「髪にもかかっちゃったわね……」  
 言いながら、先生はティッシュで髪をこそぐように拭く。  
「ご、ごめんなさい……」  
「洗えばいいんだから気にしないで」  
 俺を見て微笑む。  
「……一緒にお風呂、入りませんか?」  
 ちょっとためらったあとで俺はそう言った。  
「!」  
 一瞬ビックリしたような顔をした先生だが、相好を崩すと  
「入っちゃおうか」  
 子供のような無邪気な笑顔で答えた。  
 そのままポニーテールがほどかれる。そして頭を振ってまとめていた髪を散らす。  
 ドキッとした。  
 俺より年上だから当たり前なのに、そのときの先生はすごく色っぽく、そして大人に見えた。  
「バスルームはこっちよ」  
 そうして先に立って歩き出す。一瞬遅れて俺もあとを追った。  
 
 躊躇せずに先生は服を脱いでいく。性器まで見せ合ったんだから当然か……。  
 だが全裸の先生は初めて見た。  
 食い入るように見る俺のオスの視線に気付いたのか  
「もう! あんなにいっぱい出したのにまだそんないやらしい目で見るの?」  
 言いながら身をよじる。それでもそんなに嫌がっている感じはない。むしろ誇らしげに体を見せ付けている。  
 たしかに先生のスタイルはモデル並だ。しかも裸。どうしたって目が行ってしまう。  
「さ、入りましょ?」  
 先生はタイルに足を踏み出した。  
 
 精液がかかったあたりを湿らせたタオルで拭いていく。  
 だいたい落ちたところで先生は俺を見た。  
「あなたも洗ってあげるわね」  
 そして両手いっぱいにボディソープを泡立てる。  
「すごいわ、もうこんなに……」  
 ペニスをくるむように洗いながら先生がため息混じりに言う。  
 俺は浴槽のへりに腰を下ろし、先生の手技に身をゆだねていた。  
 大きく足を開いた俺の股間で先生は熱心に肉茎をこすりたてる。ヌルヌルとした刺激がなんとも心地よい。  
 しかも二人とも全裸だ。目からも興奮がかき立てられる。  
「2回も出したけど平気なの? こんなに固いわ?」  
「あ、たぶん大丈夫です。……いつもはこんなに出さないんですけど、まだ出来ると思います」  
 高校生の性欲は終わりを知らない。まだ出し足りないぐらいだ。  
「本当にすごいわ。若いから早いけど、こんなにすぐ勃つなら贅沢いえないわね」  
 感嘆したような声。きっと旦那さんは1回で終わってしまうんだろう。しかも、早漏?  
「あ、先生……そ、そこ気持ちいい……」  
 しなやかな指先が先端の割れ目をくすぐる。  
 その感触にたまらなくなった俺の口から悦楽の声が洩れる。  
「まだよ、まだ出したらだめ」  
 先生の指が止まる。  
 そしてシャワーで石鹸を洗い流すと顔を寄せ、チュッと音を立てて亀頭にキスをした。  
 そのままフェラチオが始まる。  
 
 口の中でチロチロと小刻みに舌がうごめく。  
 亀頭の裏側を丹念にくすぐられ、これ以上大きくならないと思っていた陰茎がビクンッと震える。  
「うふふ」  
 いやらしい笑みを浮かべた先生が口を大きく開けたままゆっくりと根元まで呑みこんでいく。  
 ぼってりとした唇が茎をしごく感覚に気が遠くなりそうなほど感じてしまう。  
 と、亀頭の先端がヌルリとした粘膜に当たった。先生ののどの奥だろう。  
 俺を口に含んだまま、先生は舌全体で竿の裏側を舐めまわす。  
 ……強烈な快感が湧きあがる。  
 が、さすがに2回射精したあとだけあって、俺はそれを楽しむ余裕を持てていた。  
 
 先生が口を離す。ここで俺を射精させる気は先生にもないみたいだ。  
「先生、今度は僕が」  
 言いながら立ち上がる。  
 入れ替わるように先生を浴槽のふちに掛けさせると、自分はタイルにひざをついた。  
「なんだか恥ずかしいわ」  
 そう言いながらも先生は足を開く。それがなんだかとっても色っぽいしぐさに見えた。  
 性器を見られるのはやはり恥ずかしいのだろう。  
「行きますね」  
 愛液の名残りか、お湯とは明らかに違う粘り気が感じられる。  
 もったいないとは思ったが、そこにシャワーを当てて軽く洗い流す。  
 続けてボディソープを手のひらで泡立てて股間に持っていった。  
 淫溝に沿ってゆっくりと指を前後させる。  
「あ、感じちゃう……」  
 指がクリトリスのあたりを通過すると、先生はビクッと内ももを震わせる。  
「女の人もイッたあとは敏感になってるんですか?」  
「そ、そうよ……」  
 腰をもじもじさせながら先生が答える。  
「女の人がイクってどういう感じですか?」  
 性への好奇心が俺にそんな質問をさせた。  
「……そうね、言葉じゃ説明が難しいんだけど、全身が宙に浮かんだ感じっていうのかな?」  
「?」  
 今ひとつ理解しかねる。そんな表情の俺を見て、  
「どこまでも落ちていく感じだったり……あと体の中心で何かが爆発する感じだったりもするわ」  
「あぁ、なんとなく分かります」  
「そのときの気持ちや体調なんかでも違うから、必ず『こんな感じ』ってのは言えないのよね」  
「女の人って複雑なんですね」  
「そうよ。だからあなたも愛する人が出来たら、その人のこと大切にしてあげてね」  
 そんな会話をしながらも俺の指は動きつづけた。  
 それに伴い、先生は言葉に詰まり、断続的に身を振るわせつづけた。  
 
 先生の股間を這いまわらせている指に、石鹸とは違うヌルヌルがまとわりついている。  
「くふぅ、んっ! んんっ、ぁん」  
 それに合わせ、先生は鼻を鳴らすように小さくあえいでいる。  
「先生は僕をイカせてどうでした?」  
「すごく興奮したわ。小笠原くんにしていることは私には初めてのことばっかりだから」  
 そこはかとない優越感。  
「旦那さんはさせてくれないんですか?」  
「セックスそのものも月に二度あればいいほうかな? 正常位で5分もしないで終わっちゃうのよ」  
「先生から『アレがしたいコレがしたい』って言わないんですか?」  
 こんなに感じやすい先生だ。体が疼いて我慢ならないのでは?  
 しかもこんなに美人なのだから、男だったら黙っていてもヤりたくて仕方ないだろうと思う。  
 それなのに手を出さないとは、先生の旦那さんは淡白なのだろうか?  
「結婚した当初は言ったんだけどね、ちょっと無理みたい」  
 ……これだけの会話にかなりの時間がかかった。  
 何度も白いのどを反らし、顔をのけぞらせて先生は言葉を途絶えさせた。  
 恥裂からは愛液がとめどなく分泌されている。  
 俺はクリトリスだけではなく、膣にも指を入れて先生の性感を高めていった。  
 湯気と興奮でのぼせ上がり、フラフラになるまで恥戯は続いた。  
 
 浴室を出ると俺たちはバスタオルを巻いたまま寝室に向かった。  
 初めて足を踏み入れる夫婦の部屋。先生が旦那さんに抱かれる密室。秘められた空間。  
 ……シングルベッドが2台ある。  
 清潔そうな純白のシーツとピンクの枕カバー。それが先生のベッドだろう。  
「いいわよ、座って」  
 先に腰を下ろした先生が自分の隣りを指す。  
「はい」  
 なんとなく神妙な気分だ。  
 
 俺が腰掛けた途端、肩を抱かれるようにしてベッドに押し倒された。  
 ……ふんわりと甘い香りが漂う。先生の匂いだ。  
 興奮が増していくが、それを無視するように先生は俺に腕枕をした。  
 そしてまるで赤ん坊をあやすように髪や頬をなでていく。  
「先生……」  
 欲望にギラつく目で見上げる俺に、  
「うふふ」  
 大人の余裕でなだめるように笑い返す。  
「先生!」  
 我慢できなくなった俺は上半身を起こして唇を合わせた。  
 
 しばらく舌が絡めたあとでゆっくりと唇が離れる。唾液が唇に糸をかける。  
「先生」  
 もう一度呼び、俺は逆に先生を横たえるとバスタオルに手をかけた。  
 白く滑らかな肌が現われる。  
 仰向けになっているにもかかわらず、重量感と形とを保った乳房がフルンっと揺れる。  
 ボディソープに混じった先生の肌の香りが妖しく俺を魅了する。  
「先生っ!」  
 俺はそのまま覆い被さっていった。  
 
 狂ったように乳房にむしゃぶりつく。  
 片方を口に含み、もう片方を指と手のひらで玩弄する。  
 そうしながら空いた手は股間にすべらせる。  
 柔らかな恥毛をかき分け、中指を陰裂に滑り込ませる。と、指がヌラリとすべった。  
 何度か見た小陰唇。だがその形も分からないほどそこは熱くほとびっていた。  
 熱いぬめりを指先にまつわらせ、股間の小さな肉突起を探す。  
 ヌルヌルの恥裂を指が這い回る。  
 せっかく探し当てたクリトリスもぬめりの中で逃げ回り、うまく捉えられない。  
「あんっ!」  
 そのたびに先生は腰をくねらせ、小さなあえぎを上げる。  
 俺の指が恥溝の中をかき混ぜるたびにくちゅくちゅと濡れた音が立つ。  
「すごい……先生のここ、こんなに濡れてる。ほら、聞こえる?」  
 そう耳元でささやくと先生の頬が少女のように真っ赤に染まる。  
 さらに激しく指をうごめかす。  
「あぁっ、ううん!」  
 太ももが閉じられ、俺の手がはさまれる。それをこじ開けるようにしてもっと強くクリをくじる。  
 ……いつもの落ち着いた姿は先生からとうに消え去っていた。  
 そこにいたのは、貪欲に快楽をむさぼるメスの顔をした先生だった。  
 
(イカせる!)  
 淫溝を上下にこすりたてながら、俺は先生の耳たぶを甘噛みし、うなじに唇を這わせた。  
 つづけて指を膣口にあてがう。  
 入り口のあたりで小さく出し入れし、穴の周りでくすぐるように円を描く。  
 何度もそうして先生の性感を高めたあとで静かに差し入れた。  
「んぁっ!」  
 指がもぐりこむ感触に先生がのどを反らせる。  
 先生の膣は中は熱く、ヌルヌルとしているのに俺の指をきつく締めあげた。  
 それだけではなく、奥に引き込もうとするようにまわりのひだが収縮する。  
 自分からは何もしていないつもりなのに、気付くと根元まで指をうずめていた。  
 微妙な蠕動が指に伝わる。吸い付き、しごくようにうごめき、キュッキュッと締まっている。  
 それに逆らうように指を前後させる。  
 引き抜こうとすると膣の壁全体が指をくわえ込み、離すまいとするように搾り上げる。  
 逆に奥に沈めるときは抵抗もなくズブズブと入っていく。  
 
「き、気持ちいい……」  
 絶え絶えの息で先生が鳴く。  
「どこが気持ちいいんですか?」  
 女性に『オマンコ』と言わせたい。そう思って意地悪く聞いた俺に  
「お、小笠原くん、怒るわよ……あぁっ!」  
 快楽に耐える表情で息を弾ませ、先生が答える。  
 そうしながら、俺の手の動きを制限しようと太ももを閉じようとする。  
 手首がはさまれるが、感じている先生の力は弱く、さほどの影響はない。  
 俺はよりいっそう女性器への攻めを強めた。  
「ひゃんっ!」  
 その途端、指を咥えている膣壁が妖しく蠢動した。  
(うわっ! 女の人のマンコってこんなにすごいんだ……入れたら数秒でイッちゃうかも……)  
 そこに肉茎を挿入する喜悦を思うと勃起がビクビクといきり立った。  
「ああっ、気持ち……いいっ、んんっ!」  
 腰を浮かせて先生が身悶える。  
 ……俺の欲望が限界を迎えようとしていた。  
 
 先生に胸を合わせる。二つのふくらみが当たり、押しつぶされる感覚に頭の奥がしびれていく。  
 そのまま首筋に顔を押し当て、甘い体臭を胸いっぱいに吸い込んで言う。  
「入れたい……先生と最後まで行きたい」  
 顔を見られる心配はない。だからどんな恥知らずなことも言える。  
 セックスはしないという約束も、今の俺にはもうどうでもよかった。  
「ダメ……それはダメ」  
 つぶやくように先生が言う。  
 だが、言ってしまったあとで俺も急に怖気づいていた。  
 ……童貞を失う。たいしたことじゃない。みんないつかは経験する。早いか遅いかだけだ。  
 そう思うのに、いざとなると踏ん切りがつかなかった。  
「ねぇ小笠原くん、セックスはダメ、セックスはダメよ」  
 熱に浮かされたような先生の声を聞き流し、膣から指を抜くと代わりに怒張を持っていった。  
 膣口にあてがう。  
 熱いぬめりが亀頭を包みこむ。  
「お、小笠原くん!」  
 あわてたような先生の声。同時に手が伸び、俺を突き放すように肩を押す。  
 しかし強くしがみついた俺を引き剥がすことなど、女の力では到底無理だ。  
(ダメだ……やっぱり出来ない)  
 土壇場でひるんだ俺は先生の恥丘に剛直を乗せた。  
 
 素股、というのだろうか?  
 性交の体位を採った俺たちは性器をこすりつけあった。  
 亀頭の裏側が先生の恥毛やふっくらした恥丘に摩擦され、とても気持ちがいい。  
 律動のたびに袋がクリトリスに当たるのも、先生には適度な快さを与えているようだ。  
 童貞の俺には、そういう体勢でいることはこの上ない興奮をもたらした。  
 思っているよりもずっと早く頂が見えてくる。  
「先生……イキそう……」  
 先生の体にしがみつきながらそう告げる。  
「いいわよ、出したくなったら……イッていいからね」  
 俺の頭をそっと抱えるようにして先生が優しく言った。  
 次の瞬間、  
「っっ!」  
 頭の中が真っ白になるような快美な衝撃が背筋を走る。  
びゅるっ! びゅくっ! びゅびゅっ!………  
 直後、俺は先生を強く抱きしめたまま思いっきり精を放った。  
 
 
 あの日以来先生の感じが劇的に変わった。初めて性戯にふけったときよりも大幅にだ。  
 よそよそしいというわけではないが、麻生先生は常に生徒と一定の距離を置いていた。  
 だが俺に対してだけは親しげに接してくれるようになった。  
 もちろんあんな関係があったんだから当たり前かもしれないが……。  
 ただ俺を困惑させたことはそれを他の生徒も違和感として受け止めていることだ。  
「ちょっと小笠原ぁ、あなた麻生先生と何かあったの?」  
 安藤だ。こいつ、中学のときから妙に勘が鋭いんだよな。  
「何もないぞ。なんでそう思う?」  
 逆に聞き返した。  
「別にぃ」  
 含みを持たせた言い方。絶対なんか勘付いてる。  
 だが安藤はそれ以上何も言わず廊下を歩いていった。  
 
 俺のまわりの変化といえば、用もないのにかすみが1組を訪れる回数が増えたこともそうだ。  
 波多野に会いに来てるにしては俺にちらちらと視線を向けてくる。……こんなの初めてだ。  
 木地本とは相変わらずバカをやってるが、あいつも麻生先生の変化に気付いているみたいだ。  
 長い付き合いのくせに、こういうときにしつこく聞いてこないのがあいつのいいところだ。  
 それから転校生……沢田さんって言ったかな? も何か言いたげな顔で俺を見る。  
 なんだか俺のまわりに視線が多い気がする。注目されているわけではないが、そう感じる。  
 
 学期末を控え先生も忙しそうだ。  
 テストの問題作成、採点、通知表と、この時期はあまりプライベートな時間が取れないみたいだ。  
 そのせいか、俺たちの関係はここ何日も途絶えていた。  
 なまじっか女体の味をしめてしまったため、俺はオナニーでは満足できなくなっていた。  
 女性の肉体がなければ耐えられないほど差し迫った欲望が心を占める。  
 性の衝動が爆発しかけたそんなある日、待ち焦がれた誘いが先生からもたらされた。  
 ……転校を一週間後に控えた日曜日。それがおそらく最後の機会だろう。  
 ともかく日程は決まった。あとは禁欲するだけだ。  
 
 だがそれは思っていた以上の苦行だった。  
 学校でも麻生先生が目に入るたびにズボンの下が猛り狂う。先生の裸が目の前にちらつく。  
 何度トイレで処理しようとしたかしれない。そのたびに日曜のことを思って俺は耐えた。  
 そうだ、日曜は先生の家に行くんだ。  
 セックスは無理でも、また女性のぬくもりを感じながら射精できる。  
 そう思って頭がおかしくなりそうな禁欲生活に耐えていた。  
 
 土曜日。転校まであと一週間。青葉台でのさまざまな想い出が去来する。  
 なんとなく抜け殻のようになってリビングで君子とぼんやりしていると電話が鳴った。  
 両親からかもしれない。だが何もする気になれない。  
「お前出ろ」  
「えぇ〜」  
「ええ〜じゃない。早くしろ」  
「もうお兄ちゃんったらぁ」  
 不平そうにぶつぶつ言いながら君子が電話へと立つ。  
 と、  
ピンポーン  
 呼び鈴が鳴った。  
 君子を電話に出させた以上、俺が行くしかない。  
「しょうがないなぁ……誰だいったい」  
 こぼしながら玄関に向かった。  
 
「あ、雅人クン……」  
「かすみか? なんだ?」  
「うん。クッキー焼いたの。それで君ちゃんと食べてもらおうと思って」  
 そう言いながら手に持ったバスケットを差し出す。  
「お兄ちゃーん、引越し屋さんが段ボールいくついるかって聞い……か、かすみちゃんっ!」  
 ……マズイ、聞かれた!  
「か、かすみ……」  
「お、お兄ちゃん、私電話があるから……」  
 逃げるように君子が引っ込む。  
「雅人クン……上がってもいい?」  
 てっきり取り乱すかと思ったのに、かすみは思いのほか冷静だった。  
 
 俺の部屋に行く。  
 かすみに椅子をすすめ、俺はベッドに腰を下ろす。  
「あのな……」  
「転校……するんでしょ」  
 話しはじめた俺をさえぎるようにかすみが言った。  
「かすみ、お前……」  
「うん、知ってたよ。おばさんがお母さんに話してるのを聞いたの」  
「そっか……」  
 見る間にかすみの瞳に涙がたまっていく。  
 もう知らない振りをしなくてもいい。そういう思いが押さえていた気持ちを解き放ったのだろう。  
「離れたくない、離れたくないよぉ……」  
 今までこらえていた感情が一気に爆発したようにかすみは泣いていた。  
「雅人クンっ!」  
 飛び込むようにかすみが俺にすがりつく。かすみはそのまま大声で泣き始めた。  
 俺の胸で子供のように泣きじゃくるかすみに何をしてやればいいのか分からない。  
 黙って髪をなでながら、俺はかすみが落ち着くのを待っていた。  
 
 女の子らしいふっくらしたかすみの抱きごこちに衝動が高まる。  
 柔らかく、あたたかく、そしていい匂いのするかすみを抱いているうちに淫欲がたぎっていく。  
 ズボンの下で放出を求め、剛直がどんどん硬化していく。  
 お腹に当たっているものの正体を、いくらかすみが鈍くても気付くだろう。  
 何とかそれをなだめようと努力していると、  
「雅人クン、我慢しなくてもいいよ……雅人クンになら何されても私いいから」  
 涙に濡れた瞳でかすみが俺を見上げた。  
 ……それを見、聞いた瞬間、俺の中で何かが砕けた。  
「かすみっ!」  
 ベッドに押し倒し、乱暴に唇を奪う。  
 
 まつげを伏せ、少女っぽい息を震わせてかすみがわずかに唇を開く。  
 そこに俺は舌をねじ込んだ。  
 唇の裏側や歯列を舐めまわすうち、固く閉じられていた歯の力がゆるむ。  
 そうしながらブラウスの上から胸のふくらみに手のひらを乗せた。  
「んんっ!」  
 のどの奥でかすみがうめき、ビクンと体を震わせた。  
 その隙にかすみの口の中に舌をもぐりこませる。  
 おびえたように縮こまっているかすみの舌を舌先でゆっくりとなぞる。  
 しばらくそれを続けると、やがておずおずといった感じでかすみの舌が伸ばされてきた。  
 ……そのまま絡める。  
 そうしながら俺は手探りでブラウスのボタンを外し、手を中にねじ込んだ。  
 ブラジャーの布地が指に当たる。  
「んくっ!」  
 鼻を鳴らす声がする。  
 唇を離して顔を見る。  
 と、かすみはまだ泣きやまず、それどころかよりいっそう激しく泣いていた。  
 泣き虫のかすみ。いつも俺を頼ってきたかすみ。俺のどんなわがままも聞いてくれたかすみ……。  
「雅人クンが私のことなんとも思ってないのは知ってるよ……でもいいの。想い出がほしいの」  
 小さく鼻をすすりながらかすみが言った。  
 途端に罪悪感が生まれる。だが腰の奥にくすぶる愛欲がそれに勝る。  
 胸に置いていた手でブラをずらすようにたくし上げる。  
「……うん」  
 かすみがうなずく。  
 ……俺は愛撫を続行した。  
 
 胸の愛撫に関しては先生と経験がある。そのときの知識を総動員する。  
 乳首をつまむようにして指の間にはさみ、揉むようにして指先をすり合わせる。  
 指の腹で転がし、爪で円を描くようにふもとから頂までなぞり上げる。  
 ……徐々にかすみの乳首が尖っていく。  
「かすみ」  
 名前を呼び、かすみの頬からあご、首筋から鎖骨、胸元へと口付けながら下っていく。  
 そんなことをされながら、かすみはまったく抵抗しなかった。  
 それどころかかすかに身をよじって息を弾ませている。  
 唇が乳房にたどり着いた。  
 そのまま口に含む。舌先を小刻みに震わせて乳首を刺激する。  
 もう片方は手のひらと指を使って愛撫する。  
 俺の攻めに合わせ、かすみは何度かビクッと体を跳ねあげた。  
 ……感じているのか?  
 意を強くした俺は左右の乳房を交互に口淫した。  
 ブラウスの前をはだけ、わきの下やわき腹にも舌を這わせた。  
「あん、ぅうん…ふぁ!」  
 そのたびにかすみが甘い声を上げて悶える。  
 
 攻めていた胸から顔を上げ、目標を下半身に移した。  
 ひざに伸ばした手をスカートの下から侵入させる。  
 太ももを這いあがった指がショーツに触れた。  
「……あっ!」  
 隣りの部屋には君子がいる。大きな物音を立てれば勘付かれてしまう。  
 そんな羞恥からか、とっさに両膝を閉じてかすみがあらがう。  
 だが、性欲に衝き動かされた俺を抑止できるほどの抵抗ではない。  
 お尻が引っかかるのも構わず、無理やりずり下ろす。  
 そして両手を使ってショーツを脱がせると片方の足から引き抜いた。  
 
 かすみが手を伸ばしてスカートを押さえた。  
「かすみ……足、開いて」  
「………」  
 動こうとしない。かすかにおびえた色を浮かべ、かすみは俺を見ている。  
「かすみ」  
 もう一度呼ぶ。  
 それでも動けないかすみに業を煮やした俺は、両膝に手を当て、強引に左右に広げた。  
「あぁっ、み、見ないで……」  
 スカートがまくれあがり、両手で顔を覆って俺の視線からかすみが逃れる。  
 ……個人差だろう。かすみのソコは先生のものより色が淡かった。  
 陰唇も端正に整い、恥毛も恥丘を薄く彩っているだけだ。  
 太ももと下腹部を分けるスクール水着の日焼けあとがなんともなまめかしい。  
 その幼児体型を残したかのような無垢な下腹部でけぶる陰毛が俺の興奮をかき立てる。  
「きれいだ……かすみ」  
「いやぁ……」  
 俺の言葉に泣きそうな声が返ってくる。  
 そのまま股間にかがみこみ、指で陰唇を広げると溝の間でぬらついた粘液が糸を引いた。  
「雅人クン……は、恥ずかしいよぉ……」  
 か細い声でいやいやをするように首を振る。  
 たしかに子供の頃、君子と一緒に3人で風呂に入ったことはある。  
 それ以来のかすみの裸だ。あのときだってこんなにじっくり陰部を見たことはない。  
 
 むっちりとした肉厚の小陰唇を広げ、顔を寄せる。  
 ひくひくと息づく薄紅色の粘膜の奥に膣口が見える。その上には顔を覗かせたクリトリスがある。  
 たまらずに俺は顔を押し当てた。恥丘に鼻を埋め込み、かすみの匂いを思いきりかぐ。  
 そうして舌を伸ばし、淫溝を上下に舐めまわす。  
「あっ、あぁんっ……あん」  
 内ももを震わせてかすみが悶える。  
 そのまま舐めつづけるとかすみが太ももを閉じた。顔がはさまれる。  
 柔らかで張りのある感触は心地よいが、両耳をふさがれ音が聞こえづらくなる。  
「んんっ、ぅん! ん、んん……」  
 押し殺したようなかすみの声がぼんやりと聞こえる。  
 
 股間で舌を使いながらかすみの顔を盗み見る。  
 胸の谷間から見えるかすみは両手を口に当て、声が洩れるのを防いでいた。  
(かすみ……)  
 愛しさがつのった。  
 これまでかすみは君子と同じで妹のようにしか思ってなかった。少なくとも欲望の対象ではなかった。  
 だが今は違う。かすみに射精したい。かすみに精液をぶちまけたい……。  
 性愛の気持ちをこめた愛撫を続ける。膣やクリトリスを集中的に攻めていく。  
「ぃゃぁ……」  
 自分の股間から立つ淫らな水音にかすみが忌避の声を上げる。  
 ……だがそれは俺をますます興奮させるだけだった。  
 
 クリトリスが次第に口の中でしこっていく。コリコリと勃起していくのを舌が感知する。  
 舌を膣の中にもぐりこませると、奥からどんどん粘液がにじみ出てくる。  
 恥裂に唇を当て、あふれる愛液を舌ですくい、すすり、音を立てて飲み込む。  
「雅人クン……そ、そんなとこ汚いよ……」  
 かすみの言葉を聞き流す。  
「あぁ…あぁんっ!」  
 あえぎ声が少しずつ艶を帯びていく。俺に口で玩弄され、かすみが感じている!  
 腰をはね上げるようにしながら快楽に身をゆだねているかすみに情欲が高まっていく。  
(入れたい……)  
 俺は身を起こすと手早くズボンを下着ごと下ろした。  
 猛り狂った肉茎が天を突いてそそり立つ。  
「!」  
 朦朧とした目で俺を見ていたかすみが息を飲む。  
「子供のときはこんなになってなかったからな」  
 そう声をかけるとかすみの手を取る。そうして勃起を握らせる。  
 が、握ったと思った途端、かすみは驚いたように手を離してしまった。  
「熱い……」  
 そうして自分の手のひらを見ながらつぶやいた。  
 
 興奮しきっているはずなのに、俺はどこか冷静だった。  
 挿入の経験こそないものの、女性で射精したことなら何度もある。それが自信になっていた。  
 今のかすみの態度も俺に精神的な優位をもたらした。  
「かすみ、初めてか?」  
「……雅人クンは違うの? 経験あるの?」  
 先生との体験が頭をよぎる。  
「……まあ、な」  
「……そう」  
 沈んだ口調でかすみが答えた。だが顔を上げると  
「ねぇ、私のこと、好き?」  
 思いつめたような口調で問いかけてきた。  
「ん? ……あぁ……そうだなぁ……」  
 返事に詰まる。かすみに恋愛感情なんて持ってないからだ。  
「今だけ……今だけでいいから、ウソでもいいから……『好き』って言って」  
 必死のまなざしでかすみが俺を見た。  
(心にもないことを言って、それでかすみは満足なのか?)  
 迷う。  
 すがるようなかすみの目。  
「……好きだ。俺、かすみのこと大好きだ」  
 ためらった挙句に告げた俺の言葉。それが真実じゃないことはかすみも知ってるはずだ。  
 だがかすみは安心したようにため息をつき、にっこりと笑った。  
 
 行為を再開する。  
 すっかり安堵の表情を浮かべたかすみはもう抵抗しなかった。  
「かすみ、さわってみて」  
 目の前に突き出された屹立にそっと手を伸ばす。  
「皮が……動く」  
 ほっそりした指で茎部をしごきながらかすみが言う。  
 かすみがそんなことをしていることに興奮するのか、背すじがぞくぞくする。  
「これがかすみに入るんだぞ」  
 俺の言葉に、かすみは好奇心と怖れの入り混じった表情を浮かべた。  
 
 大きく広げたかすみの足の間に入る。  
 そうして亀頭の先で陰唇の溝を何度も上下させ、ぬめりをまぶしていく。  
「あんっ、あ…ん……」  
 亀頭がクリトリスに当たるたび、感じているのか、かすみが小さくうめく。  
「入れるぞ」  
 茎を手で支え、角度を固定すると膣口にあてがう。  
「……うん」  
 かすみの返事を確認したのち、俺はゆっくりと腰を押し出していった。  
 
ぬるっ  
 充分に潤っていた膣に、さほどの抵抗もなく亀頭がもぐりこんだ。  
 だがそこまでだった。そこから先が沈み込んでいかない。  
「あうっ!」  
 身を反らし、かすみが硬直する。体全体で俺から逃れようと全身をずり上げる。  
「かすみ」  
 体を重ね、かすみを抱きしめる。  
「くっ……い、痛い……」  
 動きが封じられたかすみが痛みを口にする。  
 自分の快楽を追い求めることで頭がいっぱいで、俺にはそんなかすみを気遣うゆとりはなかった。  
「我慢できるか?」  
 言いながら少しずつ怒張を押し込んでいく……。  
 そのたびに熱い膣壁が剛直をきつく締めつけていく。  
「い、痛いぃ……だめ、やめて……」  
 顔をしかめ、搾りだすように言葉を継ぐかすみだが、俺の体は止まらない。  
 ズブズブと音を立てて侵入していく気がする。  
 ……そしてついに根元までかすみに収まった。  
 
 初めて女性と交わった感激に、俺は動くのも忘れ膣の締めつけを味わっていた。  
 そうして甘い香りのするかすみの首筋に顔をうずめる。  
 かすみも俺の頭を抱えるようにしがみついてくる。  
 しばらくそうしているとようやく気持ちが落ち着いてきた。  
「痛いか?」  
 耳元でささやく。  
こくん  
 首を振ってかすみが応える。  
 ……俺はかすみと結ばれたんだ。  
 
 膣の粘膜から熱が、そしてかすみの鼓動に合わせるような脈動が伝わってくる。  
 二人がつながっている部分にコリコリとしたふくらみを感じる。恥骨だ。  
 俺の体の下でかすみが大きく息をつくたびにそれらが響いてくる。  
「動くぞ」  
 かすみの顔の横に両手を突き、顔を見ながら言った。  
 そして返事を待たずに俺は動き出した。  
「ああっ、痛い! う、動かないで!」  
 悲痛な叫びが聞こえたが体が止まらない。快楽を求め、腰が勝手に動いてしまう。  
「あ、あぁ…ぁあっ!」  
 苦しげに絞り出されるかすみの声に嗜虐心もあおられる。  
 吸い付くような膣壁からもたらされる愉悦に腰の動きが速度を増していく。  
 技巧も何もなく、ただ前後させるだけの動きだが射精感が高まっていく。  
「ああぁぁ!」  
 何かにすがりついていないと痛みに耐えられないのか、苦悶の声を上げながらかすみが俺にしがみつく。  
「あっ……ああっ……っ!」  
 悲鳴が上がるたび、かすみの膣の肉が盛り上がり、陰茎に心地よい刺激が与えられる。  
(き、気持ちいい……)  
 腰の奥から湧きあがる快楽が俺の動きをさらに激しくさせる。  
「か、かすみ……イキそう……」  
 頂が見えてくる。あまりに早い絶頂だが、かすみのためにはそれがいいとも思えた。  
 
「うっっ!」  
 限界は突然やってきた。  
びゅびゅっ! どびゅっ! びゅくっ! びゅっ!………  
 直前で引き抜くことなど出来なかった。  
 溜まりに溜まった精液が、かすみの一番奥でほとばしる。  
「おおぅっ!」  
 股間から背すじを伝わり、脳天まで貫く激しい快感に俺も咆哮する。  
「あああぁぁっ!」  
 子宮の入り口に熱い粘液をぶちまけられ、かすみがガクガクと痙攣する。  
 そのたびに収縮する膣がさらに俺から精液を搾りとる。  
びゅるっ! ずびゅっ! どぴゅっ!………  
 永遠に続くかと思えるほど長い射精が続く……。  
 処女の膣に深く突き立てたまま、最後の一滴まで俺は白濁を注ぎ込んだ。  
「かすみ……」  
 ようやく放出を終えると、俺はかすみの名前をつぶやきながら体重を預け、力を抜いた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
 ただ大きく息をつくことしか出来ない。それほど凄まじい悦楽だった。  
 やがて少しずつ落ち着いていく。かすみの甘い髪の匂いをかぎながら息も整っていく。  
 ぐったりと預けていた体を起こす。  
「はぁはぁ、かすみ……」  
 かすみは力尽きたように手足を投げ出してベッドに横たわっていた。返事もできないようだ。  
 俺はのろのろと身を起こすと枕元のティッシュを取るためひざ立ちした。  
とろり……  
 膣に射ち出された精液が垂れ、シーツを濡らす。  
 何枚か抜き出したティッシュでかすみの性器をぬぐう。  
「あんっ!」  
 陰唇に触れると、かすみの体がビクッと震えた。  
「わ、私が自分でするから……」  
 真っ赤な顔でかすみが引き継いだ。  
 
 処理を終え、服を着る。  
「かすみ、俺……」  
 取り返しのつかないことをしてしまった。  
 冷静になった俺の頭に最初に浮かんだのはそれだった。  
 謝ったって許してはもらえないだろう。自然と口が重くなる。  
「後悔なんてしてないよ。だから……雅人クンもそんな顔しないで」  
 晴れ晴れとした顔でかすみが答える。  
「だけど……」  
「あんまり遅くなると君ちゃんが不審がるし、お母さんも心配してるだろうから」  
 かすみはそう言うと立ち上がった。……と、ちょっとよろける。  
「かすみ?」  
「えへへ、なんかフラフラする。足に力が入らないみたい」  
 おどけたようにそう言うと、  
「ホントに私、平気だから。雅人クンには感謝してる。……転校まで、いつもの雅人クンでいて」  
 涙を浮かべた顔でそう言った。  
 
 かすみが帰った部屋で俺は物思いにふけっていた。  
 ……ためらいがちなノックのあと、君子がドアを開けた。  
「お兄ちゃん……かすみちゃんと……」  
 部屋にこもる性臭。おそらく隣りに聞こえたであろう嬌声。帰るときのかすみの態度。  
 この部屋で何があったか、それは君子にもわかっているだろう。  
 俺には何も言えなかった。  
 君子の顔も見ず、ただ黙って突っ立っているしか、今の俺に出来ることはなかった。  
 
つづく  
 
 

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