「だーっ!やっぱ今日も不幸だー!」
上条当麻は一日の鬱憤を晴らすように声を張り上げた
彼の周囲にいた数人がその声に驚き、不審の眼差しを向ける
今日は休日ということもあって往来でイチャついているカップルの姿もあったが、彼が飢えた狼のような視線を向けると、身の危険を感じて早足で逃げていった
だいたい今朝は起きた瞬間からケチがついた。上条が目を覚ましたのは午前6時だったのだが、典型的自堕落高校生の彼がなぜ休日の早朝に起きたのかといえば、やかましく鳴り続ける携帯電話が原因だった
休日のこんな早朝に電話をかけてくるなんて、きっとろくでもない用件に違いないと最初は無視していたのだが、いつまでも鳴り止まないコール音に最終的には根負けしてしまった
「ふぁーい……もしもーし」
眠気の混じった声で出ると、電話の向こうから、聞きなれた幼い声が聞こえた
「あ、やって出ましたか〜。上条ちゃん、おはようございます」
彼のクラスの担任教師月詠小萌は当麻とは反対に、早朝の気だるさを全く感じさせない溌溂とした声で挨拶を交わした
「あー、小萌先生、おはようございます。そしておやすみなさい……」
「はい、おやすみなさい…………って、寝ちゃだめですよ〜!起きてください!上条ちゃーん!」
再び眠りの世界へ旅立とうとしていた彼を、幼女先生の必死のロリボイスが引き止める
彼の友人の青髪ピアスが聞いたら、鼻血を出して大喜びしそうな話だが、幸か不幸か上条にはそういう趣味は備わっていなかった
「うぅ……眠いよ母さん、休みの日くらい……満足に寝させてくれていいじゃないか……」
「あの〜、上条ちゃんのお母さんでもないし、残念ながらゆっくり眠らせてあげることも出来ないんですよ。というかやっぱり上条ちゃんは先生のお話聞いてませんでしたねー?」
(先生の話?)と上条は過去の記憶を探ってみるが、いくら検索しても彼の頭の中にはその類の情報は入っていなかった
「今日は朝から補習があるって言ったじゃないですか」
「…………………………」
「上条ちゃーん!フェードアウトしないでくださーい」
彼は自分の耳を疑った。何度も死線を潜り抜けているうちに、幻聴が聴こえるようになってしまったのかと、本気で心配した
だからもう一度確認することにした
「良く聞いてくださいね?上条ちゃんは記録術(かいはつ)の単位が足りないので、8時から夕方まで一日補習です」
小萌がゆっくりゆっくり言ってくれたおかげで、当麻もようやく話を呑み込むことが出来た
そして同時に、本当に疑わなくてはならないのは、耳ではなく頭だということも理解した
当麻は朝食として、きちんと密閉しなかったのでパサパサになってしまった食パン(しかも賞味期限を3日ほど過ぎた)をもそもそと食べながら、ある年下の少女のことを考えていた
「あー、あいつ怒るだろうなぁ……」
今日はその少女の買い物に付き合う約束をしていたのだ
英語でいうと『ショッピング』であり、彼らの関係からいうと『デート』である
もちろん彼もこの日を楽しみにしていたし、当日の朝になってキャンセルするのは辛かった
事実、補習の連絡を貰ってから30分間、補習をとるかデートを取るか真剣に悩んだりもした
しかし彼も親に学費を出してもらって、学校に通っている身。ただの授業ならいざ知らず、進級に関わる補習を休む気にはどうしてもならなかった
これでデートはキャンセルすることに決まったのだが、そこから電話をかけるまでにまた、葛藤があった
彼女はなんと言うだろうか……
もちろん怒られる覚悟は出来ている。電話をかけながら土下座をするつもりだし、今度遊んだときに、飲食代洋服代全部奢るのも構わない
ちょっとくらいなら電撃を食らうのも……まぁ……やぶさかではない
彼が恐れているのは怒られることではなく、嫌われることだった
当麻は幼少時代、その不幸体質が原因で周囲から忌み嫌われていた過去がある
だから彼は人に嫌われる辛さを人一倍知っているし、ここ学園都市に来て、自分を1人の人間として扱ってくれた友人や教師にはとても感謝していた
そして、顔が良いわけでも頭が良いわけでもない、人に誇れるものなんて1つもない自分を好きだと言ってくれた彼女
そんな彼女を守るためなら、上条は命を賭すことも厭わないし、彼女と今後ずっと共に歩んでいきたいと思っている
でも自分のそんな思いも、彼女に拒絶されたら全て終わりだ
しかも相手は超がつくお嬢様
性格こそ多少難があるものの、美人だし(これは客観的に見ても間違いないと思う)、育ちも抜群だ。自分より遥かに良い男からも引く手あまただろう
もし……愛想を尽かされてしまったら……
こうして当麻は6時に連絡を受けてから、2つの葛藤を乗り越えるのにたっぷり1時間使い、デート相手に電話をかけたのは7時を回ってからだった
震える手で携帯電話の電話帳から、『御坂美琴』を出し通話ボタンを押した
プルルルル…………プルルルル…………
美琴が電話に出るまでコール音にして4回、時間にして10秒ほどだったが、当麻にとっては永遠に感じられる長さだった
「はーい」
電話の向こうから聞こえてくる美琴の声は、早朝だというのに眠気を全く感じさせないはっきりしたものだった
上条はそこで、彼女の通う学園都市屈指の名門女子学園『常盤台中学』では休日でも7時には起きて身だしなみを整えなければいけない、というのを本人から聞いたことがあったのを思い出した
休日は昼まで惰眠を貪るのが常となっている上条とは、生活サイクルが根本から違うようだ
「あ……あー……み、御坂さんのお宅ですか?」
緊張と恐怖のあまり混乱し、訳の分からないことを口走ってしまった。このときほどメモを書いておかなかった自分のバカさ加減が厭になったことはない
「私の携帯なんだから私に決まってるでしょ?寝ぼけてんの?」
頓珍漢な彼の発言にすっかり呆れてしまったようだ
「で……用件は何?」
美琴のその言葉に上条の体が再び強張る。本当はここで「御坂の声が聞きたくなったんだ」とクールにキメて電話を切りたかったが、それも出来ないので遠回しに伝えてみることにした
「き、今日……買い物に行く約束してたよな……」
「お昼からね。何、あんたまさか時間忘れて、もう待ってま〜すとかってオチじゃないわよね?」
美琴は自分の恋人を、とんでもなくバカな人間だと思っているらしい
「い、いや、そうじゃなくてさ……えーと、その……なんだ……」
「あんたバカにしてんの?もうさっさと言いなさいよ」
煮え切らない彼の態度に、美琴もだんだんと語気を強めていく
(や、やばい、早く言わないと……)
このまま引き伸ばしても、デメリットしかないと判断した上条は覚悟を決めた
「ごめんなさい!補習が入っちゃって今日行けない!絶対今度埋め合わせわするから……えっと、本当にごめんなさい」
「…………………………………」
「…………………………………」
怖いくらいの静寂が上条を包んだ
まるでこの世の音という音が、全て消えてしまったかのような錯覚
携帯電話を持つ手がじんわりと汗ばむのが分かった
胃の痛みをひたすら耐え、彼は美琴の次の言葉をただ待ち続けた
「はぁ〜〜、分かったわ」
盛大なため息をついて
「へっ!?お、怒ってないのか?いつもだったら烈火のごとく怒鳴り散らすのに……」
「なに、怒って欲しいの?」
「い、いやそうじゃないけど」
上条はいつもと態度の違う美琴を思議に思った
「まぁ、あんたがバカだってことは初めて会ったときから知ってるし、今さら怒るのもアホらしいからね」
「ホ、ホントに悪い。今度絶対埋め合わせするから」
「別に期待してないわよ。じゃあね」
普段喜怒哀楽の激しい美琴にしてはあまりにあっさりした対応に、散々緊張していた上条は拍子抜けしてしまった
ツー……ツーっという通話の切れた音だけが、静寂の中に響いていた
補習が終わったのが午後5時、そして今に至るというわけだ
(あいつ、いつもとなんか違う感じだったよなぁ)
電話ではそれほど怒っているようには感じなかったが、もしかしたら怒りを通り越して呆れ果てて、嫌われてしまったのだろうか
『美琴に嫌われる』
それを考えると、アパートに帰る足取りがずっしりと重くなり、胸が締め付けられるようだった
(俺、結構アイツに依存してるのかもな……)
彼は自分でも恋だの愛だのといったことには疎いと思っているし、実際美琴からもよく『ニブい』だの『鈍感』だのと言われる
そんな当麻でも、美琴の存在がいつの間にか自分のなかで大きくなっているのに気づいた
アパートについたのは午後6時すぎ、夏場とはいえ空は薄暗くなり始めていた
(帰ったらとりあえず、美琴に電話して謝ろう)
部屋の前でポケットを探り鍵を取り出す
そのとき
(……ん?)
扉の向こう側、つまり室内からテレビの音がするのに気がついた
(あれ?つけっぱなしで行っちまったのか?)
鍵穴に鍵を差し込んだところで、彼はふと行動を止めた。よく聴いてみると、その音がゲーム音であることに気がついたからだ
確かに彼の部屋にはテレビゲームがある。ゲームといっても学園都市の最先端技術の粋を集めた高性能なものではなく(そもそもそんなものは、彼の小遣い程度ではとても手の出せる代物ではない)、学園都市の外で売られている、ごくごく一般的なものだったが……
問題はそこではない
問題なのは、彼は今朝ゲームの電源を入れていないということだった。それなのに音がするということは…………
「泥棒か!!!!!!」
思わず声を上げてしまい、急いで口を押さえつける
こんな明らかに金目の物などなさそうな部屋に忍び込み、さらにゲームなどやっているなんて、よほど間の抜けた泥棒に違いない
室内には泥棒、自分は一般人。ここは素直に通報しておくべきだったのかもしれないが、今日の上条はすこぶる機嫌が悪かったし、高校生にして数々の修羅場を潜り抜けてきた自負もあった
正直そんじょそこらの泥棒程度なら負ける気がしなかった
「かかってこいやーー!!!」
怒り叫びながら思いっきり扉を開け、転がり込むように部屋に突入する
「………………あんた、なに1人で見えない敵と戦ってるのよ」
そこには口髭を生やして風呂敷を背負ったゴツいオッサンはいなかった
代わりにいたのは肩までの茶色い髪の女の子
御坂美琴が上条の部屋にあるクッションに座り、部屋にあるシューティングゲームを1人でピコピコやっていた
「あ、あれ?」
上条はそこでようやく、美琴に自分の部屋の鍵を渡していたことを思い出した
いや、忘れてはいなかったのだが、彼女がそれを使ったことはなく、こんな遅くに遊ぶこともなかったので思い浮かばなかったのだ
「はぁ〜〜御坂か〜。って何でここにいるんだよ!」
泥棒と格闘する必要がなくなったことに盛大に安堵したのち、なぜ美琴が自分の部屋にいるのかという疑問が浮かぶ
「何よ、来ちゃいけなかった?」
当麻の発言にカチンと来たのか、美琴の言葉もやや高圧的になっている
「い、いや、そういうわけじゃなくて!もちろん私、上条当麻個人としては大歓迎ですけど!」
その言葉は嘘ではない
上条は彼女の来訪を本当に嬉しく思ったし、彼女の顔を見たら、さっきまでの陰鬱な気分もすっかり晴れた
しかし、門限の厳しい女子寮で暮らす美琴がこんな時間に訪ねてくるなんて、何かよほどのことがあったに違いない
(もしかしたら、また何か事件に巻き込まれたのか……?)
上条の脳裏に3ヵ月前のあの事件の記憶がよぎった
あのときは上条も美琴も、1歩間違えれば死んでいたかもしれなかったのだ
まぁ、そのおかげで2人の距離は一気に縮んだのだが……
「べ、別に深い理由はないわよ。どうせあんたいつも、ろくなモン食べてないんだろうから……た、たまにはご飯作ってあげようかと思って……」
見るとテーブルの上には、食材や調味料で一杯になったスーパーのビニール袋が2つ置かれていた
「そ、そっか……」
美琴は顔はテレビ画面の方を向いたままだが、明らかにゲームに集中していない。さっきまで順調に敵機を撃墜していたのに、今は敵の攻撃をモロに食らい何度もゲームオーバーになっている
鈍感な上条でも、彼女が照れているのが分かった
「さ!じゃあ作るから、ちょっと待っててね」
ゲームの電源を切り、美琴はキッチンに立った
「あんた、食べられないものある?」
美琴は持ってきたバックの中から取り出したエプロンを着ながら彼に聞いた
「人間の食えるものなら……たぶんいけると思う」
1人暮らしの男子高校生など、何を食べているか分かったものではない
実際上条も、多少の賞味期限切れなど気にもしないし(それで夜中腹痛に悩まされたのも、1度や2度ではない)、友人の青髪ピアスや土御門元晴と闇なべまがいのこともしたことがあるので、食事に関しては相当な耐性がついている
「だから安心して料理してくれ!」
呆れ顔の美琴に、親指をグッと立て満面の笑みで言った
その笑顔には「どんな不味い料理でもたいらげてやるぜ!!」という意気込みが隠されていた
「私のことバカにしてるの?」
隠れていなかった……
言外に『どうせ料理下手なんだろうなー』と言われていることに気づき、美琴はこめかみをピクピクさせた
「い、いや誤解ですよ美琴さん!もちろん期待して待たせていただきます!」
上条は不穏な空気を感じ取り、急いで取り繕った
「お前料理上手かったんだなー」
運ばれてきたオムライスとミネストローネを見て、当麻は感嘆の声を上げた
オムライスはチキンライスの上にふんわりトロトロの半熟卵、中にはタマネギ、ニンジンなどの定番の野菜に加えアスパラガスやブロッコリーがふんだんに入れられた、見た目にも美しいものに仕上がっているし
ミネストローネの方も具だくさんの野菜と、トマトの香りが上条の食欲を強烈に刺激した
まだ食べたわけではないが、相当美味しいだろうということは明らかだった
「ま、まぁね。さ、食べましょ」
素直に褒められて、美琴も多少機嫌を直したようだ
「「いただきます」」
そこからしばらくは、カチカチというスプーンの金属音だけが部屋に響いた
当麻は料理の美味しさと空きっ腹が相まって喋る暇もないほどガッついているし、美琴は一口食べるたびに、チラチラ彼の様子を伺って赤面したりホッとしたりしている
(と、とりあえず美味しく出来たみたいね)
美琴は密かに胸を撫で下ろした
料理に自信がないわけではなかったし、むしろ家事全般は一般的な女の子よりはるかに出来ると思う
それでも美琴の学校には、彼女など及びもつかないほど完璧に家事をこなすような女の子もいるのである
ホッと胸を撫で下ろし、美琴もひとまず食事に集中することにした
しかししばらくして
じ〜〜〜〜
そんな効果音が聞こえてきそうなほどの熱い視線を、美琴は感じた
「へっ??」
彼女が顔をあげてその視線の送り主を見ると、さっきまで飢えた狼のように食事にありついていた上条が、スプーンを咥えお預けを食らった犬のような表情でこちらを見ていた
見ると彼の皿はすでに空だった
美琴は彼の分は多めに作ったつもりだったのだが、どうやら男子高校生の食欲というものを甘くみていたらしい
(ち、ちょっと、こいつなんて顔してんのよ)
彼女は思わず、彼の顔から目線を外してしまった。頭がチリチリとひりつき、胸に何か熱いドロドロしたものが湧き上がってくるのを美琴は感じた
自分の顔が真っ赤になってしまっているのに気付き、顔を伏せる
これ以上彼の顔を見ていたら鼻血まで出てしまいそうだった
美琴の知っている彼は、いつも根拠のない自信で溢れていて、そして何の躊躇いもなく敵に立ち向かっていくような少年だった
しかし今の彼はそんな精悍さ、力強さとは180度違う、弱々しく母性愛を抱かせるような顔をしていた
そして上条のそんな顔に、なぜか胸がときめいてしまった
「まだお腹空いてるの?だ、だったら私の食べて良いわよ」
「いや、でも悪いって。御坂も食いたいだろうし」
「お昼食べすぎちゃって、あんまり食べたくないから、いいわよ」
「そ、そっか。じゃ遠慮なくいただきます!」
そう言って当麻が美琴の皿に伸ばした手は、しかし直前で叩き落とされてしまった
「えっ!?ちょっと……み、御坂さん?」
訳が分からず動揺する上条
美琴は一口分のオムライスが乗ったスプーンを、彼の口元に運んだ
「は、はい。食べていいわよ。えっと…………あ、あーん」
時が一瞬間止まった
上条の右手でも打ち消せない、なにか異質な空気が2人を包んでいた
(えー!!『あーん』って、なんですかそのラブコメは!?は、恥ずかしすぎる!)
「な、なによ……食べないの?」
美琴にジッと睨まれ、上条も観念した
「…………………あ、あーん」
止まっていた時間が再び動き出した
「ほらー、どんどん食べなさいって」
「お、おいまだ呑みこんでな、早いって、うっ」
殺風景で無機質なはずの上条の部屋全体に、いつの間にか恋人同士の甘ったるい空気が漂っていた
「ふぅ〜、食った食った」
上条はテーブルに顎を乗せ、食後の余韻に浸っていた
慢性的な金欠と元来のものぐさが原因で最近はろくな物を食べていなかったので、上等な料理を腹一杯食べられた幸福を体全体で感じていた
それにしても……
(本当に夕飯作るためだけに来たのか?)
彼はキッチンで食器を洗っている美琴の背中を見つめた
料理を全て任せてしまったので、洗い物くらいは自分がやると申し出たのだが「たいした量じゃないからいいわよ」と断られてしまった
時計を見ると、もう8時近くになっていた
女子寮の門限は大丈夫なのだろうかと考えていると、洗い物を終わらせた美琴がテーブルを挟んで向かい側に座った
「えっと……今日はありがとな……うまかった……」
当麻は照れ臭さを堪えて、精一杯の感謝を伝えた
美琴と付き合う以前、つまり彼女を1人の女の子として意識する前は、照れなど感じたことがなかったのに、好きになった途端、伝えたいことの半分も伝えられなくなってしまった
「あったり前でしょ。これでもお嬢様学校の学生よ?こんなの朝飯前」
そう言って得意気に胸を張る彼女の姿は、レベル5の超能力者だとかお嬢様の雰囲気なんてまるでない、本当に普通の女の子といった印象を上条に与えた
「ぶはははっっ」
「な、なにいきなり笑い出してるのよ。気持ち悪い」
「いや、くくっ、はははっ」
上条はうじうじと考え込んでいた自分が急におかしくなって笑い出した
そうだ、自分が知っている御坂美琴はそんなことで人を嫌うような奴ではない
身を挺して他人を守る、誰よりも優しい人間だ
だから自分は好きになったのだ
「あー!うっさいわね。何で笑ってんのよ!」
「ははっ、いや別に、くくっ」
上条の笑い声と美琴の怒声が、夜の海のような黒色をした空にいつまでも響いていた