一つの部屋に満ち溢れる、随を抉るような怖気。  
上条には分からない。  
火元は、純然たる【憎悪】をもって一点を睨み付ける聖人か。  
はたまた、それを微塵も恐れたふうもなく、凄惨な笑みをもって正面から見据えている少女か。  
両者ともたじろぐことなく、お互いの瞳から目を逸らさない。  
暴力のない沈黙の攻防は、一分ほど時が止まったように続いた。  
   
「……それで?」  
沈黙を切ったのは五和。  
声色だけならいつも通りのライトな口調。だが、今の張りつめた空気には逆に違和感がある。  
「見ての通り良いとこなんですけどね。何 か 御 用 で す か ?」  
語気の強められた問いは、脅しているようにも、見下しているようにもとれる。  
なおも崩れぬ敬語は否が応にも【距離】を認識させる露骨な拒絶か……少なくとも、目上に対する礼儀の意味などではなかった。  
対して女教皇は動じず、むしろ先程より落ち着いた様子で答える。  
「……用件は彼の保護。彼には帰るべき場所があり、貴女から解放される権利がある」  
『そこを退け』という本意が見え見えの言い回し。隠していないのはわざとかもしれないが。  
「嫌と言ったら?」  
五和も、激情する気配はない。  
中身は少々強引で単刀直入な要求に怒ったふうもなく、こちらも言い回し……疑問系に包んだ拒絶を投げかける。  
即座に少女の真意を察した神裂が眉を更に吊り上げ、憎悪の表情を深くする。  
「その時は……手段は選ばない」  
この瞬間神裂の手は、野蛮な方法には頼るまいと今まで握るのを我慢していた、七天七刀の柄に触れていた。  
口調に淀みはない。断ればその刹那何が起こるかは明らかだ。  
「へえ……それは物騒なことで」  
……まるで、脅されていることを本当に理解していないかのように。  
命の危機にさらされていることを自覚しながらも、尚も五和は濁った瞳に喜色を浮かべたままである。  
蒼白になっているのは、この一触即発な空間を傍観するのみの上条だけだった。  
「彼のことは責めないんですね?」  
「見れば分かる。彼は貴女に無理やりに関係を」  
「……ふふっ」  
神裂が何か言いかけた瞬間、五和は腹を片手で押さえながら堪えるような笑いを漏らし始めた。  
クックッと喉を鳴らして、楽しそうに。  
 
「何がおかしい?」  
場違いな笑いに更に焚き付けられた神裂が、若干歯ぎしりしながら尋ねる。  
「くすっ、ごめんなさい。ちょっとびっくりして……あははっ」  
余程可笑しかったのか、五和の瞳には涙すら浮かんでいた。  
(…………さっきから何なんだ、この悪い夢は)  
ベッドの上、五和の下には、行為が止んだことで幾分落ち着きを取り戻した上条が居た。  
しかし、冷静に状況を理解したところで、震える唇は開かない。かえって声が出なくなった。  
(あの五和が……神裂をからかっているのか?)  
見知った二人の見た事のない様相に、何を言ったらいいのか分からないのだ。  
「ふふっ……成る程。あなたは無理やりという事に悪いイメージしかないのですね?」  
「当たり前でしょう? 本人の意思を踏み倒す行為に良いことなど何も……!」  
「ところが、です」  
次第に声を荒げていく神裂を制するように、少女は一言を放つ。  
同時に、右手におしぼりを被せて握っていたものに力を込めた。  
「ひっ!!!」  
耐える術のない不意打ちから絞り出された声は、普段は絶対に発しないような高い音。  
声変わりしているはずの喉から漏れる少女のごとき悲鳴。  
神裂は、一瞬それが誰の声帯から出たものだったのか分からなかった。  
「……良いと、思いませんか?」  
彼の怯える様、彼女の戸惑う様を楽しみながら、少女は愛する人の分身をしごき始める。  
こちらを凝視する女性を差し置いて。  
「ぁっ……よ、よせ、五和っ……かん、ざき、がっ」  
「何をいまさら……初めて見せる二号さんでもないでしょう?」  
上下運動に呼応するように、一度萎びた塔がまたも硬さと高さを取り戻していく。  
「っ!? 貴女、私の前で何をっ!!」  
「いえ……初めは追い返したかったんですけどね。やっぱりあなたにも聞かせてあげたくなって」  
リズミカルな上下運動に、五指の動きを加えていく。  
この先が、単なる「手コキ」とは常軌を逸した一つの奉仕。  
指先に伝わる感覚から求める箇所を探り、刺激の強弱を使い分ける。  
「うぁ……はっ、ぐっ……うぅっあっ、はうぁ……」  
全て搾り取られたはずの男根から、透明な液体が滴り始めた。  
「……見とれますよね、あなたでも」  
「ち、ちがっ……!」  
どもりながら否定する神裂だが、話しかけられるまで呆然と見入っていたのは事実だった。  
   
(……あの人が、こんな…………!?)  
思い返してみても、神裂の記憶にある上条は……行為の中限定での話だが、むしろ攻めに回る性質であった。  
彼の思うようにさせているうち、自分は受ける側の女なのだと思っていた。  
小悪魔じみた、攻撃の性。彼は、そちらの人間なのだろうと思っていたのに。  
「あ、あ、……無理………もう、出なっ……」  
「そのわりには、まだこんなに熱いですよね」  
彼女の葛藤などに目もくれず、行為は続いていく。  
 
 

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