そうして、一方通行の携帯の待受画面には、満面の笑みを浮かべた打ち止めが鎮座することになった。
「これにてミッションコンプリートー、ってミサカはミサカは満足感を表現するためにくるくる踊ってみたり」
「…………、」
言葉通りに回る打ち止めを寝ぼけ眼で見ている一方通行。
寝ているところをたたき起こされて訳も分からず携帯を奪い取られて、勝手に設定をいじられたらしい……寝起きの頭でそこまで認識してベッドの上に置いてある(打ち止めが踊り始める前に置いたもの)自分の携帯を開いた。
打ち止めの顔しか写っていなかった。飾りもへったくれもないただの顔写真が、画面狭しと写っているだけ。
「…………、後で直しとくか……。ねむ……」
携帯を開くたびガキの顔を拝むなンざゴメンだが面倒臭いことは後回しだとにかく今は寝よう、と思った一方通行は携帯を放って再びベッドに体重を預けた。
そこで、自分の腰の辺りになにか重圧を感じた。
どうやら何かが乗っているようである。
「……ンん?」
手をのばして掴み取ってみると、またもや携帯だった。ただし自分のそれではなく、打ち止めの携帯である。
「……人の上に荷物置くンじゃねェよ……」
手に取ったそれを何気なく開いてみる。単なる好奇心、もしくは寝ぼけた頭での反射的動作だ。
携帯が開けば、当然デスクトップが表示される。と、そこには、
自分の寝顔が写っていた。
一時停止する一方通行。
「………………、ン? 最近の携帯は鏡の機能もあンの……」
最初はそんなことを考えたが、段々と頭が冴えていく。同時に顔の筋肉も引きつっていく。が、携帯の中の自分は変化がない。
ということは……。
「おィクソガキ! テメェこの写真いつ撮りやがった!!」
勝手に寝顔を撮られていたことに気づき、絶叫する一方通行。踊っていた打ち止めは何を言われているか分からない、といった風な顔をしていたが、自分の携帯を握られていることに気づくと、
「あーっ!? なんで勝手にミサカの携帯を見てるのってミサカはミサカは憤慨してみたり! プライバシーの侵害でミサカはミサカはあなたを訴えてやる!!」
「その台詞そっくりそのまま返してやるよこのクソガキ!」
携帯を取り戻すべく飛びかかる打ち止めと、それを阻止せんとする一方通行。だが、
「ごふっ…。貴殿の堅城を分解させるのは電卓を木っ端微塵ッ!!」
代理演算を切られてしまえば、彼に勝ち目など無い。ちなみに訳を言うと『テメェの携帯のデータを消してやる!』になる。
「ふふん、そんな抵抗は無意味かも、ってミサカはミサカは宣告してみたり」打ち止めは代理演算を再開させると、「さっきの『むにゃむにゃ……もォ食べらンねェよォ……』みたいな至福の寝顔はもちろん、
『枕に顔を半分埋めて薄く笑っている』寝顔とか、
『子供みたいに無防備で思わず添い寝したくなっちゃうような』寝顔とか、
『何かを真剣に思い悩んでいる』寝顔等々、全十種類の写真にプラスして、あなたの寝言を集めた音声データをバックアップとして全ミサカに送っといたから多分一生残るねってミサカはミサカは残酷な現実を突きつけてみたり」
「マジで訴ンぞテメェはァああああああああああ!!」
睡眠中に色々と凄いことをされていたことに今更気付いた一方通行。ますますクローンどもに顔見せらンねェじゃねェかァ! と叫ぶが、データは当然消えない。その(恥ずかしい)写真のおかげで、少なからず彼女たちからの評価は上がっているのだが。
こうして、また一つ彼の悩みが増えたのであった。
「ちなみに編集に協力してくれたミサカから、『い、一度直接見に行ってもいいですか? とミサカ一九〇九〇号は期待を込めた視線とともに質問してみますっ』というコメントをもらってるよってミサカはミサカは報告してみたり」
「くそったれがァあああああああああああああああッ!!!」