その少女は追い詰められていた。自身の前のボタンが煌々と光を放ったからである。  
マスク☆ザ☆カンチョーと名乗った謎の男は慌てた様子で通信を切ってしまい、今は応答しない。  
心拍数があがる。  
つい最近、長い間思い続けていた少年と結ばれたばかりで幸せ絶頂だったのだ。  
それだけに現在の状況にはイライラが募るし、彼との関係を踏み躙られるようで悲しい。  
『じゃ、再開しますか。準備はいいか?ミス・サード』  
せめてもの抵抗にスピーカーを思い切り睨みつける。  
「……ホント、最低だわアンタ達」  
『うん?反抗していいのかにゃー?こっちには』  
 
(だからっ!無駄に挑発しないで下さい!あの人の負けん気はホントに酷いんですからっ!)  
(つっても今のままだと絶対に従わなさそうなんだが……どうするよ?)  
(……た、例えば人に聞か、せても大、丈夫なデータで揺すると、かどうなのよ?)  
(まだ立ち上がるな『扇風機男』っ!さあ早く君の手帳に入ってた神 (7才)の写真を眺めて自分を癒すんだっ!)  
(……それで本当に癒されンのか?結局ああなるンだぞ?)  
(コフッ)  
(『白髪男』っ!とどめをさすなっ!)  
 
唐突にスピーカーからある声が流れ始めた。変声機にかけてあるが  
ミス・サードと呼ばれた少女はそれが何だか解ると仮面の下の素顔を一気に青ざめさせる。  
 
『「あの、さ……わ、私達付き合ってるんでしょ?そ、それなりの対応ってもんがあるでしょうが」  
 「?」  
 「だからっ!呼び方よ呼・び・か・たっ!いつまでもビリビ 呼ばわりするつもりっ!?」  
 「あぁ、成程。じゃ、じゃあ……美 、でいいか?」  
 「……!!!!!………ぁ、…………ありが………と……当 」』  
 
それは、彼女と彼女の彼氏の初めての後の会話だった。軽薄な声が続く。  
『いやー微笑ましいねぇっ!何この初々しいカップルっ!  
 お兄さんこうなっちゃった顛末に興味あ………………』  
と、その声が止まった。  
「……ふ……うぇ…………」  
ミス・サードが肩を震わせていたからだ。  
『え…?あ、あの……ミス・サードさん?』  
「―――――――――うっさいわね馬鹿ぁっ!何て事すんのよっ!  
 私とアイツふたりだけの思い出なのにっ!やっと!やっと呼んでもらえたのにっ!」  
『え?……えっとだな……』  
「アンタにはわかんないでしょうがっ!ずっと想ってたのにずっと無視されてっ!  
 アイツの周りにはいつも女の子がいてっ!  
 このままじゃ駄目だってっ!本当に、本当に、勇気振り絞ってアイツ誘って!  
 やっと……やっと見てもらえて、呼んでもらえたのにっ!!!  
 何で、何でこんな事すんのよぉっ!!!」  
 
(……どうします?これ……ものすごくマジ泣きされてんですが……)  
(僕に聞くなよ『スパイ男』。……『仮面男』!そのナイフをどうするつもりだっ!)  
(こいつがっ!こいつがあの人さえ見てればこんな事せずに済んだんですよっ!)  
(『扇風機男』!…は駄目かっ!『白髪男』っ!こいつを止めるのを手伝えっ!)  
(面倒臭ェ)  
 
「本当に……本当に怖かったんだからぁ……必死に隠してたけど、  
 服脱いだ時なんて膝ガクガク震えて……  
 アイツが全然反応してなかったから、泣きそうになって……  
 でも、アイツも緊張してるってわかったから、だから、本当に嬉しくて……」  
「お、お姉様……そんなにまであの猿の事を……」  
「……あの、ミス・サードさんでよろしいでございますか?」  
「…………ぐすっ、……何よ」  
「ミス・サードさんはその方を本当に愛してらっしゃるのですね?」  
「……えぇ、そうよ。悪い?」  
「ならば、きっと大丈夫でございますよ。  
 例え誰に、それこそ世界中の方に聞かれてもあなたにとってのあのやりとりの価値は変わりませんし、  
 むしろ聞かせてやって『わたしは幸せだ馬鹿野郎』と胸を張れる、とわたくしは思うのでございます」  
「……ありがと……あなた、いい人ね。……えぇと、ミス・パスタ?」  
「そ、そうですのよっ!お姉、じゃなくてミス・サード様とその方はきっとお似合――――はべっ!」  
ミス・ゼブラと呼ばれた少女が倒れた。自身の発言に拒絶反応を起こしたらしい。  
『えっとだな……協議の結果、一応顛末も聞けた事だしオッケーって事でルーレットを回すぜい』  
 
 
『次はあんただ、ミス・プリンセス。  
 一応言っとくがさっきのは特例中の特例だ。大人しく従ってくれる事を願うぜい』  
「解った」  
小さな、しかしはっきりとした意思を感じさせる声で応じたのは長い黒髪を携えた少女だ。  
 
(と、とりあえずは落ち着いたかい?『仮面男』)  
(…………コイツさえ……コイツさえ……)  
(…………『扇風機男』、この男から絶対に目を離すな)  
(了解なのよ)  
 
「私が。上 君とそういう関係になったのは。 条君の病室にお見舞いに行った時。  
 いつもみたいに不幸だ。不幸だって言ってたから。  
 私が何をしたら 条君は喜んでくれるか考えたら。これしかなかった」  
『うわー。そりゃ滅茶苦茶喜んだろ、ソイツ』  
「ううん。すごく怒ってた」  
『んん?どういう事だ?』  
「何でそんな事するんだって。俺はお前が来てくれただけで充分幸せだって。  
 じゃあ何で不幸だって言ってたのって聞いたら。口癖だから真に受けるなって」  
 
(……まぁ……この男なら確かにそう言うだろうね)  
(……………………………)  
(だろうな。意味解ンねェんだよコイツは)  
(だ、そうなのよ。『仮面男』、まだナイフを向けるのか?)  
(…………いえ、……約束自体は守っていただいてますしね……はぁ……)  
 
「私。嬉しかったから。思い切り抱きついて。  
 そしたら彼のが大きくなってたから。一応知識では知ってたし」  
『で、そのまま?』  
「うん。そう」  
『…………ま、据え膳は何とやらと言うしな』  
「私の体。まだ傷が残ってたのに綺麗って言ってくれて」  
 
(さらっと殺し文句を言うんだな)  
(『旗男』の名は伊達じゃないんだぜい)  
(女性に好かれる事は『旗男』のせいですが、悪い事はしてないですからね。  
 だから苦労するんですけれど)  
 
「特に。おしりが気に入ってくれたみたい」  
『……ぁ?』  
「柔らかくって。スベスベしてて最高だって。私もいじられてるうちに段々良くなってきて。  
 恥ずかしいっていうのに全然止めてくれなくて」  
『そ、そうか』  
「最近は。もうずっとそっちばかりだから。私も彼に会いに行くときは綺麗にしてる」  
 
(……やはりナイフ向けてもいい気がしてきたのですが)  
(僕もちょっと反対出来ないかな)  
(俺は別に止めはしねェぞ)  
(いやいやそこは止めるべきなのよっ!)  
 
「彼におしりにいれられた時に。普段は絶対出さない変な声が止まらないんだけど。  
 口を手で塞いだら。声聞かせてほしいって腕押さえられて」  
『それでそれで?』  
「押し広げられて。一番奥に出されたら目の前が真っ白になって。  
 次に目を覚ますのは彼の腕の中」  
『何かすげぇ事やってんなぁ……オーケイ、充分だ。ボタンを力いっぱい叩いてくれ』  
「えい」  
ゴズン。  
 
 
 
『次はアンタの番だな、ミス・ティーチャー。流石に経験豊富だろうから一番最近の相手だけでいいぞ?』  
「しょうがないのですねー」   
桃色の髪が目立つ、幼いとしか形容出来ない容姿の少女の前でボタンが輝いた。  
 
(『スパイ男』っ!何でその人も呼んでるんだっ!?)  
(いやー、手違いだにゃー。ホント、これ純然たるミス、悲しい悲劇だにゃー。  
 悪気はこれっぽっちもないんだぜい?)  
(信用出来るかっ!)  
(まァいいんじゃねェのか?本音が聞けるチャンス、らしいぞ?)  
(そんなもの聞かなくても解ってるっ!)  
(さらっとノロけましたね。これは是非とも聞いておかないと)  
(ほら、『仮面男』と二人で抑えておくから進めてほしいのよ)  
(助かるにゃー)  
 
『で、ミス・ティーチャーは現在付き合ってる人はいるのかにゃー?』  
「えぇ、最近お付き合いし始めたのですよー」  
『どんな人かきっちりかっちり教えていただけますか?』  
「そうですねー……えっと、こういうのも何ですけど、凄くかっこいいのですよー」  
 
(かっこいィのですよォ)  
(かっこいいのですよー)  
(かっこいいのですよー)  
(………………君達に火葬場は必要無い。僕がサービスで灰にしてやろう)  
 
「あの、背が高いとか顔とかそういう事ではなくてですねー?  
 むしろ背はもう少し低い方が首が疲れないですし、色々出来て嬉しいのですよー」  
『じゃ、どこがかっこいいんだ?』  
「頑張ってるところ、でしょうか?私は教師をやってるんですけどー、  
 今まで見た事ないぐらいその子は頑張ってて、意地張ってて、……どっちかっていうと可愛いですかねー?」  
 
(かわいィですかねェ)  
(かわいいですかねー)  
(かわいいですかねー)  
(子供か君達はっ!……というか何で君達はそんなにノリノリなんだ特に『白髪男』!)  
 
「その……エッチの時も、一杯頑張ってくれるのですよー。  
 私を気持ちよくしようって一杯工夫してくれてですねー、  
 会う度に新しい事をしてくれて……きっと、勉強熱心なのですよー」  
 
(勉強熱心か……そりゃァ教師は喜ぶってもンだよなァ)  
(きっとあれですね。彼女の為のプロのセックステクニックとかそんな感じの本でも買ってるんですね)  
(いやいや、そんな本を買うって発想がアイタタタなのよ。流石にそれはないってもんよ)  
(…………殺せよっ!もう僕を殺せばいいだろうっ!?)  
 
「ですから、私も精一杯答えたくて……でも、体が小さくて全部受け入れてあげられないのですよー。  
 せめてもう少し拡がらないか試してるんですけれど、そうしてたら気持ち良くなってきちゃって……  
 結局ひとりでしてしまうのですよー……そんな夜は、凄く寂しくて……」  
『だから、会える時は激しく求めてしまうとか?』  
「…………はぃ、その通りなのですよー」  
 
(だそうだぜい)  
(男冥利に尽きるってもんよな?)  
(これはもっと会いにいってあげないと彼女が可哀想ですよ?)  
(珍しくこいつらと意見が一致してンだが……何か言わねェのか?あン?)  
 
『いやいやいい事聞かせてもらったんでそのボタン叩いて次の人を選んでくれ』  
「終わりましたかー、良かったのですよー」  
ゴツン。  
 
 
『さてさて、心の準備はオーケイですかミス・チェアーパーソン?』  
ボタンが光る。その前に座っているのは長い黒髪を中央で分けた女の子だ。  
はっきりと自己主張をしている胸が服の上からでも見てとれる。  
「……解ってるわよ」  
 
(ようやく終わったか…………そうか、そういう理由で……  
 はぁ……そんな事、僕は構いはしないのにな)  
(『煙草男』、何をたそがれているんですか?)  
(いや、何でもないよ『仮面男』。…………さっきの事は忘れてくれ)  
(はい、わかりました。……で、セックスのハウツー本はどんなのを買ったんです?)  
(あァ、俺も興味あンなァ。使えるンだったら教えてくれよ?)  
(もう殺せっ!いっその事ひとおもいに殺してくれっ!)  
 
「その……いつもはキスから入るわ。  
 思い切り抱きしめて、胸をおしつけてキスしてたらいつの間にかブラ外されてるのよ。  
 …………いやに手際がいいのよね……フロントホックでも一発だったし」  
 
(いやいやこちらのお嬢さんも見事なモンで……やっぱ女性の胸は芸術品なのよ)  
(そうですか?胸が芸術品なのは認めますが、大きさよりも全体との調和が重要でしょう?)  
(くだンねェな。あんなモンただの脂肪細胞の塊だろうが。主成分トリグリセリドだぞ?)  
(……ちょっと今のは聞き捨てなんねぇのよ……)  
(『扇風機男』、『白髪男』は『煙草男』の同類ですからしょうがないんですよ)  
(あァっ!?誰がこのヘタレの同類だっ!)  
(ちょっと待て誰がヘタレだっ!)  
 
「服の上からまさぐられて、そのうち、我慢出来なくなって……  
 直に触って欲しいって言ったら、アイツ毎度の事なのにうろたえるのよね。  
 ……アイツに触られたせいか最近また大きくなってきたんだけど……  
 胸で顔とか、……その、あれとかしてあげると凄く喜ぶからいいのかな?」  
『ほうほう、で、続きは?』  
「そのまま顔や胸で受け止めてあげる事が多いわね」  
『…………ちなみに、別に精液には美容効果は無いぞ。アルカリ性だからむしろ肌を痛めるんだが』  
「えぇっ!?嘘ぉっ!?」  
『あのデータ聞いた時にまさかとは思ってたんだが……普通信じるか?そんな俗説』  
「……うるさいうるさいうるさいっ!その後なめとってるから問題無いわよっ!」  
 
(だからロリコンじゃねェっつってんだろォがっ!)  
(あんな小さい子を好き勝手抱いといてよくそんな寝言がほざけるもんなのよ)  
(僕達の場合はたまたま相手が小さかっただけだっ!別に彼女が普通の大きさでもこんな関係になっていたよっ!)  
(いえ、貴方は前科があるでしょう。『スパイ男』から聞いてますよ?)  
(つか、俺を巻き込むンじゃねェよ『煙草男』)  
(馬鹿かお前ら……ロリこそ至宝!ペタこそ完成形!バストはBを超えたらもう腐りかけなんだぜい!)  
 
「続けるわよ。……その、アイツは私の胸見てるのが楽しいらしいから  
 大体は私が上になってるんだけど……その、途中で必ず足から力抜けちゃって……  
 ってもういいでしょっ!あぁもう終わるわよっ!」  
バゴン。  
 
(えぇ、忘れてました……私達は、結局利害関係でしか結ばれていなかった事を……)  
(僕は最初から馴れ合うつもりは毛頭無かったけどね)  
(あの方への侮辱は何があろうとも許容はできんのよ)  
(ンな事ァどうでもいいンだよ。で、やンのか?やンねェのか?)  
『何か空気が悪くなってきたんで一旦CMだにゃー!』  
(さぁさぁ今からてめェらにロリの真髄を叩き込んでやるから覚悟するんだぜいっ!)  
 
 

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