「つ、疲れたー……」
夕刻と言うにはいささか過ぎた時刻。
とある男子寮のエレベーターホールに、やっとの思いでここまで辿り着きました、とオーラで語る上条の姿があった。
追いかけっこからビリビリフルコースと、美琴の体力が尽きるまで付き合ったらしい。
その後スーパーで今日の夕食の食材を購入して、今ようやく帰宅と相成った訳である。
エレベーターに乗る前に、郵便受けに入っている自分宛の郵便物を回収する。
「あん?」
各種チラシやDMに混じり、一通のエアメールが届いていた。
自分に届くとすれば、出張先から父親が送ってくる場合が考えられるが、今は日本に居るのでその線は無い。
となれば。
「インデックス宛か……。てか、いつの間にかふつーに連絡先になってやがるし」
そんなんでいいんかい必要悪の教会、と一人ごちつつエレベーターに乗って自室のある七階へと上がる。
エレベーターから降り、直線通路を歩いて自分の部屋へ。
「うぉーいインデックスー、生きてるかー?」
彼自身を取り巻く環境から考えれば不謹慎な発言ではあるが、上条は室内に居るであろう禁書目録の少女へと声を掛けながらドアを開ける。
途端。
「おーそーいーよーとーうーまー……」
玄関先で力なく寝そべってる銀髪のシスターさんの姿が目に飛び込んできた。頭の上には同じように脱力した三毛猫が乗っかっている。
「どうしたインデックス。待ちくたびれて冷蔵庫の中身も喰い尽しちまったか?」
などと暢気な事を聞いてくる上条に対し、
「とうまは私のことを何だとおもっているのかな?流石に生のお肉とかはおいしくないんだよ」
と、こちらもどこかずれた返答を返すインデックス。
「まぁ遅くなって悪かったとは思ってる。すぐに準備するからもう暫らく辛抱していてくれ」
「わかったんだよ……とうま?」
三毛猫を乗せたまま、インデックスが頭を上げて上条を見上げた。
「なんか疲れてるね。またどこかの誰かさんを助けに行ってたの?」
「何でそうなる。イヤ、反論はやめてくださいインデックスさん。へこむから」
「でも、また右手を使ったんでしょ?」
「あー、うん。そうしないと無事じゃ済まなかっただろうし」
向うも納得しなかっただろうし、と心の中で続ける。
「もう、しょうがないなぁ、とうまは。私のいないところでその手を使っちゃ駄目だって言ったのに」
よいしょ、と声を一つ掛けてインデックスが立ち上がる。いきなり動いた土台にびっくりしたか、三毛猫は起き上がる途中で飛び降りていく。
「とりあえず、はい」
と言ってインデックスは軽く上を向いて目を閉じた。
それを見て、上条も何を言いたいのか察する。
今、上条当麻の『幻想殺し』の使用には大きな枷が掛かっている、事になっている。
その枷による消耗を回復させる為に、インデックスはとある手段を選択したのだ。
何も言わず、上条はインデックスの唇に自らのそれを重ね合わせた。
「んっ……」
ぴく、とインデックスの体が反応する。
それには構わずに、上条はインデックスの唇を割って咥内へ舌を侵入させる。
不躾には侵入ってきた闖入者に対して、インデックスのそれは諸手を上げて歓迎した。
上条当麻の中から失われていく力を補う為、インデックスが選んだ手法。
それは、肉体の交わりによって精神(こころ)を癒す、そんな業だった。
口の中と言う閉ざされた空間の中で粘膜同士が擦れ合い絡み合う。
その刺激を受けて多量に分泌される唾液は、二人にとってはお互いの味を感じる大事な一品。
もっと欲しいとインデックスがねだれば、上条はそれに応じて彼女の中へと流し込み。
さらに味わいたいと上条が思えば、インデックスはされるがままに啜り上げられる。
玄関先で交わされたささやかな交歓は、五分ほどで終焉を迎えた。
どちらからともなく唇を解放する。口元から伸びた蜘蛛の糸は数瞬で儚く途切れた。
「つ、続きは後でだね」
「そ、そだな」
先程まで激しく互いの唇を貪りあったとは思えない程に紅潮する二人。
「あ、そだ」
気恥ずかしさを紛らわせるかのごとく、上条は右手の郵便物の束をインデックスへと差し出した。
「お前になんか来てたぞ、エアメール」
「え?誰からだろ」
上条から束を受け取り、インデックスはこちらも照れを隠すかのように早足でリビングへと姿を消した。
「さて、と。じゃあ夕飯を作るとしますか、ね」
ちなみに夕食のメニューはレバニラ炒めとカキフライだ。
「「ごちそうさまでした」」
滞りなく夕食が終わり、洗い物をしに台所へと行こうとした上条をインデックスが呼び止める。
「とうまとうま、今度の土曜日にかおりが来るんだって」
「は?かおりって神裂か?」
「うん、そうだよ。手紙にそう書いてあった。て言うかあの手紙、とうま宛だったんじゃないかな」
そう言って先程の手紙を取り出すインデックス。確かに宛先には『To Touma Kamijou』とある。
「そうは言ってもなー。ここには俺一人で住んでる事になってるんだし、宛先には俺の名前しか使えないだろ」
「中身は日本語だったよ。でも私向けに宛てた話もあったし、どうなんだろ」
うーん、と唸るインデックスへ、上条は、
「今度の土曜日ねぇ。まぁいいけど」
と言って、「ん?土曜日?」と首を傾げる。そんな上条には気にも留めず、
「でもかおりもわざわざ手紙を書いてくるなんて律義だね。でんわをかければすむ話なのに」
「そーゆー話は自分が満足に使えるようになってから言いなさい」
とうまっ!?と猛るシスターを尻目に今度こそ台所へ。
「もー、そんな事言うんだったら今日の分はさっきのでおしまい!!」
「それで、インデックスさん」
洗い物が終わり、リビングに戻ってきた上条を待っていたのは。
「何かな、とうま」
ベッドの上でタオルケットから赤く染まった顔だけ出して座っているインデックスの姿だった。ベッドの下には修道服がきちんと畳まれている。
「先程の流れで言うと、今日はこのままおやすみーとなる筈ではなかったのでせう?」
困惑半分揶揄半分と言った感じの上条の言葉に、インデックスは口を尖らせて言い返す。
「私としてもそのつもりだったんだけど、今日はとうまが外で色々してきて疲れてるみたいだしこのままの状態で明日も無茶したら大変な事になるかもしれないから見過ごせないし、だから、その」
終わりの方は口の中でごにょごにょと呟く感じになってしまっているが、言いたい事は把握できた。
しかしそれを指摘したら、
(噛まれるな、100%)
「そっか、気を使わせて悪いなインデックス」
「私はシスターだから人に奉仕するのは当然なんだよでもこんなことするのはとうまだけなんだからね」
早口で弁護するシスターさん(修道服は脱いでいるが)の頬にそっ、と手をあてて、目線を合わせる。
そして、そのまま重なり合ってベッドへと倒れ込んだ。
二人の夜はこれからであるなぁ、と、テーブルの下から二人を見つめる三毛猫の目はそう語っていた。
案の定、タオルケットの下には一糸纏わぬインデックスの裸身が隠されていた。
「とうまは今日は横になってるだけでいいよ……。私が、するから」
そう言って、インデックスは上条と体勢をくるりと入れ替える。
仰向けになった上条の胸に乗って、腰の方へと体を向ける。そしてベルトを外して下着ごとズボンをずらして、上条の男性自身を外気の下に曝け出す。
先程までの期待感の為か、はたまた夕食のおかずの効能か。既に臨戦態勢を整えつつある上条の男根を間近に見て、思わず怯む。
「す、凄いね。こんなに大きいのがいつも私の中に……」
恐る恐ると言った風にそれに手を伸ばす。指先が触れた瞬間、ぴくり、と反応する様を見て、
「ひゃっ!?」
伸ばした手を引っ込めてしまう。それでも果敢に再度手を伸ばし、幹の部分をそっと握る。
「えーと、確かまいかから聞いた話だと……」
「ちょっと待ったインデックス」
今、聞き捨てなら無い話が聞こえたような。
「今、舞夏から聞いた、とか何とか言わなかったか?」
「あ、うん。今日のお昼にまいかとお話してたんだけど……」
『いいかー銀髪シスター。いつもいつも受身ばっかりじゃそのうち飽きられてしまうんだなー』
『そうなの!?』
『そうだぞー。だから偶にはこっちからシテあげると相手も喜ぶ筈なんだなー』
『こっちから……』
「何の話をしてるんだぁぁ!?」
ナニの話です。
「えー、でもまいかからその話をしてきたんだよ?」
ピタリ、と叫ぶのを止める。
「何ですと?」
「あと、あまり夜遅くまでしてると近所迷惑だって言ってたかも」
自宅の防音事情とかは把握しておこう。
だらだらと冷や汗を垂らしながら固まる上条は気にせず、インデックスは男性器への奉仕の再開を試みる。
まず、やや堅さが失われつつある竿の部分を、両の手でゆっくりと上下に擦ってみる。
「うぉぅ!?」
急に与えられた刺激に、思わず奇妙な声を上げてしまう。
「イ、インデックス。唾を垂らしてからやってみてくれないか?」
「?こう?」
上条からの提案どおりに男根へ唾液を垂らしてから、再度擦りあげる。
にゅるにゅると淫猥な音がし始める。幾度か繰り返すうちに、上条自身からも腺液が分泌されてきて、それがインデックスの手を汚していく。
上条もされるがままではいなかった。目前でフルフルと震える小さいお尻に両手を添えて、親指二本でインデックスのクレヴァスを押し広げる。
その、成熟しているとはとても言えない秘部に上条の視線を感じ、それが少女の性感をゆっくりと高めていく。
互いの性器を互いの指で愛撫しあう。
拙いながらも相手を思いやりながら丹念に上下の動きを繰り返す少女。
慣れてるとは言え相手を傷付けない様細心の注意を払いながら撫で回していく少年。
臨界はすぐそこまで迫っている。
「とうま……もう、良いよね……?」
言って、インデックスは再度体の向きを替えて、後ろ向きに上条の腰部へ移動する。
つん、と後ろから肉棒が桃色に薄く染まったお尻を突付く。
そんな悪戯なペニスに手を添えて、位置を調整する。
「んっ……、うふふ、とうまの、ぴくぴくしてるよ?」
陶然とした表情で淫靡に笑いかけてくる少女の痴態に、心を奪われる。
「じゃ、いくね……」
そう宣言し、腰を落とす。
ずぶずぶと幼い秘裂へ凶悪な肉の凶器が埋まっていく。その内に、先端に何かが当たる。
「とうまのが……奥まで……あふぅっ」
子宮口まで突き立てられて、インデックスの息が詰まる。お臍の辺りを撫で回しながら、
「すごい……ここまで……届いてるよ……」
上条は魅入られたようにその光景を見入っている。
「動くね、とうま……」
返答を待たず、腰を持ち上げ、そして落とす。激しくはないが、その大きなストロークに上条の肉茎は責められていく。
「うんっ、んっ、ふっ、っはぁっ」
一つの動きごとに、インデックスの口から嬌声が漏れる。腰を上げれば剛直に引かれて花弁が捲れ上がり、落とせばその捲れた部分がもとの場所よりも更に奥まで押し遣られていく。
事、ここに到って上条の中の何かがプツリと切れた。
インデックスの腰を引き寄せて、上体を起こす。
「ひぃやっ!?」
奥の、更に奥まで捻じ込まれて、インデックスの眦から小さな雫が零れる。
しかし上条の動きはこれに留まらず、インデックスの体を抱きかかえたまま立ち上がった。
いわゆる、駅弁と言う体位である。
「やっ、とっ、まっ、ふっ」
最早、口から出る言葉が意味を為さない。
そんな少女の体を、一心不乱に貪っていく。
「ゃんっ、ぁっ、ぅふうっ!」
その華奢な体へ、己の剛直を突き、抉り、捻じ込んでいく。
「あっ、あっ、ぁあぁぁああぁ!!」
インデックスの絶叫とともに、彼女の秘壷が急激に締まる。それを引き金に、上条はインデックスの胎内へ白く濁った激情を思う存分に吐き出した。
「……とうまは、えっちかも」
失神まで追いやられて回復した後、インデックスが洩らした第一声はこれだった。
「それに関しては、上条さんは反論する言葉はありません……」
ベッドに突っ伏したまま上条がそれに答える。
事後、二人はそのままの格好で並んでベッドに横たわっている。
「でも」
と言って、禁書目録の少女は隣で脱力している幻想殺しの少年に擦り寄る。
「私はそんなとうまが嫌いじゃないかも」
「それは、どうも……」
そう言って、まどろみの中に堕ちていく上条当麻。
ところで。
彼は今日一日に交わした約束のことを覚えているのだろうか?