「ぐゥ・・・ああああッツ!!」  
殴り倒された痛みがこの心に刻まれている。  
夜な夜なあの拳が脳裏に描かれては、その痛みと熱が頬に蘇ってくる。  
 
その痛みに溺れながら、今日も一方通行は右手を頬に、左手を秘所にあてていた。  
 
それを始めたのが何時だったのかなんて覚えていないし、  
わざわざそれを確かめようとする気もない。  
ただ、今この瞬間が、自分にとって代え難い時間だということは、  
なによりも理解している。  
だから、たぶん自分は、それでいいのだ。  
「はっ・・・あァ・・・んン」  
頬にあてる右手に、自分の息がうるさい程にぶつかっていく。  
熱を帯びた右手をそのままゆっくりと首筋から、胸へと降ろして行く途中で  
「・・・あッ~~~くゥ」  
秘所にあてていた左手の指が、いつの間にか自身の膣へと挿入ってきていた。  
自覚した途端にぐちゅぐちゅといやらしい音をたて、膣からは愛液が漏れ初めてきている。  
 
蜜が絡んだ中指が、己の膣で痛い程に踊る。  
 
「あっ・・・ゥううう~~~」  
もはや自分の意志では自身の指を止められない。  
己の胸にあてられた右手は、固くしこった乳首をさするように擦り上げて止まらない。  
ぐちゅぐちゅぐちゅと、左手は手のひらごと膣へ埋没しそうな程に、自分の中を掻き乱す。  
 
「~~~ッ!!」  
大きく見開かれた紅い瞳と、彼女の口から漏れる唾液が、彼女が絶頂を迎えた事を示していた。  
 
「あふ、ふゥ・・・あァ・・・」  
荒い息をつきながら、どさりとベッドに横たわる。  
先程までその白い肌を染めていた火照りも、窓から入る夜風が冷まし始めていた。  
 
――そして、冷えてきた頭は、思い出したくもない事を思い出させる――  
 
子供の頃。  
両親の記憶。  
赤い記憶。  
実験の記憶。  
 
 
そして、あのクローン達を殺した事。  
 
 
別段それに対して思うことは特に無い。だが、それを行ったという事実は、  
彼が絶対に自分を見てくれない。という事と、同義だった。  
「・・・ッく」  
悔しい。悔しい。悔しい。  
どうして自分はあんな事を。彼に嫌われるような事をしていたのだろうか。  
どうして自分は、やっと自分の居場所になってくれるかもしれない人が、  
彼だと――人を殺すことを嫌う人だと――知らなかったのだろうか。  
 
一筋の涙が彼女の熱をもった頬を流れ落ち。彼女は何時の間にか眠っていた。  
 
一方通行は夢を見る。その感情は理不尽で。もしかしなくても自己中なのだろうけど。  
それでも、自分が幸せになれる日を・・・願わくば、彼と共に歩める事を。  
 
 
彼女が妹と呼べる存在と共に、彼と未来を歩んで行く事は、まだ誰も、知らない。  
 
 
 

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