「……」
のどかな昼下がり。暖かな日光は、世界に分け隔てなく降り注ぐ。それはこの学園都市とて例外ではない。
カーテンを開け放った大きな窓から、やや黄色みがかった夕刻の光が差し込み、ベランダにつながるその大きな窓の前にうずくまる人影を照らし出す。
膝を抱え、窓の方を向いて俯いているその女性の足元には、鞘に入った刀が無造作に一本置かれていた。
「……」
女性の後ろでは、少し距離を置いたところで少年が一人気まずそうに背を向けて座っている。
特に何をしているのでもなく、ただ、座ったまま動かない。
共に頬を染めた二人がお互い一言も発さないまま、窓に伸びる影は長く、日光は紅く染まり始めていた。
「……」
とうとう痺れを切らした少年、上条当麻は、いつもより重く感じる頭を動かして、背後の女性のほうを向きながら、
「あのさ、神裂」
と言ったところで、
「か、上条当麻」
と、その女性、神裂火織と声が重なり、ちょうど同じように振り向いていた彼女と目があった。
「……」
「……」
「……えっと、先にどうぞ?」
「! ぁ、その……うぅっ」
譲歩したのは逆効果だったようで、神裂はほんの一瞬の間口をパクパクとさせていたが、すぐに目をそらして黙り込んでしまった。
「……ッ!」
その様子を見て、上条も先ほど何があったかを思い出し、顔をマンガのように赤く火照らせて背を向けた。