「……ち、ちゃんとさわって確かめるんだよ」  
 そう言って、恥ずかしいのか、照れているのか、それとも泣きたいのかあるいは決意の表明なのか  
――さまざまなものが入り混じった複雑な表情のまま――、インデックスは碧玉のような瞳を潤ませ  
ながらもじっと上条の目の奥を覗き込む。  
 上条が息を呑むその隙に、インデックスが両の手を出して相対する少年の手を取った。  
「え、ちょっと、あれ? い、インデックス―――!!」  
 そうしてそのまま、少年に抵抗する隙も与えぬままにぐい、とその手を引っ張り、上条お下がりの  
シャツに覆われた小さな膨らみのひとつずつに少年の手を重ねる。  
「……………! ………っ、…………!!!」  
 お下がり、要するに使い込んでもう着ることの無くなったシャツ――の、洗濯を繰り返した結果薄  
くなった綿混の生地の向こうから、上条の手の中へとえも云われぬ感触が伝わってきた。  
 張りのある肌がぐっと押し返してくるのに、そこはまるでプリンかマシュマロのような・・・・・・いや、  
この表現が正しいのかどうなのか、上条には判断できないのだが、直感的にそう感じた、同居人の少  
女の膨らみの手触りが上条の意識を刺激する。  
 さらには、  
「はうんっ………ひぅっ…」  
 少年の手を自らの手でその胸に持っていったはずなのに、上条に触れられた瞬間、恍惚とした感さ  
えある、いやむしろ恍惚としている、と言ったほうがふさわしい喘ぎをインデックスが上げた。  
 その喘ぎに、思わず手のひらの力が強くなる。  
「きゃうんっ」  
 ぴくりと力が加わっただけで、それでもインデックスの唇から艶交じりの悲鳴が漏れる。  
「……ふあ、はあ、はあ…あうん……」  
 荒く、熱く、そして艶めかしくなった少女の息が上条の腕をくすぐった。  
 
                    −*−  
 
 なぜ、こんなことになってしまったのだろううか。  
 混乱が頭の中を覆い尽くして、まともに思考を巡らせることすら困難になっているのに、インデッ  
クスが突然、真剣な表情で上条を見つめてきた瞬間の映像だけが鮮明にリフレインする。  
 
 
 何のことはない、テレビに水着のセクシーなお姉さんが映った、それだけだ。  
 そんな映像に思わず目が行くのは、思春期の少年の―――いや、単純に男性の性、というものでは  
なかろうか。しかし、そのことが(タイミングも悪かったのだろう)、どこか虫の居所が悪かったの  
かもしれないインデックスを刺激した……らしいのだ。  
「……私だって、」  
 聞こえてきた声に、え、と振り返る。  
 上条の視界に飛び込んできたのは、不機嫌そうに上条を見上げるインデックスの姿だった。  
 インデックスが入浴を済ましている間に、夕食の食器を片付けようとしていた。そこに、付きっぱ  
なしのテレビから――何かのバラエティ番組の企画だったのだろう――流れる水着の姿に、思わず見  
入ってしまっていたのだ。  
 そんな上条の背後にいつの間にか立っていたインデックスは、拗ねたように下唇を噛み、半ば目を  
潤ませて真っ赤な顔で上条を睨む。  
「とうまはちっとも見てくれないけど、ちゃんと成長してるんだもん」  
 インデックスの口から突然にこぼれた全く予測できない言葉に、え、と再び上条は眼前の少女の姿  
を見据えた。  
 少女は、普段ならお風呂の後でも眠る直前までいつもの純白の修道服を着ているのに、今夜は何故  
かもう寝間着代わりのお下がりのシャツ姿だ。何故だろう、と思うよりも早く裾から伸びた白い太腿  
に目線を奪われる。  
 しかし、それが今回はインデックスにとっては目を逸らされた、と見えたらしい。声量は小さく  
なったのに、語気は明らかに強くなって少女の呟きが続いた。  
「……それなのに、とうまはいつもいつもいつもとうまで……! 気がつくと誰かに鼻の下を伸ばし  
てて……!」  
 
「あ……? あの、インデックスさん?」  
 詰問のような、それでいて独り言でもあるような少女の台詞に、苦笑を浮かべて戸惑う上条を見上  
げて、インデックスの表情がさらに硬くなる。  
「いっぱい食べたらいっぱい育ったら良いなあ、って云ったのは、とうまなんだよ? なのに、どう  
してとうまはちゃんと見てくれないの?」  
 畳み掛けるように言われて、上条は返事が出来ない。出来ないままに、少女の声は続く。  
 
「……ちゃんと、育ってるんだもん……!」  
 
 上目遣いに上条を睨んでいたインデックスが顔を上げて、真正面からその顔を見据えた。  
「だから、それを証明するために、とうまがちゃんと確かめてくれなきゃなんだよ」  
 言葉を出そうとしても出てくれない。声も出ないままに、反射的に動いた口から、かひゅ、とかす  
れる息の音が響く。  
 ワケも判らずに顔が赤くなっていくのは、いつかの――そう、大覇星祭の初日、まさにインデック  
スにその軽口を叩いた日の、少し汗ばんで、甘い匂いをさせ、上条の頭の中をピンク色の空気で満た  
していったあの肌の感触を思い出してしまったからだ。  
「インデックス……?」  
 やっと、少女の名前、そのたったひとことだけが音になる。  
「ま、まえにも、とうまはしっかり……み、見てるんだから、ちゃ、ちゃんと、確かめられるはずな  
んだよ」  
 上条を強く見つめるインデックスのその表情が、不機嫌よりもむしろ羞恥の色を強くした。ぎゅう、  
と手のひらを固く握りしめ、ぱくぱくと数度口を動かす。  
 あのピンク色が再び上条の頭の中を満たし始める。次の瞬間、呟くインデックスが上条の手を取った。  
 

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