アレイスターに呼び出された土御門は、目の前の光景を見て固まった。  
 
ふよふよ、すいー  
 
なんか、アレイスターがいつもの培養液の中で泳いでる。  
というか、クロールならまだしも、水中でするバタフライに如何ほどの意味があるのか。  
「む、来ていたのか」  
「……ああ」  
土御門に気付いたアレイスターが、立ち泳ぎみたいなのをしながら声を発する。  
服装のせいかちょっとアレイスターがクリオネに見えてしまう土御門。  
「というか、何をやってるんだ?」  
「ふむ、見て分からんか? 泳いでいるのだ。もうすぐ夏だからな。夏を先取りだ」  
(何が夏を先取りだ年中無休の自宅警備員がっ!)  
土御門はそう罵ってやりたくなったが、一応相手は上司の一人。  
なんとか口にするのはこらえた。雰囲気は怒ったのまるわかりだけど。  
「ふむ? 何に腹を立てているのだ?」  
「何を言う。俺は腹を立ててなどいない」  
「……む? そこは「キレてないですよ」と答えるのではないのか?」  
「古いわ!! いつの話だボケ!」  
「む、あのカエル顔め……」  
何やらぶつぶつ文句を言いながら、なんか奥の方に泳いでいくアレイスター。  
ちょっとキレた土御門にびびったのかもしれない。  
「お前の冗談は聞いてやる時間が無い。要件を言え」  
「要件?」  
「俺を呼んだのはお前だろう? 何かあるんじゃないのか」  
「……おお!」  
「なんだ今のリアクションは!?」  
あー、そうだったそうだった思い出した、という感じのアレイスター。  
イライラしてらっしゃる土御門と目を合わせぬよう、目を泳がせつつ。  
「その、なんだ……暇だったのだ」  
ブチ。何かが切れる音がした後、何やら術を起動させようとする土御門。  
「このばかをぶちころす! ちからを……」  
「ま、まぁ待て。落ち着け土御門。  
 そんなに怒りっぽいからお前は、妹を寝とられるのだ」  
「……は?」  
ぴた、と土御門が硬直する。その様子を見て何か察したのか、  
やべ、という感じの顔をするアレイスター。  
「……ねとられるって、ナニ?」  
「聞き間違いだろう。私はそんなことは口にしていない」  
「だったらこっち向いて話せ! 奥に泳いでいくんじゃない!!」  
やたらめったらガンガンとガラスを叩きまくる土御門。  
アレイスターはその後、少しだけ悩んだようだが、イルカみたいに泳いで戻ってきた。  
「真実を知っても……怒らないか?」  
「……怒らない」  
「今、キレてますか?」  
「……キ、キレてませんよ」  
ぷるぷるしながら答える土御門。何か色々と生きていくために必要なものを失ったような顔をしている。  
あ、唇かみしめ過ぎて血が出た。  
一方のアレイスターは、水中で円を描くように泳いでいた。っていうかすっごい嬉しそう。  
そんなに小力がやりたかったのか。  
と、アレイスターが円を描くように泳いでたところに、なにやらぼんやりとした輪郭が出来始めた。  
なにやら縁のようなものが出来たかと思うと、その円の中に映像が浮かび上がる。  
浮かび上がったのは……  
「舞夏!」  
そう、土御門のスウィートエンジェル、舞夏であった。  
映像の舞夏は誰かと一緒に歩いているようだったが、円の大きさが足りないため、  
映像には舞夏と手をつないでいる、男のものと思われる右手しか映っていない。  
 
『最初はなー、なんとなくメイド目指してたんだけどなー』  
『今は、ちゃんと目標、出来たんだー』  
ここで、舞夏の顔がアップに。その頬には朱がさし、なんか目がウルウルしてる。  
『私は、早く一人前のメイドになって、お兄ちゃんのメイドになるんだー』  
 
ピシ、となにやら土御門から何かが、例えるならガラス細工のハート的なものが割れるような音がした。  
そんな土御門の目の前で、幸せそうな舞夏は隣の誰かに微笑んでいる。  
その映像が徐々に消えてゆき、完全に消失したころになって、アレイスターが、無反応の土御門によっていく。  
「今のはアンダーラインからの情報だが……おい、大丈夫か?  
 なんか眼つきがサングラス越しにもわかるくらい輝かしいほどに爽やかになってるぞ?  
 というか、泣いてるのか?」  
「……で……」  
「ん?」  
なにやら小声で呟いている土御門。あまりに声量が小さいため聞き取れず、  
アレイスターは備え付けられた集音マイクを使用した。  
「……血潮は鉄でも……心は硝子……なんだにゃー……」  
「こ、こいつ……! 色々なものを越えてしまっている!?」  
その後、真白になってしまった土御門を、必死で慰めるアレイスターさんであった。  
ちなみに、アレイスターが土御門を慰めるために見せた映像の中に  
 
『大丈夫。例えあなたが誰かの為に、世界を敵に回したって。  
 そんな優しいあなたを、わたしは応援してる』  
 
というような、「寝とられたのはおまえだけじゃないぞ?」という趣旨の映像も交じっていたとかいないとか。  
 

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