美琴の時と同じく、途中にあった障害物を押し破って奥へ奥へと歩を進める。  
当たり前の事だが、ひどくきつい。もしかすると、美琴よりもきついかもしれない位だ。前後の動きもあまり滑らかには行かない。  
目線を下へ向けると、鳶色の小さな窄まりと上条自身を迎え入れて限界まで広がった御坂妹の陰唇が目に飛び込んできた。肉幹には処女の証がこびり付いている。  
「う、あ、あ」  
御坂妹の口から声にならない声が零れ出てきた。痛みを堪える為か、両手がシーツを強く握り締めているのが見える。  
「お、きい、です。お腹が、こんな、あぁぁ」  
最後まで言えずに、御坂妹は体を丸めるように頭を下げた。彼女の下には未だ脱力したまま横たわる美琴の体があり、御坂妹の額が、そのなだらかな胸へと着地する。  
何かが胸元に降りてきたのを感じて、美琴は思考能力を取り戻した。  
視線をそちらにやれば、自分の上で蹲るように頭を下げる妹と、その妹を後ろから責める上条の姿が映る。それで何となく今の状況を朧ろ気ながらも認識した。  
美琴は、両手で御坂妹の顔をこちらへと向けさせた。  
何故、と聞かれても、理由はわからなかった。  
ただ、見たかったのだ。  
好きな男に抱かれた妹の顔が。  
抱かれた時に見せたであろう自分の顔が。  
「あ、おねぇ、さま?」  
その顔は、はたして、想像以上だった。  
痛みに耐えながらも体を奔る快楽に酔う眼。上気し紅に染まった頬。だらしなく涎を垂らす半開きの口元。  
気が付いた時には、既に唇を合わせていた。  
間近に、驚きでか、両目を大きく見開いた妹の顔が見える。  
そんな御坂妹の口内へ、自分の舌を割り込ませた。先程の上条とのキスで教え込まれた動きを、妹相手に実践する。  
最初はされるがままだった御坂妹も、負けじと姉の舌へと挑みかかる様になった。  
お互いの目の前には同じ顔。  
まるで鏡像との交感行為。  
永遠に続くかと思われた姉妹の行いは、  
「!?ど、どこをさわって、るのですか、とミサカは驚愕します!!」  
上条のある行為によって中断された。  
姉との背徳的なキスを止めて後ろへ振り返る。  
「どこ、って。言わなくても分かるだろ」  
言って上条は意地悪そうな笑みを浮かべた。  
「そ、そんなところを触らないで下さい、とミサカは羞恥を隠して抗議します。そこは汚いです、とミサカは忠告しまっ!?」  
御坂妹の抗議も言い終わらぬうちに、  
「いや、ここも結構重要な場所なんだぞ。知らなかったか?」  
上条は先程も弄った御坂妹の菊座に指を這わせる。親指で円を描くようにぐりぐりと揉み解しながら、  
「世間には、こっちの方に挿入れる方法もあるんだぞー」  
「…………やっ、無理です!そんな、入りません!!とミサカは恐慌します!」  
上条の言葉に一瞬想像して、その想像を打ち払うように首を横に振る。  
「そんな知識はミサカの中にはありません、とミサカはっ!?」  
再度、体を駆け抜けた快感に言葉を中断させられる。今度の発生源は上半身からだ。  
犯人は美琴だった。  
「さっきのお返し、してあげるわ。アンタと私って、感じるとこまで一緒なのね」  
そう言って美琴は御坂妹の胸で尖っていた小さな果実を口に含む。  
「ひゃうっ、あ、はぅん!」  
各所から送られてくる刺激に、御坂妹にはそれらに抗う術がなかった。できる事は、ただそれら享受するのみ。  
 
「あ、あ、あ、あ」  
乳首を甘噛みされ、肛門を弄ばれ、膣を打ち貫かれ、最早、限界だ。全身に何かが走り抜けたような感じがした。  
「っ――――――――!!」  
「うっ!?」  
それは比喩ではなかった。美琴と同じく、御坂妹の膣壁からも電流による刺激を受けていたのだが、御坂妹が声にならない絶叫を上げた瞬間、その電流の強度が一気に増した。その刺激に、思わず膣内で射精してしまった。  
二度目とは思えない量の精液が御坂妹に注ぎ込まれる。  
「あっ、あぁぁぁぁ」  
体内で何かがはじけている。そう思った瞬間、全身の力が抜けてしまった。  
……余計な所の力まで。  
美琴の顔の上に圧し掛かるように上体を伏した瞬間、未だ繋がったままの股間から温かいものが零れ出てしまうのを、御坂妹は止められなかった。  
「あっ、やあっ、み、見ないで下さい、とミサカは懇願しますっ」  
ちろろろろ、と水音が部屋の中に響く。  
「あぅぅぅぅ、ご、ごめんなさいぃ」  
「あー、と、まぁ気にしなさんな、な?」  
泣きそうになる御坂妹に慰めの言葉をかける上条。実際にはそれは逆効果だと思うが、どうか。  
二回放ち若干項垂れた肉棒を御坂妹から引き抜いて、枕元に置いてあったティッシュで御坂妹の秘所を拭う。  
「シーツとかぐしょぐしょになっちゃったわね。どうしよっか?」  
最後のがなくとも、今までの行為で既にぐっちゃりになってしまったベッドを見下ろし美琴がそう言った時に、突然ノックの音が部屋の中に響いた。  
瞬間、三人の動きが止まる。数秒後、聞き覚えのある声が聞こえてきた。  
 
『終わったかな?』  
ノックの主はあのカエル顔の医師だった。  
『いや、若いことは結構だけどね?あまり大きい声を出すと外に聞こえるよ?』  
聞かれてた!そう認識した途端、姉妹の顔が真っ赤に染まった。  
『いや、ずっと聞いていたんじゃないよ?さっき往診しにきたら、何やら取り込み中だったみたいだからね?しばらくの間、病室の前を通行止めにしておいたよ?両隣が空き部屋でよかったね?』  
「それに関してはお礼を言った方が良さそうですね。ありがとうございます」  
端から聞くと皮肉にも聞こえるが、上条は割りと本心でそう言った。カエル医師も言葉通りに受け取ったようだ。  
『いや、礼には及ばないよ?君もわりかし病院が好きだよね?希望するなら手術室とか手配するけど?』  
「それは結構です、ってかまだ引っ張るかそのネタ!」  
『むぅ、残念だね、ま、それはいいとしてだよ?ベッドの上とか凄い事になってないかな?信頼できるナースを呼んであるから、あんまり心配しなくてもいいよ?』  
意外な裁量に、上条は思わず聞き返した。  
「良いんですか?その、怒ったりとかしないんですか?公序良俗に反する、とか」  
『別にそんな権限は僕にはないね?あったとしてもする気も無いけどね?』  
上条の問いにそう答えたあと、医師の気配が離れて行くのが分かる。  
『それじゃ、患者さんの診察は後回しにするからね?三十分くらい後にまた来るよ?』  
三十分後、と聞いて無意識の内に病室備え付けの時計に目を向ける。  
現在、三時二十八分。  
「あ」  
ここから姫神の待つデパートまでの道のりを考える。  
まずい。間に合わないかも。  
脱ぎ散らかしていた制服を取り集めて着ていく。  
「ちょっ、どうしたのよ、急に」  
突然の上条の行動に、美琴が問いかける。  
「すまない美琴、後は頼む」  
「何でよ。何かあるの?」  
「あぁ、上条さんにも色々とあるのですよ。ミサカ、今日は帰るけど、また来るからな」  
「……はい、お待ちしてます、とミサカは直視出来なくとも再来を待つ旨を伝えます」  
御坂妹の声を背に受けて部屋と出ようとして、上条は足を止めて振り返る。  
「ヤる事ヤっといてすぐ帰るってのは、何と言うか、すごく気まずい」  
そこで、一回言葉を切る。  
「この埋め合わせは、いつか、必ずするから」  
「分かったわよ。良いからさっさと行きなさいよね」  
常であれば怒り出しそうな美琴が、退室を促す。  
「はい、その言葉、忘れませんから、とミサカは胸に刻み込みます」  
御坂妹が、今度は顔を見て再会を期待する言葉を発した。  
「ああ、またな……看護士さんが来る前に服位は着ておけよ」  
「うっさい!行くならさっさと行け!」  
美琴の怒声に押し出されるように、上条は病室から駆け出して言った。  
 
 
行間 一  
 
医師の往診が終わった後も、美琴は御坂妹の病室にいた。  
上条が出て行った後に訪れてきたナースの暖かく見守るような目を思い出して、一言洩らす。  
「アイツってこの病院の何なのかしら」  
「アイツ、とは当麻さんの事ですか、とミサカは念の為確認します」  
ベッドの上から御坂妹が聞いてくる。結局ベッドは、布団一式を全部交換する事で落ち着いた。  
「そーよ、ってアンタってアイツの事そんな風に呼んでた?」  
「今までは違いますが、今日からはそう呼ぼうと考えました、とミサカは自説を披露します」  
「……まぁ、いいけど、ね」  
呼び方、ねぇ、と考えてから、先程の時のことを思い出して赤面する。  
そう言えば、自分の事を名前で呼んでいなかっただろうか?  
それから、御坂妹の顔を見る。  
「そうね、アンタのことも考えないとね」  
「?何がでしょう、とミサカは首を捻ります」  
「名前よ、な・ま・え。いつまでも『アンタ』とかじゃ不便だしね」  
「別にミサカは現状に不満を感じてません、とミサカは言います」  
そんな御坂妹の物言いに、美琴は、  
「自分では分かってないのかしら」  
と言ってから、分かっていない風な自分の『妹』に向けて、改めて向き直った。  
「アンタはね、確実に変わったわ。今日一日の言動を振り返ってみたらどう?自分から、自発的に、何の打算もなく要望を口にするなんて真似、今までのアンタに出来た?」  
一旦言葉を切ってから言いなおす。  
「いえ、言い方を変えましょう。今日一日のアンタの行動を、他の『妹達』が出来ると思う?」  
御坂妹は答えない。  
「アンタは既にアンタ自身の自我を持ちえている、って私は思ったんだけどね」  
それはとっくにそうだったかしら、と嘯きながら美琴は続ける。  
「確かに『妹達』は私のDNAマップから創られている。それに加えてミサカネットワークだっけ?それで繋がっているんだから一が全、全が一と言えるかもしれない。けどね」  
そこで再び言葉を切り、御坂妹へと近寄り、頭を抱き寄せる。  
「私の『妹』は、アンタだけだって、私はそう思ってる」  
随分な話だけどね、と付け加えてなおも言葉を繋げた。  
「これは他の娘がどうなってもいい、って言っている訳じゃないの。もちろんアンタ以外の『妹達』を失いたくない気持ちもあるわ。  
 だけどそれは、なんて言えば良いのかしらね、身内に向ける感情じゃないような気がするのよ」  
「お姉様……」  
胸に抱かれたまま、御坂妹。  
「まぁ、下世話な話だけど、同じ男に抱かれたってのもあるし」  
照れ隠しと分かる口調で冗談を言う。  
「だから、ね。アンタに名前を付けたいの。私の妹だ、って皆に言える名前をね」  
「はい、お姉様、とミサカはお姉様の意見を受け入れます」  
「あ、あと他の『妹達』に伝えて欲しいことがあるんだけど」  
ごにょごにょ。  
 
 
 
ミサカ一〇〇三二号より全ミサカへ。お姉様からの伝言を伝えます。  
『これより以後、私、御坂美琴の目の届かない所での性交渉を断固禁止するからね。これを最優先事項としなさい。以上』  
 
学園都市内で幼女の悲鳴が上がったのは別の話。  
 
 
 
 
 
 
おまけ  
「そう言えばアンタ、膣内に射精されてたけど、その、大丈夫なの?」  
「はい、ミサカにもしっかり生殖能力が備わってますから、とミサカはVサインで告げます」  
「じゃあダメじゃない、って何でそんなに勝ち誇った顔すんのよ!!」  
「安心してくださいお姉様、とミサカは補足します。あるミサカが芳川と言う研究員の方に受けたレクチャーなのですが、下腹部の電流を操作する事によって受精を阻止できるのです、とミサカは教えます」  
「な、何だ。それなら大丈夫じゃない。勿論やったんでしょ?」  
「…………答えは十月十日後に、とミサカは奥歯に物を挟んで言います」  
「ちょっとぉ!?」  
 

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