「ローマ聖教ってのも、一大勢力どころじゃないよな、何億だっけ? 結局のところ、一番の大勢力  
なんだよな。それにしても何でそんなにも大きくなれたのか、だよな」  
 
 今日、上条は骨休みと言うことで何もすることがないらしい。  
 さっそく暇を持て余していた午前中。  
 10時のお茶をしましょうと誘われて、上条的「寮」の概念ではあり得ないような英国式庭園(いや、  
この女子寮自体がイギリスにあるのだから『英国式』もないのだが)に設えられたテーブルに着い  
ていた。  
 手作りらしいスコーンやクッキーが香ばしい香りを立て、これも同じく手作りらしい数種類のジャム  
が彩りを添える。紅茶はよく判らない上条だが、良いお茶なんだろうな、ということは、オルソラが微  
笑みながらカップに注いでくれた緋色の液体から、日○のティーバックからは想像も出来ないような  
芳醇な香りが立ち上ってくることが教えてくれた。  
 しかし、シスターさんってのはみんなヒマなのか? などと不謹慎にも考えてしまうほど、周囲のメ  
ンバーは変わらない。  
 ベンチ式の木製の椅子の両側にインデックスと神裂が、向かい側にはアニェーゼ、ルチア、アン  
ジェレネが座った。かいがいしく給仕をしてくれているのはオルソラだ。  
 庭園の向こうに見える寮の建物では、庭が見える廊下の人通りが妙に増えた気がする――が、  
気のせいに違いない。  
 
 ともかくもそんな中、紅茶の香りと少女たちの笑い声に気分も緩んで、ふと出た台詞だった。  
 それを聞いて、アニェーゼが突然真剣な顔になる。  
「それはっすね上条さん、ローマ聖教というものは――受胎からやってくるからなんすよ」  
「へ?」  
 上条にとって意味不明な言葉に、しかしルチアが続いた。  
 
「そうです、主は仰いました、  
   『全ての精子は神聖にして、全ての精子は偉大である。  
   もしも精子が無駄にされれば、汝の神はぶちキレるであろう』、と」  
 
 ルチアの声に、アニェーゼが再びそれを受けてさらに続ける。  
 
「――『異教徒たちには実りなき荒地の上に射精させておけ。  
   汝の神は必ずや彼らに報復するであろう。  
   彼らを種なしにすることで』」  
 
 再びルチアがそれを受ける。  
 
「――『全ての精子は有用なものである。  
   全ての精子は素晴らしい。  
   汝の神は皆の精子を必要とされている。  
   もしも山や谷や平原に異教徒どもが射精したとしたら、  
   汝の神は必ずや裁きを下すであろう。  
   精子を無駄にせし罰として』」  
 
 アニェーゼが締めた。  
「ってーわけっすから、為されればそれは受胎に繋がらないとならないんっす」  
 
 二人が朗々と――上条には、うら若き乙女が恥知らずにもイタイことを言っているようにしか聞こ  
えないのだが――歌うように語るのを聞いて、アンジェレネが無邪気に言った。  
「まあ、それでポコポコ産めよ増やせよで食い扶持もなくなって、人体実験に売られたりとか、修道  
院に捨てられたりとかするんですけどねー、私たちみたいに」  
「なっ……」  
 その、あまりの無邪気さにかえって上条がドン引きする。  
 言ったアンジェレネは、え、と周りを見回し、アニェーゼらが顔に縦線を引いているのを発見して、アニェーゼ部隊の三人を痛い沈黙が包む。  
 
 その、元ローマ聖教のシスターたちの痛い沈黙を上条が呆然と見守っていると、横から乾いた笑  
いとともに引きつった声が聞こえた。  
「こ、これだからローマ聖教批判が出るのです、そ、その点、イギリス清教は旧教と新教の良いとこ  
ろを合わせていますから、ひ、避妊だって構わないのですから」  
 突然何を、というか、どんなことを言い出すんだっ! と上条は声の方向を向く。  
 
 神裂火織だった。  
 
 さらに呆然となって、神裂を見つめた。  
 神裂本人は、自分が何を言っているのかも良く判っていないのだろう。何か必死に取り繕おうとし  
たという努力の跡がその表情に見えて、さらにイタイ。  
 しかし、あんまりだと言えば確かにあんまりな展開に油断して、思わずエロ本の知識が上条の口  
から漏れた。  
「……は、はは…。じゃ、じゃあ、今は避妊用のゴム製品っても色々あるから、超極薄でお互いに生  
感覚! とか、段々付きだったり、イボイボが付いてるような変わり種でもオッケーなんだな?」  
 言ってしまってから、上条も我に返る。  
(なっ、何言ってるんだ俺ッ! 土御門や青ピとかじゃないんだぞ相手ッ)  
 
 慌てて周囲を見回す。  
 しかして、その言葉はしっかりと耳に入っていたのだろう。実はウブな子羊ちゃん揃いな少女たち  
が真っ赤に顔を染めて上条を見つめていた。  
 アニェーゼやルチアはもじもじと気まずそうにしているし、アンジェレネなどは自らの想像の範疇  
を越えてしまったのだろうか、今にも湯気でも出してパンクしそうである。  
 慌ててオルソラの方を向いてみた。さすがオルソラ、何ら変わった様子はなく微笑んでいる――  
のではなく、そのまま固まっていた。  
 じゃあ、神裂……と思い振り向こうとしたとき、ベンチのすぐ隣りに座っていた少女がぴったりと身  
体を寄せて来るのに上条は気が付いた。  
 すぐ隣りに座っていた少女――インデックスが顔を真っ赤に染めつつ、それでいて、何故か艶め  
かしさを覚える表情で、上条に寄りかかる。服越しに体温が伝わってきた。  
 寄りかかりながら、インデックスが上目遣いでもじもじと呟く。  
 
「と、とうま? わ、私はイギリス清教だから、そ、そんなのでも、いいかも」  
 

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