「俺はいつもバスルームで寝てるからベット使っていいからさ」  
「あ、あの……その、その……」  
そう言う上条の言葉を受けて赤くなっていく佐天。  
「明日にならないとその友達と連絡つかないんだろ?」  
「そうですけど……」  
あー、うー…と呻きながら手をもじもじさせる  
「(お、男の人の家で、男の人と一つ屋根の下でお泊り………!?)」  
そこから先を想像してさらに顔が真っ赤になっていく。  
「(と、取り合えず上条さんの言うとおりだし、ここは止めてもらったほうがいいかな…?)」  
ぐるぐる巡る思考の中で「それじゃあお願いします」の一言が出てこない。  
取り合えずどうお願いしようかを必死に考える。  
必死に考えてやっとのことで頭に浮かんだ言葉を咄嗟に言ってみる。  
「そ、その………ふ、ふつつか者ですがよろしくお願いします!!」  
………ジーザス。  
自分の口にした言葉を反芻して赤から真紅へと顔の色を変えていく。  
「(や、やばっ!あたし食べられちゃう!?おいしく頂かれちゃいますか!?)」  
自らの発した言葉による展開を想像して動悸が激しくなる。大人の階段のーぼるー♪  
しかし両手で余る程のフラグを立てる朴念仁上条当麻。  
その言葉を佐天の危惧した方向にとることはなく、上条が頭に?を浮かべるだけで止まった。  
 
安心したのと同時にちょっと残念な気がしたのは何故だろう?  
 
 
それから少しして部屋の明かりは落ちた。  
疲れていたのか、ベッドに入り込むなり直ぐに寝息を立てて眠り始めてしまった佐天を見て苦笑する。  
ベッドに入る際、さすがに所々裂けた服を着たまま寝るわけにはいかないので上条の服を借りることになった。  
ブカブカのトレーナにこれまたブカブカのズボンを着ている姿はなんというか、とても愛らしい姿だった。  
ちなみにその時の佐天はまるで同棲してる男女みたいだと考えて真赤になっていたことを上条は知らない。  
「ふぅ、それじゃあ今のうちに…」  
そう言って取り出したものは――――  
「早いとこ終わらせよう」  
スタンドライト、佐天の服、裁縫道具の三点だった。  
ようは佐天が寝てる間に服を直しておいてあげようということだ。  
「さて、がんばるとするか」  
 
「ん……」  
顔に当たる弱い光で半分だけ意識が覚醒した。  
いつもと違うベットであることに声を上げそうになったが直前で思い出した。  
「(あ……そうだ、あたし上条さん家に泊まったんだっけ……)」  
ベッドに寝たまま少し視線を動かしてみると上条の姿が見えた。  
寝ぼけ眼でもその手元に針と自分の服があるのが分かった。  
「(あたしの服……直してくれてるんだ………)」  
度々針で指を刺しながらも作業をやめずに続ける姿をじっと見ていた。  
「(上条さんて、かっこいいな……)」  
純粋に、そう思った。  
風紀委員でもないのに赤の他人の自分を助けて、怪我の手当てもしてくれた。  
それだけでなく、泊まる場所がない自分を家に泊め、頼んだわけでもないのに針で指を何度も刺しながら服を直してくれている。  
この人は、どうしてこんなに優しくしてくれるのだろう―――――?  
そんなことを考えていたら縫い終わったのか、彼が伸びしているのに気づいた。  
「上条さん、ありがとうございます……」  
本当に小さな声で、彼にお礼を言って  
再び眠気が襲ってきた。  
 
 
「ん?」  
縫い終わった服をテーブルに置き、寝室(バスルーム)に向かおうとしたところで振り向く。  
今、呼ばれた気がした。  
「佐天、起きてるのか?」  
返事は戻ってこない。時刻は3:12分、もうそろそろ夜が白んでくるだろう。  
「気のせいか」  
そう呟きながら佐天の服を持って佐天の枕元まで持っていって置いてやる。  
ついでにはだけている毛布を直してやる。  
「……可愛いよなあ」  
あどけない寝顔に流れるような黒髪。  
すーすーと穏やかな寝息を立てて寝ている。  
何気なく、佐天の黒髪を撫でてやる。  
 
「ん……ふぅ……」  
眠ったままくすぐったそうに、しかし気もちよそうな笑顔を浮かべる。  
その様子に微笑みながらも手を離して寝室に行こうとするが……  
「……ん……あ……」  
手を離した途端なんだか悲しそうな声をだしてくる。  
その上、佐天の手が寂しそうに上条の手を捜すように宙を彷徨っている  
「(あー…なんか上条さんは罪悪感を感じますよー……)」  
仕方ないので自分の手を彷徨っている彼女の手に捕まえさせる。  
「んぅ………」  
やっと目的のものを掴んだ途端心なしか笑顔になった。  
その後、上条の手を頬まで引き寄せて軽く頬ずりしている。  
「(あーこれはこれでかわいいかも)」  
ベッドのあいてる部分に腰掛けてそのまま自分の手を佐天の好きなようにさせる。  
女の子の柔らかい頬が手に当たるのが何気に心地いい。  
「さて…どうするかね」  
そう思いながら余所見をしていた。その時  
「カプッ」  
突然指先が濡れた感覚と生暖かい感触に包まれた。  
「うひゃ!?」  
思わず飛び上がりそうになるのをなんとかこらえる。  
慌てて見てみれば佐天が上条の手の指を銜えていた。  
「(うわ…やべ、どうやって抜こう………)」  
予想外の出来事に困惑しつつ対策を考え始めるが  
「あむあむ」  
「あう!?」  
指を銜えてしゃぶるだけでなく甘噛みまでしてきた。  
「なんか変な感覚だ………」  
指を引き抜こうとしても佐天がしっかり手を掴んでいるために抜くことができない。  
こうして上条はこれから三時間もの間動くことができず、佐天に指を銜えられて甘噛みされ続けることになった。  
 
その間、当の少女は上条の気も知らず至極幸せな夢を見ていたのだった。  
 
 
チュンチュン……  
「ん……朝……?」  
雀の鳴き声で目が覚める。  
軽く身をよじりながら口にくわえている物をあむあむと甘噛みする  
視線を動かし寝ぼけている頭で時計を確認する。  
時刻は6:28を表示していた。  
「(なんだ……まだ6時半か……)」  
今日は土曜だから学校はないからまだ寝れるね、と思いながら半分眠りながらあむあむ。  
「(昨日は大変だったなー…不良に追われて、助けられて泊めてもらったり……)」  
そこまで考えてから気付いた。  
そういえばここは自分の部屋ではなく、恩人である上条の家だ。  
そして、自分はいまなにを甘噛みしているのだろうか?  
視線を動かしてくわえてるものを辿る。  
ゆっくり辿って行き、視線を上げていくと  
「お、おはよう」  
酷くぎこちない笑顔を浮かべた上条がベットに腰掛けていた。  
固まる佐天。  
あ、あははと苦笑いする上条。  
二人の間に痛いほどの沈黙と微妙な緊張が漂う  
しばしの沈黙の後、先に動いたのは佐天だった。  
佐天はおもむろに口を動かして上条の指をあむあむ甘噛みしてみた。  
途端、指からの刺激を受けて上条の体がぴくぴく動いた。  
佐天あむあむ→上条ぴくぴく→あむあむ→ぴくぴく→あむあむ→ぴくぴく  
この工程を三分かけて4セット行って佐天はやっと事態理解するに至った。  
「きっ………」  
佐天の様子を見て上条は、あーそーだよねーやっぱりくるよねーよーし朝から言っちゃうぞーとか言っている。  
「きゃあああああああああああああ!!」  
「不幸だぶばぁ!?」  
朝の上条宅に少女の叫びと破裂音に似たいい音が響いた。  
 
 
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」  
「いや、もういいって」  
ひたすら頭を下げ続ける佐天を見て上条が苦笑しながら言う。  
顔には綺麗に赤い紅葉が張り付いている。  
とてもじゃないが今日一日は張り付いていそうな程くっきりしている。  
「わ、私が寝ぼけて上条さんの指をくわえていたのに……!」  
「まあくわえられる位置に近寄った俺のせいでもあるし」  
あははと笑いながらぷにぷににふやけた手を見る。  
よく見ると長時間の甘噛みによって歯型もついている。  
「(よくよく考えれば……かなり嬉しい状況だったんだよな)」  
頬を叩かれたとはいえ美少女といっても差し支えの無い佐天の寝顔を間近で三時間近く合法的?に眺めていられたのだ。  
指銜え&甘噛み付きで。  
指を銜えられていた三時間の間はそれはそれは大変だった。  
主に上条の理性の崩壊を食い止めるのが。  
小さな口に銜えられ、暖かい口内で唾液が指に付き、柔らかい舌で舐められて、綺麗に並んだ歯で甘噛みをされる。  
………考えたらまた顔が熱くなってくる。  
「(しかも指が佐天のかすかな寝息を感じるし、可愛い寝息も聞こえるし……上条さんは寝息によるダブルブローでノックアウト寸前でしたよ!!)」  
顔を赤くしながら心の中で叫ぶ。  
そんなことを考えていて赤くなっていると  
「ごめんなさい…」  
いっそうしょんぼりした声で佐天が謝る。  
赤くなっているのを見て、内心凄く怒っているのだろうと思ったのだった。  
「いや、本当に怒ってないからさ」  
「でも……」  
「それより、友だちに連絡付いたか?」  
初春には昨晩の間にメールを送っておいた。案の定返事は来なかったが。  
まだ…と答えようとした瞬間、携帯が着信音を鳴らした。  
慌てて携帯を開くと初春だったので慌てて出た。  
「も、もしもし!初春!?」  
「もしもし佐天さん?昨日どうしたんですかー?寮に帰ってこないなんて。」  
「ちょ、ちょっとね、だからさ、メールで言ったようにさ」  
「朝帰りの口裏を合わせればいいんですね?わかりましたー」  
朝帰りという単語を聞いて顔を真赤にしながら上条を見る。  
目が合って、なに?と言うかのように首をかしげてこっちを見るので慌てて目をそらす。  
「と、とにかくお願いね」  
「わかりました。ではまた後でー」  
そう言って初春は通話をきってしまった。  
 
「友だちなんだって?」  
「口裏はちゃんと合わせてくれるそうです」  
「そっか、じゃあ送ってくよ」  
「え?」  
一瞬上条の言葉の意味が分からず疑問の声を上げてしまう。  
「寮まで、友だちに見られるのが嫌とかならその近くまでにするけど」  
上条はベッドから立ち上がって台所の方へ向かっていく。  
冷蔵庫を開けて、あーやっぱりなんにもないなーとか言ってる。  
「で、でも、悪いですよ!」  
当然の如く佐天は慌てて断る。  
昨日危ないところを助けてもらい、家に泊めてくれた。  
加えてついさっき自分は彼の頬を思いっきり叩いてしまったのにそこまでしてもらったら申し訳ない。  
それに対し、上条はのんびり食パンを二枚トースターに入れてコーヒーを淹れながら言う。  
「昨日あんなことがあったばかりだから心配だし、送らせてくれよ」  
こちらを向いて笑顔でそんなことを言ってくる。  
その優しい言葉と笑顔を見た瞬間ドキッとした。  
「そ、それじゃあ……お願い、します」  
先ほどと同じように笑顔になり、彼はこちらに戻ってきた。  
「んじゃ、まずは朝飯だ」  
そう言って上条はコーヒーとトーストを二組テーブルに置く。  
「食材が切れちまってこれだけしかないんだ、悪いな」  
「い、いえ!朝ごはんを貰ってる身ですし!!」  
本当にすまなそうな上条に両手を突き出すようにしてフォローを入れる。  
そしてお互い向き合うようにテーブルに座って手を合わせた。  
「「いただきます」」  
佐天はコーヒーを手にとって一口飲んだ。  
みるみる顔が険しくなっていく。苦い。  
ブラックのまま飲んでる上条はそれを見て台所まで行って戻ってきた。  
「ほい、砂糖とミルク」  
「あ、どうも」  
あたし子供っぽいなあと内心でため息を吐きながらミルクと角砂糖を投入していく。  
コーヒーを両手で持って飲む。うん、甘い。  
コーヒーを飲みながら上条を見てみるとトーストをかじっていた。  
ブカブカの男物の上着とズボンを着て一人暮らしの男の人の家に泊まって一緒に朝食を食べる。  
「(なんだか本当に同棲しているみたい)」  
そう考えていた時、上条と目が合った。  
自分の顔にパンのカスが付いているのかと思ったのか、自身の顔をぺたぺた触っている。  
その様子があまりに微笑ましくて、クスリと笑ってなにも付いてませんよと教えてあげた。  
照れたように頭を掻いてる上条の姿を見たらなんだか胸の奥が暖かくなった。  
ちょっとうれしい気持ちを抱きながら、トーストを一口齧った。  
 

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