「アニェーゼ」
「っく、なんですかぁ…?」
「お前を、その、抱くよ」
「え…?」
アニェーゼは驚く。あれほど誘惑してもなびかなかったのに、どういう心境の変化か。
「…同情、のつもりですか?」
なぜかは分からないが、寂しさと怒りが心中にわく。誘惑しておいて何をいまさら、と冷静な自分が嘲笑するが、それでも止められない。
なおも理不尽なその感情に押されるままに口が動きそうになる。
しかし、その唇を上条が封じる。自らの唇で。
「んんっ!?」
まずは唇同士の軽いキス。
“うわ、柔らかい!”
上条はその柔らかさに驚く。同時に、抑えられていた雄の本能が一気に爆発するのを感じた。
“もう、止めらんないぞ…”
その本能の命じるまま、舌をアニェーゼの唇の中に侵入させる。
アニェーゼは意固地に歯を食いしばったままだ。しかし、上条の舌はその歯茎を蹂躙する。
歯茎を舐められる異様な感覚に、アニェーゼの肌があわ立つ。反射的に声を漏らしそうになった。
一瞬開いた歯のすき間に、上条は抜け目なく舌を滑り込ませる。自分の舌でアニェーゼの口腔内をひとしきり愛撫した後、舌同士を絡めあう。
アニェーゼの舌は逃げようとするが、上条は離さない。舌を絡め、愛撫するように動かす。同時に、アニェーゼの唾液をすすり、また自分の唾液を注ぎ込む。
じゅっ、じゅっ、くちゅっ…
淫靡な音が無人の路地裏に響く。いつしか、アニェーゼも舌を絡め返してきていた。
「ぷはっ」
ひとしきりアニェーゼをキスで貪り、上条は唇を離した。上条とアニェーゼの唇の間に、唾液が糸を引く。
「何でこんなに上手いんですか…」
アニェーゼは上気した顔を上げ、拗ねたように怨じてみせる。
「教えない」
そう言って上条はもう一度口付ける。実は記憶を失っている上条にも分からないのだ。本気で記憶を失う前の自分の行状を不安に思う。
しかしそんな不安は棚上げし、アニェーゼを貪ることに集中する。その記憶のおかげで、腰砕けという男として恥ずかしい様を晒さずに済んだのだし。
唇から口を離し、今度は耳に息を吹きかけた。
「ひゃうっ?」
さらに、耳たぶに口付け、舌を使って愛撫する。
「はぁあ…」
ため息のような長い息を吐き、アニェーゼは身体を弛緩させる。
上条の舌はそこからさらに動き、泣きはらしたまぶたに達する。他人に触れられたことも無いそこを舐め上げられ、アニェーゼは身体を震わせる。しかし、ぞくぞくした感覚を味わい、しっかり感じていた。
「あうう…なんでぇ…?感じる場所じゃあないってのにぃ」
可愛らしく喘ぎ、舌を出してキスをせがむ。それに答えるように上条は三度口付けた。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…
啄ばむようなキスが、そんな音を生む。
「…あの、カミジョウ、そろそろ下も…」
キスだけで快感を高められたアニェーゼは、おもわずそんなおねだりをしてしまう。自分の言葉に真っ赤になるアニェーゼに、こちらも鼓動を高まらせ、
「下ってどこかなぁ?」
しかし焦らす上条。アニェーゼは紅いほほをさらに紅く染め、恨みがましく見上げてくる。
そんなアニェーゼに揺さぶられながらも、上条は外見的には余裕を演じてみせる。
「カミジョウは、意地悪です…」
根負けしたアニェーゼが言う。揉みやすいように上条に背を向け、
「胸を、いじってください…」
消え入りそうな声で要求する。
「仰せのままに、ひめ」
さすがにそれ以上いじめるような事はせず、上条は両手をアニェーゼの胸に這わす。
まずはカップ全体を手で包み込むようにし、やさしく揉む。
「ん、ん、ん…」
じんわりした快感。しかし、物足りない。
そんな様子を察した上条は、その頂点の突起に指を伸ばす。だが直接は触れず、周囲をいじり、また触れるか触れないかの軽いタッチを繰り返す。
そんなもどかしさが、アニェーゼを狂わせていく。
「くうん…」
子犬の鳴き声のように鼻息を漏らし、上条の指に胸の蕾をこすりつけようとする。しかし、上条はそのたびに指を巧みに動かし、胸の先を直接刺激しない。
「ああ、もっと、もっと…」
漏らされる声はもはや泣き声に近い。その声に上条はようやく答える。
一気に両の蕾をつまみ、捻り上げた。
「ひぃぃぃぃん…!」
鋭く強烈な快感を与えられ、アニェーゼは悲鳴を漏らす。それでも上条は止まらない。先ほどまでの優しい手つきとは打って変わった激しい手つきでアニェーゼの胸を攻め立てる。
「ひあっ、ふあっ、や、だめ、いい!」
指の腹で両の蕾を擦り上げられ、アニェーゼは快感に酔いしれる。
そこで上条はふと手を止めた。
「や、いやぁ、止めちゃやぁ…」
そう言って腰を悩ましくくねらせるアニェーゼ。
「アニェーゼ、こっち向いて」
ほとんど泣き顔で、アニェーゼは上条に再び向き直る。
「いい子だ」
言って上条はひざまずき、アニェーゼの胸元に口付ける。
「ひぅっ?」
胸元から鳩尾の上まで一気に舌が滑り落ちる。舌のぬるっとした感覚に、小さくアニェーゼの皮膚があわ立つ。それに気づかないかのように、上条は胸に舌を這わせていく。
カップに唾液の筋を引くように、ゆっくり丁寧に嘗め回す。
頂点の蕾を唇に含み、舌でつつくように愛撫する。
当然、指を動かすのもおろそかにしない。
「あうっ、は、いやっ、んんっ!」
胸を執拗に攻められるアニェーゼの唇からは、絶え間なく嬌声が飛び出してくる。そして、その嬌声が少しずつ切迫していく。
「はふ、はっ、はっ、はっ!」
“そろそろ、かな?”
上条の得体の知れない経験からすると、絶頂が近そうだ。
“よし、それじゃ”
上条は取るべき行動を決めた。
蕾に吸い付く唇、舌の動きと、反対の蕾をいじくる指の動きを同期させる。
「あうっ、はっ、うんっ、ん!」
アニェーゼの嬌声が一段と高くはねあがる。
そこで、止めを刺す。
乳首に軽く歯を立てると同時に、逆サイドの乳首を指でほとんど潰すように捻り上げた。
「ひ、あ、あ、ああああああああっ!」
アニェーゼの身体がピン、と突っ張り、硬直する。
「今」の上条にも、アニェーゼが絶頂を迎えたのは明らかだった。
“イったんだよ、な”
荒い吐息をついて上条にくったりともたれかかるアニェーゼ。意識はあるようだが、身体に力が入らない様子だ。
しばらくその姿勢のまま、アニェーゼの呼吸が静まるのを待つ。アニェーゼのその柔らかな感触と、熱い吐息を感じながら。それに、
“この、匂い…”
むせ返るほどの雌の香り。それは否応無く上条の興奮度を高めていく。事実、股間は痛みさえ感じるほどに膨れ上がっている。
それでも上条はアニェーゼの回復を待つ。二人で気持ちよくなりたい、と思っているから。
アニェーゼの呼吸が静まったのを感じ、上条は責めを再開する。
腰を腕で抱きつつ、アニェーゼを壁に寄りかからせる。そして呼吸と連動して上下する腹に舌を這わす。
「あう…」
新たな刺激に、アニェーゼがまぶたを開く。
上条の舌が下に滑り落ちていく。そして、ヘソに舌を差し入れ、軽く刺激する。内臓に近いそこを舐められ、アニェーゼは身体を震わせる。
「っは…カミジョウ、変なところばかり…」
しかし、その責めは的確にアニェーゼの性感帯を刺激していく。しかも、自分で知らないような場所も。
上条の舌は止まらず、ついに薄い翳りに彩られたアニェーゼの秘所に到着する。
少しの間、そこを凝視する。思春期の男子にとって一番興味のある場所を。
上条の視線を感じ、アニェーゼは恥ずかしそうに身をよじり、しかし早くいじって欲しいと言うように、腰を浮かせてしまう。
目の前に突き出されたアニェーゼの秘所。陰毛の薄いそこは、大陰唇の溝からかすかに充血した小陰唇を露出させるだけの慎ましやかなものだった。そして、滴るほどに露を溢れさせている。
興奮を紛らわすために、上条は軽い冗談を口にする。
「ああ、やっぱり」
「なん、です…?」
「いや、やっぱり下の毛も赤毛なんだな、って思ってさ」
照れたアニェーゼに頭をはたかれながら、
ゴクリ…
我知らず上条は喉を鳴らす。濃厚な雌の匂いは、上条を狂わせんばかりだ。
しかし、上条が口付けたのは右の膝頭。そこから内股をつーっと舐めあげていく。
右が終われば、左も。
「いやぁぁ、意地悪ぅ…!」
秘所への刺激を期待していたアニェーゼは、期待をすかされて悶える。しかし、その愛撫にはしっかりと感じ、頭の中を再び快感に染め上げていく。
上条は秘所の近くに触れ、舐めはするものの、決して秘所には触れようとしない。と、いうよりわざと避けている。
そのせいで快感は高まれど、昇りつめられない生殺しの状態に置かれてしまう。もはや体中が快感で爆発しそうだというのに、イク事ができない。それは想像以上のストレスとなり、アニェーゼを責め苛む。
我慢できず自分で胸を慰めるものの、上条にされたのに比べれば微々たるものだ。
「あうっ、ふうっ、ううん、はあっ…」
“物足りないです…”
「カミジョウ、お願いですから意地悪しないで…」
涙目になって言うアニェーゼ。その可愛さに撃墜されそうになるものの、
「言葉にしてもらわなきゃわかんないなぁ?」
また焦らす。女性としてその場所の名前を言うのがどれほどの羞恥か承知した上で。
息を呑み、しばらく逡巡するアニェーゼ。しかし、その間にも上条の愛撫は続き、快感が脳を犯し続け、余裕を奪っていく。
“そうだ、イタリア語で…”
妙案を思いつく。母国語なら上条には分からない分恥ずかしさは薄れる。しかし、そんなアニェーゼの気持ちを見透かしたのか、
「ああ、日本語で」
と付け加えてきた。アニェーゼは無論、日本の、しかも俗語でそこをなんと言うかは承知していた。
意を決し、
「ォ…オマ…」
しかしやはり恥ずかしいものは恥ずかしい。小声になってしまう。
「んん?なんだって?」
「…オマンコを、いじくってください!」
言って、割と本気で上条をにらみつける。視線を感じ、顔を上げた上条は、
“げぶぁ!可愛すぎだ反則だろその表情!”
快感に頬を染め、涙までにじませたアニェーゼ。しかし、何とかきつい表情を作って上条をにらみつけるアニェーゼ。
その相反する表情に、完璧に撃墜された。
内腿から舌で舐めあげ、まずはご挨拶とばかりに恥丘全体を舐め上げる。
そしてゆっくり舌を肉裂に割り入れ、内部の粘膜全体を嘗め回す。
「ひ、あ、あ…」
待ち望んでいた場所の快感に、アニェーゼは背筋を震わせる。
彼女が感じているのは上条にもよく伝わっている。
「ここ、洪水みたいになってるぞ…」
「ひあ、ん、やぁっ!」
上条の分かりやすい言葉に、いやいやをするように頭を振る。
しかし秘所は正直だ。新たな蜜を溢れさせて上条の愛撫に応えた。
その、蜜を滴らせる秘所を指で割り開く。
「うわ…エロい…」
我知らず呟きを漏らしてしまう。
目にしたアニェーゼの肉裂の中は色素沈着が薄い。鮮烈なサーモンピンクの襞が、催促するようにパクパクと口を開いている。男を狂わす妖艶な花。そこに一瞬見とれてしまう。
「上条、早く、はやくぅ…」
アニェーゼの声で気を取り直し、愛撫を再開する。
秘所に息を吹きかけ、改めて口付ける。下から舐めあげ、頂点の突起に吸い付き、舌でつつく。そして舌を巻きつけるように丁寧に舐る。
「あうっ、ひっ、はうっ、あ、あ、あ!」
カリッ、と軽く歯を立てれば、アニェーゼは嬌声さえも上げられず、大きく喉と背をのけぞらせ、身体を突っ張らせる。同時に、秘所の下の亀裂が大量の蜜を吐き出した。
“すご…”
上条はアニェーゼの反応に驚いていた。このまま進めていいものか少し不安になってしまい、一瞬上条は動きを止める。しかし、
「カミジョウ、止めないで…」
アニェーゼの懇願。
“そんなこと言われたら止められるかー!”
というより、そうまでいわれて止めたら男じゃない。
クリトリスに吸い付きながら、蜜に濡れた亀裂に上条は指を這わす。
ちゅぷ
かすかな水音と共に、そこは上条の指を飲み込んだ。
“うわ、熱い…”
まだ中指を浅く入れただけなのに、吸い付いて奥に引きずり込まれそうだ。指を引くだけで軽い抵抗を感じる。
その指を上条はゆっくりと動かしていく。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…
「んっ、んっ、んっ…」
ピストンに連動するように、アニェーゼが吐息を漏らす。
そのピストンを続けながら、上条は懸念を口にした。
「あのさ、アニェーゼ、変なこと聞くけど…」
「ふ…何です?」
「その…処女、か?」
「…違い、ます…」
“がっかり、させちまいましたか…”
言ってアニェーゼは後悔する。
しかし、上条は気にした様子も無く、
「そっか。なら思い切りやっても大丈夫だな」
と言うと同時、指を一気に膣奥まで突き入れてきた。
油断していたところに膣襞を強く擦られ、アニェーゼは悶絶してしまう。
「ひあああああっ!?」
しかし上条は手を止めない。先ほどの小刻みなのとは打って変わって、長いストロークのピストンでアニェーゼを責め立てる。
「あう、ひっ、はっ、くうっ」
子宮口まで擦りあげられる感触に、アニェーゼは酔ってしまう。
さらに、上条は膣奥にある、ほかの場所とは違う感触を敏感に捉える。
“あれ、ここ…”
ちょうどクリトリスの下辺りに、コリコリした感触。膣の中で最も感覚の鋭い、Gスポットと呼ばれる場所だとすぐに察する。
そこを指の腹で引っかくように刺激すれば、一段と締め付けが強くなる。
『あうっ、ああっ、そこ駄目ぇ!』
痛みにさえ近い快感に、思わず母国語で絶叫してしまうアニェーゼ。
しかし上条は止まらず、それどころかピストンのスピードを上げていく。
じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ!
蜜をあわ立たせながらも、上条の指は動きを止めない。
「あっはっ、はっあうっ、は…!」
そして。
上条がクリトリスに歯を立て、Gスポットごと膣襞を深くえぐると同時、アニェーゼは本日何度目かになるか分からない絶頂を迎えた。
『駄目、駄目ぇっ、また来る、来ちゃうぅぅぅぅ!』
母国語の悲鳴。同時に、
ぷしゃっ
「うわっぷ?」
アニェーゼが漏らした、蜜とは違う液体が上条の顔を濡らす。
「これって…潮?」
アニェーゼの膣から指を引き抜き、顔をぬぐう。
「はあ、う、ああ…」
アニェーゼは口をだらしなくあけたまま荒い吐息を漏らす。膣も口を開きっぱなしで、ぽっかり空いた穴から蜜を滴らせた。
今度の快感はこれまでのより格段に深かった。アニェーゼは半分失神しかけ、体を傾かせた。
「おおっと!?」
ふらりと倒れかけるアニェーゼを、慌てて立ち上がって抱きとめる。
「大丈夫か、アニェーゼ?」
アニェーゼは何も応えない。ただ触れ合った胸からアニェーゼの激しい鼓動が響き、荒い吐息が耳をくすぐる。
“まずいなぁ…上条さん、我慢の限界ですよ?”
アニェーゼの感触に、股間はもう爆発寸前にまで高まってしまっている。
むぎゅ
「おうわ!?」
そんな上条の股間に刺激が走る。視線を落とせば、アニェーゼの繊手がそこを握り締めているのが見えた。
「うお、アニェーゼ!?」
「やられっぱなしは、性にあわないんですよ…」
いつの間にか意識を取り戻したらしいアニェーゼは、上条に視線を合わせ、言う。その表情は戦った時のように挑発的だ。
そんなアニェーゼに、カミジョウの背筋を得体の知れない冷や汗が伝う。
“なんか絶対の大ピンチのようなんですけどー!?”
しかし、ここまで上条をエスコートしてきた得体の知れない記憶は、無情に告げる。あきらめろ、そして頑張れ、と。
「さあ、覚悟してくださいね、カミジョウ?」
上条の陰茎を握り、アニェーゼは肉食獣の笑みを浮かべた。