かすみを犯した。おりのようにそれが心にわだかまる。  
 一晩が明けても俺の心は晴れない。起きてからそのことばかり考えている。  
 過ぎてしまったことを悔やんでも詮方ないのは分かるが、感情がそれを否定する。  
 ……かすみ。  
 ともあれ、今日は先生と過ごす日だ。約束を破るわけにはいかない。  
 シャワーを浴び、身支度を整える。そして何かを言いかける君子と視線を合わせないようにして家を出た。  
 
 先生と初めて淫らな行為をした日に歩いて帰った道。そこを行く。  
 マンションが見えてくる。  
 近づくにつれ、甘美な記憶が甦り勃起してくる。  
(俺って最低だ。かすみのことで心を傷めていたはずなのに、今は女体への興味しかない)  
 足が止まる。引き返すか?  
 ……だがそれは一瞬の躊躇だった。  
 気が付くと俺はオートロックのマンションのインターホンを押していた。  
 
「いらっしゃい。引越しの準備は進んでる? こんなときに呼び出して平気?」  
 俺の顔を見るなり先生が心配そうに聞く。  
「まだ一週間ありますし、妹もいますから」  
「そう。……ねぇ小笠原くん、何かあった?」  
「……え? 何がですか?」  
 気付かれた?  
 動揺が顔に出そうになる。  
「ううん、なんか浮かない顔してるから」  
「もうすぐ転校だって思うと、なんかいろんなこと思い出して……」  
 ごまかす。  
「そうよね、あなたはこの町で育ったんですものね」  
 そう言うと、先生は寂しげに笑った。  
 
 寝室へ行く。  
 部屋に入った途端、かすみへの後ろめたい気持ちは影を潜めていた。  
 ジーンズの下で痛いほど勃起している。出したい。それだけが心を支配する。  
「今日はどうしたい?」  
 それに気付いたらしく、挑発的な視線で先生が聞く。  
「最初は口で……」  
「いいわ。じゃあ座って」  
 促されてベッドに腰を下ろす。  
 そのまま押し倒されるようにして俺たちはベッドに横になった。  
「先生……」  
 言いかけた俺の唇に指を当て、  
「静かにしてなさい」  
 そう言うと、潤んだまなざしで俺を見下ろして先生が顔を寄せてきた。  
「んっ」  
 ……唇が重なる。  
 俺は力を抜き、先生の甘い吐息を胸いっぱいに吸い込んだ。  
 そうしながら薄目を開けて先生を盗み見る。白い頬が視界いっぱいに広がる。  
(!)  
 舌が侵入してきた。  
 柔らかく、ねっとりと唾液をまとった舌が俺の口の中を這い回る。  
 それを強く吸い、唾液をすすり、飲み込む。  
 
 むさぼるような激しいキス。  
 わずかな角度で触れ合っていた唇が、鼻をこすり合わせて大きくかしぐ。  
 直交するほど顔をねじり、そのまま舌をからみ合わせる。  
 そうしながら先生は俺の髪をいじり、耳たぶをくすぐる。  
 俺も先生の後頭部に当てた手でうなじから首筋をさするように動かす。  
「んんっ、んっ! ぅん…」  
 興奮しているのだろう。自然に俺たちの呼吸が荒くなる。  
 舌を甘噛みし、歯列を舐めあう。口が性器になったかのような快感が湧きあがる。  
 ベッドに寝たまま腰を突き上げ、勃起を先生になすりつける。  
「我慢できない?」  
 唇を離し、先生が俺の瞳を覗きこんで聞いた。  
 言葉にならない。ガクガクとうなずいて肯定の意思を伝える。  
「そうね、じゃあ出しちゃおうか?」  
 ジーンズの前に手を当て、こわばりを確かめるようにして先生が妖しく笑う。  
「あうっ!」  
 暴発しそうな快感に思わずうめいた。  
「まだ出したらダメよ。口でイカせてあげる……」  
 そう言って先生が俺から身を離した。  
 
 俺はあわてて身を起こすとベルトをゆるめ、ジーンズを下ろした。  
 トランクスに先走りがシミになっている。  
 それも引き下ろすと足先から抜き、再びベッドに横になる。  
「うふふ……」  
 淫らな笑みを浮かべ、先生がかがみこむ。だが先生は肉茎に触れてこなかった。  
 ヘソのあたりに顔を寄せる。そして手はひざ近くの太ももの上に置かれる。  
 そうしてから舌を下腹部に向かわせ、手は股間に向けてじらすように内ももをくすぐった。  
「せ、先生……」  
 射精を欲して陰茎がビクビクと脈打つ。  
 それを無視するように先生の手と舌は局部のまわりで動きまわる。  
 舌が剛直に近づく。自然と期待が高まる。だがそのまま唇は離れていき、内ももに到達した。  
 そこで軽く歯を立てたり、舌先でくすぐられたりの愛撫が続く。  
「先生っ!」  
 たまらずに催促の声を上げてしまった。  
「あんまりいじめちゃかわいそうかな?」  
 その言葉と共に陰嚢が手のひらにくるまれた。そうして静かに揉むような動きが加わる。  
 それと同時に、チュッと音を立てて亀頭に口付けられた。  
 しなやかな黒髪が下腹部や太ももに当たる。その刺激だけで達してしまいそうになる。  
「おおぅっ!」  
 肛門を締めて必死に射精をこらえる。深呼吸し、なんとか絶頂を先延ばしにしようと試みる。  
 そんな俺の苦悩を知らぬかのように、先生の唇が剛直を咥えていった。  
 
 先生はのどの奥まで屹立を飲み込み、そこで一旦動きを止めた。  
 それからゆっくりと引き抜くと、亀頭だけを口に含んで唇でカリをしごきたてた。  
 そうしながら尿道口を舌の先でこじ開け、裏スジをチロチロと小刻みに揺すりたてる。  
 痛みを与えない適度な強さで睾丸がもまれる。  
「ぐっ!」  
 それらのあまりにも強烈な快楽に、食いしばった歯からうめきが洩れる。  
 ……イキそうだ。  
 必死に耐えるが、先生はフィニッシュさせるつもりか、俺を咥えたまま上下運動を始めた。  
 髪を揺らし、口元から湿った音を立てて頭を振る先生。  
 上下する唇に勃起の表面の血管が締めつけられる。腰が抜けそうな愉悦。とろけそうな喜悦。  
 精液がこみ上げてくる。……限界が近い。  
「イ、イクっ!」  
 その次の瞬間、俺は全身をビクンビクンと脈打たせて射精した。  
 ほとばしる粘液が先生の口内を穢していく。  
「んんっ、むぐ!」  
 小さなうめきを上げて先生は俺の射精を受け止めた。  
「おぉうっ! んんっ! むんっ!」  
 白濁を射ち出すたびに俺はうめいた。  
 そして何度も何度も先生の口に精液を注ぎ込み、俺はようやく射精を終えた。  
 
 たっぷりと精を放ち、俺はようやく力を抜いた。  
 先生はまだ口を離さない。  
 すっかり力を失い、柔らかくなった陰茎を口に含んだままじっとしている。  
 息苦しいのか、時折動く舌が敏感になっている亀頭を心地よくくすぐる。  
 下腹部に当たり陰毛をそよがせる先生の鼻息。先生のぬくもり。先生を征服した達成感。  
 それらを意識すると、たった今射精したばかりなのに俺は股間が熱くなるのを感じた。  
 温かく湿った先生の口の中で陰茎がむくむくと大きくなっていく。  
 頭をもたげはじめた肉茎が先生の口の粘膜や舌、のどの奥で存在を主張していく。  
 硬度を増していく淫茎に、今度ははっきりとした意思をもって先生の舌が触れた。  
 その感触を味わうように、ほんのわずか腰を前後させる。  
 口の中でこすられ、快感が走り抜ける。  
ぐぐっ!  
 思わず大きく腰が動いてしまった。  
「んんっ!」  
 のどの奥に先端が達し、先生は一瞬むせたようにうめいた。  
 それでも先生は俺の怒張を咥えこみ、吸いたて、舌や唇で奉仕を続ける。  
 揺れる陰嚢が先生のアゴに当たり、鼻息が恥毛をそよがせる。  
 俺は先生にフェラチオさせたまま、サラサラの髪をなでながらそれらの感触に酔いしれる。  
 
 唇で締めつけ、ねっとりとした舌を這いまわらせて先生が俺を高めていく。  
 舌の先が尿道口や亀頭の裏側といった感じる部分を攻め立てていく。  
 つい今しがた精を吐き出したばかりなのに、どんどん射精感が高まっていく。  
「先生……イッちゃいます」  
 性感の頂が目前に迫った俺はそれを告げた。  
「んん」  
 イッてもいい。そう言いたげな目で先生が俺を見上げた。  
 俺だけ2回もイッてしまうのは申し訳ないと思ったが、もう引き返せないほど昂ぶっている。  
「先生、イク……イキます……」  
 直後、俺は激しい快感に包み込まれた。  
どくんっ! びゅっ! びゅるっ!………  
 ヒクヒクと身を震わせ、2度目とは思えない量をまき散らす。  
 突然の射精は舌を伸ばして茎の側面を舐めていた先生の顔に、そして髪に降り注いだ。  
 とっさに口に咥え、それ以上の放出が顔にかからないようにして先生が受け止める。  
 だがその前に射ち出された白濁は先生の顔を淫らに彩っていた。  
 まるで白い涙のように頬を伝い、丸みを帯びた顔のラインをすべりおり、あごから滴る精液。  
 形のよい唇にドロリとした粘液が付いている様は、なんとも言えず淫猥な眺めだった。  
 
 短時間で精液を2回も出したおかげで、ようやく俺は冷静さを取り戻していた。  
 先生はまだ服を脱いでいない。それどころか胸をはだけてもいない。  
 恥ずかしいが、俺は一人で翻弄され、一人で達してしまったんだ。  
 今度は先生を。そう思った。  
「暑いわ、脱いじゃおっか?」  
 言いながら先生が服を脱ぎはじめる。  
 見ると先生の額がうっすらと汗ばんでいる。  
 すんなり俺を射精させたように思えたが、それでもかなりの運動量なのだろう。  
 下半身だけ脱いでいた俺も全裸になることにした。  
 起き上がってシャツのボタンをはずしていく。  
 程なく、俺たちは生まれたままの姿になった。  
 
 抱きあったままもう一度ベッドに横になる。そうしてキスをする。  
 仰向けになった俺の上に重なるようにして先生が乗る。  
 胸のふくらみが俺の胸に当たる感触が心地よい。  
 股間のモノが先生の下腹部で転がされるのがくすぐったい。  
 甘く濡れた舌を吸いながら、頭の中にもやがかかったように淫らな気持ちになっていく……。  
ちゅっ……  
 間に銀の糸を引き、俺たちの唇が離れた。  
「先生……」  
 下からふくよかな胸に手を伸ばす。  
 そうしながら俺は体を入れ替えて上になった。  
 乳首を口に含み、指を股間に伸ばしていく。  
 ……そこはヌルッと指がすべるほど熱いぬめりをあふれさせていた。  
「ぁんっ……」  
 かすかな吐息と共に先生が身悶える。同時に甘い体臭が強く香る。  
 それを聞きながら、俺はほんのりと染まった先生の肌を下りおりる。  
 そうしてむっちりと肉の付いた太ももに頬を寄せた。  
 つん、とメスの匂いがする股間が俺を誘っているように感じる。  
 まるで何かに惹きつけられるかのように俺はそこに顔を差し入れていった。  
きゅっ  
 心の準備が出来ていなかったのか、先生の内ももが本能的に俺の顔をはさみこむ。  
 首を左右に振って隙間をこじ開けると、俺はさらに奥に顔を押し付けていった。  
 
「お、小笠原くん……」  
 身をくねらせて先生が声を洩らす。  
 それに呼応するように陰唇の間からトロトロと愛液がにじみ出る。  
 俺は舌を伸ばすと小陰唇の間にもぐりこませ、小刻みに上下に動かした。  
 そして膣のまわりからクリトリスまでを何度も往復させ、先生のいやらしい液体をすくい取っていく。  
「くぅっ! す、すごいわ小笠原くん……」  
 先生は腰をビクビクと痙攣させて俺の舌技に身を任せている。  
 続けて俺は膣に舌を入れた。  
 膣口から湧き出る液体を舐め取り、すすり、飲み込む。  
「あぅっ! んん、はぁん……」  
 声に甘い響きが強くなる。先生は感じている!  
 だが舌をいっぱいに伸ばしても膣の入り口しか舐められない。  
 そこで俺は口を離し、代わりに指を差し入れた。  
「あんっ!」  
 ビクン、と先生の腰が跳ね上がった。  
 それに構わず、俺は先生の太ももを片手で抱えるようにして膣に攻めを集中した。  
「あふっ! うぅんっ……」  
 頭に手が添えられた。髪に指が絡められ、強くつかまれる。  
 膣に差し入れた中指の腹にコリコリとした感触が伝わる。  
 そこを引っかくようにこすると先生はさらに乱れた。  
「お、小笠原くん、先生もしてあげる……」  
 絶え絶えの息で先生が上半身を起こしてそう告げた。  
 
 先生を口で攻めている間に俺も興奮したのだろう。すでに臨戦態勢になっていた。  
 返事の代わりに俺はひざでにじり寄り、先生の顔をまたいだ。  
 すかさず先生の手が俺の勃起に添えられる。  
ちゅっ  
 亀頭にキスをしたあと、そのまま口に含まれた。  
 たちどころに熱く湿った空間に包み込まれる。  
 そのまま舌と唇が縦横に動き、俺の感じる部分を的確に突いてくる。  
「くっ!」  
 股間から沸き上がる快感に、先生への攻めがおろそかになりかける。  
 なんとか意識を集中させると俺はクリトリスを吸い、甘噛みし、舌の腹で押し込んで応戦した。  
 膣にもぐりこませた指は内部のひだをこすり、かき混ぜ、出し入れして性感を高めていく。  
「あはっ……んんっ!」  
 ヌルヌルした粘液が指にまとわりつき、先生が感じているのがわかる。  
 時折ビクッとお尻を跳ねあげる動きまで加わる。淫裂から分泌される粘液の量も増している。  
(イクのか?)  
 なんとか先生をイカせようと思った俺だが、限界が近づいてくる。  
 2回も射精したあとだけに余裕があったはずなのに、だんだんと射精感がつのっていく。  
「先生、イキそうです……」  
「もうイキそうなの? いいわ、来て……」  
「先生の……先生の中で出したい」  
 ダメ元で言ってみた。  
「……え?」  
 一瞬先生の動きが止まる。  
「先生……」  
 先生から身を離して向き直り、まっすぐに見据えた。  
「……でも」  
 上気した頬で瞳を潤ませ、わずかに開いた唇から熱い呼吸をくり返す先生。  
 豊かな乳房はそれに合わせて大きく起伏している。  
「僕、来週には転校します。だから……だから最後の青葉台の思い出がほしい!」  
「……いいわ」  
 しばしのためらいのあと、先生がうなずいた。  
 
「先生、小笠原くんのはじめてのオンナになるのね」  
 感慨深そうな声。  
「……はい」  
「初めての人は忘れられないって言うわよ?」  
「そうなんですか?」  
「あなたは動かなくていいわ。先生が全部してあげる」  
 それには答えず、先生は横になると両ひざを立て、足を大きく開いた。  
 俺はその間に下半身を割り込ませるとひざ立ちし、左手をベッドに突く。  
 そして右手で怒張を握って淫溝の間をぎこちなく上下させる。  
 童貞の演技をする必要はなかった。  
 まだ2回目であり、しかも合意のもとで行なうセックスとあって俺は緊張で手が震えていた。  
 そのため狙いが外れ、膣の位置がわかっているのにどうしても入れられないでいた。  
 のどもカラカラだ。何度もつばを飲み込もうとするが口の中が乾ききっている。  
 唇を舐めて湿らせようとしても上手くいかない。  
「場所、わかる? もっと下……ううん、そうじゃなくて。そう……あ、違う」  
 なかなか挿入しない俺を見かねたのか、先生の手が伸び、モノを入り口に導いてくれる。  
 そうして俺を見てかすかに微笑む。  
「ここ、ですね」  
 わずかにくぼんだ場所、膣口に先端をあてがう。  
 その時、俺はかすみと膣の位置が違うことを体感した。かすみはもっと上だった気がする。  
「そうよ、入れていいわ」  
「はい。先生、行きますね」  
 そう断ってから腰を突き出した。  
ぬるりっ  
 なんの抵抗もなく亀頭が肉穴に呑み込まれていく。  
 角度が固定された感触があり、続けて茎部が侵入していく。  
 俺は上体を倒し、体を密着させた。  
 まるで吸い込まれるように残りの部分が膣に咥えこまれていく。  
 ……根元まで収まった。熱く、柔らかな空間が俺を締めつける。先生と結ばれたんだ。  
「んっ! いいわ、小笠原くんの、固くて太い……」  
 紅潮した肌で先生が俺の背中に腕を回す。そのままきつく抱きしめられる。  
 先生を貫いた感激、そして抱きしめられた歓びに精を洩らしてしまいそうになる。  
 肛門を引き締め、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせるうちに射精感が遠のいていく。  
 
 熱い粘膜がモノに吸い付くようだ。つながっている部分にはコリコリした恥骨が当たっている。  
 合わさった胸には先生のふくらみが押し当てられ、俺の動きに合わせて弾む。  
 かすみのときは余裕がなくて感じられなかったいろんなことが今はわかる。  
 ……セックスってこんなにすごいんだ。  
「気持ちいい……」  
 思わず口走った。そのまま先生の首筋に顔をうずめる。  
「そう? うれしいわ……」  
 本当にうれしそうな先生の声が耳元でする。  
「このまま出しちゃってもいいですか?」  
「いいけど、もうちょっと我慢してね。ね、下になれる?」  
 言いながら先生の足が俺の腰に巻きついた。  
 そうして腰を密着させたまま俺たちは体を回転させた。  
 
 上になった先生は俺の胸に手を突いて見下ろす。  
「最初は上手く出来ないと思うから、先生がしてあげるわね」  
「……はい」  
 期待に胸が高鳴る。  
 だが先生は腰を使わなかった。  
 俺に胸を合わせると唇を重ねてきた。  
 軽くキスをすると唇はすぐに離れ、耳たぶや首筋に移動した。  
 それだけじゃなく、鎖骨を通って乳首を舐めたり、あごにも唇を這わせてくれた。  
 その間も先生の体重が結合部にかかり、先生が身をくねらせるたびに俺を搾りあげた。  
 そしてそこから垂れた愛液が俺の陰嚢や太ももを濡らしていった。  
「せ、先生はいつもこんなすごいセックスをしてるんですか?」  
「ううん、前も言ったと思うけど、主人淡白だから……私だってオンナなのにね」  
 そう言って寂しげな表情を浮かべた。  
 もっともそれは一瞬で、またすぐに俺への攻めが再開される。  
「でも、すごいです先生……」  
「ふふっ、勉強したの。小笠原くんのために」  
「えっ? ホントですか?」  
「さぁ、どうかしら?」  
 いたずらっぽく笑う先生に俺はそれ以上の質問をやめた。  
 
「動くけど、我慢できなくなったらイッちゃってもいいわよ」  
 そう宣言し、先生が腰を使い出した。  
「うわっ!」  
 途端に快美感が押し寄せる。  
 クネクネと器用に動く先生の腰が俺の最も感じる部分を刺激する。  
(こ、このままでは射精する!)  
 なんとか先生の動きをゆるめようと腰に手を添える。  
 だが先生は前後だった動きを上下に変えてきた。  
 くちゅくちゅと湿った音を立て、ヌルヌルの愛液をまとって膣に出入りしているのが見える。  
「おぉう!」  
 苦悶に似たうめきが俺の口から洩れる。少しでも気を抜くと射精してしまう。  
 いくら『出したくなったら射精してもいい』とは言われても、もう少し膣の感触を味わいたかった。  
 シーツを握りしめて快感に耐える。  
 そんな俺を見、先生がさらに動きを早める。  
 ……ダメだ、我慢できない。  
「せ、先生……イク」  
「いいわよ、イッて……」  
「だけど……」  
「我慢しないで……」  
 湿った陰唇がぬちゃぬちゃと鳴る。もう限界がすぐそこまで来ている。  
「っっ!」  
 体の中で何かが爆発したような衝撃が生まれた次の瞬間、  
どくっ! どびゅっ! びゅびゅっ! びゅっ!………  
 熱いものが尿道を駆け抜けた。  
 そしてそれは先生の膣の中に注ぎ込まれていく。  
「あぁっ!」  
 精液のほとばしりを感じたのか、先生はビクッと身を震わせた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」  
 射精後のけだるさの中で大きく息をつく。  
「気持ちよかった?」  
 そう俺に声をかけ、先生が立ち上がる。  
 とろり、と垂れた白濁が内ももを伝う。  
 それがシーツを汚す前に先生はティッシュで受け止めた。  
 簡単に白濁を拭き、股間にティッシュをはさむと俺の柔らかくなった陰茎に顔を寄せる。  
 そしてそのまま口できれいにしてくれる。  
「せ、先生!」  
「いいから。小笠原くんはじっとしてて」  
 俺は先生が処理してくれるのを、ぼんやりとながめていた。  
 だが、いくら激情に駆られていたとはいえ、先生の中で射精してしまった……。  
「あの、先生……僕、中で……」  
「あなたはなんにも心配しなくてもいいの」  
「……で、でも」  
「未成年のあなたに父親になってもらおうなんて思ってないわ。それに私には夫がいるのよ?」  
「あの……」  
「ふふっ、今日はできない日なの。安心した?」  
 そう言って先生は朗らかに笑った。  
 
 その後、俺たちはもう一度セックスした。先生に導かれ、さまざまな体位でセックスをした。  
 最後は四つんばいになった先生の胸を後ろからつかみながら膣の中に放出した。  
 先生も何度もイカせた。お互いの体液にまみれながら、俺たちはただれた時間を過ごした。  
 そうして夕方になるまで多くの想い出を作り、俺は帰宅した。  
 
 その晩、両親から電話がかかってきた。  
 転校の手続きがあるから。そう言われた俺と君子は翌日、引越し先に行くことになった。  
 現地ではいろいろな手続きがあり、再び青葉台に戻ってきたのは終業式の日だった。  
 
 終業式。今日でいよいよ青葉台ともお別れだ。  
 みんながお別れパーティーを催してくれた。その心遣いが素直にうれしかった。  
 パーティが始まってしばらく経った頃、かすみが俺のそばに寄ってきた。そして、  
「あのね、アレ…来たから。だから安心して」  
 小さな声で告げた。  
 アレ? ……ああ、生理か。ということは妊娠はしなかったのか……。  
 知らず知らずのうちに安堵のため息をつく。  
 かすみには悪いことをしたと思う。だがそれを償うすべを俺は持っていない。  
「かすみ、ごめんな……」  
「ううん、いいの。転校先でも元気でね」  
 涙を浮かべ、かすみが笑った。  
 
 そうして俺は転校した。数々の忘れられない思い出と共に、俺は青葉台をあとにした。  
 転校してしばらくは俺も君子も青葉台のことをよく口にした。  
 だが日が経ち、新しい生活に慣れるにつれて青葉台が話題に上ることも少なくなっていった。  
 半年が過ぎる頃には俺たちの中でもすっかり思い出となった。  
 時たま思い出すことはあっても、感傷的な気持ちにはならなくなっていった。  
 
 転校から8ヶ月あまりが過ぎたそんなある日、木地本から手紙が届いた。  
 来月、隣りの県で行なわれる陸上の大会に代表として出場が決まったという報せだった。  
 それに合わせ『久し振りに会おう』という内容だった。  
 ……懐かしい。いっしょにバカをやった日々が思い起こされる。  
 俺は早速、木地本に電話をかけた。  
『手紙届いたか? 元気そうじゃないか』  
「お前もな。それよりすごいな、県の代表かよ」  
『まあな。……愛の力、ってやつか?』  
「はぁ?」  
『実はな、いま俺……付き合ってる子がいるんだ。覚えてるか? 剣道部の主将の……』  
 そういえばいつも防具を担いでいた子がいたっけ。たしか、風間……こだちだったかな?  
 そのノロケ話も含め、いろんな話を聞いた。いろんな話をした。  
 一瞬、自分が青葉台生に戻ったかと錯覚するほど話は弾んだ。  
 それでも聞き出せないことがあった。先生と……かすみのことだ。  
 あのことは木地本にも秘密にしていた。俺から聞くのもおかしい。もどかしさが募る。  
『そうそう、新しい先生来たんだよ。ちょっと年増だけど、美人で、なかなかいい感じだぜ』  
「こんな時期に? おい、何かあったのか?」  
『ああ、麻生先生子供できたらしくてさ。産休なんだ。その代わり』  
「……え?」  
『結婚してるから当たり前だけどさ、妊娠したってことはセックスしたんだよなぁ〜』  
 電話の向こうで木地本がニヤけているのが伝わってくる声だ。  
『いいよなぁ〜、あんな色っぽい先生とセックスできるなんて旦那さん幸せもんだよ』  
「よ、予定日は?」  
 あせる。  
『は? 来月の中頃らしいって言ってたかな? なんだ、お前もうらやましいのか?』  
 時期的には合致すると思う。確信は持てないけど……俺の子?  
 
 その後、木地本とどんな会話をしたのか、どうやって電話を切ったのか記憶がない。  
 たしかに避妊はしなかった。先生を妊娠させたのは俺? お腹の子の父親は俺?  
 俺はケータイを握ったまま、ただ呆然と突っ立っていた。  
 
 
おわり  
 

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