いささか、唐突ではあるが。  
幻想(おんな)殺しのレベル0。我等が上条当麻は、居眠りをしていた。  
ぽかぽかとした、良い陽気である。上条さんが居眠りしているベンチの傍に咲く花々が風に揺らされる度、  
なんとも癒し効果抜群な感じの花の香りが上条を包み、とてつもなく良い感じのくつろぎ空間を生んでいた。  
いつも女の子……もとい、自分の為と称して他人の為に駆け回るお疲れな彼が、居眠りしてしまうのも仕方がない。  
そんな彼のベンチに、歩み寄る人影一つ。  
彼女の名は……  
 
 
 
ビリっとデレる、御坂美琴(済)  
フロントホック、吹寄制理  
何故か巫女さん、姫神秋沙  
右手で触れるな、風斬氷華  
ザ・パンダ配色、白井黒子  
幸呼ぶ一人花畑、初春飾利  
さりげない乙女、佐天涙子  
みんなが大好き、月詠小萌  
→作者が大好き、黄泉川愛穂  
 
 
彼女の名は黄泉川愛穂。シリアスをコミカルに始末する、不思議なジャージ美女である。  
アンチスキルなので、腹筋とか普通に割れているが、そんなのが嫌とか抜かす小童は先生への愛が足りない。修行しろ。  
上条さんの姿に気付いた先生。彼女は生徒を見かけるとついニコニコしちゃうタイプの人なので、  
ニコニコしながら近づいていく。特に上条さんは個人的にお気に入りなので、尚更であった。  
「おー、少年じゃんか。久しぶりじゃ……ん?」  
近づいてよく見ると、どうやら居眠りをしているらしいことに気がついて、  
ふむ、と暫し思案する先生。  
「まぁ、いいか。ちょっとお隣失礼するじゃん」  
上条さんに近すぎず遠すぎずな適当な距離をおいて腰を下ろすと、何をするでもなくのんびりとしだす先生。  
そんな時間がどれくらい過ぎたか。起きる気配のない上条さんに痺れを切らしたわけではないだろうが、  
眠り続ける上条さんに、先生はちょっかいを出し始めた。  
「おおう、なかなか鍛えてる。高ポイントじゃん」  
その白くほっそりとした指で、上条さん自慢の右手を触診する先生。  
上条さんはくすぐったそうな反応を返すが、まだ起きない。  
「ふ〜む……良し」  
すると先生は、大胆なことに上条さんのシャツをめくり上げると、軽く上半身を露出させた。  
起きても気にしない、寧ろ話したいこともあるので起きてもらうついでにちょっと確認したいこともある。  
そんな軽い気持ちで取った行動を、しかし先生はすぐに後悔した。  
体中に刻まれた、無数の傷。大小種類問わず残るその痛々しい傷跡の数々は、少年の不器用な生き方そのものだった。  
そっと、傷の一つを撫でる。慈しみの込められたその手つきが、上条さん覚醒の決定打になった。  
上条さんがまぶたを開ける直前、まるで人に触れたことなど一度も無いというような顔で元の体勢に戻る先生。  
「う……ん」  
あくびをしつつ、目を覚ました上条さん。なんとなく周囲に目を遣り。  
「よお、少年」  
「あ、どうも……って何故に黄泉川先生!?」  
当然のように横に座っていた先生に、盛大に上条さんは驚いた。  
その様子に、少し眉を寄せる先生。  
「そんなにあからさまにビビられると傷つくじゃん? ……それと少年」  
「は、はい」  
「セクシーな腹筋、見えてるじゃん?」  
「は? ……っ!?」  
言葉の意味に気付き、慌てて服を下ろす上条さん。本当は先生が直すのを忘れていたせいなのだが、  
大人はずるいものなのだ。  
「えーと……見ました?」  
「何を?」  
「いや、だから、その……いや、何でもねーです」  
傷のことを言っているのだと先生は気づいていたが、とぼけてみせる。  
そのことで見られなかったと無理やり自分を納得させる上条さん。  
そのまま、少しのあいだ黙りこむ二人。  
(ちょ、なんですか? なんなんですかこの雰囲気!)  
いざというとき以外は基本ヘタレな上条さんは、見ていて哀れになるほどおどおどしている。  
沈黙に耐え切れない、というような上条さんに、不意に言葉がかけられた。  
「少年。私はアンチスキルじゃん?」  
「あ、ああ。そうでした……ね」  
「だからまぁ、職業柄、色々気になることを調べたりもするわけじゃん?  
 丁度、私の個人的な知り合いにそっち方面に強い奴もいるし」  
話の雲行きが怪しくなり、目を泳がせる上条さん。わざとらしく口笛も吹いたりしている。  
そんな上条さんを、妙に鋭い目付きで眺めて、一言。  
「それで気付いたんだけど。少年、妙に入院回数多いじゃん?」  
「ギクゥ!?」  
リアクションの分かりやすい上条さんだった。  
「んで、一つ気になるとね、色々考えちゃうわけじゃん?  
 妙なゴスロリ女が責めてきた時とかも、なんかあんた関係ある感じだったし、  
 少し調べてみたら、こないだ都市機能がほぼ停止した時も、何かあんた色々動き回ってたみたいじゃん?」  
上条さんはなんていうか、まるで学校から帰ったら隠していたエロ本(表紙はご奉仕するにゃんの文字と半裸の猫耳メイド)  
が机の上に綺麗に並べておいてあった中学生みたいな顔をしていた。  
そんなことはお構いなしに、先生はとどめとばかりに、一言。  
「少年。少年は、先生に何か言わないといけないようなこと、してる気がするじゃんけど、どう?」  
 
何かもう冷や汗なのかなんなのかよくわからない液体を、上条さんは垂れ流していた。  
(何ですかなんですかなんなんですかこの展開は!? シリアス過ぎて上条さんは予想GUYデス!  
 インデックスでもビリビリでもでも土御門でも誰でもいいから助けてプリーズ! ってやっぱダメですかダメですねダメなんですね!?)  
ダメなんですよ。だって二人っきりだもの。  
ガクガクしながら百面相。なんとか誤魔化そうと言い訳を考えるが思いつかず身悶える上条さん。  
「……ぷっ、くく……」  
不意に、そんなかみ殺された笑い声がして、上条さんは横に眼を向ける。  
見れば、なんか思いっきりツボってるけど笑うのを我慢している先生。しかし、  
その我慢も思わず浮かべていた上条さんの情けない顔で限界突破したらしく、  
「あっはっはっは!」  
と、いきなり大笑いしだす始末。  
上条さんは展開に付いていけなくてちょっと泣きそうになった。  
「あ、あのー、センセ?」  
「あは、あははは……いやぁ、少年が予想以上に困り顔したから、ついね。悪気は無いじゃんよ」  
シリアスだった顔つきは一転、コミカルな雰囲気の先生に戸惑う上条さんに、  
悪戯っぽい笑みを浮かべる先生。  
「別にね、言いたくないなら言わなくても構わないじゃんよ」  
「へ?」  
「誰にだって、人に言えないことの一つや二つはあるのは当たり前じゃん。  
 もしも少年が悪いことしてるってんなら、先生の愛の盾を後頭部あたりに食らわせてやるけど、  
 少年はそんなことするような奴じゃないって知ってるじゃんよ。  
 だから、まぁ、気になるけど、何も言わない」  
だけど、と先生は言葉を続ける。  
「やっぱり私は先生だから、心配じゃん? 私でさえそうなんだから、  
 少年が怪我する度に、小萌先生は私よりよっぽど心配しちゃってるわけ。  
 だから……無茶するな、とは言わないじゃんけど、自分を大事にするってことだけは、約束して欲しいじゃん。  
 先生達に出来ることがあったら、何だってしてあげるじゃんよ」  
「先生……」  
感動するというのはこういうのを言うのだろうと、上条さんは強く思った。  
つーか、やっぱりちょっと泣きそうになった。ああ、偉大なるもの。汝の名は愛情なり。  
「よし、じゃあとりあえず、私が少年を鍛えてやるじゃんよ」  
「くぅ、やはり俺は年上属せ……え?」  
上条さんがセンチメンタリズムに浸っていると、なにやら不穏な言葉が先生の口から漏れた。  
「あ、あの、鍛えるって」  
「言葉のとおりじゃん? まず私が先生として出来ることは、少年を鍛えて、  
 少しでも怪我せず無事でいられる確立を上げてやることじゃんよ」  
「いや、あの、上条さんは嫌な予感が凄いのですが……?」  
「大丈夫、遠慮も心配もしなくていいじゃん」  
なんとも勇ましい笑みを浮かべると、先生は上条さんの首をがっちり右腕でホールド。  
先生の砲弾のような(←鎌池の好む表現)胸に思いっきり上条さんの顔が埋まっているが、先生は気にしない。  
「ちょ、ま! なんでせうかこの展開!?」  
「大丈夫。関節技もちゃんとじきじきに教えるし、練習中での多少のボディタッチも許してやるじゃん」  
「ボディタッチOK……それならば、って痛い! ってか苦しいのですが!? 地味に力込めすぎじゃないですかセンセ!」  
「こんなもんはお遊びじゃん? これからは手取り足取り、みっちり鍛えてやるじゃんよ♪」  
高校生の男子一人引きずってるにも関わらず、全く重そうな素振りを見せずのっしのっしと歩く先生。  
そんなパワフルな先生の立派な乳に埋もれて、微妙に意識を飛ばしそうになりながら、上条さんはポツリと。  
「ふ、不幸……だ……」  
そんなお約束を呟いて、先生に引きずられていきましたとさ。  
 

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