「自問一……私は何故こんな所にいるのだろうか」
そう呟くのはロシア成教シスターのサーシャ・クロイツェフ。彼女が現在いるのはとある不幸な少年宅のマンション屋上である。
「自答一、世話になった彼にお礼を言うためだが………」
サーシャはなおも呟きながら回想する。
あれは一週間前。彼にお礼をしたい彼女は迷惑だが知識の豊富な上司に日本人へのお礼を聞いてみたところ、
「‘体でお礼’ってのがあるらしいよサーシャちゃぁん」
と喜気として語っていた。
まだその事がよく分からないサーシャに彼女が強引にチケットを予約してくれ、いろいろ教えてもくれた。
一瞬考えた後、サーシャはベランダに降り立った。
窓が開いているらしく、いとも簡単に侵入する。
そこで見たのは、ベッドで熟睡する彼女の恩人だった。
上条当麻。
学園都市の住人で、『幻想殺し』を持つ者。
データはそこまで書いてあるが、彼女はもっといろんなことを知っていた。
彼の勇敢さ、彼の匂い……。
気がつけばサーシャは、当麻の顔を覗き込んで僅か数pの所まで自らの顔を近付けていた。
なんだか自分の顔もかなり熱い。
だが恩返しをしなければ。
「宣言一……いきます」
そう言って、当麻にキスをした。
上条当麻は夢を見ていた。
まだ見たこともない、彼の好みストライクなお姉さんと愛し合う夢だ。
「おねーさまー…」
そう言いながら夢の中でキスしていた。
そう、夢の中で。
なのになんで息苦しいんだろう?
そう思った瞬間、意識が覚醒した。
当麻が起きると目の前には、
自分の唇を貪るサーシャがいた。
「……………ふむぅ!?ぅむぐ!?」
彼女も当麻が起きた事に驚いたのか、すぐに口を離した。
「さ、サーシャ…何故このようなことを…?」
「挨拶一、おはようトウマ」
「あ、ああ。おはようサーシャ。………って違う!!なんでサーシャがここにいるんだ?」
「宣言二、トウマに恩返しするため」
「恩返しねー……なんで?」
「回答一、夏の海で迷惑をかけてしまった」
夏の海とはエンゼルフォールの事件のことだ。
「俺は特に何もしてないぞ?事件解決したのも」
「それでも」
サーシャは遮った。
「貴方に会いたかったから」
「サーシャ………」
サーシャは言う。行動宣言をせずに。
「トウマ、私を抱いてほしい」