「バニーガールっていうのは、もっとこうピチっとしてて、色は黒で、こう……」
先ほどのウサギの着ぐるみ姿の君子を思い出しながら一人ごちる。
今日は学園祭。校内は他校の生徒も含め非常ににぎやかだ。というかざわついている。
「帰ったら君子にちゃんと教えてやらないとな。うん」
ぶつぶつ言いながら角を曲がる。
「!」
ざわついている理由がわかった。
そこにはピチッとした本物のバニーガールの衣裳をまとった香坂さんが立っていたのだ。
当然網タイツも装備済みだ。体の線がいやがうえにも強調されている。
……まるで性犯罪誘発マシンとでも呼べそうなボンッ、キュッ、ボンッだ。
「こ、香坂さん、それは……」
「あらぁ、君子ちゃんのお兄さん」
いつもののんびりとした口調で話しかけてくる。
兇悪なまでにきわどい見た目と、聞くものすべての心を和ませる声と口調がアンバランスだ。
聞くと、家庭部のクレープ屋の宣伝のため動物の着ぐるみをレンタルしたらしい。
子供に風船を配るイベントにも転用できると考えたという。
ところが業者の手違いなのか、中に一着バニーガールの衣裳が入っていたそうだ。
家庭部のみんなに着ぐるみを割り振ったあと、最後に残ったソレを部長自らが着ているということだった。
「じゃ、じゃあ君子が着ていたウサギも……」
「君子ちゃん、昔からバニーガールに憧れてたんですって。すてきな夢ね」
微妙に頭痛がするのを感じながら聞く。
「……なら香坂さんが着ているのはなんですか?」
「なんとかっていうアメリカの雑誌でモデルさんが着ている服でしょ?」
……ダメだ、香坂さんもズレてる。自分がバニーなの分かってない。
気持ちを切り替えてさらに聞いてみる。
「ということは家庭部のみんなも何かしらの着ぐるみを着てるってことですね?」
「そうね。……あ、河童の着ぐるみが気に入って借りてった子がいたわね」
「か、カッパぁ?」
深く考えるのはやめにした。
転校前の最後の学園祭。楽しんで、少しでもいい思い出を作ったほうがいい。
俺はそう決心した。
俺たちの立ち話をみんなが振り返って見ていく。中には写真を撮っている奴もいる。
わざわざ引き返してきて香坂さんの顔と体を舐めるように見ていく奴もいる。
いい気分はしないが、たしかにいい宣伝にはなる。
「ところでお願いがあるの。いいかしら?」
おもむろに香坂さんが口にした。
「はい、構いませんけどなんですか?」
「この服ね、なんだか小さいみたいで苦しいのよ」
言われて見てみると網タイツは太ももに食い込んでいるし、腰のあたりも締めつけられている。
ものすごいものを見てしまったようでなんだかドキドキする。
「それでね、脱ぐわけにはいかないけど、ちょっとゆるめようと思うのよ……聞いてる?」
「……は、はい、聞いてます」
香坂さんの声がまったく聞こえてなかった。
「ふふふ。じゃあお願いしちゃうわね」
言うなり香坂さんはくるりと後ろを向くと歩き出した。
(うわっ! 背中があんなに開いてるなんて!)
お尻でぽんぽん揺れる毛玉に一瞬見とれかけたが、あわてて後を追いかける。
家庭室に来る。
開場前まではここでクレープを焼いたりケーキを作る準備をしていたようだが、今は無人だ。
「入って」
促されて中に入る。カーテンが引かれ、中は薄暗い。
部員の更衣室の役割も果たしていたのだろう。見るとそこかしこに女子の制服が置かれている。
それを見ていると、なんとなく変な気持ちになりかける。
君子の制服ならなんとも思わないのに、他の女子のだと思うと……。
そんなことを思っているうち、股間に血液が集まり始めていた。
「ちょっと小さいのかしら?」
柔らかい笑顔の香坂さんが俺のほうを見て言った。
「香坂さんっ!」
淫らな気持ちになりかけていた俺は、何かに衝き動かされるように香坂さんを抱きしめた。
「あらあら」
緊張感のない香坂さんの声に俺をとがめるような鋭さはない。
むしろどう対処していいのかわかりかねているといった感じだ。
「好きですッ! 香坂さん好きです……」
言いながら下半身を押しつける。
「き、君子ちゃんのお兄さん……お腹に固いものが当たっているわ……」
小さな声で恥ずかしそうに香坂さんが応えた。
「ご、ごめんなさい……でも、止められない……」
「いいのよ、男の子ですものね。我慢しなくてもいいのよ」
意味がわかって言っているのだろうか? 香坂さんはそのまま俺に抱かれつづけている。
「も、もうこんなになっちゃってます」
香坂さんの言葉に意を強くした俺は大きく張り詰めたズボンの股間を突き出す。
「すごい……脱いで見せてくれる?」
言いながら香坂さんの手が股間に触れる。なんとなく声も上ずっているように聞こえる。
香坂さんは俺が脱ぎやすいように半歩退いた。
そのまま香坂さんに見つめられながらベルトを外し、ジッパーを下ろす。
不思議と恥ずかしさはない。興奮しているはずなのに、どこか冷静な俺がいた。
下着ごとズボンを下ろす。足を上げて抜き去る。下半身がむき出しになった。
「大きいわ……」
香坂さんも緊張しているのか、かすれた声がした。
腕を伸ばす。そのまま香坂さんを抱き寄せ唇を重ねた。
甘い香りが胸いっぱいに広がる。頬に当たる香坂さんの吐息がくすぐったい。
俺はキスをしたまま手のひらを胸に持っていった。
乳房を覆う布地の上で這わせながら香坂さんの柔らかな唇を舐める。
「んっ……」
のどの奥で小さな声を立て、香坂さんがビクッと震えた。
だがそれは一瞬のことで、すぐに力が抜ける。
そのすきに舌を唇の間にねじ込み、固くなめらかな前歯を左右になぞった。
何度かくり返すうち香坂さんの前歯が開かれた。さらにねじ込む。と、濡れた舌が俺に絡んだ。
そのまま吸いあい、甘噛みし、舌の裏や頬の内側を刺激しあう。
そこに、今まで俺にされるがままだった香坂さんの責めが始まった。
剛直をさすられた。
「んんっ!」
唇をふさがれたままで声は出せないが、大きくうめく。
続けて茎に指を回すと、やわやわと揉みほぐすように握る。
力を強めたり弱めたりしたあと、ゆっくりと上下にしごく。
「ぐぅっ! むんっ!」
俺は香坂さんに翻弄されていた。
とうに俺の舌は止まっている。いまは香坂さんの思うがままになっている。
香坂さんは空いていた手で袋をささげるように持ち、もう片方の手で裏スジをこすりたてた。
自分では握れない角度でしごかれる快感は、これまで味わったどんなものよりも強烈だった。
「ぷはぁっ」
呼吸が苦しくなり、唇を離してしまう。
「あぁぁぁ……」
男のくせに恥ずかしい嬌声を上げて悶える。
そんな俺の首筋から胸、そして腹へと香坂さんの頭が降りていく。
(ま、まさか……)
そう思った次の瞬間、チュッという音と共に亀頭を何かがついばんだ。
「おおぅっ!」
続いて肉茎が温かく湿った空間に包み込まれた。
亀頭をヌラヌラした何かが這いまわり、強く吸われる。
見下ろした俺が見たもの、それは俺の股間に顔をうずめている香坂さんの姿だった。
ちゅぱちゅぱと淫らな音を立てて香坂さんが勃起に吸い付く。
唇ではさんだまま頭を大きく振って淫茎をしごきたてる。
あまりの悦楽に腰がガクガクと痙攣する。
そのたびに香坂さんの口の中を先端が突き、新たな快感が生まれる。
香坂さんは茎に添えた手を動かし、睾丸を揉みながら舌先で尿道口をこじ開けるように責めたてた。
「イ、イクっ!」
途端に限界がきた。
ドクドクと白濁した粘液を撒き散らしながら俺は絶頂した。
噴き出した精液はすべて香坂さんの口の中に射ち込まれる。
「んっ、んんっ!」
苦しげなうめき声を上げて俺の射精を香坂さんは受け止めていた……。
おしまい