅん……はぁ……」  
僕の愛撫に合せて、神谷さんの口から甘い吐息が漏れる。  
感じているのかな?  
神谷さんの体がゆったりと横たわり、両手が力なく僕を抱いている。  
僕は思い切って、「下」の方に挑戦してみる事にした。  
乳房を触れていた手をそっと神谷さんの下腹部へと伸ばす。  
デニム地のスカートの端を掴むと、ゆっくりと捲り上げようとする。その時だった。  
「あっ!」  
神谷さんが慌てて体を起こした。思わず僕の手も止まる。  
跳ね起きてから、神谷さんが事態を理解したようだ。そして、僕も。  
「ご、ごめん。僕、神谷さんがどう思うか、考えてなかった……」  
これじゃあ、痴漢と同じじゃないか。何やってるんだ、僕は!  
僕がうなだれていると、神谷さんがそっと僕の頬に触れた。  
「……ううん。森崎だったら、怖くないよ。……いいから、触って」  
「本当に?」  
ええ。神谷さんはそう言ってうなづく。僕は放した手を、もう一度スカートの端へと置いた。  
そして、ちょっと捲ると、静かに内股から神谷さんの陰部へと手を伸ばしていく。  
むっとするような熱気が伝わってきた。  
つん。  
クロッチに触れる。神谷さんの熱い下腹部が僕を待っていた。  
「神谷さん、すごい熱い……」  
 
そんな台詞に、神谷さんはまたいたずらっぽく笑う。  
「森崎だって、すごいわよ?」  
「え?」  
「私の生足に、当たってるんだから」  
僕ははっとして下半身に目をやる。  
ギンギンにいきりたった僕の息子が、神谷さんの太ももに押し付けられていた。  
恥ずかしくなって、身を縮こませる僕。神谷さんはそんな僕を見て、ねえ、と声をかけた。  
「……さわりっこ、しよ?」  
「えっ」  
神谷さんはそう言うと、身を起こしてソファーの上に跪いた。思わず僕もならう。  
「私も、触ったげるから」  
そう言うと神谷さんはズボン越しに僕のものに触れてきた。  
「わ、わ、神谷さん!」  
「いいから、森崎も触って。いっしょに気持ちよくなりましょ……?」  
神谷さんはそう言うと、自分でスカートのホックを外した。  
ぱさりと音がして、神谷さんのショーツが露になる。  
ブラと御そろいのピンクのそれは、少し染みが出来ていた。  
ショーツ越しに、うっすらと神谷さんの陰毛が見える。それがさらに興奮をそそる。  
「キスで、ちょっと感じちゃった……」  
笑いながら神谷さんは僕のものを優しく撫でる。  
ぎこちない手つきだが、いたわるような手の動きに、僕の高ぶりはさらに激しくなる。  
もう、ためらいはなかった。  
僕は神谷さんの内股に手を伸ばし、ショーツ越しにそこに触れた。  
ふわふわとした茂みの感触が当たり、熱を持ったそれがじっとりと濡れている事が分かった。  
僕はクリトリスを捜して手を這わせる。  
陰唇に沿うように手を動かすと、こりっと固い感触に当たる。  
僕はそれを指の腹で転がした。  
「はっ、あぁぁっ……」  
神谷さんが大声を出したので、僕は驚く。だが、それでも手の動きは止めない。  
さらに割れ目を擦り、ショーツ越しにしっかりと陰部の盛り上がりを確かめる。  
 
クリトリスは既に布の上からでもはっきりと分かるほど硬くなっている。  
面白がってさらに転がすと、神谷さんは身をよじる。  
「クリトリス、固くなってる……」  
「ゆ、勇太だってなってるじゃん……バカ」  
そう言いながら僕たちは黙々と互いの股間を撫であった。  
神谷さんの指がしごくように激しく僕のペニスを擦る。  
彼女の細い指が、僕のカリ首に触れるたび、僕は小さなうめき声を上げた。  
お返しとばかりに、僕は神谷さんの陰部をぐにぐにと押さえる。  
柔らかい肉の反発を楽しみ、さらに割れ目にそって激しく擦り続けた。  
神谷さんも、それに応えるように僕をさらに小刻みに擦り続ける。  
「はっ……も、森崎……気持ち、いいわよ……」  
「僕もだ、神谷さん……す、すごく……」  
「ね、いっしょに、いこう……ねえ、いっしょに……」  
分かった。僕は小さく呟くと、神谷さんの唇に自分の唇を重ねた。  
休むことなく手を動かしつつ、神谷さんと舌を絡ませる。  
互いの熱い息がかかる。僕は空いている方の手で、神谷さんを優しく抱いた。  
「ん……ふぅ……んぁ……」  
「あ、はぁ……神谷さん……」  
僕の体の奥から、快楽の波が静かに打ち寄せてくる。  
神谷さんの手はそれに気づいているかのように、僕の一物を指でしごいた。  
「ぼ、僕、出そう……」  
「わ、私も、いけそう……」  
お互いの陰部を傷つけるかのような激しい愛撫。  
そして、僕の限界はそこまでだった。  
「か、神谷さんっ……」  
「森崎……!」  
ズボンの中に、僕の熱い精液があふれる。  
神谷さんは、体をびくびくと痙攣させながら、まだ手で僕の一物を擦っている。  
「はぁっ……ぁああ……んぁっ!」  
何度も快楽を感じているのか、神谷さんは切れ切れの叫びを上げ、僕の方にもたれかかってきた。  
そして、僕は射精しながら、神谷さんを優しく抱きとめた。  
 
 
**  
終わった後が大変だった。  
森崎は制服のズボンとトランクスを思い切り汚しちゃったもんだから、我に帰ってからあせりまくってた。  
結局、ウチの洗濯機を使って洗う事にして、その間にお互いシャワーを浴びた。  
……もちろん、順番に交代しながら。  
とりあえずズボンとトランクスがはける程度まで乾いたとき、母が帰ってきた。  
初めて私が男友達を連れてきたので、すごくショックだったみたいだけど、すぐに森崎を受け入れてくれた。  
なんてったって、私の選んだ人だもの、当然よね。  
まあ、母には心配かけっぱなしだから、これでちょっとは安心してくれるといいんだけど。  
三人でしばらくお茶してから、森崎は帰る事になった。  
「今度はお父さんがいるときに」という母の言葉に見送られ、私たちはそろって家を出た。  
バス停まで、送るためにね。  
「今日は、ありがとう」  
自然とそんな言葉が出る。森崎はこちらこそ、と頭を下げる。  
バス停までは会話らしい会話もなく、二人黙って歩いた。  
大して待つ事もなく、バスがやってくる。  
森崎が私の方を振り向いた。  
「……また、アイツが現れたら言ってね」  
本当に心配そうな顔。ああ、愛されてるって、こういうことだったんだ。  
それは、一人でわがままに生きてるより、とっても素敵な事。  
私は小さく首を振る。  
「大丈夫。今度現れたら、私が警察に突き出してやるわ」  
そう言って笑うと、森崎も安心したように何度もうなづいた。  
バスが、止まる。  
「それじゃあ」  
「また、明日ね」  
ステップに足をかけた森崎が振り返る。  
私はそこに駆け寄る。  
そっと爪先立ち。  
バイバイのキスは、とっても暖かかった。  
―終わり―  
 

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