学園都市は基本的に八割を越すの学生と教職関係者が人工のほとんどを占めているが  
大覇星祭、一端覧祭など多くの観客が集まる行事や  
数々の外部の学者が集う学会なども頻繁に開かれる為ホテルもある程度は存在する。  
しかし普段はほとんど客がいないのでどこのホテルも閑古鳥が鳴いているのだ。  
学園都市から補助金が出ているものの、それだけでは経営が苦しいのでどうしても副収入が欲しくなる。  
ここ、ジルトンホテルもその例に漏れず土日にはこうして昼食バイキングを開いて学生の客を集めているのだ。  
しかしいくら昼食バイキングとは言え五ツ星ホテルの料理である。  
料金はいわゆるお嬢様お坊ちゃまが『オホホホホ今日のお昼はあそこにするザマス』というレベルであり  
当然そこに集まるのはマナーを身に着けた輩ばかりであってバイキング特有の慌しさは存在しない。  
筈なのだが……  
 
「うっひゃああああっっ!!??ねぇとうまっ!とうまっ!ホントにこれ全部食べていいのっ!?」  
「おぉ好きなだけ食べろっ!もう飯を見るのも嫌だってくらい食べてくれっ!」  
 
場違いに騒ぐ少年と少女がいた。  
少女は青みがかった銀髪も異彩を放つが何より服装が異端だった。  
白い修道女服に身を包んだその少女は学園都市では完全に浮いてしまっている。  
一方少年の方はたいして特徴は無いが黒髪が異様にツンツンと逆立っていた。  
少女は目を100カラットに輝かせて料理をうっとりと眺め続けている。  
「インデックス!時間は一時間しかねぇんだっ!呆けてる暇があったら1グラムでも多く食べろっ!」  
「うんっ!とうまっ!」  
インデックスと呼ばれた少女は大きく頷くと彼女なりの最大速で駆け出した。  
勿論そんな事をしたら周囲の客の注目を一身に集める事になるが  
彼女はそんな事を構いはしないし彼女の外見が必死さを愛嬌に変えていた。  
多くの客が嫌悪ではなく穏やかな好意をもって少女を眺めている。  
喫煙BOXの中に作られた喫煙席に座るステイル=マグヌスもその中のひとりだ。  
一人テーブルにつき、申し訳程度に皿に盛った料理にも手をつけずにインデックスを眺める姿は  
その黒い服も手伝ってともすれば変質者と思われがちだ。  
だがガラスに張った隠蔽のルーンのおかげで彼の姿は誰の目にも映らないし  
映ったとしても彼の瞳を見ればそんな事は思わないだろう。  
ただひたすらに、真摯に、愛情のみを感じさせる優しい瞳がそこにあった。  
視線の先には  
『ガツガツムシャムシャうまーっ!ハムハムガブガブうまーっ!』  
と料理をひたすら口に頬張っては満面の笑みを浮かべているインデックスがいる。  
頬や首にかけられたナプキンはもう食べこぼしでぐちゃぐちゃだ。  
それを乱暴に拭くのは上条当麻の仕事だ。  
もうステイルが優しく拭いてやる必要は無いし、そして拭いてやる事は出来ない。  
彼は新たな煙草に火をつけ、そして大きく吸い込んだ後に思い切り紫煙を吐き出す。  
少し煙が目に染みた。  
 
「うわぁ……もうしーあーわーせー……」  
「あぁ……俺もウプッ……限界だ……」  
最初はにこやかだったシェフを一時間の間に青ざめさせた二人(正確には少女一人)は  
満足そうに食事の余韻を味わっていた。  
当麻の方は食後のコーヒーを胃にいれる余裕など無かったが  
インデックスは先程までの慌しさはどこにいったのか外見と一致した優美さで紅茶を嗜んでいる。  
「とうまっ!また来ようねっ!」  
「いやいやそれは無理でせうインデックスさん……上条家の予算ではこんなトコ二度と無理っ!  
 土御門がここのチケット気前良くくれたから来れたんだからな?」  
少女が不満の声を上げるが少年は取り合わない。  
その後数分間少女が一方的に少年に食いかかっていたが少年がコーヒーを飲み終わると仲良くホテルを出て行った。  
 
 
 
インデックス達の姿を最後まで追い続けていたステイルは、  
ふたりが見えなくなってからようやく一言呟く。  
「やれやれ……彼女が食べたいものを食べさせてやるくらいの甲斐性も無いのか君は。  
 つくづく駄目な男だな」  
結局料理には手をつけず、かわりに灰皿の上に煙草の吸殻が積まれて山を形成していた。  
シェフには悪いが、料理を食べる余裕など無かったのだ。  
あの子の姿を、笑顔を、脳裏に刻み付ける事に精一杯で。  
土御門元春は優秀なスパイだ。彼の協力を仰いだ成果をもう一度脳内で反芻する。  
恐らくこれの代償にいつか無茶を押し付けられるだろうが、それが何だと言うのか。  
魂に刻んだ魔法名にこめられた想いは、今も全く色褪せていないのだから。  
「神裂も誘えば良かったかな?」  
彼の同僚であるあの聖人も、きっとこの光景をとても喜んだだろう。  
もしかしたら涙ぐんでしまうかもしれない。  
科学に頼るのはシャクだが写真でもとっておけば良かったかと軽く後悔した。  
咥えていた煙草を灰皿に押し付けて火を消し、席を立つ。  
そのままホテルを出たステイルを秋風が襲った。  
全身を包む長衣のおかげで寒さは感じないが頬は冷える。  
予約してあった別のホテルに早く向かおうとして  
 
「あーーーーーっ!!!あなたはもしかしてーーーー!!!」  
 
いつか聞いた覚えのある声が背後からステイルを襲った。  
声は勿論ステイルの耳に届いているし、その声だけで彼はそれが誰か解ったが  
敢えて無視して早足で先を急いだ。  
しかし後ろからパタパタパタパタパタパタっっ!!という猛烈な足音が近づいてくる。  
嫌な感覚が彼を襲う。追いつかれれば終わりだ。  
いっその事駆け出そうかと考えたその時、後ろから回り込んだ何かがステイルのお腹にぶつかった。  
「きゃっ!」  
可愛らしい声を上げて倒れたのは彼の予想通り、  
「……お久しぶりです」  
「ほらやっぱりー」  
満面の笑みを浮かべる桃色のワンピースと髪の少女(?)だった。  
 
ステイルが差し伸べた手をとって立ち上がった月詠小萌はニコニコニコニコニコニコニコォっ!と  
どこかの背後霊ならラッシュを放ちそうな勢いで笑みを深くした。  
「ステイル=マグヌスちゃん、ですよねー?上条ちゃんに名前を聞いておいたのですよー」  
「……えぇ、そうですが……」  
ステイルはいきなりの『ちゃん付け』に内心たじろいだものの、とりあえず返事をする。  
冷たい感じに聞こえるように丁寧語を選択する事も忘れなかった。  
「今からお時間はありますかー?折角の機会ですし、あの時のお礼をしたいのですがー」  
「いえ、大変残念ですが今晩泊まるホテルにチェックインの手続きをしなければならないので」  
冷たい拒絶の声に笑顔が力を失い、ただでさえ小さな背がますます縮んでしまう。  
僅かにステイルは罪悪感を覚えた。が、これ以上彼女に関わってしまうのもまずい。  
ただでさえ彼女の魔術を手伝うという馬鹿な真似をしたのだ。  
魔術は、それに精通した彼だからこそ言えるのだが外道・外法の知識だ。  
それを必要としない一般人が関わるべきものではない。  
自分と関わるということは魔術に絡んだ何かに巻き込んでしまう危険があるのだから  
彼女との縁だってここで終わらせてしまった方が彼女の為だ。  
「そ、それならっ!せめてそのホテルまで案内させて欲しいのですよー!」  
しかし彼女は食い下がる。  
「……なら、案内をお願い出来ますか?」  
ステイルは少し考え込んだがその提案を受け入れる事にした。  
彼が学園都市の地理に明るくない事は事実だし、  
ここで拒否したらまた彼女がステイルに別の形で関わろうとする事が容易に予想出来たからだ。  
「はいっ!」  
一瞬でさっきの笑顔の輝きを取り戻し元気に返事をした彼女は、  
誰がどうみても彼より年上には見えなかった。  
「僕が予約したのは経国ホテルというホテルです」  
「うわぁっ!?本当ですかっ!?随分とリッチなのですねー!」  
宿泊先のホテルの名前をステイルが告げると彼女はかなり驚いた。  
幼い頃から魔術に明け暮れていた彼の趣味は煙草くらいのものだし  
『必要悪の教会』の給料もそこそこの額だ。どうしても預金残高は大きくなっていく。  
たまの機会にはこうして浪費する癖がいつの間にかついてしまっていた。  
先導して歩く彼女の後をついていくが、いかんせん足の長さが違い過ぎた。  
彼女の名誉の為に追い抜いてしまわぬようさりげなく歩幅を狭める。  
少しきゅうくつな思いをしながら暫く彼女の後をついていく。  
「そういえば、上条ちゃんとはどういうお知り合いなのですかー?」  
「いえ、あのば……上条君とは……」  
唐突な質問は内容もあいまって返答に詰まった。  
 
「―――――――――なら、インデックスちゃんのお友達ですかー?」  
 
彼女としては当麻よりも外人であるインデックスの方が関係性があるかと考えただけだ。  
そこに他意は無い。  
ステイル=マグヌスは月詠小萌が先導している現在の状況に感謝した。  
きっと今の自分の表情は歪んでいるだろうから。  
 
「えぇ、そうですよ」  
 
鉄の意志で打ち潰した声に、震えは無かった。  
 
と、唐突に彼女の歩みが止まり、振り向いた。  
ステイルがいぶかしむ間も無く、彼女はただでさえ低い位置にある頭を更に下げる。  
「ごめんなさい」  
「?……道でも間違えたのですか?」  
彼女に謝られる理由などステイルには思いつかない。  
だが上げた彼女の顔には深い罪の意識が感じられた。  
「そうじゃなくてですねー……あの、その……」  
「だから、何ですか?」  
「いえ、その、……何でもなかったのですよー」  
また彼女は前を向き歩いていく。方向転換などはしなかった事から道の間違いでは無いらしい。  
しかしその背は明らかに先程よりも元気がなかった。  
(……気まずいな……)  
ストレスを感じるとつい口が寂しくなる。懐から煙草を取り出そうとし……止めた。  
この国ではマイナーな銘柄だ。  
大半が学生の学園都市では煙草の需要もあまり多くなく、この銘柄を見かける事はまず無い。  
ホテルでの一時間でいつもよりもハイペースで煙草を消費してしまったから少し我慢しておかないと  
明日の帰りまでにニコチンという福音の存在しない地獄行きになるかもしれないからだ。  
加えて、この女性の前で吸うと箱ごと没収されかねない。  
しかし気まずい雰囲気はどうしようも無い。  
「…………そう言えば、貴方の方は時間は大丈夫なんですか?」  
ステイルは散々迷った末、出来るだけ優しい声で無理矢理話題を振ってみた。  
「あ、私ですかー?いえ、私の方は全然大丈夫ですよー?  
 本当は今日は授業で使うプリントをつくろうと……あ、あの私が教師をやってる事は言いましたっけー?」  
「えぇ、あのば……上条君から聞いてます」  
「その上条ちゃんのお友達の土御門ちゃんって子がいましてですねー。  
 買い物中に財布を落としたって電話があったので一緒に探してたのですよー」  
駄目な子程可愛くてしょうがない彼女はまた笑みに輝きを取り戻していた。  
一方ステイルは表情を取り繕いながら心中で思い切り苦虫を噛み潰す。  
(これはアイツの差し金かっ!)  
偶然にしては出来過ぎていると感じていたが、こうまで露骨にやられるとグウの音も出ない。  
「探すのに半日かかっちゃったんで今日はもうお休みにしようと思ってたのですが、  
 そこで偶然ステイルちゃんを発見したのですよー」  
(いや、それは偶然じゃなくて明らかに土御門の悪意の結果なんだが……)  
と、チビッ子先生の足が止まる。目の前には豪奢なホテルがそびえ立っていた。  
「あ、あのー……チェックインの手続きで何か戸惑うことがあるかもしれませんしー、  
 中までついていってもいいでしょうかー?」  
「いえ、ここまで案内して貰った事で充分ですよ。どうもありがとうございました」  
やんわりと断ると  
(……うわぁっ!すごくショボーンとしたっ!)  
ステイルが内心たじろくぐらい小萌は肩を落とした。それはもう滝のような勢いで。  
彼は紳士の国で育ってきた。紅茶を愛しているし女性に優しくするのは信条だ。  
「……そうですか……」  
ともすればその場にしゃがみこんでアスファルトに『のの字』を描きかねない凹みっぷりに  
「……すみません、やっぱりお願い出来ますか?」  
折れざるを得なかった。  
 
 
とはいえチェックインの手続きを済ませれば今度こそ終わりだと、そう考えていたステイルに  
「いえ……あの、このご予約でしたらご解約されておりますが……」  
ホテルマンが申し訳無さそうに告げる。  
「は?いえ、あの、確かに予約をしたのですが……」  
「しかし記録では今朝ご解約されてますし、違約金ももう頂いているのですが……」  
今日ステイルがここに泊まる事を知っているのは彼以外には土御門しかいない。  
勿論こんな真似が出来るのも彼だけだ。  
(やられた……!)  
しかし、意図が解らない。どうしてホテルの予約を解除したのか、その真意が掴めなかった。  
 
「あ、あの!どうかしたのですかー?」  
まごついている彼の様子を見かねて、小萌が近づいてきた。  
タイミング悪くホテルマンがステイルに提案をする。  
「今から別のお部屋をご用意する事も出来ますが……」  
「ほえ?という事は何かトラブルでもあったのですかー?」  
「えぇ。こちらのお客様がされた予約は既に解約されていまして……」  
流石は一流ホテルのホテルマンだ。外見からは小学生にしか見えない小萌相手にも  
完璧な礼儀を守った上で応対をしてみせる。  
しかしその生真面目さはステイルを追い詰める事にしか繋がらない。  
それはどこの国の人間が見ても一目で『やったっ!』と思っている表情を浮かべて  
両手を合わせるチビッ子先生。  
「あぁ、それならちょうど良かったのですよー!」  
何となく嫌な予感しかしなかったステイルはまず断った。  
「いえ、結構です」  
「うぁっ!?何で聞きもせずに断るのですかーっ!?」  
いきなりの否定にチビッ子先生は少し涙目になる。  
くるくると万華鏡のように変わっていく表情。誰かを本当の意味で心配出来るという稀有な在り方。  
ステイルは耐えられなくなり小萌の視線から逃れるように顔を逸らした。  
 
(……本当にこの人は……あの子を思い出させてくれる……)  
 
「あのー!聞いてますかー!ステイルちゃんは泊まるところが無いんですよねー?」  
一度固くまぶたを閉じる。きつく、きつく何かの栓を閉めるように。  
そして正面から小萌から正面から向き合う。  
と言っても背が大きく違うのでどうしても見下ろす形になってしまうが。  
「はい、そうですが……それで、何かいい案でもあるんですか?」  
(知り合いの家でも紹介してくれるのかな?……あの馬鹿の家など願い下げだが)  
しかし目の前のとてもそうは見えないいい年した大人の案は  
「はいっ!少し汚いのですけど、私の部屋に泊まればいいのですよーっ!」  
ステイルの予想の斜め上をカッ飛んでいた。思わず右肩がガクンと落ちる。  
「ちょっ!ちょっと待て!貴方は何を言ってるか解ってるのかっ!?」  
「勿論夕飯の費用も光熱費も全部こちら持ちですよー?  
 お金だって浮きますしお得だと思うのですがー」  
「いや、そうじゃなくて……」  
「善は急げなのですよー!夕ご飯の準備もありますしー!」  
この小さな体のどこに、と思わせる強烈な力でステイルの体は引っ張られていく。  
「いや、だから、あの……」  
小さな手がこちらの手首を握り、乱暴に引っ張る。  
体の小さな女の子が無駄にデカイ男の子を強引に連れて行く。  
それはいつか、どこかでも見られた光景。  
 
『ステイルっ!あそこのスコーンのお店で新作が出たんだよっ!私としては是非是非試してみたいかも!』  
 
(僕の話を少しは聞いてくれ……)  
いつかとよく似たその感覚は、いつかと同じで不思議と嫌ではなかった。  
 
「ステイルちゃんは何か食べれないものはありますかー?」  
スーパーに備え付けのかごを両手で持って先導する月詠小萌の後をステイル=マグヌスはついていく。  
まだお昼過ぎという事で客はまばらで、奇妙な恰好をしたステイルを見咎めるものもほとんどいない。  
「いや、特にないんだが」  
「あぁっ!!!」  
いきなり大きな声を上げる彼女は、くるりと回転するとステイルの方を向いた。  
その瞳は大きく見開かれている。  
「あのぉ……そう言えば、ステイル=マグヌスですからマグヌスが苗字ですよねー……  
 マグヌスちゃんと呼んだ方がいいですかー?」  
小萌の奇妙な質問に、ステイルの右肩がまたガクリと大きく落ちた。  
「……それよりも、ちゃん付けをまず気にするべきだと思うが……  
 それに僕の国ではファーストネームで呼ぶのが一般的だ。そのままでいい」  
「そういえばそうですねー。ならこのままステイルちゃんで行くのですよー」  
気を取り直したステイルは小萌の手からカゴを奪った。  
無言だったがきょとんとした目で見られ続けた為に渋々言葉を添える。  
「……こういうのは男の役目だ。違うかい?」  
「ありがとうなのですよー」  
ステイルは小萌の笑顔からは目をそらす。  
目を嬉しそうに細めて浮かべる屈託の無い笑顔はあの子に似すぎているから。  
「あ、そういえばいつの間にか丁寧語じゃなくなりましたねー」  
「……そう言えばそうだな……丁寧語に戻します」  
「いえっ!そんなの気にしなくていいのですよーっ!  
 先生、丁寧語を使うのはいいですけど使われるのは苦手ですしー」  
(それは教育者としてはどうなんだ)  
つっこみは内心だけで済ませておいた。  
ステイルは日本文化に精通しているとはいえ、日本の生鮮食品店の勝手などは解らない。  
テコテコ歩くチビッ子の後を大人しくついていく目の下にバーコードのある大男。  
「それじゃ焼肉にしましょうかー。ステイルちゃんは牛肉はお好きですかー?」  
「まぁ、嫌いじゃないかな」  
キャベツと玉ねぎ、ナスなどがステイルの持つカゴにほおりこまれて行く。  
野菜の棚が終われば次は魚貝類のゾーンだ。ホタテや竹輪が加わった。  
そして二人は精肉の棚の前へとやってきた。と、そこで値札を見て小萌の動きが止まる。  
「…………そういえば買い忘れたものがあるのでここで待っていて欲しいのですよー」  
そう言ってトコトコと棚の影へと消えていく外見幼女教師。  
予想はついたがステイルがそっと後を追うと見えない所でやはり財布の中身を確認していた。  
可愛らしく眉間に皺を寄せている。  
ステイルが元の棚の前に戻ってからしばらくすると小萌が戻って来た。  
「このお肉を包んで欲しいのですよー」  
彼女が指したのはこの店で一番高い肉だった。ちょっと指が震えている。  
(やれやれ……)  
その後、焼肉のタレや漬け込みのカルビなどをカゴにほおりこんでレジへと向かった。  
カゴを置くと同時に、ステイルはレジの前に陣取り財布を取り出す。  
「うあーっ!?何をしているのですかーっ!?」  
「何って……見ての通り会計だが……」  
「今日は全部私の奢りだって言った筈なのですよーっ!」  
「貴方は確かに言ったけど僕はそれを了承していない。まぁ宿泊費とでも思ってくれればいいよ」  
「それは屁理屈というのですよーっ!大人しくそこをどきなさいーっ!」  
しかしステイルは財布から諭吉ちゃんをドローしてターンエンドだ。  
「それこそ却下だ。それにもう払い終わったしね」  
お釣りを受け取り自身の傍らに視線を落とすと、そこには北風を身に纏わせた少女がいた。  
何かもう目が死んでいる。  
「うぅ……折角のチャンスがー……」  
「さて、出来れば早く案内してくれないかな?僕もそろそろゆっくりしたいんだが」  
「うぅぅ……わかったのですよー……」  
 
大きいビニール袋がひとつと小さいビニール袋がひとつだったのでそれを分担して持ち、  
月詠小萌の部屋の前までやってきたふたり。  
そこで何かに気付いたように小萌の動きが止まる。  
「ちょ、ちょっと待っていて欲しいのですよーっ!」  
そうして一人部屋の中へと入っていった。  
彼女によく似た少女を知っているからステイルには彼女が何をしようとしているのかが手に取るように解る。  
数分後、  
「お、お待たせしましたー……」  
ちょっと額に汗をかいた小萌がドアを開いたのでステイルは中に入った。  
台所にスーパーの袋を置くと、ずかずかと小萌の部屋を散策する。  
「ちょっ!何をしているのですかーっ!レディの部屋を漁るなんてハレンチな真似は」  
「ここかな?」  
ステイルが戸を開け放つと、そこから雪崩のように物が落ちてきた。  
ビールの空き缶、服、プリントなどの紙束、専門書エトセトラエトセトラ。  
ステイルが床に広がったカオスを冷ややかな目で見下してから視線を移すと、  
その容姿に良く似合う涙目をした女教師がいた。  
「その場しのぎのごまかしをするのは教職者として、というか大人としてどうかと思うのだが」  
「えっと……その……」  
「とりあえずまだ日も高い。掃除を始めようか」  
 
ゴミをまとめ、プリントや専門書を整理し、服を全て収納し終えた頃にはもう日はすっかり沈んでいた。  
「こんな所かな?とりあえずは」  
「うぅ……せめてっ!せめて夕ご飯の準備だけは先生がひとりでやるので  
 ステイルちゃんはそこで大人しくしているのですよーっ!  
 わかりましたかーっ!?」  
両手を大きく振って抗議する彼女にステイルは片手を振って了承の意を示し、ちゃぶたいの前に座る。  
水道の音、その後野菜を切る音がとなりの台所から響いてくる。  
少し気になって覗くと台の上に乗ってシンクに向かっていた。  
手伝おうかとも考えたが、やめる。  
反対されるのが目に見えているし、実は昼食を抜いてしまったのでかなりお腹がすいている。  
邪魔な長衣を脱いで丸めておいた。  
(……何をやってるんだ僕は……)  
この縁を断ち切ろうと思っていたのに、流され続けてこの状況だ。  
今から宿を探すとなるとかなり手間取るだろうし彼女は許しはしないだろう。  
近くの棚の上に先程綺麗にしたばかりの灰皿が置いてあった。  
そういえばもう数時間吸っていない事に気付くと急に口が寂しくなる。  
長衣の内ポケットから新品の箱を取り出して封を切る。  
一本取り出して咥えると、魔法で火をつけた。  
胸の中に思い切り煙を充満させ、そして口から吐き出す。  
ゆっくりと一本を楽しみながらピコピコ上下させていると、台所から声が飛んできた。  
「あーっ!煙草吸ってますねーっ!未成年の喫煙は法律で禁止されているのですよーっ!」  
「……僕の国じゃ合法なんだけど……」  
「それだけじゃありませんっ!、  
 そもそも成長期に吸うと成長に悪影響を与えるのですよーっ!」  
「見れば解ると思うけど僕はもう充分育ってるからそれも心配ないね」  
「だーかーらーっ!何で屁理屈こねるのですかーっ!」  
トテトテと台所から歩いてくると、一度小萌先生はそこで停止した。  
「……あぁ、何かイメージ違うと思ったらコートを脱いだのですねー?  
 そんな恰好もよく似合っているのですよー……ってそうじゃなくてですねーっ!」  
黒のシャツとスラックスというラフな恰好のステイルの煙草を没収すべく手を伸ばす。  
しかし手が短すぎる。ついとステイルが頭を後ろに下げるだけで届かない。  
もーっ!と小萌が憤慨して手を伸ばしてもステイルはそれをすいすいと避けてしまう。  
しかし小萌は諦めない。ステイルが悠々と一本吸い終えるまでの間、それは繰り返され続けた。  
「解ったよ。もう吸わないから料理に戻ってくれ」  
「はぁはぁ……ホ、ホントですかーっ?」  
「本当だ。誓うよ」  
「……ホントですねーっ?」  
「あぁ」  
台所に戻っていった彼女を見届けてから、ステイルは煙草をもう一本箱から取り出す。  
と、同時に小萌が居間に戻って来た。  
「ホラまた吸おうとしているじゃないですかーっ!嘘はいけないのですよーっ!」  
「冗談だよ冗談。まだ火はつけてないだろう?」  
もーっ!と食い下がる彼女は何があろうと決して諦めはしないだろう。  
 
「どれだけ飲むんだこの人は…………」  
そこそこいい肉な筈なのに味が全く記憶に残らない程、ステイルにとって目の前の光景は衝撃的だった。  
缶を両手で持って飲んでいるその姿は可愛らしいが缶が銀色のビール缶というミスマッチ。  
飲むペース自体はむしろ遅い。恐らく一気飲みの勝負なら大抵の人に負けるだろう。  
「ホラ、これとこれも、みょうひゃべ頃なのですよ〜〜」  
と言って肉をステイルの取り皿に乗せてまた両手で缶を持ち、飲む。  
とにかくコンスタントに飲み続けている。既に8本が小萌の横に並んでいた。  
「貴方も飲んでばかりいないで少しは食べないと」  
「いぇ、先しぇいはお腹いっぴゃいなのでどうぞどうぞどうぞどうぞー」  
けふっと小さくげっぷをして次の肉をホットプレートに載せようとする。  
「悪いが僕ももうお腹一杯でね。これくらいにしておこうか」  
「しょうですかー……そりぇはじゃん念なのですよー」  
「貴方はここで座っていろ。僕が片付けをしておくから」  
「いえっ!そもそも今日はおりぇいなのですしそんにゃわけにはーっ!」  
「呂律が回ってない。怪我でもされたら困るから大人しくしていてもらおう」  
とりあえず自分の取り皿の肉を全て胃の中に放り込んでから  
余った肉や野菜が乗った皿をそのまま冷蔵庫の中に入れる。  
ホットプレートの扱いはわからないのでコンセントを抜いて台所へと運んでおいた。  
「うぁー……何からにゃにまで……本当に申し訳ないのでしゅよー……」  
卓袱台に突っ伏す小萌からは外見にそぐわないアルコール臭がプンプンしていた。  
「君が悪く思う必要は無い。全部僕がやりたくてやってる事だ」  
自嘲気味に笑う。そう、見返りなんて求めていない。  
一度あの子の友達でいる事を諦めてしまった自分にはその資格は無い。  
「それより、そのまま寝るつもりなのか?風邪をひくぞ?」  
「えぇっと……ちょっとここまで来て欲しいのですよー……」  
(自分じゃ立てないのか?やれやれ……)  
内心呆れながら小萌に近づいたステイルは、  
「えへへぇ……騙されましたねぇー」  
急に腕を引っ張られてバランスを崩し、床に倒れた。そしてすぐに頭が柔らかい何かの上にのせられる。  
「……何がしたいんだ貴方は……」  
「先生は今酔っぴゃらってるのでそんな事聞いても無駄なのですにょー」  
呆れ顔のステイルが目を開くと上機嫌そうに笑う小萌の笑顔の向こうに蛍光灯が見えた。  
どうやら膝枕をされているらしい事を理解する。  
そのまま小さな手がステイルの頬や頭を撫でていく。  
「えっとでしゅねー……先生は酔っ払うとしょの日のコト全然覚えていないのですよー……」  
「それは危ないな。もう寝た方がいいんじゃないか?」  
 
「だから、今なら何を聞いても明日には忘れてるのですよー」  
 
やめろ。  
 
「……先生にはひとつ特技がありましてですねー……」  
 
頼むからやめてくれ。その笑顔で、その優しさで触れられると壊れてしまうから。  
 
「泣くのを我慢してる声は解るのですよー……」  
 
やめろ。僕にだってプライドはある。こんな、こんな情けない姿。  
 
「あと……先生は泣く事が格好悪い事なんて思いませんよー?  
 『泣く機能』も必要だから人間についてるのですよー」  
 
やめてくれ。その笑顔で見ないでくれ。僕を認めないでくれ。頼むから、お願いだから。  
 
「――――――――――きっと……きっと、たくさん頑張ったんですよねー?」  
 
「――――――――――何で……僕じゃないんだ……!」  
壊れた。ずっと保っていたプライドが。  
「僕がそこにいたんだっ!お前よりも前にっ!」  
惨め過ぎて景色が歪んでいく。目の前の笑顔があの子の笑顔に重なった。  
「あれに耐えられるわけないじゃないかっ!  
 お前だってあの子のあの目で見られてみれば絶望するさっ!砕けてしまうさっ!」  
頬を伝う熱い何かを拭うやわらかいものがある。  
「お前がっ!お前だってっ!ずっと僕がそこにいたんだっ!お前にっ!」  
喉がつまった。咳き込む。  
叫ぼうとし、また咳き込んで、しかし言葉は止まらない。  
「僕がっ、そこっ、何でっ、お前がっ、僕はっ、あの子にっ、  
 ずっとっ、僕がっ、一番っ、何度もっ、ずっとっ、あの子とっ、僕はっ!!!!!」  
目のすぐ近くを優しい何かが撫でていった。  
視界がクリアになり、目に飛び込んでくるのは少女の優しい笑顔。  
「…………何で、僕は……あの時、もう一度あの場所に立てなかったんだ…………!」  
 
 
 
静寂に包まれてから数分。ステイルはようやく起き上がり、小萌と向き合った。  
「……ありがとう。あと、みっともない所を見せてすまなかった」  
「……あのですねー?  
 先生は、その挫折がなければステイルちゃんと多分出会えなかったのですよー。  
 だから……きっと、挫けても、続いてさえいれば、きっと……」  
小萌がステイルに迫る。ステイルの膝の上に右手を置き、左手を首に絡めた。  
そのままゆっくり近づいてくる。ステイルもそれを避ける気にはなれなかった。  
唇を重ねる。ゆったりと数秒そのままでいて、離れた。  
「だから……自分を否定するのを止めて欲しいのですよー……  
 私は、何があってもステイルちゃんを肯定しますよー?」  
「……僕で、いいのか?」  
「そうじゃなかったらキスなんてしないと思うのですがー」  
もう一度。そのままステイルは押し倒される。  
小萌の小さな舌がステイルの口内に侵入して来た。  
「…………んっ……んっ」  
小萌の予想外にステイルはキスが上手かった。  
逃げようとして、しかし頭をがっちりと抱え込まれて出来ない。  
時折り呼吸の為に口を離し、何度も、何度も唇を重ねる。  
ピクッと小萌の体全体が一度軽く跳ねた。  
「んちゅ……んぅ……んっんぁ……流石にキスは上手いのですねー」  
「まぁ、する機会は多いからね」  
「そうですかー……なら、こういうのはどうですかー?」  
小萌の小さな手がステイルの体を這い回る。  
シャツのボタンを片手で外してするりと内側に侵入した。  
熱を持った肌を手のひらで撫で回し、そして腹筋の筋に指を這わせる。  
「……鍛えているのですねー」  
「くっ……うぁ……慣れているんだな……」  
「まぁ、ある程度はー」  
そのまま更に手は下がっていき、ズボンへとたどりつく。  
ベルトを外され、そして下着も下げられて晒されるのはへにゃりとしたステイルの男性自身。  
「こういうのは初めてですかー?」  
そういって小萌がステイルのそれをやさしく摘んだ。  
ゆっくりと手を上下させ、徐々に固さと熱を増していくそれを撫で上げる。  
空いた左手は睾丸をほぐしていた。  
「これ、は流石にけ、い験した事が無いね」  
「そうですかー。それはちょっぴり嬉しいのですよー」  
さらに膨張をつづけるステイルのそれ。  
充分に手でいつくしんだ後、それに舌を這わせる。  
「汚、いとはお、もわないのかぅっ!?」  
「ふふ……んぅ、んちゅ、ん、……咥えられないのが残念なのですよー」  
ステイルのそれが咥えられないので小萌は舌を這わせる。  
 
裏筋から丹念に舐め上げ、鈴口に優しく口付けして吸い上げた。  
「ふぐっ!…………かっ……」  
「声を出してくれた方が嬉しいのですよー」  
そういって右手の上下運動と吸い上げを激しくする。  
「あっ!ちょ、待――――うあぁっ!そんな同時にやられ――ひぁっ!」  
「ん、我慢しなくていいのですよー?全部受け止めてあげますからー」  
「うぅっ!だから……何――――ぐっ!ああっくぅっ!」  
(粘りますねー……もう限界だと思うのですけどー)  
小萌の想像通りステイルはもう限界だった。  
ただ彼のプライドが一方的に責められて達してしまう事を決して認めはしない。  
歯を食いしばり、拳を握り締めてただひたすらに耐える。  
(頑張りますねー……先生、そんな子大好きだからもっとサービスしちゃうのですよー)  
必死に耐えるステイルの表情を見上げ、より一層愛しさがこみ上げてきた。  
その表情をもう少し見ていたいという嗜虐的な感情と  
迸りを受け止めたいという被虐的な感情、またステイルを早く解放してあげたいという優しさ、  
様々な感情が小萌の中で混ざり、そしてより一層動きを激しくさせた。  
舌で鈴口をえぐり、右手で思い切りこすり、左手で肛門の淵をなぞる。  
「さんかっ!しょ!なんてっ!ひきょ―――――――ぁああっ!」  
ステイルの両手が伸びてきて小萌の頭を掴む。  
そして自身のそれに小萌の小さな口を押し付け  
「出っ!!!るぅぅっあああっあぁあぁっっ!!!!!」  
「―――――んぐぅぅっ!!?」  
自身の熱を思い切り解放した。いきなりの事に小萌も対応出来ない。  
喉の奥に叩きつけられて盛大にむせた。  
唇から離れたステイルのそれは何度も何度も脈打ち、小萌の顔面を染め上げていく。  
また、飲みきれなかった白濁が小萌の口からステイルのそれに垂れた。  
「うぅ……凄い量なのですよー……」  
顔中でステイルの精液を浴びた小萌は、目のあたりをごしごしとこすった。  
「す、すまない……つい……」  
「?えぇと、感じてくれたという事ですから私は嬉しいのですよー。  
 今、お掃除しますねー?」  
まず、小萌は手で自身の顔にかかった精液をぬぐい、口に運んだ。喉を鳴らして飲み込む。  
「ん、ん、……色や匂いは甘くて美味しそうなのに……何でこんなに苦いんでしょうかー」  
小学生にしか見えない少女が自分の精液をぬぐって口に運ぶという光景、  
禁断の果実の芳醇な味わいがステイルの脳髄を麻痺させていく。  
むくむくとまた熱と硬さを取り戻すステイルの男性自身に気付いた小萌は、  
年齢相応の女性を感じさせるいやらしい笑みを浮かべる。  
「えへへ……また大きくなっちゃいましたねー……  
 それに、今からすぐに汚れちゃうんですからお掃除なんていりませんかー?」  
「そう……かなっ!」  
 
「ふひゃああっ!!?」  
悠然と微笑む小萌にステイルが奇襲をかける。右手で小萌の股間を思い切り押し上げたのだ。  
そこは既に下着の上からでもわかる程の充分な湿り気を帯びていた。  
「全く……そうじゃなくて、貴方が我慢出来なくなっただけだろう?」  
一方的に攻められ鬱憤のたまったステイルは乱暴にそこをいじくり回す。  
手全体でガッチリとホールド、一番長くて太い中指で下着の上から押し上げ、突き刺す。  
「ふぁっ!?あの―――ひぅんっ!?おんなの、このっ!?  
 だいぃっ!じ、なっ!?部分はもっとぉ、やさ、しくっ!?」  
「さっきあれ程好き勝手やられたんだ。少しは好き勝手にさせてもらう。  
ステイルは好き勝手に乱暴した。  
小萌は好き勝手にされ、蹂躙され、声を上げ続ける。  
「ひぁっ!?ひ、ひきょうなのですよぉ…!そん、な一方的にぃっ!?」  
先程無視された恨みから小萌の抗議は完全に無視。  
更なる攻めを加える事が脳内魔女裁判で決定。  
「聖書の一節にこんなのがあってね……  
 『誰かが、あなたの右の頬を打ったなら、左の頬を向けなさい』」  
呟きながら左手も伸ばし、そして下着の上から小萌の尻肉を揉み潰す。  
「きゃぅっ!?ど、同時なんっ!?、て、いけないのですよぉっ!  
 こんなにされ……ひああぅぅんっ!!?」  
ぷしゅっと汁が吹き出た。そしてそれは止まらない。  
透明な液体が小萌の股間から盛大に滴り落ちる。  
「あぁ……だからやめてと言ったのですよぉ……」  
大量にアルコールを摂取して既に限界まで張り詰めていた膀胱が一気に弛緩する。  
止める事も出来ず、外見通りの幼女のように小萌は漏らした。  
ステイルの服や床が暖かい液体によって濡れる。  
「うぅぅ……何て事するのですかぁ……酷いですよぉ……」  
「す……すまない、調子に乗りすぎた……」  
「もう、いいのです……それより濡れた服を脱がないと風邪ひいちゃいますよー?」  
言われ、ステイルは素直に服を脱ぐ。  
全裸になって横を見ると、小萌は掃除ではなく寝床の用意をしていた。  
「他にするべき事があるんじゃないのか?」  
「今掃除しても後で掃除しても同じなのですよー。  
 それに、今はこちらの方が大事ですからー」  
ステイルは眉間を押さえて呟いた。  
「そうやって後回しにするから部屋が汚れるんだよ……」  
しかし、下半身は膨張したままであり説得力は皆無だ。小萌は挑発的に微笑んでみせる。  
「そんな事はいいから、脱がせて欲しいのですよー……ね?」  
 
裸にされた小萌が両足を開いて待ち構えている。  
胸も尻もあまり肉付きが良くない……というかむしろ皆無だ。  
一部の異常性欲者なら激しく反応する肢体に  
(興奮しているって事は僕も変態なのか……)  
思い切り反応したステイルは内心凹んでしまっていた。  
「……?どうかしたのですかー?」  
「あぁ……いくぞ?」  
ゆっくりと侵入させていく……と、半分入ったくらいで一番奥にこつりと当たった。  
「ぁ……大き、過ぎなのですよぉ……」  
「大丈夫か?」  
心配するステイルを、その小さな腕を精一杯伸ばして抱きしめる。  
「ちょっと、苦しいですけど、でも、嬉しいの、ですよぉ?  
 ステイルちゃんと……繋がってるのは……」  
「そうか……なら、動くぞ?」  
ゆっくりと引き抜く。体の内側をゆっくりこすられる感覚に小萌の脳は痺れていく。  
「はぅ……ひぅ……」  
今度は押し込んでいく。また半分程で奥に当たった。そこを優しくノックする。  
「ぁ……ぁあ……それ、フワフワして……」  
「気持ちいいか?」  
「……はいぃ」  
胸の真下にある小萌の表情はよく伺えなかったがその声だけで充分予測出来た。  
小萌の部分は精一杯に広がってステイルのものを受け入れ、締め上げている。  
油断するとすぐに出てしまいそうだ。  
「あ、のですね?」  
「何だ?」  
「もう、ちょっと……激しくしても……いいのですよー?」  
(そこまで言われたら……まぁ、張り切るしかないか!)  
小萌の細い腰を両手で掴み、思い切り動かした。体重をかけて抉り、突き刺し、押しつぶす。  
「あぐぅっ!?ひぁっ!あっ!あぁっ!あぅぅっ!?」  
小萌の手がせめてもの支えに、とステイルの背中に回される。  
爪が背中へと食い込んで痛みを発するが、ステイルの脳内はもう小萌の中の感触に占領されていた。  
「ひゃぅっ!?あ、あ、あ、あぃっ!?ふぅあっ!?ひっ!あぁあっ!?」  
小萌の手がステイルの背から離れ、シーツをかきむしる。  
ステイルも限界に近かった。腰を引いて抜こうとし、  
「出、出るから……抜」  
「だ、めですよぉ?」  
小萌に足を絡められる。その行動と言葉で小萌の意思が解ったステイルは  
小萌の頭の横に両手を着き、そして思い切り体重をかけて一番奥に打ち込む。  
「―――――――出すぞっ!」  
「はい―――――――――!!!」  
そのまま、熱を小萌の中に残らずぶちまけた。  
「ひああああぁぁぅぁああっっ!!!!」  
何度も何度も痙攣し、その度に噴出する熱を一番奥へと叩きつけるステイル。  
その迸りを受け止め、小さな体を跳ねさせる小萌。  
痙攣が終わり数秒間硬直した後、ふたりは重なって崩れ落ちた。  
 
 
(こんな所かな?)  
明け方に寒さで目覚めたステイルはまず小萌に布団をかけてやると、床など諸々の後始末を行った。  
一度掃除を手伝ったからどこに何があるかはさして悩まずに済み、  
ほんの二十分程度で全てが終わる。  
ふと視線を巡らせると、そこには幸せそうに寝ている小萌がいた。  
「……起こしても、別れにくくなるだけか……」  
ちょっとした書置きをテーブルの上に残し、わずかに悩んだがお気に入りの煙草を重しとして残す。  
そして音を立てないように注意して小萌の部屋を出る。  
ビルの合間から朝日が僅かに見えた。  
「……土御門、いるんだろう?」  
「あぁ」  
物陰から姿を現したのは金髪にサングラス、そしてダサいのかイケてるのか判断に困るシャツを着た  
ボクサー崩れのような独特の雰囲気を持つ男、土御門元春だった。  
「何故だ?誰に……何処に頼まれた?」  
今回、月詠小萌と出会った事や彼女と一緒にいる時間が長くなったのはこの男の仕業だ。  
誰か、何らかの組織の差し金と考える方が妥当である。  
「……あぁ、何を言ってるかと思ったらそれか。安心しろ。別にこれはそうじゃない」  
しかし土御門の口から出たのは否定の言葉だった。  
「考えても見ろ。煙草臭くてムサ苦しい大男と、ちっちゃくてかぁいい女の子……  
 困ってたらお前ならどっちを助ける?」  
そのあまりの単純すぎる回答に、ステイルはもう苦笑いを浮かべるしかない。  
「これは……借りか?それとも貸しか?」  
「さぁな……それより、他に頼む事があるんじゃないのか?」  
そして土御門が浮かべているのは嫌らしい笑みである。  
つまりこのスパイはどうやら全てをお見通しらしい。  
「はぁ…………シャワーと、それと服を貸してくれ」  
「了解だにゃー」  
 
 
明け方の科学の街を、二人の魔術師が歩いていく。  
 
 

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