『この話に幻想殺しは登場しない  
これはもう一人のレベル0と、レベル0に救われた者の話』  
 
15巻を読んでない人はスルー推奨  
オリジナル設定有  
非エロですが、エロ続編書くかも  
唯幸せな二人が書きたいだけだったり  
 
 
 
この学園都市にはスキルアウトと呼ばれるものたちが居る。  
レベル0。  
学園での地位は能力のレベルで決まるようなものなので、学園の最下層の存在だ。  
 
滝壺理后はレベル4だった。その能力は強力だったが、それを使うためには『体晶』と呼ばれる物質が必要だった。  
しかしそれを使うことは浜面に禁止されているので、実質はレベル0と大して変わらない状態だ。  
その関係で自分が通っている学校に在籍できる基準を下回ってしまった。  
『体晶』を使えば良いのだがそれは禁止されている。理后は退学を決意した。  
他の学校に入ろうかとも思ったがやめた。また体晶を使う事になるのは嫌だったからだ。  
 
今日も連日と同じで暑い日だった。  
空は雲が一つも無く洗濯物が良く乾く日だが、ここは学園都市である。乾燥機が優秀すぎるので日の意味は大してない。  
そして空が茜色に染まる今、理后は夕飯を作っている。  
最初は作り方が良く分からなかったが、黄泉川におそわってなんとか食べられるレベルまで達した。  
そして最近になってようやく黄泉川の調理法がおかしいということに気がつき、町まで出かけて本を買って勉強した。  
最初は大変だったが学園都市の科学力にも助けてもらい、今では立派な料理を作ることができるようになった。  
それも全て自分の好きな人のためだ。  
 
レベル0なのにレベル5にして学園四位の麦野に立ち向かい見事勝利した浜面、彼は自分のために戦ってくれたのだ。  
麦野は自分を道具としてしか見ていなかったが、彼は人としてみてくれた。心が救われた。  
そんな彼と生活を始めたのはつい先日の事だ。  
『アイテム』に所属する時に家を失った浜面と、黄泉川にあまり迷惑をかけたくなかった自分。  
自分は彼が好きだった、そして彼も好きだと言ってくれた。二人が同棲するのには十分な理由だ。  
初日にベッドが一つしかなくてドキドキしながら一緒に寝た。  
二日目の洗濯物をしまう時に彼の下着を手にとってしまった。  
三日目の夜に抱いてもらった、初めてで怖かったけど温かかった。  
全てがきれいな思い出となって、今の自分は幸せでいっぱいだ。  
そしてこれからもっともっと幸せになるのだ。  
一緒に花見をして、プールへ遊びにいき、焼き芋をほおばり、雪だるまを作る。  
ずっとずっと彼と一緒にいたい。朽ちる時は彼の傍で朽ちたい。  
それが自分の願いだ。  
 
 
玄関が開く音がしてただいまという声が聞こえた。  
 
自分は能力を使わないのと決意した時に学校を辞めたが彼はまだ学校に通っている。  
将来の就職を考えるととりあえず大卒まではいったほうが良いと判断したからだ。  
それにお金も入る。と、言ってもレベル0なのでたいしたものではないが。  
しかし貯金をできるだけ使わないようにするということになったので、浜面は学校の後にバイトをしている。  
バイト先はバイク(外の世界ではきっと未来カーと言われるであろうそれ)の販売・整備店だ。  
元々手先が器用なのでけっこう重要な仕事も任されて、いまでは勤務時間以外は正社員なみの扱いを受けている。  
ちなみに将来の事、というのは当然結婚等も含めての事だ。  
これからの方針を決めようといった時に空気が重かったので場を和ませようと理后は「子供は女の子が良い」と言ってみた。  
すると真剣な顔で「俺は男の子と女の子、両方欲しい」と本当に産む気があるような口調で答えが返ってきた。  
本気かと訊けば本気だと返ってきた。生まれてはじめて女に生まれてよかったと思えた。  
 
「おかえり。今日は肉じゃがを作ってみた」  
 
最近は色々と新しいレシピに挑戦している。新しく作ってみたものをおいしいと言ってくれるのがうれしいからだ。  
 
「あっ……言うの忘れてた。………ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し(はーと?」  
 
からかうように言ってみると浜面は驚いたような顔をした後にあきれたように言った。  
 
「ここでお前って言ったらどうするんだよ……」  
 
「もちろんはまづらの望みどおりにする。あと、二人の時は名前で呼んでっていったはず」  
 
二人の時は名前で呼び合う、これは前にベッドの上で決めたことだ。  
お前と呼ばれると心が不安になる。距離はもっと近いはずなのに遠く感じてしまう。  
それが怖かったのだ。  
 
「理后だって苗字で呼んでたぞ」  
 
そう指摘されたので先ほど自分は苗字で呼んでしまったことに気がついた。  
最初は自分が言い出したことだがやはり恥ずかしいのだ。  
 
「し…あげ」  
 
そう言うと浜面は満足したように首を振りリビングへと移動するように促してきたのでそれに従った。  
キッチンから料理を運んで来ると制服から私服に着替えた浜面が既に椅子に座っている。  
料理を並べ終えて冷えた麦茶をコップについだ。ちなみに今の浜面は禁酒・禁煙状態である。理由は健康面と金銭面だ。  
 
「「いただきます」」  
 
まずは肉じゃがを食べてみた。初めて作ったとしては会心の出来だ。  
ちらりと浜面を見るとちょうど同じように口に入れたところのようだ。  
 
「うん、おいしいな」  
 
そう言って万円の笑みをこちらに向けた。その笑顔が自分にとっては何事にも返られないぐらいうれしい物だ。  
明日は何を作ってみようかなとか、しあげは明日も喜んでくれるかなとかばっかり考えてしまう。  
 
 
 
お風呂から出て明日の朝食の準備も終えた。特に今日はするべきことも無く見たいテレビも無い。  
 
 
「しあげ、もう寝る?」  
 
明日の支度をしていた浜面の背中に声を投げかける。  
くるりと振り返った浜面は部屋の時計を確認した。現在時刻は10時前だ。  
 
「ああ、もう寝るとするか」  
 
首をコクリと縦に振って寝室へと向かった。目覚ましをセットしてベッドに入る。今は夏なのでタオルケットが一枚だけだ。  
その時、ちょうど浜面が寝室へと入ってきた。ベットは一つしかないので当然一緒に寝ることになるが、特に困らない。むしろうれしいぐらいだ。  
浜面はクーラーのタイマーを設定するとベッドに入って横になった。  
枕を寄せて浜面の腕に自分の腕を絡ませた。ちょうどコアラの親子みたいな体勢だ。  
 
「おやすみ、理后」  
 
「おやすみ、しあげ」  
 
眼を閉じると目の前に闇が広がるが隣に居る存在のおかげでぐっすりと眠ることができる。  
 
また明日から幸せな一日が始まるのだ。  
 
終  
 

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