「えっと……インデッ……あっ、上条さんのお、お家って……ここ、ですか!!」  
 突然の来客にドアを開けてみれば、どこかの制服姿の少女が深々とお辞儀をいていた。  
 少しだけ眼鏡のずり落ちた、胸の辺りに大きな豊かさを携えた少女。  
 風斬氷華であった。  
「まぁ、そうだな。ドアから出てきたのが上条さんなんだし、あってると思うぞ?」  
「へっ? ……あ、あぁっ!! か、上条さん!? あ、あの、その……きょ、今日はですねっ!」  
 自分の目の前に立っていた人物が上条当麻だったことに気づくと、風斬の挙動は一気に慌ただしくなった。  
「風斬、落ち着け――っごはぁ!?」  
「ひょうかっ!!」  
 上条の言葉を遮って、上条の体を押しのけて、純白のシスター服を身にまとった少女は奥の部屋から猛ダッシュでやってきた。  
 その少女、インデックスの姿を目にすると、風斬もその表情を一面の笑顔に変えた。  
「インデックス! 久しぶりだね」  
「うん! ひょうかも久しぶり。元気だった? ゴハンはちゃんと食べてる? もしかして、とうまになんかされたの? あ、今日は  
どんな用事? 一緒に遊べる?」  
「ふふっ、そんなに色々聞かれたって全部は答えられないよ」  
 痛みに苦しむ上条を無視して繰り広げられる女の子同士の黄色い会話。  
「じゃあさ、中でお話しよっ!! とうまはお茶とお菓子もってきてほしいかも。ひょうかと二人分だよ!」  
「うん。それじゃあ……か、上条さん、お邪魔します」  
「ど、どうぞ……」  
 さっさと居間に進んでしまう二人を、上条はわき腹をさすりながら見送ることしかできなかった。  
 ただ思うことはお茶は三人分ではないのか、ということだけだ。  
 
 * * *  
 
「上条ちゃーん、いらっしゃいますかー? 小萌先生がお邪魔しにきたのですよー?」  
 それは風斬とインデックスの話が盛り上がって、ポテトチップスの三袋目が開けられようとしたときだった。  
 玄関の向こう側からかわいらしい声が届いてきた。  
「こもえ? ……とうま、またなにかしたの? ……まさか補習?」  
「そ、それはない!! ……と思うんだがなぁー。はいはーい、今開けますよー」  
 そそくさとインデックスの白い目から逃げるようにドアへ向かう。  
「いったいどうしたんですか、小萌せんせ……いぃっ!?」  
 なにか急な連絡でもあるのだろう、と思っていた。ただ、それなら電話連絡でいいのでは、とも思っていたが。  
 しかし、上条の予想は違った意味で裏切られた。外に立っていたのが小萌だけではなかったからだ。  
「こんにちは。上条君。みんなで遊びにきたわ」  
「遊びにきてやったわ! 感謝しなさい、上条当麻。あと、これは手土産よ!!」  
「と、いうわけなのですよー」  
 にっこりと笑みを浮かべる見た目年齢十二歳の担任教師。  
「いや、どういうわけですか。姫神と吹寄まで連れて……っ!?」  
 小萌の両側で佇む二人のクラスメイトに視線を送る。姫神秋沙は女の子らしさ溢れるおしとやかな装い。吹寄制理は少しボーイッシ  
ュで活発さがあるパンツルック。私服の二人をはじめて見た上条は、一瞬だがグッときてしまった。  
 さっと視線をずらした上条に小首をかしげる小萌。  
「ん? 上条ちゃん、どうかしました? ……あら? シスターちゃんに風斬ちゃんもいるじゃないですか。これは好都合……安心し  
てください。はい、上条ちゃんに負担をかけないように色々買ってあるですよー!! じゃ、お邪魔しますねー」  
 そう言うと小萌は、姫神と吹寄を引き連れてずかずか、とういうかトコトコと上条宅に上がりこんできた。  
「上条君の家……お邪魔します」  
「あがらせてもらうわね。あら? ちゃんときれいにしてるのね、上条当麻のくせに」  
 両手に小萌から手渡されたスーパーの袋をぶらさげて、上条は一層盛り上がっている居間の喧騒に耳を傾けていた。  
 
 * * *  
 
「ってか、風斬も小萌先生たちも、どうしてウチにきたんだ……のですか?」  
 担任の小萌がいるため、なんとか敬語に切り替えた上条。もはや手遅れでそんな意味もない気もするが、一応けじめは大切だ。  
 それを受けた各々が上条の疑問に答えていく。  
「もちろん小萌先生は姫神ちゃんと吹寄ちゃんの保護者なのです!」  
「……小萌先生が。上条君の家に遊びに行くって誘ったから。明日は忙しいんだって」  
「あ、あたしは姫神さんも行くっていうし、上条当麻が奇行に走らないか見守るためよ!!」  
 正直者のクラスメイトによって小萌の嘘は筒抜けとなってしまった。涙目になりながら「二人とも約束が違うのですよー!?」と生  
徒に講義する担任、という不可思議な光景を視界のすみに追いやって上条はもう一人の客人を見る。  
「あの、私はインデックスに会いにきたの……明日は二人ともよ、用事あるでしょ?」  
 その発言に部屋の雰囲気が一変した。  
 姫神と吹寄からの視線が容赦なく上条に突き刺さる。  
 小萌はそんな二人とインデックとを嬉々とした表情で見比べている。  
 風斬は自分の発言で気配が変わったことに思いっきり慌てている。  
 そしてインデックスは……、  
 
「ん、みんなどうかしたの? 食べないならこのお菓子食べちゃいたいかも。うまー!!」  
 
 相変わらず……のように見える。そう、見えるだけだ。  
 インデックスの隣に座っていた上条には、風斬の言葉に一瞬手が止まったことも知っている。なにより今インデックスが口にしてい  
るお菓子は合成甘味料が多すぎて以前は三口で食べるのをやめてしまったものだ。あのインデックスが。  
 とはいえこの気まずい雰囲気をなんとかしたい上条だったが、幸運にもドアチャイムの音で束の間の問題解決となった。  
 しかし、忘れないで欲しい。  
 上条当麻という人物は幸運に恵まれていただろうか。  
 誰かを助けることができる、その点では恵まれた状況にあるだろう。その一方で上条の私生活は散々な状態だ。  
 差し出された命綱に簡単に飛びつき、引き上げられたところで谷底まで突き落とされる。  
 ドアを開けた上条はそんな気分だった。  
 
 * * *  
 
「お久しぶりです、風邪などひいていませんか、とミサカは心底丁寧に挨拶をしてあなたへの印象アップを企てます」  
 唖然としている上条に、常盤台中学の制服を身に着けた少女が一風変わった喋り方で話しかけた。  
 その後ろにはそっぽを向きつつも目だけでチラチラと上条を確認する少女が、少し偉そうに腕を組んでいた。  
 二人の顔はまったく同じ、瓜二つだった。  
「御坂妹にビリビリ……な、なんでお前たちまで……」  
「ちょ、ちょっと待てぇ! ど・う・し・て・この子はミサカでアタシはビリビリなわけ? ひとをないがしろにするのもいい加減に  
しなさいよねぇ……」  
 そう言いつつも、前髪からイルミネーションのごとく放電しているのを見てしまうと、どうも言い方を改める気にはならない。  
「きゃっ!?」  
 上条は右手を少女の額にかざして放電を消し飛ばすと、二人に向き直った。  
 常盤台中学の超能力者(レベル5)御坂美琴と、そのクローンである姉妹達(シスターズ)ミサカ一〇〇三二号。  
 はたから見れば三人は色々と複雑な関係だったが、上条からすればやたらと喧嘩を売ってくる中学生とその妹といった具合だった。  
良いか悪いかは別としてそれなりの縁があった。  
 とはいえ上条の家に二人から訪れたことなど物騒なこと以外なかった。若干不安に思う上条に御坂妹が告げる。  
「明日は病院の方でクリスマス会があるのですが、私達も手伝うことになったのです、とミサカは本題に入る前に情報を与えます。忙  
しくなってしまうので今日くらいは、ということであの医者から外出許可をもらったのです、とミサカはあなたの家を訪れた理由を顔  
色が優れないことを心配しつつも説明します。それと、私は他の姉妹達(シスターズ)との熱く激しい戦闘(バトル)を勝ち残って、  
あなたの家を訪ねる権利を獲得しました、とミサカは手に汗握る壮絶な争いを思い出しながら補足説明します」  
 最後の台詞は聞かなかったことにして上条は美琴を見つめる。  
 
「ア、アタシはただの通りすがりっていうか……その――」  
「いえ、お姉様(オリジナル)はあなたの家がわからず、第七学区をさまよっていたのでミサカがしょうがなく連れてきたのです、と  
ミサカは相変わらず素直になれないお姉様(オリジナル)に呆れながら守秘義務を破って暴露します」  
 さきほどの小萌たちと同じように「ちょっと、アンタ黙っててくれるって言ったじゃない!!」とかやっている。  
 玄関先で騒ぎ出した上条たちを居間から見つめるたくさんの視線に御坂妹が気づく。  
「そういえばさっきも『お前達まで』と言ってましたし、もしかしてお邪魔だったのですか、とミサカは一抹の不安を覚えながらも、  
どうせこの人はお人よしだから家にあげてくれるでしょうと楽観的に訪ねます」  
 そうまではっきり言われると苦笑いしかできない上条だったが、それもまた事実のため否定もできなかった。  
「まぁ……な。かなり狭っ苦しいけど、ここで帰すのも悪いし……あがってってくださいよ」  
 総勢六人が狭い学生寮の一室に押し込まれて上条の部屋はより賑やかになっていく。  
「あっ、短髪! とうまの家にまでなにしにきたの!? 邪魔しないでほしいかも!!」  
「邪魔ってなによ! あと短髪って言うのやめなさいよね!! ちょっとアンタどうなってるの!? 説明しなさい!」  
「上条君。……早くこっちにきて」  
 三人そろえば姦しいとはよく言ったものだ。  
 上条は先人の言葉を深くしっかりと胸に刻み込んだ。  
 
 * * *  
 
「あの……お久しぶりです、上条当麻。いきなり訪ねて驚かれていると思いますが、身辺お変わりありませんか?」  
「どうも。随分ですね、カミジョー」  
「これが東洋の寮ですか……かなり古そうですね。地震が多いはずですが、物持ちもいいのですか」  
「こ、こんにちは。いきなりで悪いんですけど……なにか飲むもの頂けませんか? 長旅で喉乾いちゃって……あ、甘い物がいいんで  
すけど……」  
「あらあら、皆様はしゃぎすぎじゃございませんか? アニェーゼさんったら、そんなそっけなくしていらっしゃらないで、もっとお  
話したらよろしいのに……あらあら、なにを怒ってらっしゃるのかしら?」  
 上条はドアを閉めようとしたが、アニェーゼの厚底サンダルがすっぽりと壁との隙間に入り込んできた。これでは閉めるに閉められ  
ない。  
 隙間から赤毛の少女の真ん丸とした瞳が覗いている。  
「カミジョー、どうしてしめちまうんです?」  
「いや、だってさ……」  
 先程の状況から、これ以上はトラブルが起きないだろう、と楽観視してしまった自分を恥じた。  
 それは、今から十数分ほど前に遡る。  
 
 美琴と御坂妹は一卵性双生児として上条から皆に紹介した。  
 それでも異様なほど似通った二人に、自分も珍種であることを忘れて小萌は興味津々だったが。  
 最初は二人の歓迎ムードだったが、しだいに部屋の毛色は変わっていった。  
 小萌を含めるべきかは保留にしておくとして――男は上条一人、そこに女性が六人という人口比率だ。一度は回避したはずの上条へ  
の無言の追及がさらに強くなったのは当然と言えるだろう。  
 そこにきての本日四度目のチャイム。  
 二度あることは三度ある。仏の顔も三度まで……は違うだろうが、上条の思考はかなりおかしくなっていたのだろう。不幸にも上条  
はこれ以上の来客の可能性を捨てていた。  
「はいはいはいはいっ! 今度はどちら様ですかー? 訪問販売(キャッチ)のたぐいは全てお断りしてますのことよー!!」  
 なかば自暴自棄になった上条はそうしてドアを開けてしまった。  
 待っているのが女教皇様(プリエステルス)だとも知らずに。  
 
 甘んじて現状を受け止めることにした上条は、部屋に客が大勢いること、この部屋ではさらに五人は入れないことを説明した。それ  
を理由に、できるならひき帰ってもらおうとしたのだ。案の定神裂は眉根を寄せて悩みだした。  
 神裂の口から、それでは、の台詞が出てきたときには「それじゃまたの機会に……」と早くもお別れの言葉を考えていた上条だった  
のだが……、  
「――天草式の面々とともに食事でもどうですか? イギリスにいた者が日本に帰るというので私達も一緒にきたのです」  
「へっ?」  
 予想外の返答に上条が目を丸くしていると、  
「まぁ、私たちローマ正教は観光みたいなもんですがね……天草式はけっこうな数がいやがるんで下で待ってます。その目で見てみた  
らどうです?」  
 アニェーゼの提案を受けて上条は廊下の手すりから階下を覗き込んだ。  
 そこには見えるだけで十五人前後の少年少女がポケットに手を突っ込んだり、座り込んだりと思い思いの格好で話していた。寮の建  
物に隠れている者もいるはずなので、かなりの人数がいそうだった。  
「うわぁ……まじかよ。ってかクリスマスって教会でなんかやったりすんじゃないのか?」  
「……いちいち細けぇんですね、カミジョーは。さっさと決めちまってくださいよ」  
 いきなりそっぽを向いてぶつくさ言い出すアニェーゼ。  
 なにか失言でもあったのかオルソラに尋ねようとした上条に、いきなり神裂が耳打ちしてきた。  
「――上条当麻」  
「ひぃぁっ!? な、なんだよ神裂……」  
「つかぬ事を伺いますが……インデックスの食費は大丈夫なのですか?」  
「うっ……」  
 月末も近くなってきた今、上条もなるべく出費を抑えたかった。小萌が食材を買ってきたとはいえ上条の家でパーティ状態ではイン  
デックスの胃袋は満足しないだろう。どう考えても買出しが必要だった。  
 神裂は優しく微笑んで右手を差し出してくる。  
「経費は全てこちらもちですが?」  
「のった!!」  
 言葉よりも早く右手が動き、神裂と握手を交わす上条。  
 さっそく神裂との内緒話を居間から覗いていたインデックスたちに出かける準備を促す。背後で神裂が小さくガッツポーズを決めて  
いるのにも気づかずに。  
 こうして上条と総勢四〇名ほどの大所帯によるクリスマスパーティーが決定した。  
 
 * * *  
 
「あ、あのこれ……」  
「ん? あぁー、オシボリな。サンキュ――ってインデックス! それは俺の唐揚げだ!!」  
「とうま、馬鹿なことを言わないでほしいかも! いい? これは立食パーティーみたいなものなんだから、俺の私のって台詞は通用  
しないかも! それが私のジャスティス!!」  
「上条君。そんな唐揚げはいいからこれでも食べて。揚げたてだから美味しいと思う」  
「ちょっと、『そんな』とはなによ『そんな』とは!! こ、これでも寮の女の子たちからは評判いいんだからね!? べ、別にアン  
タの口に合うかなんて気にしないけど……」  
「こら、上条当麻! そんな揚げ物ばかり食べてないで、ちゃんと食物繊維をとりなさい! すぐに摂取できるからこのサプリメント  
でも飲んで……」  
「その錠剤は通販用に大量生産されたもので、実際はあまり効果がありません、とミサカは牽制球を送りながらもすかさず橋の上の鶏  
肉をアノ人の口の中めがけて……ってあぁ!!!」  
「まったく学園都市の食事ってやつは……いいですか、カミジョー? バランスってやつが大切なんです。だから……ほら、サラダも  
しっかり食べなきゃいけねぇんですよ?」  
「あのっ、あのっ、せっかくのパーティなんで甘いケーキでも…………皆さん注も――っもがぁあああ!?」  
「なにをしようとしたのですか、シスター・アンジェレネ!! このような公衆の面前……しかもあの人の前で二度目なんて……」  
「まったく……食事の席くらいもう少し節度というものをですね……と、ところで上条当麻。このようなものあるのですが……」  
「こ、こらー!! みなさんは未成年で……あなたは未成年ですか? ……十八歳、本当なのですか? と、とにかくお酒はダメなの  
ですよ!!」  
「イ、インデックス、ちょっと食べすぎだと思うよ。 って私はいいか……ぐむっ!?」  
「あらあらあらあら……まったくあのお方ったらはしゃぎすぎじゃないのかしら? あらあらあらあら……」  
 とにもかくにある一名を中心にして大騒ぎのパーティーだったそうな……。  
 
 

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